データ 脚本は石堂淑朗。 監督は筧正典。 ストーリー 野球をする少年達。 エースで4番の春夫の母は、バイオリニストだった亡き夫の夢を果たすべく春夫をバイオリン教室に通わせていた。 その日も春夫をバイオリン教室に通わせるため迎えに来る母。 しかし春夫はバイオリンが上手く弾けず、バイオリン教室から逃げ出してしまう。 家に帰った春夫は野球道具を持って再び野球をしに行こうとするが、母に見つかってしまう。 春夫を仏前に座らせる母。 春夫の父は天才バイオリニストで死ぬ時春夫をバイオリニストに育てるよう言い残したという。 しかし春夫は自分は素質はないと言い、母親の言うことを聞かない。 渋々バイオリン教室に向かう春夫だが、バイオリンを無くせば教室に行かなくてすむと、わざと道に忘れようとする。 しかし通行人に拾われて上手くいかない。 そこで春夫はバイオリンを壊そうとする。 しかしその時稲妻が走った。 するといきなりバイオリンは宙を舞い春夫の手に。 春夫がそのバイオリンを弾くと素晴らしい音色が。 その頃TAC基地では異常なエネルギーをレーダーで観測する。 北斗、美川がパンサーで調査に向かう。 バイオリンを弾き終わって地面に座り込んだ春夫は「僕このバイオリンで天才になった」と言う。 一緒にいた女の子がバイオリンを弾き出すと、その子も崩れ落ちる。 もう1人の少女は春夫の母を呼びに行く。 北斗、美川は春夫を見つけたが、バイオリンは空を飛んで行った。 「バイオリンに超獣が取り付いた」と北斗。 春夫を病院に連れて行ったほうがいいという北斗に対し、春夫の母は一緒にバイオリンを追うと言う。 少女が「あのバイオリンで春夫君が急に上手にバイオリンを弾いた」と言うと目を輝かす母。 一方バイオリンは公園に着き、近くの者にバイオリンを弾かせ、その魂を吸収しドンドン巨大化した。 バイオリンを見つけ銃で撃とうとする北斗に対し、春夫の母は銃を奪いそれを邪魔する。 「あれなら春夫は上手にバイオリンを弾ける」と母。 「違う。あれは音が勝手に出るのよ」と少女。 しかし母は聞こうとせず、その間にバイオリンはまた空を飛んで移動する。 そして自ら音を奏で出し、それを聞いた者の魂を吸収しますます巨大化した。 巨大化したバイオリンを攻撃するTAC。 バイオリンはその攻撃に爆破されたかと思うと、超獣が姿を現した。 ファルコンは超獣に墜落させられ、地上から攻撃する北斗。 バイオリンの音を聞き茫然自失の母を救出した北斗はエースに変身。 しかしエースはギーゴンの出す音波に苦戦する。 光線を放とうとするも音波に苦しめられ放てない。 一時は気を失うエースだが、何とかギーゴンの胸の弦を切ると形勢は逆転。 春夫の母はギーゴンの弦が切られるたび苦しみだす。 「あのバイオリンなら春夫は上手く弾けるのに」。 エースはメタリウム光線で超獣を破壊した。 破壊されたギーゴンの体からは吸い取られていた魂が元の持ち主の所に戻る。 「春夫のバイオリンを嫌だと思う心が超獣を呼んだ」と北斗。 「母親の上手にしたいという執念が超獣のエネルギーになった」と隊長。 野球をする春夫を見て「あんなに元気な春夫を初めて見るような気がする」と母。 「子供は元気で伸び伸びと育つのが1番。その上でなら学問でも芸術でも自分から努力するようになる」と隊長。 「夢から覚めたような気がします」と母。 元気に野球をする子供たちであった。 解説(建前) ギーゴンは何者か。 これは北斗の言うように春夫のバイオリンを憎む心が生み出した超獣だろう。 もちろん近くにその心をバイオリンに媒介するヤプールの破片の存在が疑われる。 ヤプールの破片は地球上に細かく分散し、至る所で人間の弱い気持ちに取り付こうとしているのだろうか。 ヤプール死すとも超獣死なず。 これではヤプールの残党を倒したところで超獣がいなくなることはあるまい。 このシリーズ以後のウルトラマンにおいても実はヤプール起源の超獣がかなり出現していたのではないかと考えられる(80が典型か)。 ギーゴンが人々の魂を吸収して巨大化していたのはバッドバアロンと同じ。 あの音を聞いたものは意識をギーゴンに向けたため、魂を吸い取られたものと考えられる。 それではバイオリンを弾いた春夫はなぜ元気だったのか。 これは春夫に音楽的な才能があったからでは。 同様に演奏を聴いた少女が平気だったのも才能があったからだと考えられる。 一般の人には美しい音色は毒でも才能がある人にとっては薬だったのだろう。 若しくは耐性の差かもしれないが、いずれにせよ春夫も少女も魂は抜き取られていなかったものと考えられる。 ギーゴンの弦を切ったとき、母親が苦しみだしたのは母親の気持ちがギーゴンと同化していたため。 ギーゴンは母にとってもはや春夫と同格の存在だったのではないか。 我が子が苦しむのを見て同じ苦しみを感じるようにギーゴンと気持ちが一体化したのであろう。 ギーゴンが倒されて一旦気を失うが魂が戻って正気に戻ったものと考えられる。 感想(本音) ラス前がこの話かと脱力するが、ある意味かなりエースらしいエピソード。 ヤプールはいなくなったものの、超常現象で唐突に現れる超獣という設定は最後まで貫かれていた。 今回も脚本は石堂氏。 しかしややバッドバアロンの話の使いまわしな気がする。 さすがにネタ切れなのだろうか。 今回注目はゲスト出演の冬木透氏。 バイオリンの講師という如何にもな役を棒読みながら熱演してました。 正直ただの危ないおじさんにしか見えませんでしたが。 遺影の春夫の父のウインクは意図がちょっとわからなかったのですが、私的には「勝手な遺言をして許してね」というお詫びのウインクに見えました。 父親も母があそこまで教育ママになるとは思ってなかったのでしょう。 春夫の母に銃をあっさり奪われバイオリンを取り逃がす北斗。 しかしTACガンは一般人でも簡単に奪えてしまうのか。 油断してたとは言えこれで2回目なので(バキシムの回)北斗、気を抜きすぎだぞ。 せめて安全装置くらい付けとけ。 公園で大きくなったバイオリンをコントラバスと言う北斗。 細かいが見た目はもはやバイオリンじゃないですよね。 破壊されたギーゴンから魂が元の所に戻るのはバアロンと同じ。 まあ、この辺りはお約束でしょうね。 普通ならギーゴンとともに魂も葬られてるはずなんですが。 今回エースの戦闘シーンはかなり長い。 途中で意識朦朧としたり、音波に苦しめられたり。 見た目は何ですがギーゴンはかなり強い超獣でしたね。 今回はTACの存在感がかなり薄い。 物語は完全に春夫の母中心に回っていた。 内容も教育ママに対する批判めいたものでバアロンの時と同じようなもの。 子供は元気に遊ぶのが1番という竜隊長の言葉も教育的。 その点やや物足りない嫌いはある。 しかし人間の心が超獣に宿るというエース終盤のコンセプトは踏襲しており基本は離れてない。 しかも初期のテーマである人間のトラウマと闘うTACというコンセプトからも離れてない。 そしてバイオリンの音を聞くと魂が抜かれるという超常性。 話的には使いまわし感こそあれ、それがある意味エースらしいというエースのカラーを象徴する話だったように思う。 北斗が狂言回し的な点もまたしかりだろうか。 しかしラス前にしてもよくわからないエースにおける北斗。 その答えはいよいよ次回で明らかになる。 |