データ 脚本は長坂秀佳。 監督は山際永三。 ストーリー ある晩京浜工業地帯に超獣ギタギタンガ出現。 TACが出動したが、既にその姿はなかった。 現場には強烈なアルコールのにおいと作業員の死体が。 周囲を調査する北斗と美川のパンサーの前に1人の少年が飛び出してきた。 少年は他の少年達と車の前を横切れるか賭けをしていたのだった。 その少年の名はダン。 父親は数年前アルコールのにおいをさせて交通事故で亡くなったという。 母親も亡くし、今は姉と2人暮らし。 決断のダン、断固としてのダン。 少年はこの名前が嫌いと言う。 暫くして北斗、美川は竹ざおで川を飛び越えようとするダンを目撃する。 止めようとする美川を北斗は制止。 あの子は自分の勇気を試そうとしてるんだ。 ダンは見事川を飛び越える。 TAC基地では作業員の死因を酸欠死と結論付けるが、超獣が何らかの関連があると見て調査を続ける。 パトロールする北斗はダンの姉香代子に出会い、喧嘩するダンを止めて欲しいと頼まれる。 喧嘩の原因はダンが他の少年には見えない星を見えると言ったからだった。 あの星が見えるのかと驚く北斗。 香代子の話によると2人の父親は交通事故で死んだというが、死体には傷がなく周囲にはお酒のにおいがしたという。 またダンの名前はダンの父親がつけたもので、ダン自身も昔はその名を気に入っていたという。 ダンは友達の少年達に例の星が超獣ギタギタンガが工場を襲うと教えてくれたと言うが皆に馬鹿にされる。 しかしその夜、工場は実際にギタギタンガに襲われてしまった。 出動するTACに警告する地底人アングラモン。 「10時間以内に地下水汲み上げを中止せよ。地底人は迷惑している」。 香代子はダンの予言どおり超獣が現れたせいで工場を首になってしまった。 ダンに会った北斗はダンに「あの星は負けるもんかと思った時だけ見える。あれがウルトラの星だ」と励ます。 またダンの父親の事故を調べた北斗はダンの父親がギタギタンガから少女を守るために事故に遭ったことを突き止める。 しかしそれをダンに話すと、「父さんは負けるもんかと思ったのにどうしてウルトラの星が見えなかったんだ。どうしてエースは助けてくれなかったんだ」と反論される。 「それは君の父さんがギタギタンガを見て諦めてしまったんだよ」となだめる北斗。 「お前の言ってることは全部出鱈目だ」。 ダンは泣きながら走り去る。 父の墓へ辿りついたダンは地底人を発見。 ダンは父の仇を取ろうと地底人に接近するが、ギタギタンガを呼び出した地底人に見つかってしまう。 すかさずパチンコを放つダン。 パチンコは地底人の胸を直撃し、苦しがる地底人を見てダンは地底人の急所が胸であることを発見した。 しかし地底人に追いかけられたダンは崖を滑り落ちてしまう。 必死に木の枝にしがみつくダン。 ダンを発見した北斗はダンを助けに崖の上に行く。 一方TACは空中からギタギタンガを攻撃。 それを見た地底人はギタギタンガを加勢するため巨大化。 助けに向かう北斗にダンは地底人の急所が胸であることを告げる。 地上を破壊するギタギタンガ。 TACも地底人の攻撃にやられてしまった。 ダンは自分は父さんのつけた名前に負けないように頑張るから北斗に速く超獣を倒してくれるよう頼む。 単独でエースに変身する北斗。 しかしエースはギタギタンガと地底人に挟み撃ちにされピンチに陥る。 一方ダンは必死で崖を登ろうとする。 負けるもんかと思うダンの目にはウルトラの星が光っていた。 ダンに負けまいとエースも最後の力を振り絞り反撃に出る。 ギタギタンガは倒したものの、地底人の地震光線でピンチになるエース。 その時エースはダンの言った言葉を思い出した。 「地底人の急所は胸だ」。 エースが地底人の胸に光線を浴びせると、地底人は爆発し炎上した。 困難を克服したダンの目にはウルトラの星が消えることなく輝いていた。 ダンはウルトラ6番目の弟として認められたのだ。 解説(建前) ダンは何故ウルトラの星が見えたのか。 これはダンが特殊能力を持っていたと考えるしかあるまい。 しかしこの能力はどの程度特殊なのだろうか。 この能力は光に関するものなので、目が特殊な波長の光を捉えると考えれば案外多くの人がこの能力を持っているのかもしれない。 負けるもんか負けるもんかと思えば見えるのは、ダンがまだ子供なのでその波長を捉えるには集中力がいるからなのではないか。 アングラモンは我々地底人と言っていた。 他に仲間がいるのだろうか。 とすると、かつてエースに敗れたギロン人も地底人の1種族だったのかもしれない。 バルタン星人のように地底人にも限りないチャレンジをして欲しかったものである。 まあ、大人しく地底にいるのが賢明だと思うが。 感想(本音) 遂に来た単独変身篇。 やはり夕子のいない寂しさは隠せない。 しかもいきなり北斗と美川隊員でパトロールしてるし。 これは現場スタッフも今までの慣れで北斗と女性隊員を一緒に動かした方がやりやすかったからではないか。 ただ単に画面に華を添えるためだったのかもしれないが。 しかしあのポジションは夕子のものなので、違和感は拭いきれない。 ストーリー的には今までと一変して、貧しい姉弟が片寄せあってという人情ものになっている。 正直ウルトラシリーズでこういうのはやって欲しくなかった。 結果的にはとんでもないことになってしまった坂田家だったが、坂田家自体は明るくて一服の清涼剤的役割を果たしていただけに梅津姉弟は見てて辛いものがある。 やはりウルトラシリーズはもう少し明るくしてもらわないと。 夕子を失った北斗。 孤独なもの同士肩寄せ合ってはいいけど、今までが今までだけにこのギャップはやはり辛いものがある。 地底人の言う地下水汲み上げ反対の主張は至極真っ当なものだ。 しかしそうだとは言え、もう少し穏便に出来なかったのか。 あれじゃ、地上人の反撃食らっても文句言えまい。 ノンマルトといい、地底人といい地球ネイティブの連中は血気盛んでいかん。 ダンの演技は正直棒読みだ。 特に枝にしがみつきながら言うせりふは酷い。 「へっちゃらさ。俺はウルトラの星が見えても頑張るよ」。 意味がよくわからない。 エースが現れたときのアングラモンのセリフ。 「出たなウルトラマンエース」。 やはりギロン人を倒したことで有名になったのか? アングラモンがやられる時のうめき声がいい。 「ウーターハー」。 投げられただけで木っ端微塵になるギタギタンガ。 中のガスがアルコールにでも引火したか? ダンを助けに行こうとする北斗に対する竜隊長のセリフ。 「お前が戦列を離れてる間にどれだけの人の命が失われると思ってるんだ」。 無慈悲。 とは言え結局ダンは1人で危機を脱したわけで、竜隊長の冷静な判断力は伊達に隊長ではないとも言えるであろう。 「お前の言ってることは全部出鱈目だ」とダン。 北斗よ。 子供だからってそんないい加減な説明では納得しないぞ。 パトロール中にやたら梅津姉弟に出会う北斗。 真面目にパトロールしてるのか? 子供達のセリフ。 「綺麗な姉ちゃんと2人暮らし」。 思わず期待してしまった・・・。 今回の脚本は長坂秀佳。 ウルトラには新マン以来の参加であるが、ドラマとしてはそれなりに描けてると思う。 ただウルトラとしてはイマイチ違和感が。 やはりもう少しTAC中心に描いてくれないと、子供に中心が行き過ぎてると思う。 次郎君はあくまで狂言回しであまり深くその心情に立ち入ることはなかったので尚更そう感じる。 今回から始まる1人変身シリーズ。 北斗1人になったことで北斗がクローズアップされる機会が増えるが、中身を見てみると北斗自身より周りの人間の心情を北斗が思いやるという構図でイマイチ北斗の心情が描ききれてないと思う。 手法の違いもあるが、「帰ってきた」では郷の心情が中心になって話が進んでいただけに、クールな北斗はとっつきにくいというのが正直なところだ。 真の意味で北斗中心のエピソードは「ベロクロンの復讐」まで待つことになろう。 |