必殺!タロウ怒りの一撃!


データ

脚本は田口成光。
監督は深澤清澄。

ストーリー

街をパトロールする光太郎。
光太郎は犬を助けようと車道に飛び出してきた少女を轢きそうになり、急ブレーキをかけた。
「君、危ないじゃないか」と光太郎。
光太郎を見た少女は「お兄ちゃん」と呟く。
「この犬は君の犬かい」と光太郎。
首を振る少女。
「似てるわあ」。
光太郎の顔をまじまじと見つめる少女。
「私のお兄ちゃんは犬を助けようとして死んだのよ」と少女。
「君だって、もう少しで命をなくすところだったよ」と光太郎。
「だってお兄ちゃんが言ったのよ。どんな小さな虫にだって生き物にはみんな命があるって」。
「その通りだ。でも、今は本当に危なかったぞ」と光太郎。
見てられなかったと謝る少女。
「謝ることはないよ。君はいいことをしたんだ」と光太郎。
光太郎が名前を聞くとその少女は「まちこ」と答えた。
「僕の名前は東光太郎というんだ」。
パトロールに戻る光太郎。
「死んだお兄ちゃんと同じ名前だわ」とまちこ。
パトロールに戻った光太郎の横を1台の車が追い越していく。
その座席を見るとそこには宇宙人が。
すぐ本部に連絡する光太郎。
カーチェイスをする2台の車。
星人の乗った車は付近を一周して元の場所に戻って来た。
ガードレールを突き破って空き地に転落する星人の車。
星人の車は爆破炎上する。
光太郎が駆け寄ると、傍らにまちこが倒れていた。
そこへ北島と南原が駆けつけた。
「奴の車がこの子をはねて逃げたらしいんです」と光太郎。
まちこを病院に連れて行く光太郎。
「外傷に比べて、この子の肉体的な疲労が激しすぎますな」と医者。
「どういうことですか」と光太郎。
この程度の怪我ではこんなにうなされる状態にはならないと医者。
「まるでこの子の体の中に別人が住んでいるような症状ですね」。
「それで、この子の命は」と光太郎。
前例がないので何とも言えないと医者。
この子の身許がわかったら教えてくださいと言い残し部屋を出る医者。
部屋に残った光太郎は、まちこにセブンの人形が欲しいと頼まれる。
その夜、光太郎はセブンの人形を買ってまちこのお見舞いに行く。
しかしその途中に何者かの運転する車に襲われてしまった。
腕を怪我する光太郎。
病室でうなされるまちこ。
「光太郎兄ちゃんは」とまちこ。
「東さんは今ZATに帰ったよ。その代りほら、これを君に買ってきてくれたんだよ」。
セブンの人形をまちこに見せる医者。
「そんなのいらない」とまちこ。
ZATに戻った光太郎は、このことを朝日奈隊長に報告する。
昼間の宇宙人の仕業ではないかと北島。
そこへまちこの入院してる病院から電話が入った。
その電話によると、まちこが光太郎の名前を呼び続けているので、病院に来て欲しいとのことであった。
「すっかり気に入られちまったようだな」。
許可する朝日奈。
「しかし二度あることは三度あるというからな。十分気を付けてな」。
隊員たちにも注意を促す朝日奈。
出動する隊員たち。
「森山君」。
森山隊員を呼び止める朝日奈。
「あの年頃の女の子だったら、ウルトラマン人形とフランス人形とどっちを欲しがるんだろうね」。
森山に尋ねる朝日奈。
「そりゃフランス人形ですわ」と森山。
「でも、何故ですか」。
「何でもない。行きたまえ」と朝日奈。
「少女とウルトラマン人形か」。
まちこの病室へ入った光太郎は、切り刻まれて床に散らばったセブン人形を発見する。
それを拾い上げる光太郎。
それをじっと見つめるまちこ。
まちこの視線に気づいた光太郎はまちこに話しかける。
「ここにいてあげるから安心して寝るんだよ」と光太郎。
「まちこちゃん。この人形は?」
「私の知らない間に壊されちゃったの。せっかくお兄ちゃんに買ってもらったのに」とまちこ。
それを聞いた光太郎は明日また新しいのを買ってあげようという。
「今度はエースが欲しいわ。お兄ちゃんと私が一緒になったみたいな」とまちこ。
翌日、エース人形を持って病院へ向かう光太郎。
しかしその途中の建設現場で重機の下敷きになってしまう。
動けない光太郎に包丁を持った小さな手が忍び寄る。
その刃が光太郎に向けて突きたてられようかという瞬間、ZATの車が光太郎を発見した。
逃走する手の主。
入院した光太郎を見舞いに来る朝日奈。
「パトロール中の私と森山くんが君を発見するのがもう少し遅かったら、君はもっと大変なことになっていたぞ」と朝日奈。
「しかし君はあの少女がよっぽどかわいいと見える。気を失ってる時もこれを手から離さなかったぞ」。
少女へのプレゼントを手に取る朝日奈。
「本来なら君が渡した方が喜ぶんだろうが、この際私が持っていこう」と朝日奈。
「隊長、宇宙人は?」と光太郎。
「これから捕まえに行くところだ。お前は心配すんな」と朝日奈。
少女の部屋のドアが開いてるのに気が付く朝日奈。
急ぎ部屋に入るが、少女は既にいない。
「しまった」と朝日奈。
倒れている森山に気が付き抱き起す朝日奈。
「いきなり首を絞められて、あとは何も覚えてません」と森山。
「東が危ない。あの少女は宇宙人なんだ」。
その頃東の部屋では、ベランダからまちこが入ってきた。
「光太郎さんて優しいのね。私欲しいものがあるんだけどな」とまちこ。
「まちこちゃんの全快祝いにプレゼントしよう」と光太郎。
そっと部屋の鍵を閉めるまちこ。
「私、この地球が欲しいわあ」とまちこ。
驚く光太郎。
不気味に笑うまちこ。
「君は誰だ」。
「私はカタン星人だ。タロウを倒してこの地球を手に入れる」。
「よくも騙したな」。
「そうではない。私はこの少女を借りただけだ。それに君の優しい心が応えたというわけさ」。
少女に乗り移っていた星人が姿を現す。
星人は動けない光太郎の目に光線を浴びせた。
「タロウはこれで目が見えなくなった。苦しむがいい。苦しむがいい。今までお前の倒した怪獣の苦しみを知るがいい」。
「邪魔の入らぬ間に、お前の命はもらう」。
光太郎の首を絞める星人。
森山と一緒に部屋へ戻って来た朝日奈は鍵を銃で破壊して部屋へ入った。
「撃てるものなら撃つがいい」。
まちこを人質にする星人。
「カタン星人、卑怯者」と光太郎。
「やっぱり貴様は少女の体を借りていたのか。カタン星人、無駄な抵抗はやめろ。たとえ貴様がここから逃げ出しても、我々ZATが必ずお前を倒す」と朝日奈。
「地球人の科学でこの私を倒せるとでも思っているのか。お前たちこそ無駄な抵抗はやめるんだ」。
「銃を捨ててそこをどくんだ」。
まちこを人質にとられた朝日奈は星人の言うとおりにする。
「光太郎兄ちゃん」とまちこ。
その声を聞いた光太郎はカタン星人に後ろから掴みかかる。
銃を構える朝比奈。
光太郎を突き飛ばし、窓から外へ逃げる星人。
星人はそのまま巨大化した。
街を破壊する星人。
「森山君。まちこちゃんを連れて早く逃げるんだ」と光太郎。
「東さんは?」。
「僕はいい。僕のために君たち二人の命が危険に晒されている」。
「私だってZATの隊員よ。最後の最後まで諦めないわ」と森山。
「この子は自分の命も顧みずに子犬の命を救ったんだ。僕たちZATもそれとおんなじだ。君も僕もZATじゃないか。今、ZATの隊員が一番しなければいけないことをまずやるんだ」。
森山を説得する光太郎。
光太郎を心配する森山。
「大丈夫、心配しないでくれ。僕は死んだりなんかしやしない」と光太郎。
まちこを連れて部屋を出る森山。
ZATの隊員服を着る光太郎。
一方南原と北島はホエールで星人を攻撃していた。
まちこを連れて逃げる森山を狙う星人。
目の見えない光太郎は手すりを伝って何とか階段を降りた。
「お兄ちゃん」。
光太郎を呼ぶまちこの声が。
外の明かりがうっすらと見えた光太郎は、キャスターのついたベッドの上に乗りドアの方へと進んでいった。
ガラスドアを突き破って変身する光太郎。
星人にキックを浴びせるタロウ。
しかしまたしても星人の目つぶし光線で目が見えなくなってしまった。
一方的に攻撃を受けるタロウ。
「どうしたんだ、タロウは」と朝日奈。
「タロウの死にざまを見るがいい」と星人。
「タロウは目が見えないんだな」。
星人にベルをつけるベル作戦を指示する朝日奈。
ホエールから巨大なベルを出すと、コンドルと連携してカタン星人にベルをつけるZAT。
ベルの音で星人の居場所を特定すると、タロウはウルトラダイナマイトで星人もろとも爆月した。
しかし爆発の中から再びタロウが現れる。
そのまま飛び去るタロウ。
それを見送る朝日奈達。
事件後、朝日奈と街をパトロールする光太郎は公園で友達と遊ぶまちこを見つける。
まちこにタロウの人形を渡す光太郎。
「わあ嬉しい。でも、本当はタロウより光太郎兄ちゃんの方が好き」とまちこ。
「東、お前はなぜかこれに人気があるな」。
光太郎が小さい子に人気があると朝日奈。
パトロールに戻った2人を見送るまちこ。

解説(建前)

星人は何故街中を車で走っていたか。
星人はタロウの正体が光太郎であることを知っていた。
地球侵略にはまずタロウ抹殺が必要と考えていた星人は、密かに光太郎をつけていたのだろう。
では光太郎の前に姿を見せたのはなぜか。
これもやはり作戦の一環であろう。
光太郎に自分をつけさせることにより、光太郎を事故に合わせようとした。
赤信号を無視して走ったのもそういう狙いだろう。

しかし光太郎はなかなか事故に合わない。
そこで星人は作戦を切り替えた。
偶然家に帰るまちこを見つけた星人は自分がまちこを轢いたように見せてまちこに乗り移った。
光太郎とまちこが親しげに話していたことから、光太郎と知り合いだと思ったのであろう。
ドライビングテクニックといい、咄嗟の作戦変更といいカタン星人はなかなかの切れ者である。

まちこがセブン人形を光太郎にねだったのはなぜか。
これも単純に光太郎を見舞いに来させるためだろう。
光太郎が病院へ向かう頃合いに病院を抜け出した星人は待ち伏せして光太郎を襲った。
まちこがセブンの人形をバラバラに切り刻んだのは、新しい人形を買ってもらう口実を作るため。
工事現場でまちこの姿だったのは、昼間に星人の姿では目立つからであろう。

朝日奈はどうやってまちこが星人だと見抜いたのか。
朝日奈はまちこがフランス人形ではなくウルトラマン人形を欲しがることから怪しいと思ったようだが、そもそもまちこは最初からゾフィ人形を持っており、ウルトラマン人形が好きだった。
したがってこれだけでまちこを星人と疑うのは無理がある。
やはり光太郎を助けたとき、まちこらしき少女を見かけたのが直接の理由であろう。
ただ、朝日奈はまちこの顔は知らないはず。
結局は状況的にまちこが怪しいという直観みたいなものと考えるしかなさそうである。

感想(本音)

久しぶりに見たが内容はよく覚えてなかった。
それもそのはず、正直よくわからない話。
ウルトラ兄弟の正体を知る宇宙人が知り合いに化けて変身前の隊員に近づくというよくあるパターンなのでやりたいことはわかるが、それがどうも消化不良。
一番の問題は何のヒントもなく朝日奈が少女を宇宙人と見抜くところ。
半年ぶりの隊長出演回なので隊長を活躍させるという意図はわかるが、取ってつけた感が否めないのは推理の過程が描かれてないからであろう。
幾らなんでも女の子がウルトラマン人形を欲しがったから宇宙人というのは無理すぎる。

というわけで、イマイチ乗り切れない話。
レオ11話辺りと比べると脚本の破綻は少ないのだが、肝心の隊長活躍場面が弱いため盛り上がる所がない。
光太郎が森山にZAT隊員としての心構えを教えるシーンも、今更そんなレベルの話をするのかと大人目線では辛いし、そもそもこのシーンの必要性もあまり感じられずかえって話が散漫になってる気がした。
光太郎を兄のように慕う少女と光太郎の心の交流、カタン星人との攻防、隊長の見事な推理、命がけで戦う隊員たちの姿。
見どころは多いのだが、どれも中途半端な感じでまとまりがないというのが率直な印象だ。

と、辛口なコメントが続くが、話自体は標準的な出来。
それなりに見どころもある。
まず面白かったのが、最初のカーチェイス。
カタン星人のお面を付けて運転するのはさぞかしやりにくかろうというのは置いておいて、赤信号(?)を突破してチェイスをする車のアクションはなかなか力が入っていた。
この等身大の宇宙人が最初に現れるパターンはレオの初期と似ている。
製作費を抑えるための苦肉の策ということだろうが、巨大な怪獣が暴れてなんぼのウルトラの世界で等身大宇宙人を如何に扱うかというのは結構難しいテーマだろう。
等身大宇宙人が数多く登場するセブンでも時折脚本が破綻しており、子供向け30分番組で星人の侵略作戦とその攻防を描ききるのは並大抵ではないと思う。

カーチェイスから唐突にまちこが出てくる展開はやや強引だったが、これは既定通り。
冒頭に車に轢かれそうになるまちこと光太郎の出会いのシーンをしっかり描いていたので、光太郎が見舞いに行く流れも無理なく描かれていた。
ただ、その後の光太郎が襲われる展開はやや苦しい。
車で襲ったり、工事現場で事故に見せかけて包丁で刺そうとしたり、ちょっと手が混み過ぎだろう。
そこまでして隠密裏に光太郎を暗殺しようとしなくても、病室で二人きりの時目を潰して攻撃すれば良かったと思うのだが。

本話の最重要ポイントは、朝日奈隊長約半年ぶりの登場であろう。
元々多忙な名古屋氏は隊長と言ってもあまり出演する予定はなかったのだが、それにしても出なさすぎ。
初期と変わらぬ飄々とした演技も、やはり浮いてる感は否めない。
おまけに隊長に配慮したか荒垣もいないし。
ところで隊長はこれだけの長い期間、何をしていたのだろうか?
普通に考えて隊長がこれだけの期間現場を離れるというのは考えづらい。
一番あり得るのは病気で入院。
あとは、宇宙ステーションや海外支部で隊長の欠員が出たため臨時に派遣されていた等であるが、いずれにせよ何らかの説明がなされてしかるべきなので、真相は謎のまま。
まあ、この辺りは役者の都合なのであまり深入りせずにおこう。

話を戻すと本話は朝日奈久々登場回なので、隊長の活躍が中心に描かれている。
ただ前述したように、あれだけの証拠でまちこを星人と見抜くのは凄すぎだろう。
この辺りは元々隊長を活躍させる予定のない脚本を無理やり改変したためではないか。
もう少し説得力のある推理を展開していればもっと見応えのある話になっただけに、残念なところだ。
ただ、隊長のもう一つの見せ場はしっかり描けていた。
それはやはり初期を踏襲したベル作戦。
目が見えないからベルをつけるという安直な作戦なのだが、それを瞬時に実行できるZATの装備はさすがである。
こちらは隊長登場に合わせてとってつけたというわけではないだろうが、朝日奈がいた初期を彷彿させる展開となっており持ち味は出ていた。

そして本話のもう一つの目玉のウルトラダイナマイト。
音でしか星人の居場所がわからないため使わざるを得ないという風に、一応理由づけされているのもよかった。
ただ、自爆して再生とか、肉を切らせて骨を断つどころではないぞ(笑)。
その他のポイント。
本話で上野役の西島さんは降板。
後のインタビューで申し訳なさそうにしてたのが印象に残ります。
まちこは結局親がいるのかどうかすらわからなかった。
ラストで友達と遊んでいることから普通の女の子のようだが、どうして親が見つからなかったのだろうか?
カタン星人が乗り移ってたから本当のことを言わなかったとでも解釈するしかなさそう。

まちこがエース人形を頼んだとき、「お兄ちゃんと私が一緒になったみたい」というのは夕子が月の妹という設定を踏襲したのだろうが、まちこはそんなことまで知っていたのだろうか。
まあ、これもカタン星人の知識とでも解釈するしかないであろう。
光太郎を心配して一緒に残ろうとする森山。
いやいや、そこはまちこを助けるのが仕事でしょと。
仕事に私情を持ち込んではいけません。
何故かベッドの上に乗ってドアを突き破って変身する光太郎。
ただ遊んでるだけにしか見えない。

本話のテーマを無理やり探すと「命を懸けてでも守らなければならないものがある」ということにでもなろうが、正直それも取ってつけた感じでテーマというほど描けてはいない。
まだ、疑似兄と妹の絆と言った方がマシであろう。
いずれにせよ、本話はやはり朝日奈の活躍と卑劣なカタン星人の作戦がメインである。
かなり強引ではあるが、ベル作戦も含めて隊長の活躍は一応描けている。
そういう意味では及第の出来ではあろう。

本話の脚本はメインライターの田口成光。
隊長復帰、大技ウルトラダイナマイトということで田口氏が担当になったのだろうが、本話はイベント編得意の田口氏でもさすがに苦しかったか。
「今までお前の倒した怪獣の苦しみを知るがいい」などオッと思わせるセリフもあったが、結局ストーリーには関係なし。
カタン星人の卑怯さを強調するだけだった。
個人的には可もなく不可もない1本といったところ。


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