逆襲!怪獣軍団


データ

脚本は田口成光。
監督は山本正孝。

ストーリー

防戦一方のタロウ。
「タロウの奴、俺の代わりに」と海野。
「タロウが負けた」とあきら。
「もう立ち上がれないんだ」とひろし。
「この野郎、もう許さん」。
再びベムスターに向かっていく海野。
子供たちの応援虚しくタロウはベムスターに完敗した。
それを見た荒垣。
「何たることだ。ベムスターはタロウより強い」。
ベムスターへと向かっていく海野を見つけたZATは海野を追う。
その時タロウが発光し姿を消した。
それを見て泣く子供たち。
勝ち誇るヤプール。
「ウルトラマンタロウ敗れたり。でかしたぞ、ベムスター。今日はこれまでだ。引き上げよ、ベムスター」。
ベムスターは空の彼方へ飛んで行った。
光太郎を探す、健一、さおり、ZAT。
崩れた鉄骨に挟まれた光太郎を見つける、健一、さおり。
ZAT隊員に救出され病院へと運ばれる光太郎。
お見舞いにトオルの母親がやってきた。
意識を取り戻す光太郎。
ベムスターが逃げたと聞いて起き上がる光太郎。
「ダメよ。まだ寝てなくちゃ」とさおり。
早く行かないと大変なことになると光太郎。
一方海野は寺でベムスターに飛び移るための特訓をしていた。
それを見ていたあきらは海野に「もうやめてください」と言う。
「あの怪獣を倒すまでやめないぞ」と海野。
「僕たちほんの冗談で言っただけなんです」とひろし。
「俺は冗談だと思っていない。多分、君たちの心のどこかに、困ったときにはタロウが来てくれるという気持ちがあるんだ。そんな腐った気持ちを君たちの心から消すために、俺はあの怪獣を倒すんだ」と海野。
「あの怪獣はウルトラマンタロウをやっつけたんです。勝ち目はありません」とあきら。
「勝つんだ。勝とうと思うんだよ。ダメだと思ってるうちは何をやっても成功しないぞ。一度決心したら、やり遂げるまでは何度でもやるさ」。
一方ZATも新しい作戦を練っていた。
「どんな怪獣も、ウィークポイントが一か所くらいあるはずだ」と荒垣。
鉛筆を齧っていた上野は、ベムスターが腹からエネルギー源を吸収することを思い出す。
それを聞いた北島はベムスターの腹に濃縮したエネルギー爆弾を飲み込ませて爆破してはと提案。
北島に濃縮エネルギー爆弾を作るよう指示する荒垣。
その夜、寺を訪れた健一とさおりは特訓する海野の声を聞く。
海野は手まめを作りロープでベムスターに飛び移る特訓をしていた。
翌日、健一とさおりに付き添われて海野に会いに行く光太郎。
道中健一から海野が夜遅くまで特訓をしていることを聞かされる。
ロープで特訓する海野を見て松葉杖を投げ捨てる光太郎。
その時、ベムスターが再度飛来した。
それを見た海野はロープを持って現場へ向かう。
病室に戻り制服に着替える光太郎。
「やめて。そんな体で行っちゃだめ。死んでしまうわ」。
引き留めるさおり。
「これが俺の選んだ仕事なんだ。一生を賭けてやってる仕事なんだよ。仕事ができる力があるのに、病院で寝てることなんかできないんだ。わかってくれよ」と光太郎。
黙って頷くさおり。
部屋を出る光太郎。
「気を付けて」とさおり。
一方ベムスターは腹からガスタンクを飲み込んでいた。
エネルギー爆弾をセットして出撃するZAT。
逃げるあきらとひろしに出会う海野。
「あの怪獣は俺が必ずやっつけてやる」と海野。
「もし寺小屋がなくなっても勉強は忘れるなよ」。
頷く二人。
ベムスターと対峙した海野は持っていたロープをベムスターの角に投げて結び付ける。
ベムスターに飛び移る海野。
海野はベムスターの瞼にナイフを突き立てる。
出血して暴れ出すベムスター。
そこへZATが濃縮エネルギー爆弾を腹に撃ち込んだ。
腹からエネルギーを吹き出すベムスター。
海野はロープを伝って地面に下りる。
苦しむベムスターを見てヤプールはサボテンダーを送り込む。
海野を殺すよう指示を受けるサボテンダー。
海野に迫るサボテンダーを見て光太郎は変身する。
サボテンダーと格闘するタロウ。
一方海野は再びロープを使ってベムスターに飛び移った。
「ウルトラマンタロウ、生きていたのか。仕方がない、最後の手段だ。超獣ベロクロン行け!」。
最後の手段、ベロクロンを送り込むヤプール。
タロウを援護してベロクロンを爆撃するZAT。
ストリウム光線でサボテンダーを倒すタロウ。
さらにベムスターから振り落とされた海野を助ける。
一方ZATは爆撃でベロクロンを倒し、ベムスターにとどめを刺す。
爆発するベムスター。
「ざまあ見ろ」と海野。
逃げるヤプールの宇宙船を破壊するタロウ。
光太郎、荒垣、さおりとトオルの母は寺子屋の子供たちに差し入れを持ってくる。
「俺は俺のしなければならないことしただけですから」と海野。
「とにかくZATに協力していただいた。食べてください」と荒垣。
「そういうことでしたら、ありがたく」と海野。
子供の読んでる漫画を見る荒垣。
そこにはタロウの漫画が。
「そいつが今、一番面白いんですよ」と海野。

解説(建前)

海野はどうやってベムスターに飛び移ったのか。
はたしてそんなことが可能なのか。
まずあのロープをベムスターの角にまで遠投できたのは、やはりあのロープが特殊な素材でできているからであろう。
あのロープは見た目は普通のロープだが、特殊な素材で軽く頑丈に作られていたと考えられる。
そして弾力性にも富んでいた。
おそらく海野は陸上の投擲でもやっていたのだろう。
その遠投力を生かしてベムスターの角にロープを巻きつけるのに成功した。
そしてロープの弾力を生かして一気に角まで飛んだのである。
もちろん神業レベルなのだが、海野の猛特訓とベムスターの動き等の運もあったのではないか。
加えてタロウ世界の住人の並外れた筋力というのも大きいだろう。

感想(本音)

やっつけで解釈したが(笑)、海野がターザンロープでベムスターに飛び移るのは不可能。
せめて前篇みたいに高いところからロープ使って飛ぶならわかるが、この辺は撮影側のミスか。
ところで海野がロープを使って飛ぶ練習をしたのは、やはり自分も生きて帰るためであろう。
単に飛び移るだけでは、降りる手段がない。
ただ、ダイナマイトはやはりそう簡単には用意できなかったようで、今回はナイフという原始的な武器を使用している。
もちろんダイナマイトを仕掛けても吐き出されてしまうので、変更したという可能性もあるが。

何回目かわからないが、タロウまたしても敗北。
ムルロア戦も一方的だったが、今回も弱かった。
ストリウム光線すら使わなかったのは、使っても無駄だと思ったからか。
しかし切り裂き技も通じない光線も通じないで、改造ベムスターは相当厄介な敵だろう。
最終的にZATの作戦が成功したが、タロウにベムスター攻略法はあったのだろうか?
キングブレスレットなら何とかできるかもしれないが、アイテム抜きだとウルトラダイナマイトくらいしか手はなさそうな感じだ。

一方ZATはベロクロンとベムスターの2体の怪獣(超獣)を倒してしまった。
ZATはこれ以外にもムルロアを倒したり、なかなか侮れない戦力を持っている。
海野がZATはその内ウルトラマンタロウ以上の力を持つだろうというのもあながち間違いではないのかもしれない。
攻撃力に関してはペガッサ船団を破壊したウルトラ警備隊や、妖星ゴランを破壊したTAC、ウルトラの星を破壊しようとしたMACなど、人類は既にウルトラ一族を超えているかもしれない。
ただ、ZATが強いのは本話だけで以後脱出ZATに戻ってしまうのは、話の都合上仕方ないところか(笑)。

怪我を押して出撃しようとする東をさおりが止めるシーン。
「一生を賭けてやってる仕事」という割に最終回で投げ出してるが、まあ事情が変われば仕方ないか。
このシーンは出撃する軍人を見送る妻的な、佐野夫婦と重ねるかのようなシーンであるが、正直この2人の関係というのはどうなってるのだろうか?
新さおりさんになってからこういう2人の関係性を仄めかすようなシーンはなかった。
初期は恋愛路線にしようと思ってたスタッフもさすがに相手の女優が変わってしまったらやりづらいというのはあっただろう。
何か光太郎が浮気者にも見えてしまうし。
それにそもそもあさかさんと違って小野さんは青春ドラマのヒロインて柄でもない。
ただ、あさかさんがずっと出演してたとしても、正直そこまで恋愛路線には行かなかったと思う。
やっぱり子供向けだし、篠田さんは子供のお母さん方にも人気あったと思われるから、そういう路線はあまり受けないだろうし。

本話の見どころはタイトルにもなってるように、やはり怪獣軍団。
しかし、ベムスター以外は超獣だと思う。
まあ、この辺はあまり気にしないでおこう。
正直戦力になってるのはベムスターだけだったが。
因みに私見では超獣も広義の怪獣に含まれると考える。
すなわち超獣も宇宙人も円盤生物も広い意味では皆怪獣の仲間なので、これらをまとめて怪獣軍団と呼んでも差支えないだろう。
ただ、逆襲という割にはサボテンダーとベロクロンは弱すぎ。
というか、逆襲してたのはタロウとZATだと思うが。
また、海野もベムスターに対してナイフで瞼を刺すなど健闘していた。
正直あんな攻撃では怪獣を倒すのは無理だと思うが、巨大な目玉を前に奮闘する海野のシーンは絵的にはかなり面白勝ったと思う。

個人的に本話の一番のお気に入りシーンはサボテンダー、ベロクロンの出現シーン。
ヤプールが杖を翳すと光の球が現れて爆発、中から超獣出現のシーンの合成が無駄にかっこいい(笑)。
いくら技術がアップしても、こういうシーンを作れるかは制作側のセンスが問われるだろう。
また、今では不可能な爆破シーンの連続も凄い。
演じてる人が心配になるほど爆発する火薬量。
ベロクロンが倒されるシーンでは煙ってよく見えなかったほど(笑)。
やはり本物の爆発に勝るものはないというのを実感させられた。

本話は何と言っても大和田獏氏演じる海野の活躍に尽きる。
大和田氏と言えば連想ゲームや岡江久美子の旦那というイメージなのだが(笑)、海野はなかなかのイケメンで熱血漢であり、ある意味ゲンのプロトタイプともいえるであろう。
特に無茶な特訓をするシーンなどはゲンそのもの。
ゲンもスポーツクラブの先生だし、この時点で既に次作の構想が練られていたのかもしれない。
あるいはエースに出演した篠田氏のように大和田氏が次作の主役候補だったのかもしれないが、本話であまりにも活躍してしまったので、主役にならなくて正解だったと思う。

本話のテーマは前編でも述べたが、タロウがいたらZATは必要ないのではというもの。
ただ、それではウルトラマンの「小さな英雄」と変わらない。
本話はさらに視聴者である子供向けのテーマとして、一生懸命やることが大切というテーマも描かれている。
ただ、いくら一生懸命やっても無理なものは無理だろう。
それはヒッポリト星人の回でもそうだった。
本話でも結局は海野は怪獣を倒していない。
その辺りは現実的とも言えるだろう。
しかしそのことを非難する生徒はもういなかった。
海野の諦めない、努力する姿勢は確実にあきらやひろしを変えていったのである。

一方ZATはタロウの力を借りずに怪獣を倒した。
こちらは見事に子供たちの期待に応えたといえよう。
しかし、ウルトラマンとは違い、ZATは次回から再び脱出ZATに戻ってしまう。
正直子供の頃は、結局元に戻るのなら何も意味がないと思ったのも確か。
しかし、それでいいのである。
海野も言ってたように、現時点ではZATの力はタロウに及ばない。
今回怪獣を倒せたからと言って、即タロウの力が必要ではないとはならないのである。
暫くはタロウと共闘すればいい。
タロウがZATの力を必要とする場合もあるのだから。

本話の脚本は田口成光。
海野の無茶苦茶な行動はややご都合主義的ではあるが、子供騙しにならない範囲で子供向けメッセージが描かれており、この辺りのバランスはさすがと言える。
また、鉛筆を齧って作戦のきっかけを作る上野、それを注意する森山、作戦を理論補強する北島、タロウが負けたことを冷静に受け止める荒垣、タロウを援護すると聞いて「待ってました」と調子のいい南原と各人のキャラも描けていた。
そして久々に存在感を発揮するさおり。
海野の言うことを素直に聞くひろしとあきらのシーンはベタながら感動できるし、基本イベント編なのだがウルトラ兄弟が登場しないこともあり人間のドラマもよく描けていた。
ヤプール登場も楽しいし、あまり野暮なツッコミはせず楽しく、そして素直に見て欲しいエピソードである。


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