ウルトラの母はいつまでも


データ

脚本は田口成光。
監督は山際永三。

ストーリー

ZATの本部では朝比奈が胡椒1トンを注文していた。
川原で格闘し街を破壊する二大怪獣。
光太郎がライブキングの腹に閉じ込められ攻撃できないZAT。
そこへ隊長機が飛んできた。
「42歳の智恵を見ろってんだ」と隊長。
隊長は胡椒を辺りに撒き始めた。
くしゃみをする隊員たち。
すると怪獣たちもくしゃみを始めた。
大きなくしゃみとともに排出されるポチと光太郎。
攻撃を開始するZAT。
しかし攻撃は歯が立たず、鉄道が破壊されてしまう。
光太郎は液体怪獣を倒すためには冷凍して破壊すればよいと提案。
しかしZATに怪獣を凍らせる技術はない。
街へ進撃する怪獣に単身攻撃する光太郎。
炎に包まれたその時、腕のバッジが輝いた。
タロウに変身する光太郎。
タロウはコスモリキッドの舌で首を絞められ投げ飛ばされる。
さらに倒れたタロウの腕に飛び乗り腕をへし折るライブキング。
タロウはウルトラフリーザーを使い2大怪獣を冷凍した。
それを見て隊長機にパンチ弾攻撃を仕掛けるよう提案する荒垣。
コスモリキッドはパンチ弾攻撃により粉砕された。
さらにストリウム光線でライブキングを破壊するタロウ。
光太郎はこの戦いで負傷して家で寝込んでしまう。
その夜庭でポチと一緒に星に光太郎の傷が治るよう祈る健一。
さおりは光太郎を一生懸命看病する。
光太郎に夢で話しかけるウルトラの母。
「あなたの傷は自分の限界を超えようとする努力の結果受けた傷です。そういう傷はすぐ治ってしまうものよ。やりかけたことは最後までしなさいよ」。
一方変な声を聞いた健一は神社の鶏小屋まで調べに来ていた。
地面に不気味な穴を目撃する健一。
すると鶏小屋の鶏が穴に吸い込まれた。
話を聞き、健一とともに調査に向かう光太郎。
しかし鶏小屋は既にもぬけの殻となっていた。
怪獣が再生したと連絡を受け警戒態勢に入るZAT。
ライブキングは小さい破片から再生し、地中を移動して動物などを襲っていた。
怪獣をおびき出すため、豚や鶏を餌にして怪獣の笑い声を流すZAT。
その時、健一と一緒に近くまで来ていたポチが現場に入ってきた。
作戦を中止するよう指示する荒垣。
しかしその時怪獣が姿を現す。
攻撃を仕掛けるZAT。
態勢を崩し崖を滑り落ちる光太郎。
光太郎は攻撃を受けて転倒した怪獣の下敷きになってしまう。
その時何者かが飛来してきた。
ウルトラの母が光太郎を助けに来たのだ。
ウルトラの母により救出された光太郎はウルトラマンタロウに変身した。
しかし腕を骨折しているタロウはライブキングの攻撃に苦戦する。
腕を執拗に攻撃するライブキング。
その時母は「マザー光線」と声を発し、光線をタロウの腕に当てる。
腕の骨折が治癒したタロウは反撃に出る。
止めを刺そうとするタロウ。
しかしライブキングは地球で破壊しても再生してしまう。
母と力を合わせて怪獣を宇宙へ運ぶタロウ。
母と2人で光線を浴びせ宇宙空間でライブキングを破壊するタロウ。
タロウは母に別れを告げ地球へ戻る。
数日後、再びボクシングのトレーニングをする光太郎。
ボクシングは人生と同じで最後まで戦い続けなければならないと、オーナーにアドバイスを受ける光太郎。
今日もスパーリングに励む光太郎であった。

解説(建前)

コスモリキッドは冷凍されて破壊されても、溶けた時再び再生するのではないか。
これはコスモリキッドの細胞の特殊性によるのであろう。
すなわち、コスモリキッドの細胞は常温下では自在に変化できるが、一度冷凍されると自在性が失われる。
そこで粉砕されるともはや再生できないということなのだろう。
人間の血液などもそのまま冷凍すると、水分が膨張して細胞が破壊されるという。
細胞そのものが死んでしまうとやはり再生は難しいのだろう。

ライブキングはなぜ再生したか。
ライブキングが再生したのは頭部のみであることから、その他の部位には再生能力がないようである。
ライブキングの頭部は少々の衝撃にも耐えられる強度を持っていた。
また冷凍されても復活できるように、細胞も特殊な物質で出来ていた。
したがってライブキングを倒すには頭部を徹底的に破壊するしかないのであろう。
タロウは念のため宇宙にまで持っていっていたが、そもそも宇宙でライブキングが生きられるのかは謎である。

健一君やZATの隊員はなぜウルトラの母のことを知っていたのか。
まず考えられるのは、以前にも地球に来たことがあるという説。
しかしシリーズ本編で描かれてない以上、この説は採り難い。
そこで次のように考えることにする。
すなわち、地球人が交流した他の異星人から情報を得ていたという説。
これなら本編で描かれていなくても、それほど問題ないであろう。

ウルトラの世界は宇宙人が頻繁に地球に訪れる世界である。
友好的な宇宙人と交流があったとしても不思議はない。
宇宙探査中の異星人がZATなどの宇宙ステーションに立ち寄るというシチュエーションは十分想定できるだろう。
かつてキュラソ星と友好関係を結んだこともあり、一般人に情報公開していたかは別として、それなりに宇宙の情報は得ていたものと思われる。
ウルトラの母に関しては公開しても差し支えない情報なので、マスコミに出していたのであろう。

感想(本音)

ちょっとBパートで失速した感もあったが、全体的にはよくまとまっていた話。
突っ込みどころも多々あったが、見かけの割りにかなり凶暴かつ強敵であるライブキングとの戦いは見ごたえがあった。
コスモリキッドの方はやや呆気なかったのは残念だが、ある意味咬ませのポジションの怪獣にしては十分実力は発揮できたであろう。
子どもの頃は強い怪獣が出ると無条件で楽しめたので、そういう点では視聴者のツボをしっかり押えた話である。

今回は朝比奈隊長の活躍が頼もしかった。
胡椒1トンをツケで買うZATはある意味最強の組織だ。
しかし胡椒塗れで、隊員や怪獣が皆くしゃみをするという映像はまさに圧巻。
このシーンだけでもタロウの楽しさは十分理解できるであろう。
そしてくしゃみとともに飛び出す光太郎。
あの高さからでは普通助からないのだが、その辺りもタロウクオリティ。
上手いこと木に引っかかって助かるというのは強引だが、許容範囲だろう。

倒れたタロウの腕に飛びのり腕をへし折るライブキング。
再戦でも腕を執拗に狙っており、見かけによらず狡猾で残忍な性格が窺われる。
タロウ初期の強豪怪獣として存在感は十分見せ付けた。
一方コスモリキッドもその特異な体質から、ZATやタロウを苦しめ、話の中心にいた。
最後はZAT(タロウ)の作戦に敗れるが、脇にしとくのは勿体無い怪獣である。

今回ウルトラの母のことを隊員や健一が知ってたのはやはり不自然。
まあ、視聴者向けのセリフなので目くじらを立てるのはどうかとも思うが、もう少しリアリティもあった方がいいと思う。
ただ私の解釈のような話を本編に入れるのもクドイ。
メビウスを見てても説明が多いと感じることも多々あったので、個人個人で脳内補完するのが或いはベストかもしれない。

今回もZATはのんびりマイペース。
ライブキングを誘き寄せる作戦中でもぷかぷかと煙草をふかし、大きなとんかつが食べたいなどかなり気が緩んでる。
まあ何時間も待つ作戦なので仕方ないが、ちょっとこの辺りは頼りなく感じた。
しかし勤務中に隊員が煙草ぷかぷかなんて今じゃ絶対無理だろうな。
あと、2大怪獣に鉄道が破壊されるシーンは、なぜ鉄道の通行が禁止されてなかったのか疑問が残る。
連絡が上手く行かなかったのであろうか。
さすがにこれは問題だと思うぞ。

タロウを助けるために2話掛けてやってくるウルトラの母。
これはライブキングの胃の中の光太郎を助けるためだろうが、光太郎はなぜ変身出来なかったのだろうか。
あの状況で変身したらバレルからタロウが躊躇したのだろうか。
それともまだまだ余裕があるから変身を自重したのであろうか。
結果的に問題なかったものの、救助に来る母も含め疑問の残るところである。
とは言え、実際はファンサービスのための母顔見せなので、そういう意味では十分成功といえるだろう。

母のマザー光線はタロウの怪我を一瞬にして治癒させる反則な技。
銀十字隊の裏設定を知ってれば違和感はないが、さすがに何でもありな感は否めない。
ただ基本的に何でもありなのが、ウルトラでありヒーロー物であるので、あまり細かいところにいちゃもんをつけるのも正しくはないであろう。
死人を簡単に生き返らせるよりは、まだ許せる範囲である。

前述のように、コスモリキッド、ライブキングを倒した後の展開がやや物足りなさが残った。
ただそこまでが出来すぎだっただけで、母の参上から力を合わせて宇宙で破壊の展開はファンサービスも含めて十分合格点の内容だっただろう。
とにかく、胡椒でくしゃみしまくる2大怪獣の図は圧巻である。
久しぶりに見返して、タロウってこんなファンキーな話だったのかと妙に感心してしまった。
ポップなBGMに、奇抜なデザインの怪獣。
エキセントリックな作戦に派手なウルトラファミリーの客演。
これだけ画面が賑やかなウルトラマンは他にないであろう。
特にこの2話、3話はそういうタロウの特徴がよく現れており、ファンならずとも必見のエピソードだと思う。


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