データ 脚本は石堂淑朗。 監督は高橋勝。 ストーリー ある満月の夜、怪獣エレキングが月の光を吸収し月光怪獣として蘇った。 それを見た村の老人。 「やっぱり出たか」。 連絡を受けたZATはホエール、コンドルで出動してエレキングを攻撃する。 ZATの攻撃をものともしないエレキング。 しかし月光からエネルギーを得ているエレキングは朝日とともに元気をなくし、姿を消してしまった。 エレキングは姿を消したが死んではいない。 ZATは警戒態勢を続ける。 ZATは住民の不安を考え怪獣は既に死んだと発表し、怪獣が消えた付近を徹底的に捜索する。 しかし怪獣は見つからないまま、次の満月の夜を迎えることになった。 一方健一は光太郎から本当のことを聞き、子供の方が探しやすい場所もあると独自に怪獣の捜査をしていた。 寺の境内に入った健一はいきなり村の子供たちに捕まってしまう。 縄で縛られる健一。 その子供たちは3人兄弟で、自分たちを孫悟空、ターザン、猿飛佐助と名乗り健一から持っていたピーナッツを奪った。 そこへ村の老人が現れる。 老人は3人の祖父であった。 「伝説のおじいさん」と健一。 「また悪さをしたな」と老人。 ごめんよ、もうしないよと謝る子供たち。 縄を解かれる健一。 「勘弁してやってくれるかな。このいたずら小僧どもを」と老人。 健一は頷いて、子供たちにピーナッツを分けてあげる。 健一は老人にもピーナッツを分けようとするが、老人は入れ歯の具合が悪くピーナッツが食べられないと断る。 「おじいちゃん。ピーナッツが大好物だったのになあ」。 「おじいちゃんにいい入れ歯を買ってやりたいなあ」。 「俺たちの貯金全部出せば買えるかなあ」。 「全然足りないよ」と子供たち。 怪獣のことを尋ねる健一。 しかし怪獣が死んだと思ってる子供たちは「死んだ怪獣が声を出したり足跡残すわけないだろ」と反論する。 爪や鱗でもいいから見たことないかという健一に思わず佐助が「角なんて何処にあるかしらないもんな」と口を滑らせた。 ZATに知らせないとまた怪獣が現れて大変なことになると健一。 しかし死んだはずの怪獣が何で出てくるんだと反論される。 「こいつは嘘を言って、俺たちの宝物を横取りするつもりなんだ」と今度は悟空が口を滑らせる。 逃げ出す3人。 ターザンは他の2人が自分たちの宝物である角のことを喋ったことを注意する。 宝物の角を見に、洞窟に入る3人。 後をつける健一。 「この角でおじいちゃんの入れ歯を作ろう」とターザン。 石で角を削ろうとする3人。 そこへ健一が現れ怪獣はまだ死んでないと3人に告げる。 「嘘をつけ。そんなこと言って、横取りするつもりだろう」。 言うことを聞かない子供たち。 力づくで止めようとする健一だが子供たちに捕まってしまう。 縛られた健一を置いて角を削るためののこぎりを取りに戻る子供たち。 パトロール中のZATを見た子供たちは材木の裏に隠れる。 「一応ZATに知らせようか」と悟空。 しかしターザンは、健一の言うことは嘘に決まってると否定する。 佐助も健一はピーナッツをくれたと同調するが、 「おじいちゃんの入れ歯ができなくなるぞ。それでもいいのか」とターザンに却下される。 一方パトロール中の光太郎は、怪獣が満月の日に現れたことから東向きの木の茂みや洞穴に潜んでいるのではないかと推測する。 子供たちが洞窟に戻ると縛られていた健一は既に逃げ出していた。 急いで角を削る子供たち。 健一は光太郎を見つけると、3人が角を切ろうとしていると知らせる。 急いで洞窟に向かう光太郎たち。 すると地震が発生する。 日が沈み満月が上り始めたことから、怪獣がエネルギーを吸収し始めたのだ。 洞窟に着いた光太郎たちは3人を説得するが、おじいちゃんの入れ歯を作ると言って聞かない。 怪獣はまだ生きていると光太郎。 しかしそのときまた地震が発生し、3人は崩れた岩の向こうに閉じ込められてしまう。 岩をどけて3人を助け出す光太郎たち。 光太郎は本部に怪獣の居場所を連絡する。 しかし満月が上ると地底から再びエレキングが出現した。 村人と一緒に逃げる老人と子供たち。 老人は「ご隠居様。お宅の子供がこの騒ぎを引き起こしたんですよ。責任を取ってくれるでしょうね」と村の女性に言われてしまう。 神社を破壊するエレキング。 空から攻撃するZATだったがエレキングの吐く炎で墜落する。 村人に子供たちのせいでこんなことになったと非難される老人。 それを見た3人は自分たちで怪獣を倒そうと相談する。 怪獣の方へ向かっていく3人を止めようとする健一だが、3人に突き飛ばされてしまう。 作戦を決行する3人。 怪獣を挑発して側転を始める佐助。 それを真似ようとして倒れるエレキング。 すかさず悟空が縄を投げてエレキングの角に引っ掛ける。 それを木に結わうターザン。 さらに佐助はパチンコでエレキングを攻撃する。 しかしエレキングは縄を引っ張り木ごと引っこ抜いた。 反動で倒れるエレキング。 しかし怒ったエレキングは兄弟たちに向かってきた。 炎を吐くエレキング。 逃げる子供たち。 そこへ老人が子供たちを助けようと長刀を持って現れた。 「やい怪獣。かわいい孫に何てことしてくれる。孫に代わって成敗してくれる」。 怪獣に向かっていく老人。 しかしエレキングが足踏みをすると老人はひっくり返ってしまった。 老人を助けて逃げる兄弟たち。 そこへZATが来るも危険で子供たちを助け出すことができない。 光太郎は命令を無視して車に乗り込み、エレキングを攻撃。 しかしエレキングの下敷きになり車は大破してしまう。 「タロー!」 タロウに変身する光太郎。 エレキングと格闘するタロウ。 その隙に兄弟たちを助ける健一。 しかし兄弟たちに気を取られたタロウはエレキングの吐く炎を浴びピンチになる。 エレキングの急所である角に掛かってる縄を見て最後の作戦を思いつくタロウ。 縄を鎖に変えたタロウはそれを引っ張りエレキングの両角を引っこ抜いた。 怪獣が二度と生き返らないようにそのまま角を満月に収めるタロウ。 後日、光太郎たちは怪獣を倒したお礼を言いに兄弟たちを訪れる。 入れ歯をプレゼントする光太郎たち。 「ごめんよ。俺たちおじいちゃんの入れ歯が欲しくて」と老人に謝る3人。 そして老人にZATからもらった入れ歯を手渡した。 それを嵌めて喜ぶ老人。 元気を取り戻した子供たちは縄を振り回して光太郎たちを捕縄する。 「助けてくれえ」と光太郎。 解説(建前) 再生エレキングは初代のエレキングと同一個体なのか。 見た目の違いや倒された場所の違い等から別個体とも考えられるが、ナレーターが断言してるのでここは素直に同一個体と考えよう。 ただ、初代のエレキングは首や尻尾を切断されて惨殺されているので、そのまま復活したという解釈は難しい。 したがってエレキングの体の一部、もしくは細胞の一部が月光の光を吸収して再生エレキングに成長したと解釈するしかないだろう。 思い出すに、初代のエレキングも幼生状態から急激に成長した。 初代は電気を吸収して成長したが、再生エレキングは月の光からエネルギーを吸収するのであろう。 太陽の光では強すぎてエレキングの細胞そのものを破壊してしまう。 したがってセブンに倒されたエレキングの一部は太陽光を避けながら移動し、月光の光を吸収し徐々に成長したのであろう。 そして成獣となり復讐のため村を破壊したのである。 ただ、活動のためのエネルギーを得るには満月でないとエネルギーが足りない。 したがって満月以外の日は地底に潜んでいたのである。 最後角を抜かれて泡となって消えたのは、あるいは角が初代の体の一部だったのかもしれない。 感想(本音) 元はエレキングとは関係のない脚本だったらしいので、エレキングの登場はさすがに無理がある話。 まあ、この辺りは大人の事情なのであまり気にしないでおこう。 この話は子供の頃見たはずなのだが、ほとんど記憶に残っていない。 正直それほど面白い話ではなかったのであろう。 今見ても取り立てて語るところもない平凡なエピソードと言ったところか。 本話で気になったのはやはり入れ歯の件。 怪獣の角で入れ歯を作るぞと危険を冒して奮闘する兄弟たち。 ただ、入れ歯は材料よりも加工技術の方が問題だと思うのだが。 正直ここまで行くと子供向けというよりは子供騙しとの批判は免れないだろう。 また、最後光太郎が老人に入れ歯をプレゼントするが、これもおかしい。 光太郎たちはいつの間に老人の歯形を調べたのか。 ZATの力をもってすれば老人の行きつけの歯科医に入れ歯を作らせるなんて簡単なのかもしれないが、それにしても常識的には無理がある。 この辺りは子供たちが角に執着する理由をつけるために無理やり祖父との家族愛を絡めたようにしか見えない。 怪獣を倒したと嘘の発表をするZAT。 しかし普通に考えたらいつ怪獣が出現するかわからないのだから、これは危険極まりない。 怪獣を逃がしたことを隠ぺいしたと言われても仕方ないであろう。 この辺りは兄弟が怪獣の角に固執するためのご都合展開としか言いようがない。 兄弟たちと祖父の家族の情を描くのはいいが、もう少し何とかならなかったか。 3人兄弟に捕まってしまう健一。 しかし縄で縛って洞窟に放置って、もはや犯罪だろ。 パチンコで帽子に穴を開けるわ、もう目茶苦茶。 健一はおそらく光太郎から怪獣が死んでいないことを聞かされていたが、いくら身内の子供だからって許されるのか? しかも単独で怪獣の捜査って…。 まあ初代ウルトラマンには子供の隊員すらいたので、あまり気にしないことにしよう。 かようにツッコミどころ満載な本話であるが、3人兄弟はなかなかキャラが立っていてよかった。 今どきあんな兄弟はいないだろうが、3人がそれぞれ特技を生かしてエレキングを懲らしめるシーンなどは見ごたえはあった。 子供が怪獣に向かっていく場合はただ感情的に闇雲に向かっていくものだが、本話では健一を懲らしめたシーンをうまく伏線にして描いていたと思う。 まあ、結局は老人ともども敗走する羽目になるのであるが。 ウルトラマンタロウの世界観では人間は神話や昔話のようにほぼ人間の力だけで怪獣と戦おうとする。 常識で考えると無謀としか言いようがないが、ただ人間を怪獣から逃げ惑うだけの弱い存在として被害者的側面ばかりクローズアップするのも違うであろう。 科学的、常識的には明らかにおかしいシーンで人によっては子供騙しに見えるかもしれない。 しかし、初代マン最終回のテーマは地球は人間の手で守るというものであった。 タロウはより低年齢層向けに作られてるからこそ、神話や昔話同様自ら巨大な敵に立ち向かう市井の人々の姿を描いているのであろう。 ただ、本話ではそこに至るドラマがあまりにも適当だった。 もっとやんちゃな兄弟たちが祖父のために怪獣と戦うという展開をうまく脚色できていればそれなりなものになったと思うが、怪獣の角で入れ歯はさすがに無理すぎ。 健一を縛りあげたり兄弟の身勝手さばかりが目立ってしまい、これでは祖父や兄弟に感情移入は難しいだろう。 本話の脚本は石堂淑朗。 石堂氏はこういう話でもそれなりの説得力を持たせてくるだけに、本話では少し粗が目立った。 祖父と兄弟たちの家族愛を入れ歯一つで語ろうというのがそもそも無理だったのであろうか。 |