データ 脚本は大原清。 監督は深澤清澄。 ストーリー 秋の地区少年野球大会に向け、健一の所属する旭ヶ丘トパーズは特訓に励んでいた。 パトロール中の光太郎はランニングをする健一たちに声をかける。 「光太郎さん、明日見に来てよ」と健一。 「このあいだみたいに10対0でコールド負けじゃあ、応援のし甲斐がないぜ」と光太郎。 しかし今回は怪獣がいると少年たち。 「怪獣?」 驚く光太郎。 怪獣とは新しく入ったピッチャー史男のあだ名で、凄いピッチャーだという。 「ようし、明日はみんな頑張れよ。今日は俺がジュースを奢ってやる」と光太郎。 店を探す光太郎たち。 酒屋の安さんの店へ向かう光太郎たちの前に見慣れない自販機が。 自販機は安さんの店のものだったが、お金を入れてもジュースが出てこない。 お金も返ってこないと自販機を叩く光太郎。 すると史男がバットで自販機を強打した。 中から沢山の缶ジュースが出てくる。 「この機械はこうなんだよ」と史男。 喜んでジュースを飲む少年たち。 その時自販機の中から怪しげな蔓が。 その蔓に脚を刺された史男がうずくまる。 そこへ安さんが現れ、自販機が盗まれたものだという。 その夜、警官に頼んで自販機を運んでもらおうとする安さん。 重くて動かないことから中のものを出そうと鍵を開ける安さんだったが、安さんと警官は自販機の中から出てきた蔓に捕まり自販機の中に吸い込まれてしまった。 3人を飲み込んだ自販機はひとりでに動き出す。 翌日、試合の時間になっても審判の安さんが来ないことから急きょソフトボール経験のあるさおりに審判を頼む健一。 試合は史男の力投でトパーズの楽勝ムードだったが、試合を見に来ていた光太郎と上野が勤務のためにグラウンドを離れた直後、マウンドで史男が倒れてしまった。 医者によると小児麻痺とのことだった。 お見舞いに行った健一は小児麻痺は感染の恐れがあるからと面会を断られてしまう。 翌日、健一たちは東と一緒に病院の駐車場から史男を励ます。 ブロックサインで窓の外からメッセージを伝える健一。 病室に見舞いに入った光太郎。 元気そうで安心したと光太郎。 「小児麻痺は訓練しだいで治るんでしょ。光太郎さん。治りますよね僕の脚」と史男。 「きっと治るとも」と光太郎。 甲子園大会の記念ボールを宝物という史男。 「甲子園は僕の夢なんだ」と史男。 「だけど焦ったらだめだよ。来年の試合で頑張ればいい」と光太郎。 そこへ看護婦が入ってきて、医者が光太郎を呼んでいると伝える。 不思議がる光太郎と史男。 医者によると、史男は精密検査の結果マンダリン病という奇病で、その治療のためにはマンダリン草という植物の実が必要とのことだった。 東がZAT隊員とのことからマンダリン草についての情報を持ってないかと尋ねる医師。 しかし、マンダリン草はマンモスに食べつくされ絶滅したと東は答える。 それを部屋の外で聞きショックを受ける史男。 「それじゃ史男の脚は一生治らないとおっしゃるのですか」と史男の母。 泣き崩れる史男の母。 それを聞いて部屋へ戻る史男。 母親と一緒に病室へ戻る光太郎。 しかし史男は布団にくるまってこっちを向こうとしない。 甲子園の記事が載っている雑誌を買ってきたと光太郎。 しかし史男は「母さん、僕はいつ頃歩けるの?」と母親に尋ねる。 動揺した母親は三月もすればと答えるが、史男は「嘘つき」と母親をなじる。 「僕さっきの話聞いたよ。僕は一生歩けないんだ」と史男。 「もう野球なんて出来っこないんだ」。 甲子園の記念ボールを投げつけ花瓶を割る史男。 「史男くん。君の気持はわかる。だけどもう泣くなよ。君はエースじゃないか。どんなピンチにも耐えぬいて投げ抜く。それが本当のエースじゃないのか?僕もお母さんも先生もできるだけのことはする。希望をすてるんじゃないよ」と光太郎。 ZATでも被害者が続出していることから、マンダリン草の捜索に乗り出した。 世界中のZATも捜索に協力する。 しかし必死の捜索にも関わらず何の手がかりもつかめない。 ある夜、パトロール中の光太郎は雨の中倒れる少女を発見する。 脚に刺された痕があることからマンダリン病だと判断する光太郎。 これで35人目の被害者だという。 ある日、トパーズの面々がランニングしてると安さんの自販機を見慣れない場所で発見する。 不思議がる少年たち。 少年たちが近づくと、自販機の売り切れ表示が急に販売表示に変化した。 「本当に変な機械だなあ」と健一。 健一がお金を入れるとなぜか中から靴が出てきた。 お金を入れると次々と安さんの服や警官の服が出てくる。 驚く少年たち。 健一はジュースが出てこないことからバットで自販機を強打しようとする。 しかし自販機は急に動きだしそれを交わした。 さらに中から蔓が伸びてきて少年たちを襲う。 逃げる少年たち。 そこへ光太郎と上野が通りかかる。 話を聞いた光太郎たちは自販機に近づくが突如噴出した煙に咳き込む。 さらに近づいてきた自販機に襲われる2人。 光太郎が銃で自販機を爆破すると、中から巨大なマンダリン草が出てきた。 赤い実を撃ち落す2人。 しかし爆発の中からメフィラス星人が出現して実を取ってしまった。 負傷した顔に実を当て治療する星人。 「地球人。悪あがきはやめろ!この世はもうすぐおしまいじゃ。人間は滅び、我々メフィラス星人の世紀が始まるのだ」。 「メフィラス星人。自動販売機の中に潜んで子供をおびき寄せるとは卑怯だぞ」と光太郎。 「フフ。卑怯もラッキョウもあるものか。俺はこのマンダリン草で世界中のこどもを虚弱児童にしてやるのだ」と星人。 そこへホエールが到着し星人を攻撃する。 しかし光太郎は荒垣に星人を生け捕りにするよう懇願する。 「無茶を言うな」と荒垣。 「あの赤い実がナパームで燃えてしまったら台無しです」と光太郎。 「無茶をする」。 渋々生け捕り作戦を決断する荒垣。 「網網作戦GO」と荒垣。 巨大な網で星人を生け捕りにするZAT。 しかしあっさり網を破られてしまう。 「こんな原始的な道具に捕まるメフィラス星人ではない」と星人。 星人の光線を受け墜落するホエール。 さらに病院へ向かう星人。 車いすに乗り避難する史男は途中で甲子園の記念ボールを落としてしまう。 必死にボールを拾いに戻る史男。 しかし史男はボールを拾おうとして車いすから転倒してしまう。 病院へ来た光太郎は史男母子を助けるためタロウに変身。 星人と格闘するタロウ。 その間に逃げる史男母子。 星人の光線をバリアーで防いだタロウ。 さらにタロウは星人にパンチを浴びせ腹をぶち破る。 ストリウム光線でとどめを差すタロウ。 光線を浴びた星人は泡となって消えてしまった。 残されたマンダリン草の実を宙に掲げるタロウ。 すると不思議な光が史男を包んだ。 駆けつけた光太郎が史男に向かってボールを投げるとそれを立ち上がって受け止める史男。 「史男君。立てるじゃないか」と光太郎。 喜んで抱き合う母子。 「タロウのおかげだよ」と史男。 数日後、史男の全快を祝ってトパーズとZATで親善試合を行う。 史男にノーヒットに抑えられるZAT。 森山に発破をかけられ打席に向かう光太郎も、史男の速球の前に大きな空振りをしてしまった。 解説(建前) メフィラス星人は何物か。 かつてメフィラス星人は地球に来て初代マンと戦ったことがある。 この星人はその星人と同一個体なのであろうか。 結論から言うと別個体ということになろうが、はっきりした根拠はない。 侵略手段の違い、言動の違い、能力の違い。 そういった状況証拠の積み重ねから同一個体ではないと判断するしかないであろう。 メフィラス星人はどこでマンダリン草を手に入れたか。 メフィラス星人の計画は世界中の子供をマンダリン草を使って虚弱児童にすることであった。 とすると、マンダリン草を偶々手に入れたという可能性は低いであろう。 おそらくメフィラス星人は地球に潜伏して地球のことを調べてる過程で、マンダリン草のことを文献等で知った。 そしてその科学力で現存する似た品種の植物を改良してマンダリン草類似の植物を作り出したのであろう。 IQの高い星人にとっては、さして難しいことではあるまい。 星人はなぜわざわざ地球で絶滅したとされるマンダリン草を計画に使ったのか。 これはやはり宇宙人の仕業であるということをカムフラージュするためであろう。 実際ZATは宇宙人の計画だとは微塵も思っていなかった。 その点、作戦は成功といえるであろう。 もちろん未知の病原菌とかでもよかったと思われるが、それだと制御が効かなくなり星人も地球へ住めなく恐れがある。 そういう面でもマンダリン草の方が都合がよかったのであろう。 星人の作戦は自販機に入って一人一人子供を病気にしていくという気の長いものである。 どうしてこういう迂遠な作戦を実行したのか。 星人は我々メフィラス星人の世紀が来ると言っていたことからおそらく仲間がいると思われる。 ただ、まだ実験段階なのでまずは日本で計画を開始した。 これがうまくいけばマンダリン草を増産し、世界中で一斉にマンダリン草をばらまく予定だったのであろう。 ただ、この計画には大きな弱点があった。 マンダリン病の効果はてき面であったが、その実がある限り病気は治ってしまう。 そのため自販機に入って隠密的に動いていたのであるが、いずれ限界が来るのは避けられなかったと思われる。 感想(本音) メフィラス星人の扱いがあまりにも酷いということで有名なエピソード。 件の「卑怯もラッキョーもあるものか」というセリフも悪い意味で有名である。 個人的にはこの話は石堂氏の脚本だと思ってたのだが、改めて見てみると大原氏だったのが意外だった。 バサラ編などタロウでは変化球的なエピソードが多い大原氏だが、良くも悪くもタロウ的なこういうエピソードも書ける幅広さには感心させられる。 本話は少年野球を題材としたエピソード。 史男の「怪獣」というあだ名は当時既に有名だった「怪物」江川卓氏がモデルなのは間違いないであろう。 ウルトラ的に「怪物」を「怪獣」というあだ名にしてしまうのはちょっとニヤリとさせられる。 また、ある日突然不治の病になった主人公が車いす生活になるというのも、当時のドラマによく見られた設定である。 親がそれを隠して子供にバレるというのも定番。 マンダリン草に刺されて病気になる以外は、極めてベタなドラマ展開である。 後にスクールウォーズでイソップの病気のエピソードなども担当した大原氏だが、ある意味大映ドラマ的展開ともいえよう。 よくある設定とはいえ、実際このような境遇になった子供に何て声を掛ければいいのか。 正直これが正解というものはないと思う。 そういう意味でも東がどのように少年を励ますのかと注目したが、単なる気休めや詭弁ではなく、かと言ってただの根性論でもなくなかなか上手い励まし方だと感心した。 要約すると「我々も支えるから君も頑張れ」。 子供向けドラマだと子供騙しな励ましに妙に物わかりのいい子供というのが定番なのだが、この辺りはリアルなドラマを志向した番組のコンセプトがよく出ているであろう。 さすがに病気が治った後は気恥ずかしいくらい感動演出ではあったが、これくらいは子供向けなので許容範囲ということで。 本話は軸となるのはかように大映ドラマ的エピソードではあるが、ウルトラとしてみるとメフィラス星人の扱いも含め不満は多い。 まず解釈に苦労したように、なんで地球で絶滅したはずのマンダリン草を星人が持っているのか全く説明がなかった。 自販機が破壊されたら唐突に草が巨大化し、さらにそれを爆破したら唐突に星人が出てくる。 お約束展開といえば終わりだけど、少々乱暴すぎる。 そしてメフィラス星人の扱い。 初代マンと名勝負を繰り広げたメフィラス星人なのだから、もう少し知的に描いて欲しかった。 「卑怯もラッキョーもあるものか」とダジャレまでマスターしてる星人の知的レベルの高さは了解できたものの(笑)、自販機でコソコソ子供をマンダリン病にしていく作戦効率の悪さには閉口せざるを得ない(笑)。 解釈でも書いたように、このメフィラス星人が初代マンと戦った星人と別個体なのは間違いないであろう。 正直この話にメフィラス星人を出す必要性は全くなかった。 これは単純に視聴率対策として今まで再出演のなかったメフィラスが候補に挙がっただけなのであろう。 子供の間でメフィラスがどう思われてるかなんて、当時の制作スタッフは気にしたこともなかったと思われる。 今ならこういう再出演はありえないが、こういうことが許されるのも時代だったと言うしかあるまい。 無理やり共通点を見つけると、子供を狙った作戦というところだろうが、そこまで考えてたかはちょっと疑問である。 その他気になった点。 酒屋の安さんと警官はやはりマンダリン草に食われて消化されてしまったのであろうか? 自販機から靴が出てくるシーンはコミカルながら、よく考えると怖いシーンである。 荒垣に星人を生け捕りにして欲しいと要請する光太郎。 しかしいくらマンダリン草の実が必要だからと言って、暴れまわる星人を倒さないと新たな被害者が続出するぞ。 まあ、どうせ倒せないから攻撃してもマンダリン草の実を焼くくらいのことしかできないのだが(笑)、相変わらず無茶な話である。 トホホな扱いの星人の最期もパンチで腹をぶち抜かれるという原始的なもの。 とどめの光線で泡になるし、初代の知的な老紳士(元ネタがメフィストフェレスなんだから)の面影は皆無であった(泣)。 本話はおそらく視聴率対策の一環の懐かし怪獣復活シリーズとして企画されたものであろう。 そしてその怪獣、宇宙人を念頭に脚本を書いたというよりは、既存のプロットを適当にアレンジしてその怪獣、宇宙人に合わせたというのが実情だと思われる。 そもそも本話の脚本の大原氏は初代のメフィラス星人の話など見たことがないのではないか。 次回の改造エレキング編の石堂氏もそうだろうが、今みたいに気軽にビデオで昔の話が見れる時代ではなかったため、元の話を見たこともないまま話を作るというのが普通だったと思われる。 このシリーズでは田口氏脚本の改造ヤプール編のみ出色の出来であるが、これは田口氏が初代マンからスタッフとして制作に参加してたのが大きい。 また、2期ウルトラ、しかも自ら手掛けたヤプールというのも大きかったであろう。 本話は1期ウルトラ、しかもメフィラス星人を敵役に設定したことからおかしくなってしまった。 ストーリーとしては破たんもなくまとまっているが、敵がメフィラスというのが最大の破たんとなってしまったのである。 1期ファンはもちろん、2期ファンもメフィラス星人というのは一目置く星人である。 本話は怪獣君のキャラも立っておりドラマとしての出来は悪くはないのだが、やはりメフィラス星人が唐突に出てきておバカな言動をする違和感というものはどうしても拭いがたい。 本話はイベント編は大事だが、それが脚本と噛み合わないと残念な結果になるという典型的なエピソードといえるであろう。 |