東京ニュータウン沈没


データ

原案は村山庄三。
脚本は田口成光。
監督は山本正孝。

ストーリー

武蔵野の団地で蝉取りをする光太郎と健一。
「僕が子どもの頃は、この辺一帯が武蔵野の林が延々とあったんだ。それで夏になると毎日蝉を採りに来てたんだがなあ」と光太郎。
折角早起きして蝉取りに来たのに、と健一。
謝る光太郎。
すると何処からともなく大きな蝉の鳴き声が。
マンホールの中から蝉の声がすると健一。
マンホールを開けようとうする2人。
「そんなところに蝉なんかいないよ」と少年の声。
「何だ、蝉の声はそっちか」と光太郎。
その少年は正一といって、転校していった健一の元クラスメイトだった。
正一はクラス一の昆虫博士で虫のことなら何でも知っているという。
正一の虫かごにはスーパーで買ったという蝉が入っていた。
結局蝉をスーパーで買って帰る健一。
しかし部屋中の蝉が鳴いてうるさくて勉強できないとさおりは殺虫剤で蝉を殺す。
「いくらうるさいからって、そこまでするのはやりすぎだよ」とさおりを窘める光太郎。
一方正一の家でも蝉がうるさいと母親が怒っていた。
「蝉が鳴くから赤ちゃんが泣くんだよ」と母親。
「早くこの蝉も標本にしちまいな」と母親。
「蝉っていうのはね、7年間も地面の下にいて、やっと成虫になっても、一週間で死んでしまうんだ。残った命を一生懸命鳴いて生きているんだ。標本だなんてかわいそうだよ」と正一。
「赤ちゃんと蝉どっちが大事」と母親。
東京ニュータウンで異常振動が観測され、出動するZAT。
必死で逃げる正一母子。
蝉を忘れたと部屋に戻る正一。
そのことを正一の母親から聞いた光太郎は正一を助けに団地に入る。
正一を見つける光太郎。
団地内は停電して暗かったが、上に行けば出口があると正一。
すると壁が割れて怪獣が出現した。
逃げる2人。
しかし正一が捕まってしまう。
銃を撃って正一を助ける光太郎。
何とか脱出した光太郎たちはZATにそのことを報告。
すると正一はあれは怪獣ではなく巨大な蝉だと主張する。
正一の推測によると、ニュータウンが建てられたことによって地上に出られなくなった 蝉が地上に出ようと鳴いているのだという。
とりあえず「引っぺがし作戦」で敵を地上に誘き出すことにするZAT。
ZATが公園の舗装されたところを引っぺがすと、中からまさに羽化しようとする巨大な蝉が現れた。
団地を破壊する怪獣。
攻撃に向かうZAT。
しかし正一はあれは蝉だと攻撃を止めるようZATに頼む。
「どうせ一週間もすれば死んでしまうんだ。そんなことわかってるくせに殺してしまうなんて、ZATなんて嫌いだ」と正一。
蝉はおとなしい昆虫ですと、荒垣に網を張って捕獲するよう頼む光太郎。
網を張って怪獣を捕獲したZAT。
しかし夜中も鳴き止まないため近隣住民から苦情が来る。
見張りに残った光太郎と上野は住民に詰め寄られる。
「いつからZATは怪獣の味方になったんだ」と住民。
松明を投げつけ怪獣を焼き討ちする住民。
網が焼け逃げ出す怪獣。
おしっこを住民にかける怪獣。
怪獣の居場所を探すZAT。
「たかが一週間、蝉の鳴き声くらい我慢できないもんですかね」と光太郎。
「そうはいかないよ。皆不眠症になっちゃうじゃないか」と北島。
そのとき電波に異常が発生。
怪獣が東京タワーに止まっていたため東京中の電波が滅茶苦茶になってしまう。
住民に頼まれて怪獣に向けて発砲する警官。
すると怪獣は住民たちにおしっこをかけ、さらに炎を吐いて暴れだした。
攻撃を開始するZAT。
「止めてくれえ、撃たないでくれえ」と正一。
怪獣を庇う正一。
炎に巻かれそうになる正一を助ける光太郎。
負傷した正一を見てタロウに変身する光太郎。
タロウの指示で正一を助ける健一。
キングゼミラのストロー状の口を叩き折るタロウ。
「タロウ〜。蝉を殺さないで」と正一。
キングゼミラを宇宙まで運ぶタロウ。
こうしてキングゼミラは宇宙蝉となり、今でも夏になると宇宙のかなたで鳴いているという。
今度は正一と一緒に林に蝉取りに行く光太郎たち。

解説(建前)

キングゼミラは何物か。
正一は普通の蝉が巨大化したと思ってるようだが、実際問題として普通の蝉があれだけ巨大化するとは考えづらい。
したがってキングゼミラはやはり特殊な蝉と解釈せざるを得ないだろう。
そしてキングゼミラが宇宙でも生きられることを考慮すれば、元々キングゼミラは宇宙ゼミだったと解釈するのが妥当である。
おそらく隕石に乗って地球に飛来した宇宙ゼミの幼虫が成長してキングゼミラになった。
成長するまでにどれだけの期間掛かったかはわからないが、あれだけの大きさなので7年やそこらでないのは間違いないであろう。

感想(本音)

怪獣と人間の共存というテーマに挑んだ作品。
原案の村山氏の意向が何処まで反映されてるかはわからないが、自然破壊や騒音問題、受験戦争や深夜放送など世相を積極的に取り込んでおり、やや大人向けのテーマとなっている。
ただ、子どもの行動原理など腑に落ちない面もあり、大人向け、子供向けどっちつかずになってる面も否めない。
この辺りはタロウ、延いては田口氏の弱点でもあるだろう。
では内容面について。

武蔵野の団地に蝉取りに来る健一と光太郎。
しかし団地には蝉はいない。
私は比較的田舎で育ったので蝉なんかそこら中に鳴いてたのだが、当時の東京ではそこまで虫がいなかったのだろうか。
帰ってきたウルトラマンでもクワガタが売っているという話が出てたが、蝉が売っているというのはさすがに聞いたことがない。
俄かには信じがたいところがあるので、実際蝉が売られてる光景を見たことあるという人はまたお知らせください。

今回の話で一番びっくりしたのはさおりさんが殺虫剤で蝉を殺したこと。
今なら絶対ありえないし、まして主人公側の人間の行動としてはなおさらありえないだろう。
よく言えば大らか、悪く言えば無神経。
時代の差としか言いようがない。
まあ一応解釈すると、虫をスーパーで販売し、邪魔だからと言って殺虫剤で殺す。
人間の身勝手さを描いたということにでもなろうか。

昆虫博士の正一。
公団の抽選が当たって引越しというのも当時の世相を感じさせる。
ただ、この正一の異常なまでの蝉への思い入れは理解できない。
終始一貫して蝉の保護を訴え最後はタロウの無茶な力でそれを達成。
ゴネ得を地で行く感じで教育上あまり良くないだろう。
しかも自らの命を顧みずにそのような行動をしている。
実際にこんな子どもがいたら将来が心配でならない。

キングゼミラは普通に炎を吐くことができた。
これは人間の身勝手な行動で狂ったともいえるが、狂ったからといって炎を吐けるようになるわけではないので生来的にそういう力があったのだろう。
もうここまで行くとただの危険極まりない怪獣である。
幸いキングゼミラが宇宙で生きていける宇宙ゼミだったから良かったものの、正直これでは駆除は仕方ない。
この辺り怪獣保護をテーマにするにしてもやや無理があったであろう。
人間にとって危険だったらそれは駆除する。
この基本だけは忘れてはならない。

相変わらず荒垣副隊長は怪獣攻撃に躊躇を感じてる。
人間としてはそれでいいのかもしれないが、防衛隊の副隊長としてはどうか。
その点北島は鳴き声で皆不眠症になると正論を言っている。
このセリフは東の蝉の鳴き声くらい我慢できないかというのに答えたものだが、常識的に考えると北島の言うことがもっともであろう。
東に本話のテーマを語らせているのだが、この場面では北島の言うことに説得力がある。
ましてキングゼミラは団地を破壊するなど危険な怪獣なので、駆除は当然である。

ZATはどうせ7日で死ぬんだからとキングゼミラを殺さず生け捕りにする。
まあ、お前らにキングゼミラを倒せる力があるのかよという突っ込みはともかく、網で生け捕りにするのも結局かわいそうなのは変わりないと思うぞ。
おまけに近所の住民には大迷惑だし。
しかし、ZATに怪獣を生け捕りにしておく権利があるのだろうか。
ZATはバードンの回で食肉の販売を中止するなどかなり強権を持ってるが、バックに有力な政治家がいないとここまで市民生活に干渉することはできまい。
最近登場しない朝比奈隊長はあるいは中央官庁で折衝役でもしてるのかもしれない。

住民はキングゼミラがうるさいと松明を投げつける。
まあいつの時代なんだよと突っ込みたくなるが、しかしあれでは近隣が火事になる恐れがある。
集団ヒステリー的なものを描いているのだろうが、デビルマンじゃあるまいし、ちょっと怖すぎる(笑)。
警官も市民に言われて発砲するし、市民の暴走振りは怪獣使いと少年を思い出させる。
集団の怖さという点で本話と共通するだろう。

本話はタロウ中期特有の怪獣に妙に肩入れする話。
ただキングゼミラは被害者というほどの存在でもなく、普通の怪獣のように地中から現れて団地を破壊しているだけなのでキングゼミラを贔屓する理由に乏しい。
この辺りは本話の問題点であろう。
すなわち、これでキングゼミラに同情するなら今まで出てきた地球怪獣のほとんどが同情すべき存在ということになる。
結局本話でキングゼミラが保護される理由は見た目が蝉だから。
この辺り掘り下げが甘いとしか言いようがないだろう。

キングゼミラは最後宇宙に送られそこに居場所を発見する。
この展開は初代ウルトラマンのガバドン以来定番である。
ただ、キングゼミラの場合ほぼ正一個人の願望を叶えている点、異色であろう。
これは少数派の意見も大事にしようというメッセージかもしれないが、正直それも成功してるとは思えない。
結局少数派の意見を尊重しようとすると、宇宙に持っていくというありえない手段を取らざるをえないのである。
これでは問題の根本的な解決にならない。
怪獣と人間の共存。
人間界に置き換えるとイデオロギーの対立や利害の対立ということになるであろうが、それを実際に行うことの困難さ。
ファンタジーな結末の中にもその難しさを痛感する。


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