データ 脚本は田口成光。 監督は深沢清澄。 ストーリー 九州宮崎へ旅行に行く光太郎、健一、さおり。 その船上、3人は林田タケシという生意気な少年に出会う。 タケシは船に密航しており、母の命日を忘れて温泉掘りをしているという父親に会いに行くという。 タケシの父親は温泉掘りの名人で、温泉を掘り当ててホテルを建てようとする地主に依頼されて宮崎で温泉を掘っていた。 しかしその土地は見込みが薄く、前払いで貰ったお金を使ってしまったから仕方なく温泉を掘っているという。 温泉掘りの最中、地震に巻き込まれるタケシの父親。 仲間の中山に温泉を掘るのをやめようと言われるタケシの父。 タケシの父は大きな陥没があると地主に説得するが、地主は既にお金を払っていることから何としても湯を出すようにとタケシの父に言う。 意地でも湯を出してやるとタケシの父。 一方光太郎たちは、偶然目的地が同じことからタケシを父の所に送るため車を走らせていた。 その途上地震が起き、道路が陥没する。 その頃タケシの父たちは蒸気が噴き出してきたことから、温泉が出そうだと気合が入っていた。 と、その時大きな揺れとともに怪獣が地面の割れ目に姿を現す。 滑落し怪獣に食われるタケシの父。 そこへやってきた光太郎たちは、中山からタケシの父が怪獣に食われたと話を聞く。 それを聞いた4人はタケシの父を捜索。 しかしヘルメットが見つかっただけで、父は見つからなかった。 そこへ地主が現れる。 怪獣が出たということを信じない地主。 怪獣がいたかどうかはわからないと光太郎。 それを聞いたタケシは何処かへ走り去ってしまう。 タケシは中山の詰所に泊まっていた。 「父さんの仇は俺が取ってやるからな」とタケシ。 タケシが詰所を出たところへ光太郎たちがやって来た。 光太郎は中山に怪獣探しの協力をするよう頼む。 光太郎の依頼でZATも応援にやってきた。 そこへやって来た地主は、怪獣なんかいないとZATを追い帰そうとする。 光太郎は掘削現場でタケシを見つけるが、同時に地震が起き蒸気が噴出。 湯が出たと喜ぶ地主。 しかしそこに怪獣が現れた。 「温泉は出た〜、怪獣も出た〜。怪獣は引っ込め〜」。 怪獣に向かって喚く地主。 それを見た光太郎は地主を避難させるが、その隙にタケシが怪獣へ向かって行った。 石を投げるタケシに黄色いガスを吐く怪獣。 タケシは「ZATが攻撃したら父さんまで死んでしまう」と自分で戦おうとする。 「必ず胃袋を取り出して父さんを助けてやる」と光太郎。 光太郎は棒高跳びで怪獣の鼻に飛び乗った。 鼻に飛び乗った光太郎を避けて攻撃するZAT。 しかし光太郎はとうとう投げ出され、タロウに変身する。 ストリウム光線を放つタロウ。 しかし怪獣は宙に浮き、それを交わす。 「胃袋に父さんがいるんだぞ」とタケシ。 黄色いガスを浴び苦戦するタロウ。 タロウはガスをバリアーで撥ね返すと怪獣の口に手を突っ込み胃袋を引っこ抜いた。 胃袋を逆さにして内容物を出すタロウ。 するとタケシの父も中から投げ出される。 怪獣を宇宙まで投げ飛ばすタロウ。 再会を喜ぶタケシと父。 皆の無事を喜びあう隊員たち。 解説(建前) ボルケラーの吐くガスはどういう成分で出来ているか。 タロウに当たったときだけ爆発したことから問題となる。 一見すると単なる硫黄ガスのようにも見えるが、硫黄ガスは爆発しないので、やはり別の発火性の高いガスと考えるのが妥当であろう。 すなわち、人間に当たった場合は特に発火源となるものはないので爆発しないが、タロウは全身からエネルギーを放散しており爆発した。 若しくはストリウム光線の熱エネルギーが宙に残存しておりそれに着火したのであろう。 タケシの父はなぜボルケラーの胃の中で12時間も無事だったのか。 これはボルケラーの胃が消化活動をほとんどしていなかったと考えるのが素直である。 すなわち、ボルケラーはどうやら半冬眠状態にあったようなので、胃の活動もほとんど停止していた。 中が岩だらけだったのも、積極的に食べ物を探していなかったからであろう。 おそらくタケシの父も食べられたというよりは、ボルケラーの胃の中に転落したというのが実態でなかろうか。 感想(本音) ストーリーとしては特に目新しさもない地味な話。 ただ脚本的に破綻はなく、ロケものとしてしっかり纏まっている。 温泉を掘るというのはちょっと子どもにはわかりにくいが、蒸気が噴き出す描写や地震の描写など特撮班もしっかり仕事をしていた。 ちょっとボルケラーがかわいそうな気もしたが、それはウルトラのお約束なので仕方あるまい。 少なくとも、次話のシェルターよりはマシであろう。 怪獣ひとり旅というタイトルはタケシのことを言っているというのは最近気がついた。 一応一人で密航していたので一人旅とはいえるが、途中からは光太郎たちと一緒に旅していたことからちょっとわかりにくい。 おまけにタケシが怪獣なのも、最初自ら怪獣「ブルゴン」と名乗ったことによるので、これもちょっとわかりにくいだろう。 しかし密航というのも凄い話だ。 船に乗るくらいのお金、家になかったのだろうか。 まあ、田口脚本お馴染の片親の設定だが、このタケシという少年は異常に逞しいところが他のトラウマ背負ってる少年と違うところか。 今回は宮崎ロケということで、所謂タイアップ物である。 タイアップ物はこういう連続ドラマではお馴染みであるが、ただ西武警察などとは違いそれは全面には表れてなかった。 次話ではホテルなどが登場するので、今回はそれほど気を使わなくて良かったのであろうか。 せいぜい船くらいであろうが、密航されてるようじゃ宣伝になるのか正直疑問である。 今回は健一の学校は休みとのことであるが、時期的にどうなんだろう。 撮影はあるいはGWくらいに行われたのかもしれないが、放送時はまだ夏休みではなかったはず。 これはやはり光太郎とさおりの2人で旅行ではまずいという計らいもあるだろう。 逆に光太郎だけだと2人の出番がなくなってしまうので、こういう形にしたのだと思われる。 地主はちょっと嫌なキャラだったので、ボルケラーに踏まれないか少し心配した。 しかし温泉を掘ってホテルを建てるとか、かなり生々しい。 当時はこういうリゾート開発がブームだったのであろうか。 しかしパッと見、やはりボルケラーが被害者のようにも見える。 すなわち、タケシの父が温泉を掘らなかったらボルケラーは目を覚まさなかったと。 とは言えいつかは地上に姿を現すだろうので、ボルケラーを退治したこと自体は問題なかろう。 ホテルが出来てから出現することを考えると、致し方あるまい。 今回光太郎はボルケラーの鼻に飛び乗るなど相変わらず無茶をしていた。 しかしZATに攻撃を要求したら、胃の中のタケシの父を助けるという約束と矛盾するぞ。 まあこの辺りは完全にギャグなので、あまり真面目に考えてはいけないだろう。 変身ももろバレだろうし。 あと、さり気に今回も森山君がホエールで攻撃してました。 相変わらず腕はいいです。 ボルケラーは何気にストリウム光線を避けたりと結構手強かった。 ただ最後はやはり気の毒。 というか、胃を引っこ抜かれて転げまわる描写はやはり見ていて気持ちのいいものではない。 何となく、ハヌマーンの映画に通じるセンスを感じてしまった。 時代だから仕方ないとは言え、コミカル描写はちょっと誤魔化しかなとも思う。 本話は前述のように、特に引っかかりのないエピソードである。 怪獣にもあまり個性はなく、決して完成度の高い話ではないであろう。 ただ長いシリーズ、こういう繋ぎというか予算節約の話も必要である。 そういう意味では、本話は十分役割を果たした。 少年のキャラも立っていたし、無難に見れるエピソードである。 |