データ 脚本は上原正三。 監督は本多猪四郎。 ストーリー 坂田家は地獄谷へハイキングに来ていた。 郷は岩壁に怪獣の爪痕らしきものを発見し、怪獣の声らしきものも耳にする。 しかし辺りに何も異常はない。 郷は次郎に言われるままアキと写真を撮るが、その時もまた怪獣の声を耳にした。 数日後、坂田家では次郎が友達を集めて怪獣のジオラマ写真を撮影していた。 そこに来るアキ。 アキは次郎に撮ってもらった写真に怪獣が写ってると次郎に文句を言う。 しかし次郎に心当たりはない。 「これ本物の怪獣だよ。信じてくれよ」。 「お前がいたずらしたのじゃないのか」。 次郎の言うことを信じた坂田はMATに調査を依頼する。 現地を調査したMATはトリックじゃないかと次郎の言うことを信じない。 坂田はスケッチに描いたはずの岩が写真に写っていないと疑問を提起する。 しかし岸田は 「この通りのスケッチだとすると大怪獣だ。郷、お前こんなでかい奴に気付かなかったのか」と返って否定的に捉える。 「この爪痕が気になって」と郷。 結局MATの調査では何の異常も発見されなかった。 しかし郷は 「子供用のカメラは固定焦点レンズです。ピントは無限大。つまり50メートル先の怪獣が写っても不思議はないです」と言う。 「お前俺たちMATより子供を信じるのか」。 MATは調査を打ち切るが、隊長は郷に1人調査を継続させる。 谷を歩く郷はただならぬ気配を感じる。 「何かとんでもないものが潜んでいる」。 夜になって郷はキャンプファイヤーに歌い踊る若者たちの集団に遭遇する。 危険を察知した郷は「怪獣だ。早く逃げろ」と若者たちに言うが聞いてもらえない。 その時怪獣の鳴き声が響き、怪獣の目だけ姿を現した。 怪獣は火を吐き若者たちのテントは燃え上がる。 翌日再び地獄谷に来たMATは郷の報告から怪獣は特殊な皮膚組織で人間の目を誤魔化していると分析。 上野は「俺、次郎君に悪いこと言っちゃったな」と反省する。 その時再び怪獣が現れた。 攻撃するMAT。 しかし怪獣は周りの景色に溶け込み姿を消した。 MAT基地では早速怪獣の対策が検討された。 「奴は保護色というか隠蔽色というか、周囲の色に自分の皮膚の色を合わせてしまう。そのため岩に見えたり目だけしか見えなかった」と隊長。 「夜は物凄く凶暴ながら、昼間は攻撃されても逃げて行きました。夜行性ですね」と郷。 MATは怪獣をカラー塗料で着色するレインボー作戦を立案し、現地に戻った。 郷の判断で怪獣が隠れていると判断したMATは怪獣を攻撃。 そして空から着色料を吹きかけた。 塗料で着色された怪獣はどの色にも変われなくなる。 とどめを刺そうと近づく上野。 しかし夜行性のはずの怪獣が思わぬ暴れ方をしたため、MATは退却を余儀なくされた。 翌日再び現地を調査するMAT。 しかし怪獣は見つからない。 「もう一度下流を調査しよう」。 その時怪獣が地底から姿を現した。 「奴は色で誤魔化せなくなったので地面に潜っていたんだ」と南。 道を塞がれ追い詰められるMAT。 何とか攻撃して突破しようとするが、上手く行かない。 その時空から調査していた郷のアローが怪獣を発見した。 仲間を助けるため攻撃する郷。 しかし怪獣の攻撃を受けアローは墜落してしまう。 墜落した郷は岩に挟まれて動けなくなる。 その時郷の目が光った。 光の中からウルトラマン登場。 ウルトラマンはゴルバゴスの火球を腕をクロスして防ぎ、最後はスペシウム光線でとどめを刺した。 「おーい」。 仲間たちの下に向かう郷。 「みんな、無事でしたか」。 「全く不死身な奴だ」。 「おかげで助かったよ。ありがとう」と岸田。 その時空の彼方に虹が。 「奴が昇天するのかな」。 笑いあう隊員たちであった。 解説(建前) 何故怪獣は写真に写っていたのか。 科学的なことはよくわからないが、光の屈折か反射か何かだろう。 心霊写真と同じ原理ではないか。 人間の目は誤魔化せてもカメラは誤魔化せないということだろう。 しかし何故郷は怪獣に気付かなかったのか。 これはいつもと違い、ハイキングのリラックスしたムードで郷の特殊能力がフルに発揮されなかったのが原因だろう。 郷とて神経を研ぎ澄ましていなければ、その感覚も鈍るということか。 最後、郷はアローで墜落したにもかかわらず無事だった。 これは墜落直前に脱出したと考えるのが妥当であろう。 普通あれだけ炎上しては命は助からない。 パラシュートが開くには高度が足りず、岩に挟まれる形になったと思われる。 ただし普通の人間ではおそらく助からない。 ウルトラマンになった郷の超人的な反射神経及び身体能力であの程度で済んだものと思われる。 感想(本音) 無難な話。 怪獣の生態とそれに対するMATの作戦を中心に話は進んでいく。 ただし事件の発端は坂田家のハイキングから始まっており、お馴染み郷と隊員の対立も盛り込まれている。 また本多演出も冴えており、見ていて飽きさせない。 大作の後の繋ぎとしては十分見ごたえある出来であろう。 坂田家がハイキングに来てたのは地獄谷。 とても行楽地とは思えない名前である。 しかしMATは最初ちゃんと調査したのだろうか。 付近を探せば同じ爪痕くらい出てきそうなものだが。 やはり子供のいたずらという偏見があったに違いない。 ただし郷すら見ていないというものを信じろという方が無理かもしれないが。 今回アキと次郎の兄弟喧嘩が微笑ましく描写されている。 それに絡む坂田もよい。 本多監督はこういう家族の仲睦まじい描写に長けている。 子供向けを意識しているのだろうが、本多監督の作品は何処となく温かみがあって他の監督とはまた違った魅力がある。 大全には5,6話の大作こそ本多監督にという意見もあったが、ああいうシビアな対立劇よりもこういう人情味のある話の方が本多監督には向いてると思うので、これはこれで正解だったと思う。 アキの脚越しの次郎のショットもサービスショットとしてなかなか良かった。 今回は本多監督の演出もあって、アキがかなりかわいい。 冒頭の天狗の話や写真について次郎に文句を言うシーン等。 実はアキは怒った顔が1番かわいいのではないかと思う。 一方次郎はちょっと生意気な弟という役どころで当時の子供を代表している感じ。 現代っ子という言葉があったのかわからないが、やまびこの原理を説明するシーンは如何にもそういう感じだった。 ところであの怪獣人形でジオラマを撮影するのも当時の流行だったのか? 今回上野は次郎のことを信じようとせず、トリックだと決め付けている。 上野は第3話もそうだったが、自分の判断に自信を持ち過ぎてやや短絡的なところがある。 正直上野はMATの中ではあまり目立っていない。 彼はどういう特技があるのだろうか。 占星術ということはなかろうので、もう少しその辺りを描いて欲しかった。 人柄だけではMATの隊員は務まりません。 一方岸田は冷静に科学的に分析している。 さすがに郷との溝は埋まったのか、第3話のように決め付けることはしなかった。 そして怪獣を倒した最後に非常に重要なシーンが。 岸田は素直に郷に助けてもらったお礼を言い皆と和やかに談笑している。 これは以前ならありえなかったことではないか。 もちろん助けてもらえばお礼くらい言うだろうが、こういう和やかなものではなかったはずだ。 やはり前回のエピソードで岸田が人間的に成長したものと思われる。 以後郷と岸田の対立はほとんどなくなり、帰りマン前半の主要なテーマの1つは完結を見たものと思われる。 加藤隊長の「見えない怪獣の謎は解けた」というセリフはやや唐突。 わかりやすく演出したのだろうが、ちょっと子供っぽくなってた気がする。 いきなり結論からでよかったのではないか。 もしかすると前にもう少し検討するセリフがあって、カットされたのかも知れない。 郷はアローごと墜落しても無事だった。 ちょっと凄すぎるぞ。 しかし目が光って変身するシーンはかっこよかった。 本多監督は変身シーンの演出にはかなりこだわってるようだ。 クルクル回って「ババン」という演出はこの頃はまだ見られない。 「全く不死身な奴だ」。 けだしその通り。 今回はMAT内での対立がほぼ解決された後の話なので全体的に穏やかなムードで話は進む。 一応対立はあるものの、仕事に関する対立で感情的なわだかまりではなく険悪なものではない。 その点ドラマ的な緊迫感は薄くなっている。 しかし上原氏は怪獣の生態を軸に各キャラを上手く回しており、作品的に破綻は少ない。 MAT内での対立という主要なテーマを消化しても話はいくらでも作れるのであり、長いタームで見ればこういう落ち着いた話も必要である。 次のステップに移る過渡期としてよく出来たいい話である。 |