データ 脚本は伊上勝。 監督は松林宗恵。 ストーリー ある夜倉笠山脈に隕石が落下した。 翌日調査へ向かうMAT。 あくびをする南。 デートも程々にした方がいいと岸田。 隕石の落下地点を空中撮影するため降下する岸田のジャイロ。 しかし岸田のジャイロは怪光線を浴び冷凍されてしまった。 本部に連絡を入れる南。 しかし引き返すよう指示を受けた南のアローも冷凍されてしまう。 上野、丘両名に連絡する伊吹。 しかし2人は応答せず、自ら出撃した伊吹も星人に捕らわれてしまう。 「用意したカプセルは6つ。残った1つのカプセルもまもなく収容する。私が一番必要なMAT隊員郷秀樹は…」と謎の声。 その頃郷は次郎、ルミ子と箱根に来ていた。 楽しそうな家族を見て寂しそうな次郎。 心配する郷に対し、郷が兄代わり、ルミ子が姉代わりと次郎は言う。 郷は車に一人待たされている子どもを心配そうに眺める。 すると車が勝手に動き出した。 郷は轢かれそうになる次郎を間一髪助け、坂を下る車を追いかけるもなかなか追いつけない。 そこへ一人の男が走り寄り、車のドアを開けブレーキを踏んで車を制止した。 父親が例を言うと無言で立ち去る男。 しかし郷はその男がミステラー星人であることを見抜き、テレパシーで話しかける。 「お前が生まれた星は銀河系で最も戦い好きなミステラー星だ。そのミステラー星人がどうして地球人を助けた」。 「私は地球が好きだ。したがってこの地球に生息している人間もまた好ましい。助けたのは当然だ」と星人。 「その言葉を信じよう。地球人に代わってありがとうと言わせてもらう」と郷。 自分は湖の底に住んでおり、もう会うことはないだろうと星人。 車を動かしたのはミステラー戦闘隊の隊長で、郷をおびき出すつもりが、亡命中の戦闘隊のエースを発見したという。 エースに隊へ戻るよう説得に来る隊長。 ミステラー憲章により脱走者は死刑だという隊長。 それに対しエースは、「ミステラー星とアテリア星との戦争は30年に及び泥沼の状態だ。そんな中隊長がわざわざ地球に来たのは何故か」と尋ねる。 優れた地球人をミステラー星に運び、宇宙戦士として戦わせると隊長。 隊長はエースが亡命した理由が自分の娘を守るためであることを知っていた。 そして娘が清泉武蔵野学院に通っていることも知っていた。 その頃箱根をドライブしていた郷は本部に定時連絡を取る。 しかし「隕石調査で事故発生」という伊吹の伝言が残されていただけであった。 偶然清泉武蔵野学院を通りかかった郷は、丘と上野がエースの娘輝美を連れ出すのを目撃する。 不審に思った郷は何かあったのかと尋ねるが、2人は答えない。 それどころか、「邪魔する奴は殺す」と上野。 上野に腹を殴られた郷は、誰かに操られているのだと悟り上野を殴って気絶させた。 更に車で輝美を連れ出す丘を追跡し、輝美を助け出す。 一方エースは娘を人質にしたと言う隊長により、ウルトラマンを捕虜にし戦闘員として戦争に連れて来るよう指令を受けていた。 次郎とルミ子を残し基地へ帰る郷。 しかし2人はエースに捕えられてしまった。 基地に帰った郷の下へエースから連絡が入る。 ある事情のために君を捕えなければならないとエース。 俺が行かなかったらどうなると郷。 2人は永久に眠り続けることになるとエース。 指示通り芦ノ湖へ来た郷。 そこへ姿を現すエース。 「約束は守った。2人を返してもらおう」と郷。 「まだだ。MAT隊員郷秀樹ではなく俺にはウルトラマンとしての君が必要なのだ」。 「やはりミステラー星人は好戦的な宇宙人であった。あの時倒しておくべきだった」と郷。 娘を守るためにウルトラマンと戦うというエース。 戦うだけの目的ではウルトラマンになれないと郷。 「地球人は好きだ、だが私の娘には代えられない」とエース。 戦おうとする二人の下へ駆けつける輝美。 輝美は郷に助けられ、2人に優しくしてもらったと告げる。 真実を知り、2人を助けるエース。 そこへ現れる隊長。 「今こそ俺が君たちを守る」と、巨大化して隊長と戦うエース。 しかし隊長に投げ飛ばされ新兵器MTファイヤーを浴びてしまう。 MTファイヤーで止めを刺すと隊長。 その時郷はウルトラマンに変身した。 ウルトラマンはブレスレットで星人の口を切り落とす。 しかしそこへ星人に操られたMATが攻撃してきた。 ミサイルを浴び倒れるウルトラマン。 何とかスペシウム光線を星人に浴びせると、星人は湖の中から宇宙船で脱出を図る。 それを正気に戻ったMATが攻撃。 星人の宇宙船はMATの手により破壊された。 「二度とミステラー星人は来ないでしょう、地球を愛する宇宙人として平和に暮らしなさい」と郷。 湖の中に姿を消すエースと輝美。 無事助かった次郎とルミ子が郷の下へ駆けつける。 解説(建前) 宇宙戦士としてMATは通用するのか。 考えるに、おそらくミステラー星人及びアテリア星人は宇宙空間では生身で戦えないのであろう。 それはミステラー星人が円盤で逃げ出そうとしたことからも窺われる。 したがって、宇宙空間での戦闘兵としてMATは十分役立つのではないか。 もちろん宇宙空間をそのままで飛行出来るウルトラマンが最強なのは言うまでもあるまい。 隊長は輝美が清泉武蔵野学院に通っているのを何故知っていたか。 以前から知っていたとしたら、エースの所在を知らないのはおかしいのでエースを発見してから調べたものと思われる。 そして、MATの2人を使い輝美を拉致しようとしたのであろう。 感想(本音) 大全に言う所の抜け忍もののストーリー。 娘を人質にされた忍者が主人公を狙うと考えれば、水戸黄門などの時代劇でもお馴染である。 ドラマ的な深みには欠けるものの、伊上氏お得意の活劇ものでエンターテインメント性の高い話。 大人になってから見ても、十分楽しめる好エピソードとなっている。 初っ端の岸田と南の会話。 南の寝不足=彼女とちょっとアダルトな会話だが、初期の雰囲気に比べ非常にリラックスした隊員たちの様子がわかる。 ただその後あっという間に捕虜になるのはいただけない。 MATという組織の敷居が低くなるほど、その実力が低下するのは寂しい限りだ。 氷付けの隊員たちがウルトラマンに向かって攻撃するのも情けない。 しかもウルトラマンに対してだけは普段より強く見えるのも何ともいえないところだ。 しかしMATはナックル編で郷を射殺しようとしたり、怪獣の処理に失敗して巨大化させるわ、村人に対してミサイルを乱射するわで、怪獣を退治するより被害を与える方が多いような気がする。 挙句の果てには隊員が怪獣化。 比較的好きな組織ではあるが、存在意義という面からは「ウ〜ン」となってしまう。 今回は妙な振りつきで指示を出す隊長が個人的にはツボ。 妙なと言ってしまったが、如何にも軍隊という感じの動きや喋りはなかなかかっこいいと思う。 ただ変身体はやはりただのタコ。 火星人をモチーフにしたのだろうが(て、火星人そのものがタコをモチーフにしてるのだが)もう少しカッコよく出来なかったのであろうか。 ただその形体は今後もヒッポリトやテンペラーに受け継がれていき、その点プロトタイプとして重要ではある。 輝美はエースの娘だということだが、ミステラー星人にもちゃんと男女の別はあるようだ。 してみると、女性も皆好戦的なのだろうか。 それとも兵士の妻の悲哀があるのだろうか。 輝美だけからはわからないが、好戦的とは言え中にはエースのように平和を願うものもいるので様々なのだろう。 ただ郷にあそこまで言われるからにはやはり悪名は相当高いようだ。 今回郷は完全に自分をウルトラマンと名乗っている。 これは郷が人間的に成長し、ウルトラマンとの一体化が進んだためだろう。 言わば初代マンとハヤタとの関係に近くなっていると思う。 ただ戦うためだけにウルトラマンに変身できないといってることから、まだ完全に一致したわけではなさそうだ。 「次郎とルミ子を助けるためだから固いこと言わんなさあ」とも思うが、その辺りは2話から見られるウルトラマンの信念だと思われる。 今回、次郎はルミ子を姉、郷を兄として認める発言をしている。 一応健やアキの死を乗り越えたということだろう。 しかし次郎には親戚はいないのだろうか。 郷が去ってしまうと天涯孤独の身にならないか少し心配である。 一方ルミ子の方も次郎を弟みたいに思ってるようである。 ただし、これは郷の弟=ルミ子の弟という発想が何処かにあるのかもしれない。 その辺りは最終回にまた述べよう。 今回のエピソードは久々の伊上脚本ということで、娯楽性が高い。 しかし星間戦争などベトナム戦争を思わせる設定は当時の世相を反映している。 また郷と次郎、ルミ子の関係を言わばミステラー星人親子に重ねて描いてる点も興味深い。 かように娯楽のみに偏っていないところがこのエピソードの優れている所以か。 また本作で見逃してはならないのはウルトラの世界を宇宙規模に広げたという点だろう。 他の脚本家ではどうしても宇宙人襲来の目的が地球侵略に偏りがちであった。 しかし宇宙戦士としてMATを連れ出すという発想により、ウルトラ世界を宇宙規模に捉え直すことに成功した。 その後世への影響は、メビウスにおいてもアテリアでの戦争について語られているように小さくないだろう。 宇宙には戦争があるという事実。 最終回に繋がる見事な伏線ともなっている本エピソードである。 |