郷秀樹を暗殺せよ!


データ

脚本は斉藤正夫。
監督は鍛冶昇。

ストーリー

火を吐き暴れるロホネズ。
空から攻撃するアロー。
そこへウルトラマンが登場した。
ロボネズに腕を噛み付かれ苦戦するウルトラマン。
MATの援護で危機を脱するも、今度は巨大な尻尾に巻きつかれてしまう。
何とか振りほどき、ブレスレットを投げつけるウルトラマン。
ロボネズは炎に包まれ白骨化する。
「憎らしいウルトラマン」。
それを見ていた1人の少女がつぶやく。
その頭には怪しく点滅するヘアバンドが。
翌日、少女は空港に現れる。
持っていたボールペンをこっそり女性客のバッグにしのばせる少女。
その頃、郷はロボネズに噛まれた腕の傷が悪化し、医者に診てもらっていた。
症状が鼠口症に似ていると医者。
一方、飛行機ではボールペンに仕掛けられた小型の時限爆弾が爆発。
飛行機墜落の連絡を受けた隊員たちは深刻な顔をするが、郷の無事を知って安心する。
実はその飛行機はスキーへ行く郷が乗る予定のものであった。
驚く郷。
その頃次郎のクラスでは一人の転入生が紹介されていた。
その娘は白鳥エリカといい、次郎の隣の席に座ることになる。
放課後ソフトボールを楽しむ次郎たち。
次郎はそれを見ていたエリカに一緒にやらないかと勧誘する。
「私ピッチャーじゃないと嫌よ」とエリカ。
ピッチャーを任されたエリカは見事なピッチングを披露する。
試合後お礼にと万年筆を貰う次郎。
家に帰った次郎はそれを嬉しそうに郷に見せる。
それを受け取った郷は顔色を変え、万年筆を窓から外に投げ出した。
「郷さんの馬鹿」と怒る次郎。
しかし数秒後、万年筆は外で大爆発した。
怯える次郎。
MATでは次郎が万年筆について証言していた。
万年筆は白鳥エリカから貰ったもので、エリカは郷のことを次郎から聞きたがっていたという。
次郎の話と状況から、郷を狙ったものと判断するMAT。
そこへ丘隊員からエリカの居場所が判明したと連絡が入る。
私服に着替えた郷と岸田は、一緒に連れて行って欲しいという次郎とともに現場へ急行する。
次郎は、エリカはバンドの宝石が光ると急に暴れだしたと証言する。
埠頭の倉庫に向かうエリカをつける3人。
するとエリカは倉庫の階上から箱を郷たち目掛けて落下させる。
逃げるエリカを追う3人。
エリカは指輪から怪光線を発した。
エリカのヘアバンドを銃で撃つ郷。
するとエリカは正気に戻った。
エリカは記憶を失っていたようだった。
基地に帰ったエリカを催眠機にかけ話を聞きだす。
エリカは白鳥座61番星出身で、メシエ星雲人に捕まり利用されていたという。
飛行機を爆破したのも、ねずみ怪獣を暴れさせたのも星雲人によるという。
晴海付近の倉庫に星雲人を捜しに向かうMAT。
一方エリカは再び頭にバンドが出現し、医師を襲って脱走した。
晴海埠頭で郷は、メディカルセンターの浜村に呼び出される。
鼠口症によく効く薬を注射すると浜村。
不審に思った郷は「よく似合いますね。その帽子」と医師に話しかける。
「白鳥君、君もだ」。
エリカの帽子を剥ぎ取る郷。
するとエリカの頭には例のバンドが巻かれていた。
しかし郷は浜村に麻酔を打たれ、意識もうろうとなる。
正体を現す星雲人。
「郷秀樹、お前の最期だ」と星雲人。
巨大化した星雲人に攻撃を仕掛けるアロー。
星雲人の光線により炎上したアローを海中に潜り消火する上野。
星雲人は浜村医師とエリカを人質に取り、アローは迂闊に攻撃できなくなってしまう。
撃墜されるアロー。
一方倉庫で下敷きになっていた郷はウルトラマンに変身した。
人質の二人を救出するウルトラマン。
星雲人の怪光線に苦戦するウルトラマン。
星雲人はウルトラマンの痛めた腕を攻撃する。
目から光線を出すウルトラマン。
最後はブレスレットを投げると星雲人は煙となって消えてしまった。
二人のヘアバンドがはずれた。
郷の安否を心配する上野。
しかし「奴は不死身だよ」と伊吹。
そこへ郷が帰って来た。
それから数日後。
郷の下にエリカから葉書が来た。
「私は今度別の学校に転校することになりました。皆さんの親切は一生忘れません」。
「白鳥君やっぱり宇宙人だったのかな」と次郎。
「みんなほら。虹だ」と郷。
エリカの声がこだまする。
「さようなら〜」。

解説(建前)

メシエ星雲人は何故最初、ロボネズにウルトラマンと戦わせたのか。
郷秀樹暗殺計画との整合性が取れないように見えるため、問題となる。
これは難しいが、メシエ星雲人としてはロボネズでウルトラマンを倒せたらそれでいいと考えていたのであろう。
しかし予想以上にウルトラマンが強かったため、予備の作戦であった郷秀樹暗殺に計画を切り替えた。
結果的にロボネズが与えた怪我により郷が助かったのは、星雲人にとっては大きな誤算であったと思われる。

エリカは何処へ行ったのか。
葉書が来たことから、まだ地球、しかも日本にいる可能性が高い。
いずれ、出身星に帰ることが出来るかもしれないが、現状MATにそれは出来ないので、とりあえず他所の学校で面倒を見てもらうことにしたのだろう。
エリカのことを知っている次郎と一緒の学校にいるのはまずいので、転校はやむを得ない。
エリカは見た目も完全に人間と同じなので、あるいは種族としては人間に近いのかもしれない。

感想(本音)

いきなりの戦闘シーンに驚かされるが、ロボネズの倒され方といい、この出だしは印象に残っている。
ただその後の展開はやや強引であり、少々物足りなさが残る。
白鳥エリカがいいキャラだっただけにその辺りはやや残念だが、その着眼点は良く、今でもこういう話は受けるのではないかと思う。

まず気になったのは、暗殺計画とロボネズとの関係。
結果的にロボネズの与えた傷のため郷が助かるのだから、自作自演ではないが星雲人の一人相撲の感が強い。
これならむしろロボネズは関係ないただの鼠怪獣で、偶然郷が怪我をしたため助かったとした方が良かったのではないか。
何でもかんでも星雲人のせいにすると、返って無理が出てくるように思う。

暗殺計画についてはもう1点気になったのが、星雲人が郷に止めを刺さなかった点。
そもそも郷を殺した場合、ウルトラマンの命がどうなるかよくわからないのだが、命を共有している以上死ぬのが当然なのだろうか。
にしては死にかけるとウルトラマンに変身するので、結局不死身なのではないかとも思う。
いずれにせよ、麻酔を打って放置では郷秀樹及びウルトラマンを殺すことは出来ない。
特撮ヒーロー物に厳密な作戦を要求するのは野暮かもしれないが、大人になって見ると疑問の多い作戦であり、不満の残るところである。

とまあ、ストーリーに不満は残るが、エピソード全体の雰囲気は白鳥エリカがかわいらしいことも含めて悪くないと思う。
転校生で白鳥というと三井のリハウスを思い出してしまうが、案外この話が元ネタだったりするかも。
どう考えても違和感たっぷりのヘアバンドを皆がスルーするのも不自然だが、当時のお嬢様はああいう髪飾りをつけていたものなのだろうか(?)。
そういえば、竜崎麗華ことお蝶夫人も凄いヘアスタイルしてたっけ。
それは置いといて、今後も子どもにヒーローを狙わせるのは2期シリーズでは常套となっていく。

ところで、今回郷は誰とスキーに行く予定だったのだろうか。
次郎はまだ学校があるし、ルミ子と2人というのも不自然。
これはアキとした蔵王にスキーに行くという約束を一人で実行するためだったのではないか。
偶々休暇が取れたので、健とアキの慰霊のためにスキーに行くつもりだったのではないかと考えられる。

今回もロボネズ、メシエ星雲人いずれも死に方が凝っている。
ロボネズが白骨化するのはかなり手が込んでるし、星雲人も煙になって消滅し、普通に爆発はしなかった。
まあ星雲人何者やねんという疑問は残るが、これも真野田氏の拘りであろう。
同様に、炎上するアローを海中に潜らせて消化するというのもなかなか斬新である。
ただし、実際にそんなことが可能なのか疑問が残るが。

今回の話は突っ込みどころも多く、所謂ぬるい話となっている。
しかし子ども向けヒーロー物である以上、それは仕方ないだろう。
ただしエピソード全体は前述したように、比較的爽やかなものとなっている。
それはエリカを中心に小学生同士の心の交流を締めに持ってきたのが大きいのではないか。
風の又三郎ではないが、不思議な転校生物は児童文学においてはやはり定番。
「郷秀樹を暗殺せよ」という殺伐としたタイトルの割りに見ていて 後味がいいのは、その辺りに原因があると思う。


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