星空に愛をこめて


データ

脚本は田口成光。
監督は筧正典。

ストーリー

ある星の綺麗な夜。
パトロール中の郷と岸田は完成間近の超遠距離レーダーの話をしていた。
超遠距離レーダーは岸田が発明したもので、従来の3倍の性能を誇るという。
パトロール中の郷は女の悲鳴を聞き、車を止める。
炎上する車に女性が閉じ込められているのを発見した2人はドアを焼き切り女性を救出。
その女性は「グラナダス」と声を上げた。
怪獣のうめき声を聞いた郷は、燐光に向かって攻撃する。
手ごたえを感じる郷。
事件のことを基地で報告した郷だが、隊長たちはただの燐光ではないかという。
一方岸田はその日2回目の女性のお見舞いに行っていた。
再調査を願いでる郷。
しかし上野と現場に行った郷は特に異常を発見できなかった。
郷は車が上から潰れている点を指摘するが、一回転しても同じ潰れ方をすると反論される。
基地に帰った郷は岸田に事件のことを聞くが、岸田は取り合わない。
それどころか自分は近々結婚する予定だと郷に告げる。
郷は例の女性のことを尋ねるが、岸田によると女性は絶対安静で口もきけないそうだ。
ある日病院へ見舞いに行った岸田はそれを次郎とルミ子に目撃される。
それを聞いた郷はその女性は絶対安静のはずだと訝しがる。
あかねを見舞った岸田は自分がレーダーを設計したと告げる。
するとあかねの様子がおかしくなった。
「帰ってください」とあかね。
一方レーダー基地付近に怪獣グラナダスが出現する。
「僕は行かなくてはならない。この次きっと」と岸田。
出て行く岸田に「もう来ないでください」と言うあかね。
しかしあかねは岸田を呼びとめ「これを私だと思って」とペンダントを渡す。
郷と一緒にレーダー基地に向かう岸田。
怪獣の声を聞いた郷は夕べの声だと述べる。
トライアングル作戦を空から仕掛けるMAT。
ビハイクルに乗り怪獣を地上から攻撃する郷と岸田。
アローは怪獣の目を狙って攻撃するが上手く行かない。
ビハイクルでは岸田が郷に運転を替わるように指示。
運転を替わった岸田は郷を置いて1人ビハイクルで突撃する。
ビハイクルは怪獣に激突し、岸田は重症を負った。
岸田を助け出した郷は、岸田からあかねにペンダントを返すように頼まれる。
あかねに会いに病院を訪れる郷。
郷はあかねを見てあかねが宇宙人であると見破る。
「あなたはあの怪獣を使ってレーダーを開発した岸田隊員もろともレーダーを破壊しようとしたんでしょ」と郷。
「違います。信じてください。私とグラナダスはレーダーを破壊するためにケンタウルス星から地球にやってきました。でもその時期を待っている間に私はこの優しい心を持った人間の星が好きになってしまったのです」。
「それであなたは自分の星を裏切ったためにグラナダスに殺されかかったんですか」。
「私の命を助けてくれた岸田さんがレーダーを開発した方だなんて。私はそのレーダーを壊そうとした悪い宇宙人です。もう岸田さんと会うことは許されません。いつかは本当のことを言わなければならない時が来るでしょう」。
「岸田さんはあなたを愛してます」と郷。
「私だって。つらいんです。もう自分の星にも帰れません。どこか誰も知らないところで一人でそっと愛します」とあかね。
「同じ宇宙人でもあなたは地球の平和を守るために活躍して人間に好かれている」とあかね。
「しかしあなたは岸田隊員の深い愛情を得た」。
「愛してはいけない人を愛してしまったのです」。
するとあかねが急に頭を押えて苦しみだした。
母星からあかねにレーダーを破壊するよう命令が送られたのだ。
「グラナダスに勝つ方法は私しか知りません」。
郷とともにレーダー基地へ向かうあかね。
レーダーを守るため地上から攻撃するMAT。
隊長は足を負傷している岸田を後方に残して突撃する。
岸田の下へビハイクルに乗った郷とあかねがやってくる。
「最後のお別れを言いに来たんです」とあかね。
バズーカで攻撃する郷。
郷はグラナダスの燐火を浴び、ウルトラマンに変身した。
グラナダスの火炎攻撃に苦戦するウルトラマン。
とうとうグラナダスの燐火を浴びピンチに陥ってしまった。
それを見たあかねは「岸田さんさようなら。ごめんなさい。私はMATのレーダーを壊すために来た宇宙人なの。私の体の中にはレーダーを破壊するだけの量の爆薬が仕掛けられてます。あなたのことをとっても愛してます。さようなら」と言い残して炎の方へ走り出した。
止めようとする岸田。
しかしあかねは巨大化し、グラナダスもろとも地面に出来た穴に落ちて爆死した。
あかねの墓標を祈る岸田。
「あなたは本当に素晴らしいことをしたんですよ。この地球で初めて宇宙人の心に触れることが出来たんです」と郷。
「せっかく地球人と友達になれたのに、かわいそうにね」と次郎。
「いつかきっと宇宙に住んでいる人たち全部がお友達になれる日が来るわ」とルミ子。
「地球人のために勇敢に戦った宇宙人に黙祷しよう」と伊吹。
「敬礼!」。

解説(建前)

あかねとグラナダスはどういう関係か。
グラナダスは母星を裏切ったあかねを抹殺しようとしたり、レーダーを自ら襲ったりと少なくともあかねの指示では動いていない。
これはおそらくグラナダスもあかね同様、本国からの指示により動いていることによるのであろう。
そしてあかねは連絡係兼、グラナダスがレーダーの爆破に失敗した時の保険として派遣されていた。
抹殺されそうになったのは、本国への連絡を怠ったことによるのではないか。
あかねの体に爆弾が詰め込まれていたことからも、敵は二段構えの作戦を練っていたようだ。

感想(本音)

個人的には今ひとつな話。
やはり大人目線からは脚本の粗というか、強引さがやや目立つ。
ただ「帰ってきたウルトラマン」も最終クールに入りマンネリ感も漂っていたので、この時期にこのストーリーを配した点は評価しても良いだろう。
ストーリーの粗も子どもが気になるレベルではないので、番組の特性上は問題ない。

まず気になったのは、あかねがグラナダスと一緒に自爆した点。
あかねは自分しかグラナダスの倒し方を知らないと言ったかと思うと、自分の体にはレーダーを破壊するための爆薬が詰まっていると言ったり、話にやや整合性を欠いている。
グラナダスが単に爆薬に弱いだけなのか、特殊な爆薬でグラナダスに効果があるのか。
ウルトラマンも結局スペシウム光線を使っておらず、あかねが自爆する必然性もやや乏しい。
この辺り、テーマが出すぎて話の辻褄あわせに失敗しているように感じられる。

今回は何と言っても西田氏演じる岸田のコミカルな芝居が心地よい。
そして初期の刺々しさとは違った、悲恋に悩む姿。
岸田は他の隊員に比べて圧倒的にキャラが立っているが、それはやはり演じる西田氏の魅力がそうさせるのではないか。
脚本家にとって色々演技の引き出しのある西田氏は、動かし甲斐があるのだろう。
一方あかねに関しては演技力が今ひとつ。
見た目は良いだけに、やや惜しまれるところである。

2人の恋愛はやや唐突な感がある。
まあ、時間の関係上やむをえないのだが、しかし、なぜあかねは岸田のことが好きになったのだろうか。
素直に考えると、やはり岸田が命の恩人であるからであろう。
これは人間同士の恋愛でもよくあるパターンなので、理由としては十分である。
ただルックス的にはケンタウルス星人と人間はかなり違うので、あくまで内面に惹かれたということだろうか。

それでは岸田はあかねの何処に惹かれたのだろうか。
岸田はあかねが宇宙人であることは知らなかったのであるから、やはり外見ということになるであろう。
もちろんあかねの持つ、影の部分に惹かれたというのもあるだろうが、それもあくまで人間同士の恋愛の範疇である。
してみると、人間と宇宙人の恋愛というテーマからは微妙なズレが生じるのではないか。
意地悪く見ると、これは単に異星人が地球人に惚れたというだけのストーリーにも解釈できる。

人間と宇宙人の恋愛というテーマは昔からあるが、それは大抵異星人が人間と同じ姿をしているパターンである。
とすると、結局文化や価値観が違うだけということになり、実は異国人同士の恋愛と大差ないことになってしまう。
それなら美女と野獣のように、人間と怪物という組み合わせの方がよっぽど異星人同士の恋愛に近いであろう。
まあ、あれは結局人間同士なのだが。
話を戻すと、岸田は巨大化したあかねをどう思ったのだろうか。
あの姿のまま等身大に戻ったとしても、あかねと結婚する意志に変わりはなかったのだろうか。
無理は承知だが、その辺りのストーリーも見てみたかった気がする。

異星人同士の恋愛というと、ウルトラシリーズではダンとアンヌが真っ先に思い浮かぶ。
あの二人の恋愛も、アンヌにとっては人間同士のものであった。
本当に異星人同士の愛が始まったとすると、それはダンが自分の正体を告白して以降ということになるであろう。
しかしダンは何故アンヌを好きになったのだろうか。
この点に関しては最近のメビウスに答えらしきものがあった。
すなわち、ウルトラマンの本体は実は人間と同じというもの。
ウルトラ一族は人工太陽プラズマスパークにより超人的な力を身に付けた。
元々は人間と非常によく似た種族であったということである。

ウルトラの世界においては宇宙人は大抵特殊能力を持っている。
特に巨大化はほとんどの宇宙人が出来るといっても過言ではない。
そして、人間に変身したり乗り移ったりも大抵の宇宙人が出来る。
してみると、あかねも本体は人間の姿なのかもしれない。
いや、大抵の宇宙人の本体は人間なのかもしれない。
もしかすると大抵の宇宙人が人間が環境によって変身した姿、すなわち人間の子孫ではないか。
いや、地球人そのものも実は他の星から来た宇宙人の子孫なのかもしれない。


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