データ 脚本は長坂秀佳。 監督は佐伯孚治。 ストーリー ある夜うなされる次郎。 「流れ星に気をつけろ」。 それは次郎の亡き兄健の声だった。 外を見る次郎。 すると流れ星がビルにぶつかりバルタン星人の姿が現れる。 次郎はその話を郷にするが信じてもらえない。 風邪をひいていた次郎は郷に薬を飲んで眠るように言われる。 郷は自分のことを「お兄ちゃん」と呼ぶように言うが、次郎は「兄ちゃんなら次郎君なんて呼ばない」と反発する。 本当の兄ちゃんなら俺の言うこと信じてくれるよと次郎。 次郎は友達の進に連絡し、ビルを調べてくれるよう頼む。 犬のゴローを連れて調査に行く進。 進はビルを調べるが、特に異常は見られない。 しかしゴローは進が目を放した隙にどこかへ消えてしまう。 その時ビルにバルタン星人の影が。 「俺はバルタン星人ジュニアだ。早くMATに知らせて来い」と星人。 進は次郎邸へ連絡するも、電話に出た郷は取り合ってくれない。 翌日ビルの建設現場に危険を訴えに行く進。 しかし作業員にも取り合ってもらえない。 設計図を取り上げた進は設計図とビルの作りが違うと指摘する。 現場監督にすぐやり直しを命じられる作業員たち。 その時進が煙に取り込まれた。 調査に来るMAT。 壁に進の影を目撃したMATはMATシュートを浴びせるも通用しない。 バルタン星の材質ならMATシュートも通用しないと郷。 MATは作業員を立ち退かせ、ビルを封鎖する。 崩れだすビル。 そこへ次郎が現れる。 それを追う郷だったが、煙に足を取られ負傷してしまった。 2人を追ってビルに入る隊員たち。 しかしそれは罠であった。 バルタン星人ジュニアはビルガモ作戦でMAT隊員たちをビル内に閉じ込める。 窓を壊し、飛び降りて脱出する郷。 完全に壊れたビル内からロボット怪獣ビルガモが現れた。 中で人質となるMAT隊員たち。 ビルガモは回りの建物を破壊する。 瓦礫の下敷きになる郷。 郷はウルトラマンに変身する。 しかし中に人質がいるため迂闊に攻撃できない。 一方的に攻撃されるウルトラマン。 「ウルトラマンが勝つときは俺たちが死ぬ時なんだ」と南。 進がレンガが後から入れたものなので、破壊できると指摘。 レンガを崩してそこからロープで下りる伊吹。 皆が脱出しやすいようにとビルガモの体を支えるウルトラマン。 全員無事脱出すると、反撃に転じるウルトラマン。 最後はブレスレットでビルガモの体を切断した。 何者かを待つウルトラマン。 そこへ姿を現すバルタン星人。 「さすがウルトラマン、ここにいることがよくわかったな。だが俺は負けたわけじゃないぞ。勝負はまだ1回の裏だ。必ずお前の命をもらいにくる。さらばウルトラマン」。 飛び立つ星人。 星人に光線を浴びせるウルトラマン。 星人は光に包まれて消滅する。 「よかったな。次郎」。 次郎を呼び捨てで呼ぶ郷。 「俺、君の兄さん代わりになってやろうなんて間違っていたよ。これからは次郎の一番いい友達になってやる。いいな次郎」。 「OK先輩」。 「行こうか後輩」。 解説(建前) ビルガモの内部はどうなっていたのか。 まず疑問に感じられるのは、あれだけ強固なビルの内部が現場監督の杖であっさり壊れた点。 MATシュートすら通用しなかったバルタン星の材質にしては脆すぎる。 これはおそらくこういうことだろう。 あの材質は硬軟自在に変化し、微弱な電流を流すなり何なりした時だけ硬さを発揮する。 おそらくバルタン星の技術で一夜にしてビルの内装を塗り替えたのだろう。 ただレンガだと都合が悪いので、そこは取り替えざるを得なかった。 それを進に指摘されたということである。 そして結果的に直されたレンガのおかげで隊員たちは脱出できた。 星人が次郎にテレパシーを送ったのは何故か。 これはウルトラマンの人質として次郎が一番相応しかったからだと思われる。 結果的に隊員たちも人質になったわけだが、郷が脱出するのも実は計算済みだった可能性が高い。 あそこで正体を暴いても、開き直られて変身されると人質作戦は無になってしまうので。 感想(本音) とにかく火薬の多さに圧倒される話。 ウルトラマンの脚が燃えてるなんてやり過ぎである。 今では消防法に引っかかって不可能と思われるだけに、ある意味貴重な映像ではないか。 ビルが崩れたり、なかなか特撮に力が入っていて良いと思う。 一方肝心のストーリーの方だが、可もなく不可もない出来。 子供の頃はバルタン星人の再登場ということでワクワクしたものだが、正直最後の光線での消滅は呆気ない。 あれは瞬間移動して逃げ延びたという脳内解釈も可能だが、映像を素直に見る限りは倒されたと考えて差し支えないだろう(スペシウムを浴びれば生きられるはずもない)。 もちろん実際のスタッフの意図はよくわからないが。 今回まず気になったのが坂田兄の声。 と言うか、全然別人でしょう、明らかに。 そもそも似せる意図はあったのか、次郎が病気なので逆にバルタンの声にしたのか。 しかしバルタンの声でもないような。 一体あの声は誰だったのか、ご存知の方は一報願います。 次郎に「君」をつける郷。 兄ちゃんなら「君」なんてつけないと次郎。 坂田の代わりになろうとする郷だが知らず知らずの内に次郎に遠慮をしていた。 ここ2話が坂田兄妹の死をスルーした内容だっただけに、重い展開である。 しかし次郎の言うことを信じようとしない郷はちょっと酷いぞ。 風邪を引いていたのもあるだろうが、もう少し信じてやらないと。 進の電話も真面目に取り合わないし。 この辺り少し違和感を感じたが、ウルトラ初参加の脚本のせいもあるのだろう。 進が行方不明になったと聞いて漸く調査に来るMATにはバルタン星人ジュニアも拍子抜けだったに違いない。 バルタン星人ジュニアの作戦は人質作戦。 う〜ん、ちょっと卑怯すぎるような。 しかもあっさり破られてるし。 この辺りビルを怪獣にするというコンセプトの良さに反して、やや無理がありました。 しかし脱出は余程のスピードでないと、ウルトラマンが時間切れになると思うぞ。 突っ込みどころ満載の展開でした。 今回のバトルは前述のように炎の出血大サービス。 個人的にはブレスレットでビルガモをぶった切るシーンがお気に入りで、ウルトラブレスレットのビジュアル的魅力が存分に発揮されてると思いました。 やはり新マンにはブレスレットがないと。 あと、バルタン星人ジュニアの最後が呆気ない。 散々悪さして上手いこと言って逃げようなんて許さないということでしょうが、背後からスペシウム照射はかなりエグイです。 まあ、星人がワープして逃げたという解釈も可能ですが。 今回の話で忘れてはならないのは進を演じた斉藤信也くん。 タロウの健一君でお馴染みですが、この頃はかなり小さいです。 次郎君の友達の設定ですが、年齢は下のような。 設計技師を目指してるため図面が読めるという凄い設定ですが、親が建築関係の人なのでしょうか。 いずれにせよ、次郎君、健一君の共演ということで興味深いです。 健一君はエースにもゲスト出演してますし、こうやって後のレギュラーが前もって出演している所は2期の特徴の一つですね。 今回の脚本はウルトラ初参加の長坂秀佳氏。 次郎と郷の関係に焦点を当てた脚本は、シリーズの流れからも重要である。 ただ今回はバルタン星人登場というイベント編だっただけに、その点がぼやけたのも事実。 父の復讐というテーマ的な重なりも見られたが、結果的にはビルガモ作戦だけ妙に印象に残ってしまった。 その辺り少し惜しまれる。 またその星人との対決にしてもファンから見ればかなり拍子抜け。 私も子供の頃はビルガモを倒して、いよいよバルタンと対決だと思っていたのであの最後は納得行かなかった。 正直全体のバランスの悪さは否めないだろう。 とは言え、最後の郷と次郎のシーン。 2人はこれからは兄弟ではなく友達として接していくと誓う。 かつて次郎は郷を「兄貴みたいなもの」だと言っていた。 しかし実際に坂田を失ってみると、なかなかその代わりにはなれないということがわかる。 おそらく2人は坂田の死という事実から目を背けようとしていたのではないか。 「次郎の1番の友達になってやる」。 これが現実を受け入れた郷の誠意ある答えだったのであろう。 以後帰ってきたウルトラマンは郷と次郎の友情というテーマを新たに加える。 正直それが成功したかは微妙であるが、結果的にこのことが30数年を 経てメビウスに受け継がれたのだから、興味深い。 今回のエピソードはこのように、次郎と郷の新しい関係性を明確にした点、最終回に繋がる重要性を持ったエピソードと解される。 |