冬の怪奇シリーズ
20世紀の雪男


データ

脚本は田口成光。
監督は筧正典。

ストーリー

雪山を探索する若い男女。
津山秀男とその恋人洋子は雪男が存在する証拠を掴むため、ヒマラヤと条件が似ている権現山に向かっていた。
秀男は雪男に関する論文を完成させており、あとは写真を撮りさえすればその研究を発表できるという。
2人は論文を発表すれば結婚する予定になっていた。
吹雪の中雪男の姿を目撃する2人。
急いで写真を撮ろうとするが、洋子が足を滑らせ写真を撮り損ねてしまった。
何とか洋子を助けた秀雄は雪男を追うも、そのまま遭難してしまう。
MATに雪男が現れ遭難者が出たという連絡が入る。
しかし岸田は冗談だと言って取り合わない。
その時天文台から連絡が入った。
マイナス273度、すなわち絶対温度零度の星が240年ぶりに地球に近づいているという。
仕事がなくたるみ気味の郷、岸田に権現山の調査を命じる伊吹。
現地では雪男はイエティと呼ばれていた。
山には毎年多くの者が雪男の探索に来ていたが、みな遭難し春になって死体で発見されるという。
雪男は目撃者を襲うことから洋子を守るよう頼む村人たち。
2人はそれを引き受け、洋子の病室の見張りをすることになった。
目を覚ました洋子は雪男の姿を窓の外に見る。
しかし岸田は夢を見ていたのだと取り合わない。
一方郷は窓が凍てついていることに不審を抱く。
洋子は12年周期の寒い冬に雪男が里に下りてくるという伝説が本当だったと2人に訴える。
その時遭難していたはずの秀男がいきなり姿を現した。
「雪男なんてこの世に存在しない。あれは伝説の動物だ」と秀男。
「あれだけ苦労した雪男生存説の論文はどうなるの」と洋子。
一向に取り合おうとしない秀男は洋子を東京に連れて帰ろうとする。
郷はそれを止めようと腕を掴むがその腕は氷のように冷たかった。
もう少し話をしようという郷だったが、秀男はそのまま部屋を出た。
それを追う郷。
しかしその影は人間のものではなかった。
MATは岸田の説を採り、洋子が錯乱状態に陥り幻覚を見たのだと結論付ける。
秀男が山から無事に帰ってきたことに納得が行かない郷。
正月、次郎はルミ子の家に遊びにきていた。
ルミ子の父親は船長で今はインドの近くを航海中という。
次郎がヒマラヤの雪男の話をすると、ルミ子はヒマラヤでは雪男をイエティと言うと教える。
ルミ子は友人の洋子からよく雪男の話を聞かされたという。
洋子は冷静沈着で冷静さを失う人ではないとルミ子。
それを聞いた郷はルミ子と一緒に再び洋子に会いに行った。
洋子は東京にいるはずの秀雄が雪男の資料と一緒に消えてしまったと2人に伝える。
雪男の伝説は240年前からのものだと聞いた郷は、240年ぶりに地球に接近している星との関連に疑問を抱く。
郷は一緒に連れて行って欲しいと言う洋子とともに天文台へ向かった。
一方秀男に乗り移っていたバルダックはテレパシーを送り、仲間の船団を呼び寄せていた。
星人は地球侵略のため240年もの間地球に潜伏し調査していたのだ。
天文台に来た2人は今日東京の真上に星が接近すると聞かされる。
星は肉眼では見ることが出来ないが、郷の目には見ることができた。
宇宙船の姿を捉える郷。
バルダックは仲間が来る前に東京を凍らせようと巨大化し、冷凍ガスを吐き始めた。
すっかり銀世界に変わる街。
星人を見た洋子は「あれが雪男です」と郷に伝える。
空から攻撃するMAT。
しかし星人には通用しない。
地上から攻撃する南と上野も氷付けにされてしまった。
冷凍ガスを浴び動けなくなる郷。
その時何故かブランコに座る秀雄の姿が。
しかし郷はそのまま凍らされてしまった。
ウルトラマンに変身する郷。
しかし冷凍ガスに苦戦し、氷付けにされてしまう。
ウルトラマンを援護するMATはナパーム弾で街を燃やす。
その炎により復活するウルトラマン。
ブレスレットを投げるとその発する熱で星人を溶かしてしまった。
さらに宇宙へ飛ぶウルトラマン。
宇宙船を破壊し、ブレスレットを投げつけバルダック星そのものも破壊する。
ぐったりした秀雄を抱える郷。
しかしその体は冷凍人間のように冷たく脈も打っていなかった。
すがりつく洋子。
しかしその時秀雄の体が生気を取り戻した。
喜び合う2人。
津村は雪男により仮死状態にされ乗り移られていたのではと郷。
事件が解決し隊員たちを労う伊吹。

解説(建前)

星人はなぜ地球侵略のために240年という壮大な計画を立てる必要があったのか。
バルダック星が240年周期で地球に近づくとしても、宇宙船があるならそれはあまり意味がないように思われる。
これはやはり地球侵略のために星が近づく必要があったということだろう。
バルダック星が240年前に地球に接近した時は日本に冷害をもたらしたという。
これは星自体に強い冷却作用があることを物語る。

ここからは想像の域だが、バルダック星人は自らの星を放棄し地球に移住しようと考えていたのではないか。
星は絶対零度で人が住める状態とはとても思えない。
そこで星を地球の周りの軌道に乗せ、地球全体を冷却しようとしたのではないか。
バルダック星がどうしてそのような人の住めない星になったのかはわからないが、地球人を滅ぼして地球を新たな自分たちの住処にしようと考えていたなら、星ごと滅ぼされても文句は言えないだろう。

津村は何故生き返ったか。
これは死んだというより仮死状態になっていたためだろう。
南や上野も蘇っており、バルダック星人の冷凍ガスは特殊な成分で出来ているものと考えられる。
星人が倒され周りの気温が上昇し解凍された。
脈が蘇ったのは洋子がすがりついて上手く心臓マッサージになったからとも考えられる。

感想(本音)

解釈に困る話。
脚本的には粗が多いと言えるが、設定はなかなか凝っていて意外と難しいところの多い話である。
そもそもバルダック星人の計画が荒唐無稽すぎる。
しかも240年ぶりに接近する絶対零度の星って。
おまけに肉眼では見えないし。
そもそもそんな所に生物が住めるのか?
雪男伝説と宇宙人をつなげるにしても、スケールが大きすぎてもはや我々には理解不能な領域に達している。
まあ、単順に侵略物でいいんですが。

と、半分愚痴になってしまいましたが、そんな感じで今回はかなり解釈に困りました。
バルダック星そのものを滅ぼすのも「何だかなあ」だし、勢いだけで話を作りすぎです。
正直、エピソードの出来としては今ひとつですね。
ただ、子どもにとってはそんなのあまり気になりません。
私も子供の頃は、この話よくわからないけど面白いと思って見てましたし。
要は田口さんというのは子どもを楽しませるのに長けた人なのでしょうね。
では、その他感想。

今回の話の中心は秀男と洋子という若いカップル。
秀男は山で遭難し星人に乗り移られてしまうが、結局2人は無事に結ばれハッピーエンドとなる。
この点、秀男の復活が甘いと考える向きもあるだろう。
しかし研究はご破算になっているし、秀男の洋子への思いも前半で描写されていたのでそれほど甘いとは感じなかった。
ここでは研究はあくまで2人が幸せになるための手段で、お互いが無事でありさえすれば大きな問題ではないのだろう。
その辺りが本エピソードの暖かいムードに繋がっているものと考えられる。

今回岸田や南は郷の考えを否定するだけの、やや頭の固い人間に描写されていた。
これは事件が少なくて気が緩んでいるとも解釈できるが、8話や15話でも見られたように田口氏の特徴といえるだろう。
ある意味氏独特の実も蓋もなさ。
主人公を目立たせるためには効果的な描写だが、MATの隊員ファンにとっては辛いところ。
ただMATを良く描きすぎると今度はヒーローが弱くなるわけで、その辺りは初代ウルトラマンから続くフォーマットの悩みだろう。
話は変わるが、メビウスを見てると未だに円谷はその呪縛から逃れられていないように思う。
とは言え、ウルトラマンをMATが助ける展開は上手かった。

今回から特殊技術に真野田陽一氏が起用されている。
これからの最終クール、なかなか面白い演出を連発してくれるが、今回のスローを多用した演出もなかなか良かった。
おかげでウルトラマンの飛び蹴りでバルダックの顔がひしゃげるシーンもバッチリ撮れており、今までにない迫力のある映像を見せてくれている(?)。
ブレスレットが炎になるアイディアもおそらく氏による演出であろう。
銀世界になる東京のセットもなかなか良く出来ていた。

今回はルミ子の家の紹介もなされていた。
正直洋子と繋げるのは無理やりだが、ウルトラの世界ではこういう偶然は日常茶飯事なので気にしないでおこう。
次郎もすっかり元気になっており、こういうフォローは好感が持てる。
ところで大全で指摘されていた構成面の問題だが、それほど違和感はないように感じられる。
ただ秀男が病室から出た後の話がないので、その辺り粗はあるだろう。
要は構成というより、話の繋がりの問題の方が大きいと思う。

本エピソードは全体にやや強引な展開が多く、脚本としてはもう一歩練り込み不足という印象を持つ。
ただし子供向けヒーロー物としてはツボは押えており、特に問題はないだろう。
難しいことは考えず、ただ侵略してくる悪い宇宙人を倒すと考えればよい。
それがバルタン星人以来のウルトラの基本でもあるし。

ただ「帰ってきた」最終クールは子ども向けだの何のと今ひとつ評判が悪い。
もちろん大人の視点から見ると、ドラマ部分が弱かったり展開が強引だったり不満はあるが、それはあくまで後世の評価である。
当時のこどもたちはどうだったのか。
資料によると視聴率的には最終クールが一番良かったらしい。
もちろん視聴率で全てを測るつもりはないが、最終クールは客演もほとんどなく、あくまで内容で子ども達を惹きつけたといえる。

私自身大人になって見返しても意外と楽しめるエピソードが多いことに驚かされる。
もちろん不満な部分も多々あるが、純粋に作品を楽しむという気持ちで臨めば決して期待は裏切らないだろう。
最終クールは石堂氏、田口氏を中心に個性的な宇宙人が色々出てくる。
恋愛あり、コメディあり、抜け忍ものありとバラエティに富む最終クールを、是非楽しんで見ていただきたいと思う。


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