残酷!光怪獣プリズ魔


データ

脚本は朱川審。
監督は山際永三。

ストーリー

南極海を中心に各地で灯台や船舶が消滅する事件が頻発していた。
坂田家ではプリズムの実験をする坂田と次郎。
そこへ帰ってきた郷は、坂田と今回の事件について話し合う。
その頃伊吹は御伴の南とともに、地球防衛軍の世界会議から帰還途中であった。
2人は上空からボートに乗った船員らしき者を発見する。
救助されたその男は「白い悪魔…」とつぶやく。
その頃郷と坂田はある予感に突き動かされていた。
2人は車で岬の灯台へ行くことを決心する。
「今度ばかりは行ってみたいんだ。どうしても」と坂田。
一方、伊吹らが救助した船員は病院に収容されるも、看護婦が目を放した隙にその姿を消してしまう。
連絡を聞き駆けつけた伊吹はそこに残された光の結晶を採取する。
分析の結果、結晶は物質化された光で、その姿を光に変えながら消滅するという性質を有していた。
車を飛ばし、岬の灯台に張り込む郷と坂田。
実は次郎も車のトランクに忍び込み、灯台の側へ来ていた。
そこへ現れる白い巨大な氷のような怪獣。
怪獣は光線を発し、灯台を吸収してしまう。
次郎は怪獣に近づきライトで怪獣を照らす。
それに気づいた坂田。
迫り来るプリズ魔。
郷の指示でライトを放り投げる次郎。
そのライトはプリズ魔に吸収されてしまう。
郷を残し、車で逃げる坂田と次郎。
しかし坂田は次郎を助ける際に足を滑らせ、古傷を再発してしまう。
それでも何とか車を運転する坂田。
しかしうっかりライトを消し忘れていたことから、プリズ魔が吸収せんと背後に迫る。
必死でライトを消すように指示する郷。
とうとう坂田は運転を誤り、車を道端に乗り上げてしまった。
MATガンで攻撃する郷。
しかしなす術なく、プリズ魔の光線をモロに浴びてしまう。
ウルトラマンに変身する郷。
ウルトラマンは攻撃するもプリズ魔の頑丈な体には効果がない。
今度は飛び蹴りをするも、光線を浴びテープの逆回転のように反転させられてしまう。
まさに光に飲み込まれようとするウルトラマン。
ウルトラマンはとうとう異次元の世界に捕らわれてしまった。
このままでは危ない。
しかし光の子ウルトラマンは辛うじてその世界を脱出する。
そのとき夜明けが来た。
プリズ魔は空の彼方へ消え去っていく。
坂田と次郎を救出する郷。
「まったく奴は悪魔だ」と郷。
郷はプリズ魔は昼の間は日光を吸収し、夜は光を求めて出現すると推測。
プリズ魔は南極の氷に閉じ込められていたことから、MATはプリズ魔を冷凍する作戦を決断する。
東京周辺一体の明かりを消し、野球場の明かりをつけるMAT。
さらに明かりを点滅させ、プリズ魔を誘きだす。
そこへ現れたプリズ魔。
プリズ魔は照明灯を吸収する。
MATは上空から冷却弾を投下。
しかし冷凍力が足りず完全に凍らすには至らない。
意を決した郷はウルトラマンに変身。
そのまま小型化し、プリズ魔の体内に入り込む。
中で苦闘するウルトラマン。
ウルトラマンはプリズ魔の体内でスペシウム光線を照射する。
苦しみだすプリズ魔。
外部を冷やされ内部を温められたプリズ魔はその膨張に耐えられず、大爆発を起こした。
「俺にとってギリギリの賭けだったんだ」。
グラウンドに倒れこむ郷。

解説(建前)

プリズ魔は何者か。
南極の氷に閉じ込められていたということから、太古の昔から地球に存在したものと思われる。
それでは元からプリズ魔はあの大きさなのか。
よほど急激な温度の低下がないことには、あのまま氷漬けになるとは考えづらい。
これはおそらく南極の氷といっても光を全く遮断するものではないということであろう。
最初は小さかったプリズ魔の結晶が氷の中で長い年月を経て徐々に育っていった。
そして太陽黒点の変化により氷から脱出し、活動を開始したのである。
光を求めて彷徨うのは活動する分、エネルギー=光の必要量が増えたためであろう。

プリズ魔は全ての物質を光に変えることができる。
それでは何故灯台や船などの光を発する物を狙うのであろうか。
と言うのも、全てのものを光に変えられるなら、わざわざ光を狙う必要がないとも考えられるからである。
これはおそらく両者の光の強さに関係するのではないか。
つまり、物質を光に変えて吸収しても本当の光の強さには敵わない。
そこでプリズ魔はとりあえず明かりの強いものを探し求め、そのついでに周りの物質をも吸収するのであろう。

感想(本音)

知名度はそれほどでもないが、文句なく傑作に挙げられるエピソードである。
この作品の存在は、「11月の傑作群」という矮小化された本作の評価が不当であることを如実に証明するものではないか。
朱川審こと岸田森の脚本、山際監督の演出、素晴らしい光学合成を使った特撮スタッフの映像。
全くけちのつけようがない素晴らしさである。
と絶賛で始まったが、個々のポイントを以下に見ていくことにしよう。

まず、いきなりで恐縮だが、プリズ魔の名付け親は実は次郎だった。
これ、今回見て初めて気がつきました。
次郎君素人の割にはナイスネーミングセンスです。
次郎君はトランクに入って車に乗っていましたが、これってかなり危険では。
少なくともあちこちをぶつけて傷だらけになってるものと思われます。
さらに好奇心旺盛の次郎君は懐中電灯をプリズ魔に当てるという無茶をします。
もう少し怪獣を怖がった方がいいのでは。
このシーンは子供心にかなり心臓に悪かったぞ。

今回の見所は坂田健こと岸田森の最後の大活躍。
「今度ばかりは行ってみたいんだ。どうしても」というやや意味不明な思い入れも、自身が脚本を書いたのなら大納得でしょう。
「やっぱり来たか。俺のクイズも馬鹿にしたものではない」や「ちょっと脚を。以前やったところをな」などのセリフも超かっこよく、岸田ファンには堪えられない活躍ぶりです。
そして脚を痛めながら車を運転するアクションシーン。
子供心に消し忘れのヘッドライトにドキドキしながら見てたのを思い出します。
しかし何で助かったのでしょうね。
距離が離れていたからでしょうか。

ウルトラマンが捕まった異次元の世界はエースのオープニングでおなじみのギラギラした奴。
本放送の時はエースが流用したのですが、先にエースを見てたりすると、エースから流用したように感じられるのが不思議ですね。
また今回の演出で多用されたのが鏡。
鏡は光を反射するもの。
ここにも光に対する監督のこだわりが窺えます。
因みにバックミラーではなく、サイドミラーに人が映る演出は、レオ第50話でも見られました。

プリズ魔は子供心にかなり怖かった怪獣。
鳴き声は今聞くと理解できますが、当時は理解できませんでした。
同様に最後爆発するのも子供にはやや厳しいものがありました。
理科の実験もよくわかりませんでしたし。
郷が最後はいつくばって、セリフを言うのも意味不明。
しかしそのインパクトはなかなかで、プリズ魔が間違いなく今まで戦った最強の怪獣だと思わされましたね。
今はこのエンディングはかっこよくて、大好きです。
それと、郷の2度の変身シーンもなかなかかっこいいですね。

今回MATの取った作戦は冷凍弾でプリズ魔を凍らしてしまおうというもの。
しかし、やはり無理がありましたね。
おまけに球場で上野が凍死しかけてましたし。
ちょっと冷静な伊吹隊長にしては焦りが目立つ作戦だったかな。
立案者が丘隊員だっただけに甘くなったとか…。
それにしても丘隊員は冷凍弾作戦がお好きのようで、28話でもバリケーンに同じような作戦を提案してました。
あまり怪獣を殺生したくないというのもあるのでしょうか。
郷は、破壊する気満々でしたけど…。

今回はドラマ的な濃度は薄く、「帰ってきたウルトラマン」においてはかなり異色な話。
自然娯楽色が強くなるが、そのベクトルは緊張の方へ向いており、弛緩して見るというタイプの作品でもない。
あえてテーマらしきものを探せば、明かりに頼る文明社会とかも言えそうだが、あっさり東京が暗くなったことから、それも的は射ていないだろう。
ここにあるのは怪獣対人類、怪獣対ヒーローという単純な構図だけ。
まさに怪獣物の原点、ヒーロー物の王道といった類のものである。

しかしその中にも帰りマン要素は皆無ではない。
まず、坂田、次郎、郷の関係。
そして、巨大な怪獣の力に翻弄されるウルトラマン。
特訓ではなく、命がけの作戦ではあるが、やはりそこには人間ウルトラマンのテーマが微かながらも息づいているのである。
もちろん、この話を鑑賞するにおいて、そこまで意識する必要はない。
ただ、単純に話に乗っていけばいいだけである。
異色作でありながら、見ていてそれほど違和感を感じさせない作品。
それもこの作品を傑作たらしめている要素の一つだというのは言いすぎだろうか。


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