呪いの骨神オクスター


データ

脚本は石堂淑朗。
監督は真船禎。

ストーリー

山登りをする坂田と次郎。
道に迷った2人は牛の絵馬のある神社にたどり着く。
そこに現れた老人。
老人は自分の小屋で一夜明かすとよいと2人を案内する。
老人の小屋の前には別の2人の男が。
民俗学を研究しているという教授とその助手も一緒に小屋に泊まることになった。
夜、地震と何かの叫び声で目覚める次郎と坂田。
坂田は老人に叫び声について尋ねる。
叫び声のした方には底なし沼があると老人。
怪獣の声がしたと言う次郎。
「日本の山の中には狼さえいないのに怪獣がいるわけない」と学者は否定する。
翌朝朝食を食べる次郎たち。
次郎は昨夜の声が牛の声のようだったと言う。
老人は民俗学者に牛によく似た骨がある谷があるので、見て欲しいと言う。
現場に向かう一行。
そこには大量の白骨が。
学者は水牛が地質の変動によって水が無くなり白骨化したと解説する。
標本用に持ち出そうとする学者たち。
神社に祀られている牛のたたりが怖いと反対する老人。
「迷信だ」と無理やり持ち出そうとする学者に写真だけにするよう言う坂田。
しかし学者たちは「東京の学者は現物を持って行くと喜ぶ」とそれを持ち出す。
老人によると自分の息子夫婦2人も骨を町に持ち出そうとして行方不明になったという。
里では2人は神隠しにあったと言われていた。
学者たちを心配する次郎。
そのとき沼から学者たちの前に水牛のような怪獣が現れる。
怪獣の吐く唾液状の溶解液で溶かされる2人。
怪獣は神社にいる次郎たちに迫り、老人は井戸から出る怪獣の舌に絡め取られてしまう。
坂田たちの通報により駆けつけるMAT。
しかしアローは怪獣の吐く溶解液に溶かされてしまう。
地上で坂田たちに合流する郷と伊吹。
そこへ怪獣が迫る。
レーザーで撃退する2人。
2人は古井戸の付近を調査し、その途中に再び怪獣に襲われる。
MATの分析によると怪獣の吐く液は唾液状のものだとわかる。
水牛の生き残りだと主張する次郎。
そこへ再び現れた怪獣を攻撃するMAT。
唾液を吐けないようにと喉を攻撃するMATだが、上野、南の乗ったアローは唾液を浴び2人は脱出。
隊長と丘の乗ったアローも怪獣の唾液で墜落させられる。
水面で身動きがとれず、ピンチに陥る隊長たち。
それを見て沼に飛び込み変身する郷。
ウルトラマンはアローを再生し水中での戦いに挑む。
オクスターの角を使った攻撃に苦戦するウルトラマン。
沼の底で自由の利かないウルトラマンはオクスターに苦戦する。
水面に上がろうとしたところを引き戻されるウルトラマン。
遂にカラータイマーが鳴り出した。
ブレスレットから光線を浴びせて水面に逃げるウルトラマン。
そしてウルトラマンはブレスレットの力で沼の水を蒸発させる。
水中でしか呼吸できないオクスターは徐々に弱っていく。
「オクスターよ。お前も仲間たちの所に帰るのだ」。
スペシウム光線を浴びせるウルトラマン。
そのまま息絶えたオクスターを焼却し骨にする。
沼にはブレスレットにより蒸発させられた水が嵐となり大量に流れ込んだ。
沼底に沈むオクスターの骨。
「この沼の底に大怪獣の骨が横たわっているなんて誰も思わないだろうな」と隊長。
弔いのために、花を沼に投げ入れる郷であった。

解説(建前)

坂田と次郎はどうやってMATに連絡を取ったのか。
おそらく次郎が郷から無線を借りていたのであろう。
この山はハイキングコースにしては過酷過ぎる嫌いがある。
一般にはあまりハイキングに使われないコースではなかろうか。
それを心配した郷が念のために無線を渡していたものと推測される。

オクスターとウルトラマンの戦いではあれだけ深かった沼が何故蒸発させると浅くなったのか。
これはおそらく沼の側面から山の下に通じる横穴があり、そこは他に比べてかなり深くなっているからと考えられる。
オクスターは普段その古井戸にも通じる横穴に棲んでおり、そこから耳をそばだてて地上の様子を窺っていたのであろう。

感想(本音)

子供心に凄く怖かった話。
所謂石堂氏のアニミズム的、妖怪譚的な傾向がウルトラにおいて初めて全面に表れた作品で、2期ウルトラの方向性に大きな影響を与えた作品である。
今でこそ氏の作風に違和感はないが、さすがに初見時はその不気味さにかなりびびったのを覚えている。

今回坂田は次郎と2人でハイキングに出かけているが、アキは次郎のセリフに登場するのみでやはり出番はなし。
スケジュールの調整が極限まで来てるのが窺われるが、ラストの花を投げ入れるシーンは郷の方が相応しかったので、特に問題はないだろう。
たださすがにその存在感の低下は否めない。
しかし坂田はなんちゅう山にハイキングに行くんだ。
足が悪いにも関わらず、かなり無茶である。

インチキくさい民俗学者を演じたのは、故大泉滉氏。
以降ウルトラシリーズに度々登場してくれるが、その味のある飄々とした演技はそれぞれにインパクトを残してくれた。
しかしこの民俗学者は何をしに来ていたのだろうか?
どこかから水牛の骨のことを聞きつけていたのだろうか?
インチキくさいだけに謎の残るキャラであった。
ついでに山の老人を演じる巌金四郎氏はハンザギランに溶かされる老人役でエース47話にも出ています。

今回もMATはオクスターに歯が立たず、伊吹隊長も撃墜されたアローで慌てふためくばかり。
あの初回登場時のかっこよさは何処に行ったのか。
基本的に石堂脚本ではMATはあまり強く描かれないので、そのあおりを隊長がモロに食らっている。
ウルトラマンがいなければ、殉職間違いなしの状態。
郷の成長物語が一段落しMATの役割が低下する中、これ以降も隊長の受難は続く。
ただし、市川脚本の次回は最大の見せ場になるが。

オクスターのデザインはなかなか秀逸。
今回は帰ってきたウルトラマン初の本格的な水中戦で、ウルトラマンが大苦戦。
ブレスレットがなければ勝てたかどうか。
まあ、沼の水を全部蒸発させる必要があったのかはわかりませんが、この辺りのブレスレットへの依存は新マンの不評な点の一つですね。
確かに何もアイテムを使わず超能力を連発していた初代マンの方がかっこいいですが、作品の幅を広める意味ではこのブレスレットでの戦いもなかなか楽しいものだと思います。
ここはブレスレットがウルトラマンの超能力を増強するアイテムだと解して、肯定的に考えていきましょう。
とは言っても次回でそんなこと言えなくなるのですが。

ところで今回は珍しく新マンは怪獣に向かって「仲間たちの所へ帰るのだ」とセリフを吐いている。
最後花を投げ入れるシーンと相まって、単なる怪獣退治から一歩踏み出した深みを感じさせるシーンである。
今回の監督はウルトラ初参戦の真船禎氏。
アングルの面白さや、アローから南たちが脱出したシーンでの次郎の意味不明な笑顔のカットなど特徴的な演出が際立つが、2期ウルトラ、特に新マン、エースでは1期の実相寺氏に並ぶ存在感を発揮していた。
ラストの雨の中、怪獣を弔うエンディングもなかなか印象深い仕上がり。
時折挿入されるセピアがかった映像もいい。

石堂氏の脚本は怪獣が骨の守り神をするという、今までにないもの。
確かに妖怪譚的な側面が大きいが、それでもオクスターが水牛の生き残りだという設定はまだ怪獣の要素を残している。
その辺りは牛神が取り付いて超獣になったカウラや邪神の呪いが取り付いたシシゴランとは違うであろう。
次回からは帰ってきたウルトラマンは11月の傑作選と言われるシリーズに入る。
ただし、これは後付で言われ出したもの。
その名称自体は帰ってきたウルトラマンに興味を持ってもらう上で有用だと思うが、別にそれだけが帰ってきたウルトラマンの傑作ではないので、あくまで導入として捉えるべきだろう。
個人的にはこの話やプリズ魔の話も含めて中期の傑作群と呼ぶ方が相応しいように思う。




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