次郎くん怪獣に乗る


データ

脚本は田口成光。
監督は山際永三。

ストーリー

次郎は友達のよし子の家に遊びに行き、そこで不思議な箱を借りてくる。
大工である良子の父が作ったその箱は寄木細工で出来ており、父親によると作った自分でも開かなくなったという。
坂田工場でその箱を見つける郷。
郷は何とかそれを開けようとするが、なかなか開かない。
郷はその日無人宇宙ステーションNo.5の定期点検に行くことになっていたが、箱に夢中で時間に遅れてしまう。
そのことで怒られる郷。
郷は早速点検のため、スペースアローで宇宙へ飛んだ。
その頃次郎は友達と遊んでいたが、次郎の下にやって来たよし子に箱を返して欲しいと言われる。
家に戻る次郎だが、箱はない。
よし子はその箱がないと死んでしまうかもしれないと言う。
実はその箱は郷が宇宙まで持っていっていた。
ナンバー5にドッキングし、中を調査する郷。
定められた通り点検を終えた郷は基地にそのことを報告する。
しかし郷はうっかり箱をステーション内に忘れてしまう。
一方次郎は箱を失くした件で皆に咎められていた。
坂田から郷が持っていったと聞いた次郎は早速MATに連絡。
しかし郷はまだ帰還してなかった。
基地に戻った郷はナンバー5がデータを送って来ないと聞かされる。
そのことを問われ曖昧な返事をする郷。
その時次郎から連絡が入る。
箱のことを聞かれる郷。
しかし忙しいからと言って電話を切ってしまう。
自ら志願して再調査に向かう郷。
一方次郎は箱を見つけることが出来ず、よし子の家に謝りに行く。
しかし次郎は過って良子の飼っているインコを逃がしてしまった。
必死でインコを探しに行く次郎。
一方再点検に向かった郷はステーションの姿が見当たらないと基地に報告する。
必死でステーションを探す郷だが、自分にミスはないと確信していた。
インコを追う次郎は空き地に不思議な建造物を発見。
しかし中に入った次郎はその中に閉じ込められてしまう。
郷は結局ステーションを発見できずに帰還する。
その時基地にステーションから通信データが入った。
電波は東京都内からだった。
電波を分析した結果、東京西部と判明。
その頃坂田は次郎が帰って来ないとよし子の家を訪ねていた。
MATの懸命な操作にも関わらず、ステーションは見つからない。
翌日、郷と南は都内の空き地にステーション5が墜落しているのを発見する。
すると突如ステーションが隆起し、その下から怪獣が出現した。
基地に報告する郷。
郷は自分のミスでなかったことを隊長に確認する。
攻撃に移るMAT。
しかし負傷した南が中に子供がいることを告げ、攻撃は中止される。
郷は中のマイクから次郎の声が聞こえてくるのに気がつく。
心配し駆けつける坂田。
怪獣が暴れると中の次郎も揺さぶられた。
揺れの衝撃で落ちてきた箱を見つける次郎。
中で箱をいじっていた次郎は遂にその箱を開けるのに成功する。
そのことを無線で聞いたよし子は、その中のものが自分のへその緒であると次郎に教える。
次郎救出のため空からステーションに飛び移る郷。
何とか中に入り次郎と再会する郷。
MATは暴れようとするヤドカリンにバズーカ攻撃を仕掛ける。
しかし外からの攻撃は効果が無いと見て郷は中から攻撃。
怪獣を追い出すことに成功した郷はそのまま変身して、ヤドカリンに挑む。
一方次郎はMATに救出され担架で病院に運ばれた。
ステーションに入り込んだヤドカリンに手を焼くウルトラマン。
最後はMATのナパーム攻撃とウルトラランス、スペシウム光線の連続技でヤドカリンを爆破する。
次郎の見舞いに来る郷。
次郎とよし子に箱の中身を教えてもらえない郷は何とか箱を開けようとする。
坂田もそれに加わり、箱と格闘する2人であった。

解説(建前)

ヤドカリンは何者か。
突如ステーション内に飛び込んだからには宇宙怪獣ということになるのであろう。
しかし一体どこから来たのか?
何故郷はそれに気付かなかったのか?
考えられるのはヤドカリンが相当のスピードでステーションに衝突したということであろう。
すなわち、地球に落下するくらいの衝撃があったならかなりのスピードが出ていたことになる。
ヤドカリンは隕石に乗っていたか、若しくは他の何かを殻にして宇宙を飛行していてぶつかったと考えることが出来るであろう。

感想(本音)

手堅い作品である。
シナリオ的にもよし子の寄木細工を中心に、それを探す次郎と消えたステーションを探す郷と上手くシンクロさせてある。
田口氏の3作目であるが、完成度ではここまでで1番であろう。

今回の郷は箱を開けるのに夢中で明らかに職務怠慢を行っている。
MATに入ってだいぶ経つことから、そろそろ気が緩んできたのか。
そう言えば前回もあんな調子だったし、緊張感が薄れてきたのかもしれない。
どう見ても怖そうな伊吹隊長なのに、まったくいい度胸である。

今回伊吹隊長はステーションが消えた件を頭から郷の責任にして、少し物分りが悪い。
まあ、客観的に見ると郷がダレてるのは明らかなので気持ちはわかるが、この辺りややキャラの懐が浅い。
これは田口氏の特徴なのだろうが、「怪獣少年の復讐」におけるMATのように主役以外のキャラの描き込みが弱いところに氏の弱点を感じる。
最後は郷の言い分を認めたが、伊吹隊長のキャラという面からは、もう少し温かみのあるところも欲しかったのが正直なところだ。

今回の話の中心は次郎とよし子。
子ども中心に話を作るのはまさに田口氏の作風であり、氏の真骨頂でもある。
女の子にとってへその緒を見られるのは恥ずかしいもの。
子供の頃見てもわからなかったが、ちょっとしたエロチシズムを感じさせるのも田口、山際コンビのなせる技なのだろう。
郷が宇宙で忘れてきたものを地球で次郎が見つけるという展開も上手く、戦いのさなかで箱が開くというのもまた見事な展開だと思う。

今回アキはアルプス登山に行って出番なし。
スケジュールの都合だろうが、これではさすがに存在意義が薄くなる。
そろそろ限界が見え始めている。
一方坂田は次郎の兄としてしっかり話に絡んでいた。
個人的には最近「怪奇大作戦」の牧のイメージが強いが、また微妙に違う坂田の個性を上手く演じていると思う。

ヤドカリンについてはなかなか突飛な怪獣で、その特性もイマイチよくわからない。
新マンも中盤になるとバラエティ溢れる怪獣が現れ、なかなか楽しい展開である。
確かに初期の地球怪獣との戦いの方がリアルではあったが、長いシリーズではこういう路線変更は致し方ないであろう。
ある意味宇宙ステーションに入り込むからヤドカリというストレートなプロットには頭が下がるばかりである。
それにしても最後のヤドカリンのやられっぷりは気の毒なほど。
正直残酷な殺され方なのだが、やはり見た目がヤドカリだとそれほど残酷には映らない。

今回の話は田口氏お得意のこどもを中心にした話。
初期の重い路線からはかなり外れた、やや異色な話であることは間違いないであろう。
「帰ってきたウルトラマン」も半分を折り返し、メインの上原氏の作品が減るなどかなり路線が変わってきている。
しかし視聴率的に安定してきたのか、各作家が個性を発揮して良作を連発する中盤はウルトラシリーズでも最重要な時期といっても過言ではなかろう。
確かに今回の話は上手く出来ている分やや物足りない面もある。
しかし後に続くエースやタロウ、レオという作品を考えると、一つのひな形となりうる話ではなかろうか。
良作が続くこの次期。
やや埋もれがちな本話であるが、十分その出来は評価できるものと考える。


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