ウルトラ特攻大作戦


データ

脚本は実相寺昭雄。
監督は山際永三。

ストーリー

今日もまた東京の空は厚いスモッグに覆われていた。
坂田発案のスタビライザーの試運転をする郷と坂田。
郷が基地に戻るとMATは消えた台風の調査をしていた。
岸田とパトロールに飛ぶ郷。
「台風が消えたのはむしろ喜ぶべきことです。自然の出来事は自然に任せればいいんです」と郷。
「哲学的だな」と岸田。
そのとき自衛隊機とニアミスするアロー。
「危ないな。完全にニアミスだ。ぶつかったりしたらMATの予算も削られるところだぞ」と岸田。
その夜、坂田家に寄った郷は次郎らと消えた台風の話をする。
するとテレビからはタンカーが行方不明というニュースが。
タンカーは竜巻により空に舞い上げられ、山の上まで飛ばされていた。
調査に行くMAT。
地元民の証言によると船が空から降ってきたという。
「人間の尺度で測ってはいけません。何しろ自然は偉大ですからね」と郷。
「くう〜」と岸田。
刑事によると、船は竜巻以外の力で砕かれたという。
都内をパトロールする郷と岸田。
ラジオのニュースは、今日は光化学スモッグもなく空気も澄んでいることを伝えていた。
怪獣の起こす風は東京の汚れた空気を浄化していたのだ。
気象庁を訪れた郷と岸田。
すると海上自衛隊から台風が突然発生したとの連絡が入る。
基地に戻り分析する郷と岸田。
「人知の及ばぬ自然現象として解釈すべきですね」と郷。
岸田は、一旦勢力を落とした台風が勢力を戻したのではと分析する。
そこへ気象台から連絡が。
気象台によると台風はまたも急に姿を消してしまったという。
その夜、三浦半島で目撃された不知火の調査に向かうMAT。
照明弾を落としてみるが異常はなく、そのまま引き返す。
翌日改良したスタビライザーを装着し高速を走る郷と坂田。
改良したスタビライザーで快適な運転をする2人。
その時郷が何かを見つけた。
そこには空に浮かぶ巨大なくらげのような怪獣が。
MATに連絡する郷。
隊員たちはすぐさま出撃しようとするが、それを伊吹が制止する。
怪獣が台風を起こすとすると、下手な手出しはできないという。
台風に備える都民。
スライドで怪獣を研究するMAT。
伊吹は今怪獣が大人しいのはエネルギーを蓄えているからではないかと推測する。
対策に難渋するMAT。
その時丘隊員は冷凍弾による攻撃を提案する。
それを受けた伊吹は冷凍弾では怪獣を凍らせることは出来ないと考え、麻酔弾による攻撃を決定する。
アローで出撃する隊員たち。
郷は伊吹と基地に残り、ミサイル攻撃に備えていた。
怪獣を狙い麻酔弾を発射するアロー。
麻酔弾は怪獣に命中し、怪獣は動きを止め降下し始めた。
街に降りる怪獣。
街に降りた怪獣は頭部を回転させ嵐を巻き起こした。
飛ばされそうになるアロー。
家屋は飛ばされ、雷が鳴り響く。
焦る伊吹。
伊吹は郷にミサイル発射を命令するが、怪獣には効かなかった。
懸命にアローに避難するよう指示する伊吹。
郷は1人基地の外に向かいウルトラマンに変身する。
嵐の中バリケーンと戦うウルトラマン。
バリケーンの触手がウルトラマンに絡みつく。
スペシウム光線も吸収されたウルトラマンは空から怪獣を攻撃。
バリケーンの頭部が回転したのを見ると自らも回転し、そのまま竜巻を作り出し、怪獣を宇宙まで巻き上げた。
宇宙の藻屑となるバリケーン。
基地でくつろぐ隊員たち。
「いつもウルトラマンにいいとこをさらわれるよな」と岸田。
「地球の平和はウルトラマンのおかげよ」と丘。
「そういえば郷。私が呆然としたとき君はどこにいたんだ」と伊吹に尋ねられた郷は「神様にお祈りしてただけです」と答える。
談笑する隊員たち。
今日も東京の空はスモッグに覆われていた。

解説(建前)

バリケーンはどうやって嵐を起こすのか。
これはおそらく頭部の回転と関係があると思われる。
頭部を回転させることにより、バリケーンは空気中に巨大な渦を作り出す。
そしてこの渦は猛烈な勢いで地表の空気を上昇させ、バリケーンを中心とした巨大な上昇気流を作り出す。
その結果地表の暖かい空気が一瞬の内に冷やされ、発達した積乱雲を作り出すのだ。
それにバリケーンの起こす竜巻が加わって、集中豪雨的な嵐が発生するのである。

では、バリケーンは何者なのだろうか。
見た目はくらげなので、くらげが巨大化したとも考えられるが、くらげはほとんど水分で出来ているので地表で行動できるとは考えにくい。
またキノコのようにも見えるが、キノコが巨大化したと考えるのもかなり無理があるだろう。
結局宇宙から漂流してきた怪獣と解釈するしかあるまい。
そして宇宙から来たとすれば生物と無生物の中間的存在と考えることが可能であろう。

感想(本音)

非常にユニークな話。
脚本はあの実相寺昭雄。
怪獣=自然という発想から、台風を巻き起こすというスケールの大きな怪獣を創造してみせた。
また山際監督による、喜劇タッチ溢れる演出。
今までとは趣のかなり違うエピソードになっている。

今回目を引くのは岸田の3枚目ぶり。
今まではシビアな面ばかり目立っていたがこういう3枚目的な面も持っているのか。
実相寺氏がどういう狙いで岸田にコメディリリーフを引き受けさせたのかはわからないが、本来のコメディリリーフである上野が演じるのに比べて返って説得力があった。
これは演じる西田健さんの演技力も賜物であろうが、実相寺氏が岸田のキャラをわかって割り振ってるのだとしたら、それはさすがの感覚である。

また郷も今回は岸田とのコンビでいい味を出している。
ウルトラマンが「新しい自然」云々は能天気すぎる気もするが、たまにはウルトラマンも怪獣から離れたいということなのだろう。
しかし郷が1人基地の外へ出て変身するシーンはとてもかっこよく、子供の頃からこの変身シーンは目に焼きついている(某コロタン文庫に写真が載っていたのもあるが)。

今回気になったのは、MATの基地がどこにあるかということ。
MATには以前から飛行機の発着用として地上にも基地らしきものがあった。
おそらくこの基地は地下のトンネルか何かで海中の基地とつながっているのだろう。
出撃の便を考えると普段はむしろ、この地上基地にいる方が多いと思われる。

伊吹隊長の作戦は明らかに失敗。
麻酔弾が中途半端に効いてバリケーンを街に降ろしてしまった。
そしてミサイル攻撃も不発。
後はオロオロするばかり。
相手が台風では人間の力ではどうしようもないのはわかるが、この描かれ方はやや不憫。
後半は上原氏や市川氏の脚本が減るためか、MATの扱いが悪くなっていくのが残念である。

最後ウルトラマンが怪獣を倒すシーンはどことなくシュール。
ウルトラマンの超人振りが描かれるところは一期に通じるものがあり、この話も2期の中ではやや異色な味わいがある。
伊吹は郷に自分が呆然としてるとき、どこに行っていたのかと聞くが、これは郷=ウルトラマンの疑惑を抱き始めたのか。
他の隊員が全く気づいてないのが謎であるが、他の隊員は郷の初期(のドキュンぷり)を知ってるだけに、ウルトラマンと郷がつながらないのであろう。

今回の話はバリケーンという自然を体現した怪獣になす術もない人間たちという、ある意味初代マン的な発想で作られた作品である。
そのためそれぞれの登場人物の内面はあまり掘り下げられていない。
それを象徴するのが岸田である。
岸田は帰りマン初期においては言わば、人間関係のストレスを象徴する人物であった。
その岸田の180度の変貌振り。
今回の岸田は内面というより、思想というか世界観というかそういうものを代弁する役回りである。
唯一岸田らしいシーンは台風の消滅を勢力を弱めただけと科学的に分析するシーンだけ。
実相寺氏がどういう意図で岸田にこのような役を振ったのかはわからないが、今までの岸田からは首をひねるシーンが多い。

しかし結果としてこの話により岸田のキャラは深みを増すことになる。
また郷との関係もかなり改善されており、初期の設定から考えるとその変化が窺えて興味深い。
「帰ってきたウルトラマン」は1話完結のエピソードでありながら、ストーリー全体を通じて郷の成長も描いている。
そのような観点からは今回のエピソードは1つの成果として全体に取り込むことが出来るであろう。
ウルトラマン的でありながら、帰りマン的でもある。
本エピソードが1期、2期いずれのファンからも支持されるのはそういうところも大きいであろう。


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