データ 脚本は市川森一。 監督は山際永三。 ストーリー 大都会の雑踏の中、歩き回る一人のピエロ。 ゴミ箱を開くとゴミが溢れ出した。 裏通りのスナック街はゴミだらけ。 嫌になったピエロはゴミを捨てに夢の島に行く。 そこでピエロの見たものは。 怪獣の出現により生き埋めになるピエロ。 同じ日加藤は郷に送られMAT宇宙ステーションへの異動の途についていた。 遠くから見送る隊員たち。 「これでMATも大きくなれる」と加藤。 後任の伊吹は加藤の上官だった人で歴戦の勇士だという。 「本部からあれだけの人物が来るというのはそれだけMATの地位が高く評価されているということだ」。 しかし伊吹の到着は遅れていた。 通信によるとニューヨークでゴミ処理場での戦闘に参加したという。 新隊長の到着を心待ちにする隊員たち。 一方郷は加藤を送った帰り、アキと次郎に出会う。 次郎はぼろぼろになったポリバケツで遊んでいた。 郷はポリバケツが腐っていることに気づき、それがどこにあったのか次郎に案内してもらう。 夢の島に来た郷は係りの人からゴミの話を聞く。 プラスティック製のゴミの処理には困っているという係員だったが、 最近プラスティック製のゴミだけを選んで持っていく者がいるという。 その時ゴミ捨て場に地震が起こった。 近頃その付近では地震が頻発しているという。 郷が持ち帰ったプラスティックを分析すると、プラスティックを食べるウィルスが検出された。 新隊長の到着を待って行動することにした隊員たちだが、夢の島で火災が起こったと聞いた郷は独断で消火液を散布する。 郷が帰ってくると伊吹から通信が入った。 伊吹によると火災現場にはMSミサイルを発射し、消火液を散布してはいけないと言う。 何故消火してはいけないのですかと問う郷に対し、地下には怪獣が住んでおり消火する事により酸素を閉ざされ怪獣が地上に出てくると伊吹。 伊吹はニューヨークで同じ怪獣と戦って来たという。 勝手な行動をした郷は三日間の出動禁止を言い渡される。 その時怪獣出現の報が。 郷を残して岸田たちはアローで出撃する。 しかしアローは撃墜され、それを聞いた郷は除隊覚悟で出撃。 「これが最後の戦いか」と郷。 しかし郷の乗るジャイロは怪獣の吐く糸に絡めとられてしまう。 ジャイロごと怪獣の手に捕まってしまう郷。 その時郷は光に包まれウルトラマンに変身した。 しかしウルトラマンはジャイロが潰された時、右腕を負傷していた。 苦戦するウルトラマン。 ウルトラマンは怪獣の吐く糸に絡まってしまう。 その時伊吹のアローがやって来た。 巧みな操縦技術で怪獣を翻弄する伊吹。 仰向けに倒れた怪獣は自らの吐いた糸に絡まってしまう。 立ち上がった怪獣にすかさずミサイルを撃つ伊吹。 口に挟まったそのミサイルにウルトラマンがスペシウム光線を放つと怪獣の頭は爆発して吹き飛んでしまった。 基地に帰り一人一人の隊員と握手する伊吹。 握手をためらう郷に「謹慎を言い渡されたのが不服なのか」と言う。 郷は右手を負傷しており伊吹との握手でそれがばれてしまった。 必死で弁護しようとする南。 しかし伊吹は郷が階段から落ちて怪我したと不問に付する。 「良かったな」と隊員たち。 右手を痛がる郷だが、心は晴れやかだった。 解説(建前) 何故ゴキネズラは日本とアメリカに同時に出現したのか。 まず考えられるのが宇宙人による同時多発テロ。 しかし肝心の宇宙人が姿を現していない以上、この説はやや苦しい。 次に考えられるのが元は同じ細菌だったのが別々の経路を辿り日本とアメリカのゴミ捨て場に捨てられたという説。 すなわちプラスティックと反応しない限り無害だった宇宙生物が、ゴミ捨て場でプラスティックを吸収し急激に巨大化した。 宇宙生物はおそらく隕石か何かに乗ってやって来たのだろう。 ただこの説では日米のゴミ捨て場に行く経路がやや難しい。 もうひとつ考えられるのは1つの隕石が大気圏突入時に2つに分かれ、別々に地球に到着したという説。 おそらく欠片の大きさが違ったため片方は上昇気流に乗るなりして別の地点に漂着したのだろう。 そしてその隕石から細菌なり微生物なりがプラスティックに寄生したのである。 ただこの説も偶然性が大きすぎる嫌いがある。 結局いずれの説も決め手に欠けるが、宇宙からやって来た生物であることはほぼ間違いないであろう。 何故ウルトラマンは右手を負傷していたにも関わらず前方転回が出来たのか。 これは難しいが、案外腕を曲げると痛むのかもしれない。 すぐにスペシウムを撃てなかったのは腕を曲げると力が入らなかったからではないか。 最後のスペシウムも本来より威力が減じており、ミサイルに命中させることにより辛うじて殺傷能力を保ったのかもしれない。 感想(本音) 冒頭のピエロがとにかくインパクトがあるお話。 この話自体はそれほどよくは覚えてなかったのだが、ピエロだけは強烈な印象があった。 ゴミ問題を象徴的に語ろうとする山際監督と市川氏の演出が見事にハマった作品である。 しかし今になって見返してみると、隊長交代劇としてもよく出来ている。 加藤の転勤は演じる塚本氏のスケジュールによるものだが、新しい隊長を加藤の上官としその敏腕振りを印象付ける見事な交代劇だろう。 以下細かい感想を。 命令を無視し、除隊覚悟で出撃する郷はなかなかかっこいい。 と思ったら呆気なく怪獣に捕まってしまいました。 もうほとんどわざとウルトラマンに変身しようとしてるんじゃないかと疑ってしまうが、郷は郷なりに真剣なのだろう。 ただあれでは変身がバレバレである。 そして右手を負傷してるのか無事なのかよくわからないウルトラマン。 スタッフが何をやりたいのかイマイチ意図不明であった。 伊吹の登場シーンは滅茶苦茶かっこいいのだが、これ以降活躍らしい活躍がないのは残念である。 子供の頃は怖いという印象しかなかった伊吹隊長登場回だが、後期はアットホームなキャラに変わっており、前半の加藤隊長に勝るとも劣らない隊長振りを見せてくれた。 そして何より「悪魔と天使の間に」や「怪獣使いと少年」において見せた存在感。 この辺り流石大映のスターであると同時に、加藤とはまた違うキャラで後半の宇宙人編を大いに盛り上げてくれたと思う。 今回はアキちゃん、次郎は話の中に上手く登場。 しかし次郎君を絡めようとすると、どうしても怪獣を発見したりそのきっかけを作ることにならざるを得ない。 各脚本家が坂田家を絡ませるのに難儀したというのはさもありなんだなと思う。 ところで坂田兄は何故登場しなかったのだろう。 頭が吹っ飛ぶゴキネズラは今ではちょっとやばいのでは。 もちろんそんなこと言ってたらこの頃のシリーズでは限がないのだが。 しかしアメリカのゴキネズラはMS爆弾2発で倒されているのだから、この種族自体は相当しょぼい怪獣のようだ。 それともグドンには通用しなかったものの、本放送外でMS爆弾は戦果をあげているのか? 「だから僕は前から言ってきたんだよ」と係員。 しかし怪獣がいるとは一言も言ってなかったぞ。 地震が多いとは言っていたが。 最後復活するピエロ。 やっぱり意味不明である。 今回はシリーズ初の隊長交代劇。 途中降板した星野君を除き、シリーズ半ばで主要キャストが降板する先例ともなった。 しかしこの後スケジュールや内容上の都合で途中降板が続出。 そのきっかけともなっただけにその功罪相半ばと言ったところか。 しかしこの話自体は見事な出来になっている。 1年間のシリーズ物を作るにはこういうキャスト面の問題は避けては通れない。 ましてや名のある役者を使っているなら尚更である。 帰ってきたウルトラマンでは後に更に大きな俳優降板劇が待っている。 そういうキャスト面の問題も作劇に昇華していくけれんみの無さ。 そういうものも当時の特撮においては必要だったといえるだろう。 |