データ 脚本は市川森一。 監督は筧正典。 ストーリー 午前4時、偶々目が覚めて応接間の消し忘れたテレビを見る会社員の娘みかこ。 みかこは放映終了後のテレビに旅客機が映ってるのを目撃する。 その頃郷も南からの電話でそのテレビを見ていた。 そしてテレビの画面上で旅客機は何者かの怪光線により爆破されてしまう。 1時間後MAT基地でそのことを報告する郷と南。 MATに入った連絡によると旅客機は実際に東シナ海上で爆発しており、通信衛星が自動的にその様子を世界中に中継したとのことだった。 早速東シナ海上空に調査に行く郷、上野。 そこに電波を吸収する怪獣ビーコンが出現した。 電波が吸収され連絡の取れない郷、上野はビーコンを攻撃。 ビーコンの怪光線を危うく逃れ基地に帰還する。 MATの分析によるとビーコンは電離層に住み、電波を食べているという。 また自らも電波を発信することによりテレビ局と同じ機能を備えているということだった。 その頃江戸川区に住む土建屋の息子つとむがハム通信をしていた。 電波が切れ不思議に思うつとむだったが、茶の間のテレビは異常がない。 しかし母親が見ているメロドラマの最中、突然画面が切り替わり旅客機が映し出された。 対向する戦闘機に衝突し爆発する旅客機。 そこにビーコンを攻撃するためアローが登場した。 しかしビーコンの怪光線の前に撃墜されてしまうアロー。 その様子を見ていたつとむは「弱いなあ、MAT」と言う。 その頃MATでは電波を吸収され思い通りに戦えないことから、ビーコンの対策に苦慮していた。 東京中の電波を止め、ビーコンを誘き出し仕留めることを提案する郷。 MATは都内の電波を止めるよう呼びかけ、唯一電波を発するアローがビーコンを誘うべく海上を飛ぶ。 ビーコンが現れ通信が切れるのを待つMATだったが、なかなかその気配がない。 すると都内から別の電波が発信されていることが判明する。 「アマチュア無線だ」と郷。 ビーコンは無線の電波に引き寄せられ江戸川区内に飛来する。 急いで発信源を調べるMAT。 何とか発信源を突き止めた郷だったが、ビーコンは既につとむの家の間近に迫っていた。 破壊される家に救出に入る郷。 しかし郷は瓦礫の下敷きになってしまう。 ウルトラマンに変身する郷。 しかしウルトラマンはビーコンの頑丈な体や宙を漂う動きに大苦戦。 スペシウム光線も弾かれ、逆に電気ショックで倒されてしまう。 意識を失うウルトラマン。 その時ブレスレットが光り再びウルトラマンは起き上がった。 ブレスレットを投げつけると墜落するビーコン。 ウルトラマンは夕日に向かい飛んで行く。 再び深夜。 起き出すみかこ。 しかしもうテレビには何も映らない。 解説(建前) ビーコンは何者か。 ビーコンの被害は今まで報告されておらず、突如現れた印象がある。 まず考えられるのは宇宙怪獣説。 電波を吸収してレーダーに感知されないなら、誰にも気づかれず地球に飛来することも不可能ではないだろう。 MATステーションも飲み込まれて宇宙の警備が手薄になっている現状では十分ありうる話である。 次に考えられるのは地球にずっと住んでいたという説。 例えば南極の氷の中に閉じ込められていたとかで急に活動を始めたら、それまで被害がなかったのも当然ということになる。 ただこの説ではビーコンがどうやって南極の氷から脱出したかの説明が難しい。 また元々空中に住んでいた怪獣が電波を受けるうちにそれを吸収するようになったという説も考えられるが、それなら今まで存在が突き止められなかった理由が希薄になる。 結局宇宙から来襲し、電波の多い電離層に住み着いたと考えるのが妥当なように思う。 テレビで中継された旅客機と戦闘機の衝突シーンの時、何故旅客機側は操縦不能になっていたのであろうか。 ビーコンはレーダーを吸収するが、直接操縦を狂わすということはできないはずである。 これは機長自身動転していて、適切な言葉を選択できなかったのであろう。 管制塔と連絡が取れなくなったことから本来航路にいるはずのない戦闘機の存在を覚知できなかった。 急に目の前に現れた戦闘機に対する回避のための操縦がもはや不可能だったということである。 感想(本音) 地味ながら良く出来たお話。 この頃の市川脚本には外れがほとんど見られず、まさに脂が乗り切っていたと言えるだろう。 ただ個人的には子供の頃の印象は乏しい作品である。 かように市川作品は大人になってからでないとその良さがわかりにくい側面がある。 まずビーコンの造形。 昔は何となく天ぷらみたいに見えてあまりいいとは思わなかったのだが、今見るとなかなかユニークな造形で良いと思う。 そして何と言ってもその動きが面白く、吊り上げてウルトラマンにぶつかるシーンではウルトラマンがマジぶっ飛ばされてるほど。 テロチルスの時はやや強引だった飛行シーンが上手く撮影されていたと思う。 また地面を引きずりながら破壊するシーンは今までにない斬新さがあった。 そして秀逸だったのが、ウルトラマンが気を失ってそれをビーコンが見つめるシーン。 バックの夕焼けに宙を漂うビーコン。 この絵は何気に凄いと思う。 ビーコンがじっと見守るということはその様子を中継で見ている人もいるはず。 ビーコンが倒された時画面がぼやけてから倒れるのもその辺りを考えた演出であろう。 まあビーコンの発する電波は中継衛星を介しないと微弱なのかもしれないので、付近の住民以外は見れないのかもしれないが。 今回は坂田家の出番はなく、郷は自分のマンションらしきところで寝ていた。 後に次郎と住むことになるマンションだと思われるが、隣には果たしてルミ子さんは住んでいたのだろうか。 しかし南隊員はどうして深夜にテレビをつけたのだろう。 家に戻ったら消し忘れていたとかなのかもしれない。 今回の旅客機と戦闘機の衝突シーンはウルトラセブン「北へ還れ」の使いまわし。 そのため機長が「操縦不能」と言ってしまったものと思われる。 今回はウルトラマン出現のシーン、退場のシーンともに凝っていた。 また戦闘シーンも回転蹴りを逆回しにされたり、いつもと違う雰囲気を出していた。 ウルトラマンがやたら家を破壊するし、いつもよりかなり予算を使っていたように見える。 今回も郷は生き埋めになっての変身。 毎回ピンチにならないと変身できないので、各脚本家は苦労していると思う。 しかしつとむを助けたのにその母親に見捨てられる郷。 何となく不憫だった。 今回は話の中心が完全にビーコンにある。 これは前回の市川脚本であるベムスター編と同じような構成といえるだろう。 帰ってきたウルトラマンもこの辺りから明らかに話の雰囲気が変わって来ている。 それは地球怪獣が宇宙怪獣になり、戦闘の舞台が山から街中に変わったのにもよるだろうが、やはり坂田家を中心とした郷の成長物語が一段落ついたのが大きいだろう。 初期の泥臭い雰囲気も好きだったが、郷が一人立ちしつつあるこの時期の「帰ってきたウルトラマン」はまさにヒーロー物の王道を行く感じで個人的にも気に入ってる次第である。 |