宇宙から来た透明大怪獣


データ

脚本は上原正三。
監督は鍛冶昇。

ストーリー

学校で飼育する動物たちの体重を量る次郎達。
そこに空から大きな隕石が落ちて来た。
すぐにMATに連絡する次郎。
駆けつけた郷と上野はただの隕石だと言い、それを欲しがる次郎にその隕石を与えて帰って行った。
標本室で隕石を観察する次郎達。
しかし突如隕石は光り、巨大化し始める。
外に避難する次郎達。
しかし次郎はうさぎのピョン太を助けるため校舎に近付く。
巨大化した隕石により破壊される校舎。
そのさなか次郎は校庭に長い鼻を持った怪獣の影が映るのを目撃する。
直後崩れ落ちた瓦礫の下敷きになって意識を失ってしまう次郎。
入院した次郎を見舞う郷、上野。
次郎は2,3日で回復するとの事だが、次郎が見たという怪獣を見た者は誰もいなかった。
「本当にいたんだ」と次郎。
「今度出たら必ずやっつけてやる」と郷。
MATでは隕石の分析が行われていた。
岸田によると、物凄い引力で圧縮されていた隕石が地球の弱い引力で膨張したのではないかという。
次郎の証言を信じる郷は透明怪獣の可能性を主張する。
南は透明怪獣を見るために赤外線カメラを持っていくよう郷に指示する。
その夜、ドライバーが車ごと潰される事件が発生した。
上から1万5千トンもの圧力が加わっていることから透明怪獣の仕業を疑うMAT。
しかし周囲が壊されてないことから謎が深まる。
その時急にビルが崩れ出した。
郷が赤外線カメラのファインダーを覗くとそこには大怪獣の姿が。
ビルを目印に攻撃するMAT。
しかし見えない敵に苦戦し、岸田は負傷してしまう。
漸く姿を現した怪獣をアローで攻撃するMAT。
それを病室から見ていた次郎はMATを応援する。
ウルトラマンに変身するしかないと決心する郷だったが、隊長に赤外線カメラで怪獣を映しておくよう言われ、その機会を逸してしまう。
結局アローはやられ怪獣は姿を消した。
それを見た子どもたちは
「相手は宇宙怪獣だもの、勝てっこない」とMATを馬鹿にする。
MATの敗北を知り気を失う次郎。
その頃基地に帰った郷らは怪獣の分析を急いでいた。
分析の結果、怪獣はコンクリートに反応すること及び怪獣は中性子で構成されていることが判明する。
中性子には電荷がないため、自由にコンクリートをすり抜けられるのだという。
その時基地にいる郷の下に次郎重体の連絡が入る。
「なぜ負けたんだ。郷さんの嘘つき」とうわ言を言う次郎。
医者によると、次郎はMATが負けたという精神的ショックから容態が悪化したという。
「今度は勝てる自信がない。だから二度目の約束は出来ないんだ」と郷。
坂田と屋上に上がった郷は坂田から
「お前MATに入って駄目な男になったな」と一喝される。
「レーサーがレース中考えてるのは勝利の1字だけだ。お前は一度負けたくらいで尻尾を巻くのか。流星号に乗っていれば例えスピンしてもお前は勝利のゴールを目指したに違いない。いやお前はそんな男だった」。
「次郎の机の上にはお前の写真が飾ってあるんだ。次郎にとってお前は心の支えなんだ夢なんだ」。
「俺やります。もう一度やってみます」と郷。
MATは原子核放電作戦により敵の中性子を撹乱しようとする。
トランポリンで自らを鍛える郷。
怪獣出現の報にビハイクルで現場へ向かう。
一方アローは放電網をサータンに掛けサータンの姿を可視化することに成功。
しかしその強大な力により放電網を切り離すことになる。
地上から怪獣に向かって走りながら変身する郷。
姿を隠した怪獣を眼光で発見し、さらに空中へ逃げるサータンを追撃するウルトラマン。
最後は念力でサータンを宙に持ち上げブレスレットで爆破した。
生死の境を彷徨う次郎はウルトラマンの背中に乗り空を飛ぶ夢を見る。
目を覚ます次郎。
「奇跡だ」と医者。
その時すすだらけの郷が病室に入ってきた。
「勝ったぞ」。
喜び合う次郎達であった。

解説(建前)

サータンについて。
中性子怪獣とのことだが、私は文系ゆえ物理的なことはわからないのでそれがどういうことなのか皆目見当がつかない。
ただ車を踏み潰したり校舎を壊したりしたことから考えると、常に透明で物質をすり抜けるというわけではなさそうだ。
結局サータンは自分の意志で、若しくは何かのきっかけで体が中性子化するのだろう。
隕石の中に圧縮されて閉じ込められていたことといい、現在の科学では理解は不可能である。

事件当時の学校には次郎君ら数えるほどしか人がいなかった。
これは休みの日か何かに友達同士が集まって動物の観察をしていたのだろう。
標本室の鍵は用務員さんに借りたということか。
しかし怪獣が暴れてる時、大人は誰もいなかった。
これは用務員さんがその時たまたまどこかに出掛けていたからではないか。
後に何らかの責任が問われたことは想像に難くない。

次郎らはウルトラマンの故郷がM78星雲であることを知っていた。
これはどういうことか。
そのことを知ってるのは郷だけのはずであるが、郷がそのことをばらしたとはとても考えられない。
とすると誰がウルトラマンの故郷を知っていたのだろう。
これはこう考えるしかあるまい。
つまり新マンが来る以前からそのことは知られていた。

そう、科学特捜隊の時代にウルトラマンの故郷は知られていたのである。
そしてそれを教えたのはもちろんハヤタ。
ハヤタはウルトラマンに助けられ、話をしたということになっていた。
したがってウルトラマンの出身星を知っていても何も問題あるまい。
ハヤタの証言が元になり、ウルトラマンの故郷はM78星雲であるとデータベースに登録された。
それが一般にも出回った、若しくは郷からその話を聞いて次郎らが知るに至ったのであろう。
尚ウルトラマンとの連続性は最終回で明らかになっている。

感想(本音)

とにかくサータンの設定がインパクトのある話。
ゴルバゴスのように保護色ではなく本当に消えるのが凄い。
しかも物質をすり抜ける。
ただし物理的には大いに疑問が残る。
変にリアルに説明すると、この世界が破綻するという良い見本ではないか。
まあそのことは置くとしても、ストーリー的にはやや御都合主義的な話。
悪いエピソードではないが、やや甘いと言わざるを得ないだろう。
以下内容を見ていく。

まず隕石の話。
MATが調査したがこれは仕方ないであろう。
まさかあの大きさの隕石が膨張し怪獣になるとは想像できない。
宇宙怪獣というのは人間の常識を超えたものである。
前回も宇宙空間を漂いMATステーションを丸呑みしてしまったし。
この場面で重要なのは次郎のセリフ。
「知り合いなんてもんじゃない、兄貴みたいなもんさ」。
郷さんの花を大事にしたり、とかく郷シンパな次郎だが、これだけストレートにその関係を口にしたセリフは初めてだろう。

次郎にとって坂田兄は父親的存在であるため、歳が近い郷の方が兄的存在である。
ここまで上原氏は坂田家と郷との関係を様々に描いてきた。
しかし次郎と郷との関係はそれほど明確には描かれてなかった。
次郎にとって郷は兄であり、憧れの存在。
以後このテーマは最終回まで引き継がれる大きなテーマとなる。

今回は久々に坂田が存在感を発揮する。
郷の成長によりその役割を終えた感のあった坂田。
しかし宇宙怪獣出現により郷もまた振り出しに戻されてしまう。
前回はウルトラマン自身が兄代わりであるセブンに戒められるが、今回は郷自身が坂田に戒められる。
前回は市川氏がウルトラマン中心に描いてしまったためシリーズのフォーマットからはみ出してしまったが、それに対するメインライター上原氏の修復作業なのだろう。
しかしこういう展開は今回がラストで、シリーズが上原氏の制御下から徐々に離れていくのが窺われるエピソードでもある。

大全にも書かれているが、サータンの影のシーンは秀逸である。
子供心にも何となく怖かったのを覚えている。
しかしサータンは何故予告ではサターンなのだろう。
サータンの造形は長い鼻が印象的。
象なのにサータンという名前が何となくしっくり来なかった少年時代である。

怪獣を見たのに信じてもらえない次郎。
「本当にいたんだ。信じてくれよ」とエースの北斗のような扱いである。
しかし怪獣とMATが戦ってるからって病院のベランダでのん気に観戦とは如何なものか。
まあ、あの状況じゃもう逃げても無駄だからという開き直りかもしれないが、周りが避難してないと落ちてくるMATアローの犠牲者が増えるばかりだぞ。
街中で戦闘機が墜落しまくる状況はその危険度において沖縄の比ではない。

今回はあのヤブ医者がいい味出していた。
確かに次郎君は精神的ショックも大きかっただろうが、あれは最初に頭を打った後遺症じゃないのか?
それを「親にかまってもらいたいために病気になる子がいます」だと。
そんな無責任なことでいいのか?
最後次郎君が息を吹き返したら「奇跡だ」だし、使えないことこの上ない医者であった。
どことなく悪役メイクだし、予告編見たときは敵キャラだと思ってしまったぞ。

今回の郷は走りながらの変身。
これは前回で市川氏が危機的状況に陥らなくても変身できるとしたことを受けたものであろうが、監督の意向も大きいだろう。
そう言えば、前回に続いてビハイクルで延々と走るシーンが描かれていた。
同時撮影の使い回しだろうが、郷が単独行動することで変身の無理がなくなる新鮮な演出であった。

ところでトランポリンの特訓は何の意味があったのだろう。
単に爽やかな汗を流してるだけにしか見えなかったが。
これはやはり精神的なものを意図したのだろう。
キングザウルス戦の時のようにあの特訓が怪獣を倒すことに直結するとは思えない。
無理やり戦闘シーンでトランポリンの特訓を利用するかのようなシーンもあったが、結局はウルトラブレスレットの超能力を使っており、あまり意味はなかった。
今回は次郎との関係を描くのがメインであるから変身後の戦いはそれほど重要ではないのであろう。

前述したようにやや御都合主義的な話。
怪獣の設定もそうだが、やはり次郎のためだけに戦うというのは従来なかったものである。
その関係はレオやタロウを思い出させる。
その辺りここまでかなりリアリティに拘ってきた上原氏の脚本にしては少々甘い。
しかし本話により郷と次郎の関係がクローズアップされたことはシリーズ全体にとって重要な意味を持つ。

すなわち当初は次郎は坂田やアキの弟であり狂言回し的役割しか与えられていなかった。
しかし坂田は郷の成長により徐々にその存在意義が薄れ、また恋愛の相手であるアキはその恋を成就させることなくスケジュールという魔物に倒されることになる。
結果次郎は郷の私生活の部分を一手に引き受けることになった。
そして人間郷秀樹を描く上で欠かせない存在となるのである。

上原氏の脚本はこれ以降かなり減ることになる。
「帰ってきたウルトラマン」を軌道に乗せ、一応の役目は果たしたということだろうか。
本エピソードは上原氏の「帰ってきたウルトラマン」前半の総決算と言うことが出来るだろう。


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