二大怪獣の恐怖 東京大龍巻


データ

脚本は上原正三。
監督は富田義治。

ストーリー

大津波の前に立ちはだかるウルトラマン。
ウルトラマンは腕をクロスしたかと思うとそのまま高速回転し、エネルギーを蓄え始めた。
そのエネルギーを津波にぶつけるウルトラマン。
勢いを止められた津波は、そのままウルトラマンが両手を上げると空に舞い上がり海の方へ逆流し始める。
ウルトラバーリアにより、静けさを取り戻す海。
しかしエネルギーを消耗したウルトラマンはシーモンスの攻撃にあっさり敗れ、そのまま姿を消してしまう。
津波を恐れ迂闊に手出しできないMAT。
シーモンスの歌を解析し天と地の怒りについて検討する。
「攻撃しなければああやって大人しくしている」と加藤。
その時自衛隊の火器部隊がシーモンスを攻撃するとの連絡が入った。
「シーモンスを攻撃したために東京は津波の危機に瀕したのです」と加藤。
「でもウルトラマンが助けてくれた。いざという時には我々には強い味方がついている」と工場長。
何とか工場長を説得し3日の猶予をもらうMAT。
陽子と高村に会いに行った郷は陽子から高村が保険金の3分の1を支払わなくてはならなくなったと聞かされる。
シーモンスが船を襲う理由がないからだとか。
2日後、坂田工場に戻った郷は次郎の飼ってる文鳥を見て、怪獣も産卵に来たのではないかと考える。
宝石を狙ったのもそのための殻を作るためではないかと。
早速本部に帰り報告する郷。
隊長は「船長の潔白が証明された」と陽子に伝えに行くよう命じる。
しかし郷が病院へ行くと、高村は退院するところだった。
船主の話によると、高村は回復の見込みがなくそのため賠償金も免除されたという。
その頃自衛隊がシーモンスを攻撃するとの連絡が入る。
すぐに現場に駆けつけ、それを止めようとするMAT。
しかし工場長は「海底探索の結果シーゴラスが東京湾にいないことがわかった。もう津波を恐れる心配はない」と取り合わない。
「天と地の怒りがまだあります」と止めようとする郷だったが、自衛隊はシーモンスに火器攻撃を開始した。
途端に土煙が舞い姿を現すシーゴラス。
シーモンスとシーゴラスが互いの角を光らせると空は曇り、大龍巻が発生した。
「津波より恐ろしいことが起こるぞ」と郷。
2頭が巻き起こした龍巻は車を舞い上げ、建物を破壊し、付近をあっという間に廃墟に変えた。
「まさに天と地の怒りだ」と加藤。
都民は避難し大都会は死の街に変わる。
夕日をバックにじゃれ合うシーモンス、シーゴラス。
「東京は怪獣園ではないぞ」。
一喝するMATの長官。
加藤は新兵器を開発し怪獣の角を破壊する作戦を説明する。
「都民の間にはMAT不要論さえ囁かれておる」と釘をさす長官。
2日後MATは総力を挙げて完成したレーザーガンSP70を携え、怪獣に立ち向かう。
アローで空から攻撃する郷。
「許せ、お前たちは力を持ちすぎた」。
アローの攻撃に角を光らせるシーモンス、シーゴラス。
すかさずレーザーを放つ加藤だったがレーザーは角を逸れ、再び龍巻が巻き起こった。
退避するMAT。
加藤はアローの郷、上野に避難を命じる。
その頃陽子は高村を連れシーモンス、シーゴラスの近くにいた。
2頭の角の光を浴び、記憶を取り戻す高村。
「あれが天と地の怒りだ」。
記憶を取り戻し喜び合う2人。
しかし龍巻は二人のすぐ側まで迫っていた。
2人を発見し助けようとする郷。
しかし郷のアローは龍巻に巻き込まれてしまう。
回転するアローの中、ウルトラマンに変身する郷。
ウルトラマンは体を回転させ、龍巻を吸収する。
龍巻を抑えたウルトラマンだが2頭に挟撃されピンチに。
2頭の角から出た光波に絡め取られるウルトラマン。
その時MATのレーザーガンがシーゴラスの角を粉砕した。
光波を出せなくなったシーゴラスを投げ飛ばすウルトラマン。
角を破壊され力を出せなくなった2頭は海の方へ戻っていった。
正気を取り戻した高村は再び船長として海の旅に出る。
嬉しそうに手を振り見送る陽子。
シーモンスの歌を歌うその顔には、幸せそうな笑みが輝いていた。

解説(建前)

高村は何故賠償金を免除されたのか。
法的に意思無能力者になったとしても、当然に賠償金が免除されないことから問題となる。
この点保険会社としては船長の責任を追及して求償権を行使するのが普通である。
とするとわざわざ保険会社が自らの不利益を甘受して求償権を放棄するとは考えられない。
これはおそらく世界宝石展の主催者側が高村の債務につき免除したのだろう。
理由はわからないが当事者同士で高村の責任は追及しないということが取り決められたものと思われる。
陽子側が争う姿勢を見せたため、裁判になって面倒になることを危惧したのかもしれない。
なお私は保険や海商法に疎いので、あくまでこれは私の想像に過ぎないことを断っておく。

ウルトラマンが弾き返した津波により日本の対岸の国に逆に津波が起きてしまわないか。
これは一旦津波を弾き返して津波同士をぶつけ、勢いを相殺した後さらにウルトラマンが鎮めていることから心配ないと思われる。
津波を弾き返すくらいだから、その後抑えることくらい容易いことだろう。
弾き返しっぱなしではないことは話を見てればわかる。

感想(本音)

津波を撥ね返すウルトラマン。
凄すぎる。
しかもこの特撮の力の入っていること。
6話でも書いたがとても子供向けテレビ番組として毎週放送されていたとは思えない。
初代マンやセブンを少なくとも映像的には超えていたというのは紛うなき事実であろう。
では以下細かい点を。

まず大全で指摘されていたクライマックスが6話に類似していた点。
確かにその通りであるが、果たしてそれはこのドラマのクライマックスなのだろうか。
実はこのドラマのクライマックスはMATの攻撃が失敗して大龍巻が起こった点にあると私は考えている。
長官が出てきたのは後編も既に終盤に差し掛かった時点。
5話で早々と登場していたグドン編とは異なる。

この物語はあくまでシーモンス、シーゴラスとその歌の謎解き、そして高村親子に中心がある。
従ってこの場面はクライマックスと見るより、その展開の中に差し込まれた1場面に過ぎないと考えるべきではないか。
レーザーでシーゴラスの角を破壊しウルトラマンを助けたのも、MATが結果的にウルトラマンと怪獣を助けたという意味合い以上のものはないであろう。
その証拠に最後はシーモンスの歌を歌う船長と陽子のアップで話は終わっている。
怪獣の鍵を握る南国の謡。
その意味を知る高村。
中心はMATにはないのである。

エネルギーを使い果たしたとはいえ、シーモンスに不甲斐なく空に突き上げられる新マン。
強引な態勢での突き上げられ方といい、如何にも新マンらしいやられっぷりだ。
今回は津波の特撮といい、龍巻といいその迫力はシリーズ随一。
龍巻のフィルムはライブ映像が多く使われてるということだが、ビルの中の人間の避難シーンはどうやって撮ったかわからないくらいリアルだった。
空の大怪獣ラドンのライブだそうだが、詳しくは大全にあるので興味のある人は是非そちらをご参照願いたい。

今回坂田家は郷の謎解きのためだけの登場。
坂田家の役割の低下を象徴するが、これも郷の成長の所以だろう。
しかしホームドラマ的要素や恋愛の要素は以後も残るので、アキと次郎の役割は変わってないといえる。
結局郷の成長により坂田の比重が低下したということであろうか。

高村は天と地の怒りを知っていた。
これは原住民から歌を教わった時に聞いていたのだろうが、物語的にあまり意味はなかった。
無鉄砲な陽子といい、やや違和感が残るところであった。
また前編のラストと重なる点はやはり少しくどいというか、不自然な感じも受ける。
郷を変身させるためであろうが、陽子の勝手ぶりは自己責任が問われても仕方ないであろう。

最後ウルトラマンはシーモンス、シーゴラスを殺さず見送っている。
2匹が何処に帰ったかはわからないが、何処か無人の島で産卵をしたものと考えたい。
しかし人をかなり殺してるのにこの2匹は何処か憎めないのは何故なのか。
いい怪獣、悪い怪獣の区別の基準がわからない。
結局逃げ帰ったから見逃したという程度なのだろうか。

相変わらず無能な長官。
「新兵器」という時のセリフが馬鹿丸出しだ。
しかしこの長官ほどむかつく長官はいない。
セブンではいい長官を演じていただけに、この人の演技力の凄さには今さらながら驚かされる次第だ。
「いち早く都民に安らぎを」って?
スパイナーを使おうとしたお前が言うなよ。

何故かジープを動かしながらシーモンスの角を狙うMAT。
止めて撃ちゃいいのに、案の定外して龍巻を起こさせるわもう少し考えろ!
自衛隊も海を探索したのは凄いが、短絡的過ぎ。
上原氏が自衛隊嫌いなのはわかるが、あまりにも酷い組織だった。
しかし大龍巻の後、工場長も自衛隊も出なかったけど、これって…。

MATを怪獣側に立たせることによって、軍隊や資本家を悪に仕立て上げている本話。
この辺り上原氏の問題意識の現われなのだろう。
しかしMATが怪獣を攻撃しないのは、天と地の怒りなどの怪獣の脅威を恐れてのもの。
あくまで冷静に怪獣に対処しようとするMATの姿勢は普段どおりと言える。
怪獣保護という問題意識は新マンのテーマではないのだろう。
とは言え「許せ、お前たちは力を持ちすぎた」というセリフに象徴されるように郷は戦いに躊躇を感じている。

この問題意識は後に上原氏自身の手により、ウルトラマンタロウ4,5話においてメインテーマとして展開されることになる。
タロウ4,5話においてはZATは暴れるキングトータス、クイントータスに攻撃することを躊躇してしまう。
ここでは怪獣保護の意識はZAT全体のテーマになっている。
そしてタロウ自身も戦いに迷いを生じるのである。
この辺りタロウのテーマに合わせた上原氏自身による見事な換骨奪胎と言えようか。

話は逸れたが、今回は帰りマンの中でも怪獣に中心が置かれている珍しい話である(怪獣退治に主眼がある話はあったが)。
初期のテーマを消化し、上原氏自身色々模索しているのが窺えるこの時期。
結局、帰りマンの新展開は市川、石堂両氏の登場まで待つことになるのだが、シュガロン編、テロチルス編とハイクオリティな作品を連発する上原氏の底力はさすがとしか言いようがない。


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