データ 脚本は上原正三。 監督は筧正典。 ストーリー 次郎は怪獣研究会の仲間とともに工事現場で化石の発掘をしていた。 そこへパトロール中の南と郷が現れる。 2人が担任の吉本先生と話をしていると、突然工事のブルドーザーが発掘現場に向かって突っ込んできた。 すると崩れた崖から恐竜の尻尾の化石らしきものが現れる。 郷は工事を急ぐ作業員に対し「MATとしても調査の必要がある」と言い、子供達にその化石を発掘させる時間を与えた。 「心臓の鼓動音も聞こえない。これなら心配はない」。 基地に戻った郷と南は隊長に危険性はないと報告する。 その時郷と南に電話が掛かってきた。 明日怪獣研究会の子供達の研究発表会があるから来て欲しいとのことだった。 翌日、郷と南は子供たちが研究をまとめたというスライドを見る。 そして工事現場で発掘された恐竜の尻尾の化石に子供たちがステゴンと名付けたことを知る。 スライドを見終わって子供たちが工事現場に行くと、そこには「立入り禁止」の看板が立っていた。 公団側は工事の妨げになることから化石を爆破するという。 反対する子供たち。 しかし公団側はダイナマイトの爆破スイッチを押した。 しかしステゴンは爆破されない。 それどころかステゴンは全身の姿を露にした。 もう一度ダイナマイトを仕掛けようと近付く作業員。 その時ステゴンから黄色い液が流れ出した。 それを浴び泡のように溶ける作業員。 郷と南がMATに戻ると、隊員たちが出動するところだった。 「お前たちの調査もあてにならんな」。 丘からステゴンの事を聞いた郷と南は「子供たちの願いなんです」とステゴン爆破に反対する。 ステゴンの鼓動を耳にする郷。 「ダイナマイトで蘇ったに違いない」。 「元通りに埋めてください」と郷。 しかし「MATは国家の事業に協力しないんですか」と公団側に言われ加藤は爆破を決意する。 爆薬をセットし爆破を命じる加藤。 しかしステゴンは爆破のショックで動き出してしまった。 攻撃するMAT。 「次郎君、ステゴンは死にやしない」と郷。 結局ステゴンは地中に潜ってしまった。 基地に戻ったMATはステゴンを爆破したことで意見が対立する。 「爆破指令は間違ってます。反省してください」と郷。 「お前たちが前もってちゃんと調査していればこういうことにならなかった」と岸田。 「恐竜は確かに死んでいました。爆発のショックで蘇ったんです」と郷。 「奴は初めから生きていた。いや深く冬眠してたというべき」と岸田。 「爆破さえしなければあのまま眠り続けていたに違いないんだ」と南。 しかし加藤は「私は間違っていたとは思わん。私は次の2点において決断した。その1つはあのままでは工事に支障をきたすこと。その2はあの溶解液が恐るべき凶器だということだ」。 「結果としてああいうことになってしまったが、この決着は私の手でつける」。 再び工事現場にステゴンが現れた。 本部ではステゴンをおびき出して退治する作戦が練られる。 しかし討伐に反対した南と郷は、作戦から外された。 ビハイクルで待機し作戦を見守る2人。 「聞こえる。近くにいる」。 怪獣の声を聞く郷。 地中から現れたステゴンを高圧電流と発火弾で挟撃するMAT。 しかし爆破した炎はステゴンの出す消化煙で消されてしまった。 通常攻撃に切り替えるMAT。 仲間のピンチに援護に飛び出す南。 隊長は目に麻酔弾を撃ち込むためステゴンに接近する。 しかし隊長がピンチに陥った。 「隊長が危ない」。 ステゴンを引き付け崖から転げ落ちる郷。 郷はそのままウルトラマンに変身した。 ウルトラマンはスペシウム光線を浴びせるがステゴンには通用しない。 しかしステゴンは怯えて戦おうとしない。 「ステゴンを殺さないで」と子供たち。 ウルトラマンは攻撃を止めステゴンを大人しくさせようとするが、白煙を浴びせられてしまう。 「ウルトラマンが危ない。ウルトラマン頑張れ」と子供たち。 その時ステゴンに撃ち込んだ麻酔が効いてきた。 ウルトラマンはステゴンの動きを止めそのまま宇宙に運んで行った。 「ステゴンは何処に行ったの」と次郎。 「宇宙へ行ったんだよ」と郷。 「誰にも邪魔されず冬眠できるってわけだ」。 夕焼けの空には星になったステゴンの姿が浮かび上がっていた。 解説(建前) ステゴンは何者か。 吉本先生によると古代の剣竜の化石とのことだが、それにしても爆破により生き返るというのは理解できない。 しかも消化液を吐いたり溶解液を出したり、ただの大人しい草食恐竜というには危険すぎる気がする。 これはやはりシーボーズのように元々こういうデザインの怪獣だったのではないか。 それが爆発のショックで蘇った。 そもそも古代の恐竜自体未知な部分が多い。 吉本先生も特に専門家でもないし、剣竜の化石と決め付けるには根拠が薄いと思われる。 最後ウルトラマンはステゴンを何処に連れて行ったのか。 これはやはりどこかの星に連れて行ったと考えるのが妥当だろう。 硬直光線か何かでステゴンを仮死状態にして、宇宙空間に持ち出した。 そしてステゴンの周りに特殊なバリアーでも張って宇宙空間を移動したものと考えられる。 あるいは元々死んでいた怪獣だから、宇宙空間でも耐えられたのかもしれない。 恐竜と怪獣の違いは何だろうか。 まず炎を吐くとか光線を出すとかその辺りで区別できるのかもしれないが、そういうのを出さない怪獣もいるので一概には言えない。 また特別変異的に発生し、同類がほとんどいない場合が怪獣なのかもしれないが、兄弟怪獣なんかもいるのでそれも違うだろう。 あるいは単に人間にとって脅威にあたる場合を怪獣と呼ぶとか。 しかしピグモンのように人間の味方の怪獣もいるので、それも違うだろう。 結局古代に生きていたか否かで区別するしかなさそうである。 ゴモラのように現在でも生きている恐竜は恐竜でもあり古代怪獣でもある。 そう解釈するしかあるまい。 感想(本音) 恐竜の化石が生き返るという不思議な話。 怪獣研究会の割りに恐竜の研究をしてたりと、恐竜と怪獣の区別が曖昧で見てる方もこんがらがる。 全体的にやや強引な話で上原氏が色々模索してるのが窺えるストーリーである。 監督は筧氏。 筧監督らしいライティングでお馴染みMATの対立劇が描かれており、初期のラインを踏襲する話である。 しかし今回は今まで以上に子供たちに焦点が当てられており、話自体は初期独特の重さはない。 もう少し子供たちにわかりやすい明るい話を作ろうということなのだろうか。 にしては作業員を溶かしたり、ステゴン自体は怖い怪獣だが。 それでは以下中身について。 工事現場で化石を掘る子供たち。 大全によると当時は建築ラッシュでこういう化石や遺跡が出ても、密かに潰してしまうことが多かったという。 したがって今回の話のように工事関係者が化石を潰そうとすることはごく普通の行為なのであろう。 この工事は「MATは国家の事業に協力しないんですか」というセリフにある通り、国による工事である。 国家による事業(=高度経済成長)により恐竜の化石(=自然や文化)や子供たちの心(=人間)が蔑ろにされる。 そういったことに対するアンチテーゼの意味合いも、本話にはあったのだろう。 今回恐竜爆破に関してMAT内で意見が分かれている。 爆破により恐竜が蘇ったという郷の主張は彼のウルトラマンとしての能力から真実である。 しかし一般人の目からは郷らが冬眠している怪獣を見抜けなかったというのが真実であろう。 この点に関しては明らかに郷側の分が悪い。 ましてステゴンは溶解液を出す危険な怪獣である。 この点に関する郷や南の態度はMAT隊員としていかがなものか。 もちろん多分に心情的なものがあるので、最後は作戦に加わっていたが。 しかし国家の事業はさておき、人を殺してる怪獣を助けようとするのはやや無理があろう。 因みに岸田の「お前たちの調査もあてにならんな」は明らかに自らのツインテールの時の話の引き合いである。 怪獣研究会のスライドでザウルスをゾールスと言っていたのが気になったが、これはキングザウルス3世辺りと差別化を図るためなのだろう。 一応作り手は恐竜と怪獣を別物と考えてるようである。 しかし「ゴジラ対ラドン」を見たとか、「レッドキングとどっちが強い」とか解釈に困るセリフが多い。 怪獣が日常的に現れる世界で化石の発掘をするというのも何だか不自然だし、どうも現実とフィクションが同居してる嫌いがある。 話の都合上子供たちの心情を視聴者の子供たちの心情にシンクロさせているのであろうか。 この子供たちとステゴンのある意味ファンタジーな関係がMAT対立劇がありながらそれをあまり深刻なものに感じさせない理由かもしれない。 ところで哺乳類は変温動物じゃなく恒温動物ですよ。 これはスタッフが気付かなかったのか、あえてわざと子供たちに間違えさせたのか。 素直に前者と考えるのが妥当であろう。 今回は子供を中心に据え、ここまでの話とは少し違う作風の話になっている。 しかし上原氏はこういう話が苦手なのか、決してその出来は良くはない。 個人的に何故そこまでステゴンだけを擁護するのか納得がいかない。 ステゴンはどう考えてもかなり危険な怪獣である。 子供たちが化石として掘っていたからというのはわかるとしても、子供たちもステゴンの危険性はわかるはずなので、この展開はあまりにも無邪気すぎるのではないか。 被害にあった作業員もある意味国家の事業の犠牲者なので、過失にしてもそれを殺してしまったステゴンをあまり擁護する気にはなれない。 大全にもあるが、この話は「ウルトラマン」「恐怖の宇宙線」のリメイクである。 しかしガヴァドンが元は子供たちの落書きであったのに比べると、ステゴンに対し子供たちがそこまで感情移入する必然性に乏しい気がする。 またガヴァドンは眠ってるだけで人に直接危害を加えなかったのに対し、ステゴンは人を1人殺しており特別保護する必要性も感じられない。 もちろんあえて人を1人殺すことによりエピソードの類似性を回避しようとしたのかもしれないが、「ステゴンを助けて」だの、ウルトラマンがピンチになると「ウルトラマン頑張れ」だの、正直子供の身勝手さばかりが目に付く。 本当は上原氏自身、この話に乗り気ではなかったのではないか。 ここまでほとんど1人で脚本を書いてきた上原氏。 さすがにこの辺で少し行き詰ってきたのではないか。 個人的にはあまり評価できない本エピソードである。 |