怪獣総進撃


データ

脚本は上原正三。
監督は本多猪四郎。

ストーリー

「世界各地が異常気象に覆われている。 日本列島でも毎日のように起こる小地震が不気味な地殻の変動を告げ、遂に怪獣達がいっせいに眼を覚ました」。
東京湾にオイル怪獣タッコング、ヘドロ怪獣ザザーンが出現。
「M・A・T、MATとはMonster Attack Team の略称で、国際連合機構の地球防衛組織に属し、地球の平和を守るため、あらゆる怪事件に挑む特別チームなのだ」。
MATが怪獣迎撃のためアローで出撃。
その頃東京のとある下町。
坂田自動車工場に住む少年、坂田次郎が怪獣を見るために勝鬨橋に向かった。
それを追って坂田自動車工場で働く修理工、郷秀樹も勝鬨橋に向かう。
そこでは二大怪獣が戦っており、MATの隊長加藤も現場にいた。
「こどもを助けてください」。
鳩を逃がそうとして逃げ遅れたこどもがいるらしく、その母親が加藤に頼んだ。
加藤と一緒にいた女性隊員丘が子供の救出に向かおうとしたその時、
「女じゃ無理だよ」。
郷秀樹が丘を制して、危険を顧みずこどもの救出に向かった。
子供を何とか助け出し、繋がれた子犬まで助けた郷。
しかしザザーンを倒したタッコングが間近に迫り、郷は潰れたマンションの下敷きになってしまう。
さらに怪獣が迫ったその時、怪獣の体にスパークが走り怪獣は海底に逃げ去った。
助け出された郷は病院に運び込まれるが、その命は風前の灯火であった。
「この青年を死なせてはいけません。子供の命、いや子犬の命まで助けたのです」と加藤。
病室に坂田自動車工場を経営する坂田が入ってきた。
「流星号が完成したぞ、いつでも走れるんだ」。
しかし郷は、坂田健、その妹アキ、弟次郎が見守る中息を引き取ってしまう。
その夜、自動車工場に戻った坂田らは完成した流星号に花を手向け、送り火として火をつけた。
「郷、俺がお前にしてやれるのはせいぜいこの程度だ。あんまり飛ばすんじゃねえぞ」と坂田。
炎を上げて燃える流星号。
「さよなら、郷さん」と次郎。
涙に暮れるアキ。
一方その頃病院では郷の死体が光に包まれ何者かが郷に語りかけていた。
「郷秀樹。私は君の勇敢な行動を見た。自分の危険も顧みず子供を助けようとした君に感動した。私はこのままの姿では地球にとどまることができない。だから君に命を預ける。一緒に地球の平和と人類の自由のために頑張ろうではないか」。
郷に乗り移るウルトラマン。
眼を覚ます郷。
それを見て驚く看護婦。
そのころMAT基地ではタッコングの調査についての報告がなされていた。
MATに連絡が入る。
「郷さんが生き返ったそうです」と丘。
その頃坂田工場では郷が流星号をもう一度作るよう、坂田に進言していた。
しかし坂田は「その必要はないよ。君は今日からあの人のところへ行くんだ。君をMATチームの一員として是非欲しいと仰ってる」と言う。
そこに加藤がやってきた。
「君は灰の中からフェニックスのように蘇った。君の不屈の精神力、強靭な肉体は我がMATチームにふさわしい」。
「来てくれるね」と加藤。
「急にそんなこと言われても俺…」と郷。
その時郷の耳に何かが聞こえた。
「誰かが俺を呼んでいる」。
突き動かされるように車に乗り朝霧山に向かう郷。
加藤にも連絡が入り、朝霧山に怪獣出現の報が入る。
「俺はいったい何処に行くんだ」。
MATはアローで怪獣を攻撃し、村民を避難させるため着陸して攻撃する。
一方車で駆けつけた郷は家の下敷きになる老人とそれを助けようとする娘を目撃。
郷は老人を助けようとするが、なかなか上手くいかない。
そうこうしてる内に煙が充満する。
何とか倒木を動かす郷。
その時光が郷を包み込み、郷はウルトラマンに変身した。
怪獣アーストロンと格闘するウルトラマン。
しかしカラータイマーが赤に変わりピンチに陥る。
ウルトラマンは地球上では3分間しか戦えないのだ。
何とか最後はスペシウム光線で怪獣を倒すウルトラマン。
ウルトラマンは空の彼方に飛び去った。
戦い終わったMAT隊員たちは川原で食事を取る。
その時、隊員たちは川原に倒れる郷を発見した。
「郷君じゃないか。駆けつけてくれたんだな」。
喜ぶ加藤。
加藤は郷を隊員たちに紹介する。
「今日からMATの一員になる郷君だ。勇敢な青年だよ」。
紹介され、それぞれの隊員と握手を交わす郷。
その時郷に語りかける声が。
「郷秀樹、私はウルトラマンだ。君は一度死んだ。そこで私の命を君に預けたのだ」。
「そうだったのか。一度死んだ人間が生き返るのは俺も不思議に思っていた」。
「君はもうウルトラマンだ」。
「俺がウルトラマン?」
「それは君と私だけの秘密だ。人類の自由と幸福を守るためにともに戦おう」。
「俺はウルトラマン。俺の使命は人類の自由と幸福を脅かすあらゆる敵と戦うこと」。
心に誓う郷であった。

解説(建前)

MATは何故結成されたのか。
怪獣が日本に現れたのはザザーンとタッコングが最初と考えられる。
それ以前はおそらくかなり遡ることになるだろう。
これはおそらく他の国で既に怪獣が現れていたのを受けて、MATが結成されたのだと考えられる。
ただMATはほとんど怪獣を倒せないほど弱い。
これは日本に出てくる怪獣が強敵なのと、装備が憲法上の関係で手薄なのが原因だろう。
しかしMATが怪獣を全く倒せないチームかと言えば、そうは思えない。
おそらくテレビで放送される場面以外で活躍してるのではないか。
そのことはまた後に語る。

ウルトラマンが最初透明だったのはなぜか。
これはまだウルトラマン自身、地球にとどまる準備が出来ておらず、姿を現すのを控えたのだろう。
後は宇宙から飛んで来たためエネルギーが足りず、簡単な光線で怪獣を撃退したものと考えられる。

ウルトラマンは「このままの姿では地球にとどまれない」と郷に言っている。
これはどういうことか。
エースの時にも書いたと思うが、ウルトラマンは変身した姿では地球上でのエネルギー消費が激しく長く留まれない。
そこで普段は人間の姿になるか、人間の姿を借りるかして、エネルギー消費を抑えるとともに充電してるのだろう。
セブンと違い死人に乗り移ったのは、その方が戸籍やなにやらで都合がよく、地球に溶け込みやすいと思ったのであろう。

感想(本音)

記念すべきウルトラマン復活第一作。
怪獣総進撃にふさわしく、三体の怪獣が登場する豪華版となっている。
監督はウルトラ初登板の本多猪四郎。
盛り沢山の内容をスピーディーに処理しており、さすが一流監督である。
ただし、最後の明星のショットは漫画的でやや子供向けか?

脚本は本作のメインライターである上原正三。
今までのウルトラとは明らかに違う細かい人間描写は、知らない人が見たら子供向けとはとても思えないだろう。
特に郷の死ぬシーンは流星号を燃やすシーンに代表されるように、完全に子供向けを逸脱している。
ここら辺り、明らかに今までのウルトラと違うことをやろうとしているのが見て取れる。
因みに「帰ってきたウルトラマン大全」(以後大全と略す)に、このシーンを捉えて過去のシリーズとの決別を指摘している。
流星号のマークがあの科特隊とほぼ同じことからも、興味深い指摘である。

それでは以下個人的な感想を。
まずオープニング。
何ともきらびやかで、心躍らされるものがある。
初代マンやセブンでは、どとらかと言うとおどろおどろしかったのとは対照的。
ただし、あの透明感は少し人間を不安にさせる要素もある。
その辺り何処となく影のある本作のイメージにマッチするものだろう。

いきなり2大怪獣が出現するのはいいが、ザザーンは知らない間にやられていた。
第一話に出ながら、新マンで1番影の薄い怪獣かもしれない。
MAT出撃におなじみのワンダバ。
帰ってきたウルトラマンの劇伴には素晴らしいものが多いが、その中でも白眉であろう。

坂田自動車工場は何とも泥臭い雰囲気がする。
しかし第1話から次郎君は無茶する。
おかげで郷さんが死んじゃったじゃないか。
しかし次郎君も怪獣を見たことがなかったので、見てみたいというのはあったのでしょうね。
怪獣については海外や昔の情報で知っていたのだと思われます。

坂田アキちゃんは歴代ヒロインでもナンバーワンのかわいさだ。
さすが当時既に人気だったアイドル女優だけはある。
しかしそれが思いもかけぬ展開を呼び起こすのだから、世の中わからないものだ。
坂田健を演じるのは名優岸田森。
台詞回しは微妙なところがあるが、その圧倒的存在感は番組を象徴するものであろう。
彼の存在抜きに「帰ってきたウルトラマン」は語れない。
因みにエースのナレーションも担当しておられました。

加藤隊長演じるのは塚本信夫。
その人情味のあるキャラクターは今までの隊長とはまた違う魅力を持っている。
優しさの中にも厳しさがある。
坂田とは違う魅力で郷を支える重要なキャラクターである。
しかし当人の意思をほったらかしで、2人で勝手に入隊を決めるなよな。
命がけの危険が伴う仕事なのに。
一度死に掛けたからいいのか?

丘隊員は違和感のある長髪姿。
凄く似合ってるのだが、MAT隊員としてはふさわしくない。
後に短く切られるのはその辺りを考慮してなのだろう。
しかしアキちゃんとはまた違う魅力を持った女性である。
あるいはアキの恋敵的役割を期待されていたのかもしれない。

「女じゃ無理だよ」と自らこども救出に向かう郷。
やや男尊女卑的で問題あるが、男たる者やはりこうあるべきで、あまりとやかく言わない方がいいと思う。
ヒーローものなんだし。
しかし民間人の郷に危険なことをさせ、死なせてしまった隊長の責任は大きいと思うぞ。
だから隊長は必死で郷を助けるよう医者に言ったのだろう(?)。
郷を入隊させたのも自分の不始末をマスコミに告発されるのを恐れたのかもしれない(嘘です)。

アキちゃんは十字架を持っておりクリスチャンであることが判明。
ただし敬虔なというよりはたまに教会に行く程度ではなかろうか。
帰ってきたウルトラマンでは31話にも教会のシーンが出てくるが、ウルトラシリーズにはキリスト教的世界観がマッチするんでしょうかね?

ウルトラマンが郷に乗り移るシーン。
倒れこむときの庇い手が、物言いがつきそうでした。
郷は変身するとき少女や老人の間近で変身している。
これは少女と老人が煙で気を失っていたと解釈するしかないだろう。
ウルトラマン自身「2人だけの秘密」と郷に言ってるし。

帰ってきたウルトラマンの基本設定が語られる第一話。
坂田家との関係、郷の死やそれに伴う身内たちの悲しみの細かい描写、まさに人間ドラマ重視の新しいウルトラマン像がそこに見て取れる。
特に普通の人間である主人公がウルトラマンであるという自我を持つという展開は今までになかった画期的なもの。
主人公の内面はセブンにおいて描かれてはいたが、それはセブンが宇宙人であるという特殊なもので(もちろん寓話的ではあったが)身近な人物ではなかった。
この人間ウルトラマンという新機軸はこれからも色々なドラマを見せてくれることになるが、それは次稿以降に譲ることにしよう。


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