アンドロイド0指令


データ

脚本は上原正三
監督は満田かずほ

ストーリー

宇宙人の侵略から地球を守るため、日夜パトロールを続けるウルトラ警備隊。
ある風の強い夜、ポインターで街をパトロールするソガとフルハシの前に一人の女性が飛び出してきた。
女性はポインターに近づくと、フルハシにモロボシ隊員かどうか尋ねる。
モロボシダンと名乗るフルハシ。
「お会いしたかったんです」。
女性が手を差し出したので、握手をするフルハシ。
すると女性の手から高圧電流のようなものが流れてフルハシは悶絶する。
逃げる女性を追おうとするソガだが、女性の逃げ足は速くすぐ見失ってしまった。
戻ったソガがフルハシの手を開くと女性のつけていたブローチが。
基地に帰った2人。
「ウルトラ警備隊員としては少し迂闊だったな」とキリヤマ。
僕の身代わりにやられたようなものだと謝るダン。
「問題は、なぜモロボシダンを狙ったかだ」とキリヤマ。
ブローチの文字を解読したとアマギ。
そこには「アンドロイド0指令」と書かれていた。
「僕にその女を追わせてください」とダン。
「俺も行くよ」とフルハシ。
しかし怪我をしていることから、ソガが代わりに行く。
パトロール中の2人は団地の公園で遊ぶ子供たちを見かける。
子供たちの持っていたおもちゃの銃を見るダン。
「まるで本物だ。とてもおもちゃとは思えない」。
また子供たちが共通のワッペンをつけているのに気づくダン。
「どこで買ったの、これ」。
「おもちゃじいさんだよ」。
「そのワッペンも」とダン。
「そうだよ、おもちゃを買うとおまけに付けてくれるんだ」と子供。
「あそこにいるよ」と別の子供。
公園の端でジェット機のおもちゃを売る老人。
老人は子供たちの前でジェット機のおもちゃを飛ばして見せる。
墜落したおもちゃを拾って老人に渡すダン。
今日はこれくらいにしようと引き上げる老人。
老人を尾行する2人。
家の近くで赤ん坊を持った主婦に挨拶する老人。
老人が家に入ると後をつけてきた2人は主婦に話しかけた。
「あのじいさん、いつ頃からあそこに住んでるんですか?」とダン。
「かれこれ1年くらいになるかしら」。
「子供好きないいおじいさんですよ」と主婦。
そこへ本部のアマギから連絡が入る。
ブローチは宇宙金属でできているという。
おもちゃの銃を持って遊ぶ子供たちが落としたワッペンを拾い上げるダン。
2人は基地へ戻る。
その頃老人は地下室へ行き、何者かと話していた。
「どうやら嗅ぎつけたらしいな。こっちも準備完了だ。今夜あたりやっちまおうかな」。
子供たちが落としたワッペンを分析した結果、ブローチと同じ宇宙金属でできていた。
また、ワッペンはある種の周波だけをキャッチするように特殊加工されていた。
「子供たち。おもちゃ。ワッペン」とダン。
「0指令。全くわからんな」とフルハシ。
老人を徹底的に調査するよう指示を出すキリヤマ。
地下室で一人チェスを指す老人。
「さあて、そろそろ出かけるかな」。
戸棚を開けるとそこには女性の人形が。
人形はすぐにフルハシを襲った女性の姿に変った。
「アンドロイド0指令。今夜発令する。そのためにはモロボシダンの動きを封じなければならん。それがお前の役目だ。お前はそのために作られた」。
「わかっております」。
「二度と失敗は許されんぞ。何としてでもモロボシダンを」。
「M地点に誘い込みます」。
「それがよかろう。そろそろこっちへ向かっているころだ。行きなさい」。
出て行く女性アンドロイド。
女性アンドロイドはダンとソガのパトロールするポインターの前に飛び出すと、2人を誘導するように走り出した。
女性を追う2人。
「なんて逃げ足の速い女だ」とソガ。
「あれは人間じゃない」とダン。
閉店後のデパートに逃げ込む女性アンドロイド。
中に入る2人。
すると「午前0時の時報とともにアンドロイド0指令が発令されます」という女性アナウンスの声が聞こえてきた。
真っ暗なデパートの中を探索する2人。
繰り返し流れるアナウンス。
「貴様何者だ。アンドロイド0指令とは何だ。答えろ」。
闇に向かって叫ぶソガ。
すると、2人の前に老人と女性アンドロイドが姿を現した。
「お答えしよう。アンドロイド0指令。簡単に言うとまず、催眠周波を子供たちに送って催眠状態に置く。それからあのおもちゃ。実は本物なんだ。機能は止めてあるがね」。
「そのためにワッペンを」とダン。
「左様。あのワッペンは子供たちに催眠周波を与え、おもちゃを実戦用の武器に切り替える役目をする」。
「そんなことができると思っているのか」とソガ。
「できるね。見ていたまえ。午前0時の時報とともに子供たちのおもちゃが一斉に凶器になるんだ。私のばら撒いたおもちゃがな。催眠状態に置かれた子供たちは私の思い通り操ることができる。子供たちの持つ最新鋭の武器は地球上の如何なる武器よりも強力だ。まして、地球の大人たちは子供には武器は向けやしないだろう。だから子供たちは何の苦労もなく、ごく平和的に、東京、日本を、いや全世界をたちまち占領してしまうというわけだ」と老人。
「おもちゃが本物になってたまるか」とソガ。
「では、納得させてあげよう」。
2人に向かって火を噴くおもちゃの戦車。
さらにおもちゃの戦闘機も爆撃してきた。
足を負傷するソガ。
負傷したソガを連れて逃げるダン。
行く手には女性アンドロイドが。
倉庫に逃げ込む2人。
本部に連絡を取ろうとするも妨害電波でなかなか繋がらない。
「こちら本部」とアマギの声。
漸く電波が繋がった。
おもちゃの戦闘機に襲撃されソガが負傷したことを伝えるダン。
信じないアマギ。
「冗談言ってんじゃありません。いいですか。僕は寝ぼけてるんじゃないんですよ。これは事実なんです。おもちゃが本物になったんですよ」とダン。
「もっと落ち着いて話せ」とキリヤマ。
アンドロイド0指令の内容を伝えるダン。
「早く何とかしなければ大変なことになります」とダン。
そこへ老人たちがやってきた。
ダンとの通信が切れ、急ぎ出動する警備隊。
ドアを破って入ってくる2人。
「ソガ隊員さえいなければ」。
心の中でつぶやくダン。
2人に殴りかかろうとするソガの腹を殴るダン。
気を失うソガ。
「ソガ隊員すまん」。
セブンに変身するダン。
それを見て逃げ出す老人たち。
屋上の遊園地まで逃げた2人を追い詰めるセブン。
「あの時モロボシダンを殺しておけば」と老人。
「もう、何もかも終わりです」と女性アンドロイド。
セブンがエメリウム光線を浴びせると、アンドロイドは人形に戻り破壊された。
チブル星人の姿に戻る老人。
0指令の時間が迫る。
エメリウム光線で星人を倒すセブン。
星人は泡となり消えてしまった。
ダンに戻るセブン。
そこへキリヤマたちがやってきた。
「ダン無事だったか」とキリヤマ。
「ウルトラセブンのおかげです」とダン。
「もし0指令が本当に発令されていれば世の大人たちは手も足も出なかった」。
「恐ろしい計画ですよ」。
午前0時。
何事も起こらない。
街は平和に眠っている。

解説(建前)

チブル星人はなぜわざわざ自分たちの正体がばれる前にダンを襲ったのか。
これはおそらく0指令の弱点に起因するのであろう。
0指令そのものは子供たちが実行する以上それを防ぐのは困難であるが、星人自身は指令発動に関係なく倒すことは可能である。
すなわちいくら計画が成功しても自分がセブンに倒されては本末転倒。
また指令そのものもどうやら操る星人が倒れると発動されないようである。
そこで自分たちの存在がばれる前に先手を打って襲ったのであろう。

ただ、フルハシの嘘のため作戦は失敗に終わってしまった。
頭のいい星人のことだから、警備隊のパトロール地域や担当隊員も事前に調べて把握していたのであろう。
しかし運悪くその日はダンではなくフルハシだった。
何かの都合で偶々当番が変わっていたのであろうが、いずれにせよダンの抹殺に失敗したのが星人にとって最大の誤算だったと思われる。

感想(本音)

子供の頃見た時は、やっぱりチブル星人の気持ち悪さが一番印象に残ってる話。
典型的な頭でっかちの宇宙人で今見ると怖くはないのだが、子供の頃は老人から星人に戻るシーンが不気味だった。
あの鳴き声というか生体音も気持ち悪いし。
あとはおもちゃの戦車や飛行機が攻撃するシーンが面白い。
ある意味子供にとっての夢であるし。
一方ストーリー面は正直よくわからなかった。
大人になって見ると、その粗も含めてよくわかるのだが、やはり宇宙人の侵略方法としてはかなり異色。
セブンは前回のメトロン星人といい、地球に潜伏して地味に作戦を進める宇宙人が多いのが他の作品と比べた特徴だ。

ということで、まずはツッコミどころから。
やはり一番気になったのは、わざわざ自分たちの正体を晒すような真似をしなきゃ作戦は上手く行ったんじゃないかという点。
それじゃストーリーにならないからああいう形にしたのだろうが、どう考えてもあの女性は怪しすぎ。
美人なので2人とも油断したということだろうが、パトロール中に不審な女と出会ったのに弛みすぎだろと(笑)。
今じゃこういう展開はさすがに不謹慎すぎてやらないだろうな。
導入部分の展開としてはインパクトがあっていいと思うが、解釈的には不合理と言わざるを得ない。

ブローチの文字をあっさり解読するアマギ。
これに関しては、今までも宇宙人と交信したりしてるので特に気にすることはないだろう。
恐らく警備隊のコンピュータシステムには簡単な宇宙語のデータベースがあると思われる。
ただ、わざわざ「0指令」なるものがあることを敵に知らせる星人たちの行為はやはり意味不明。
おまけにダン抹殺に失敗したのに、相手に存在を知らせるかのように公園でおもちゃを売る老人。
ストーリーの都合ではあるが、この辺りの行動になんら合理性はない。
おまけに作戦の決行も相手に知らせるし、0指令の中身はベラベラ喋るし、ダンがソガを殴って変身したら逃げ出すし(笑)、お前ら最初から失敗するつもりだろとしか思えない。
知能の高さを売り物にした星人にしてはお粗末すぎるので、大人目線からはさすがに厳しい。

しかし本話の一番のツッコミどころはやはり「ソガ隊員すまん」であろう(笑)。
あの後どう言い訳したのかが気になるが、ウルトラ念力でどうにでもなるのであろうか。
セブンではこういうバレバレ変身が結構多い。
牢屋破って変身したり、敵の円盤の中で変身したり。
この辺りは大らかな時代の賜物かなあと思う。
そもそも1、2期を通じてもバレバレじゃなかった人いないしね。
まあダンばかり狙われることにちょっとは疑問を持てよというのは置いといて(笑)、フルハシ、ソガはメトロン編でも失敗してるし、意外と警備隊ってZAT、科特隊に次ぐくらい緩い組織かも。
ただそういう人間臭いところがキャラ立ちに繋がってるとも言えるので、MATやMACみたいなストレスフルな防衛隊よりはよほどいいと思うが。

本話で特筆すべきはやはりアンドロイドゼロワンの美しさであろう。
満田氏によると、本話は美少女アンドロイドの出演が先にありきだったとのことなので、おもちゃの戦車等はむしろ後付。
しかもおもちゃの戦車等も特撮班を休ませるため、本編班だけで撮れるようにしたとのことなので、結果的にこういう異色な脚本になったのであろう。
演ずる小林夕岐子氏はまさにアンドロイドそのものといった感じのクールビューティ。
今でも人気があるのも納得のはまり役だ。
また味のあり過ぎる老人役の植村氏は新マンの「怪獣使いと少年」のメイツ星人役でもお馴染み。
近所のおばちゃんに子供好きないいおじいさんと言われるまでに地球に馴染んでいたのは、根はいい星人だったりするのかもしれない(なわけないか)。

最後の対決シーンのロケ地は銀座にあった松屋デパートとのこと。
地方在住民にとっては特に馴染みのないデパートであるが、屋上遊園地などは当時のデパートにつきものだったのでやはり懐かしい。
昔の特撮を見る楽しみの一つに当時の風景や風俗というのがあるので、団地の公園等当時の風景がふんだんに見れる本話はそういう点からも魅力的であろう。
しかし当時でも大八車でおもちゃを売り歩く老人というのは怪しいと思うのだが。
子供の頃は気にならなかったのだが、本話にアンヌのセリフはない。
アンヌの態度が悪くて干されたとのことであるが、そんな理由で干されたヒロインなんて前代未聞であろう。
今ではひしみさんのキャラもあり笑い話なのであるが、子供の頃は全然気づかなかった。
当時のアンヌファンは気が付いていたのであろうか?

本話の脚本は上原正三。
ウルトラセブンでは初の脚本であるが、前述したようにこれは企画先にありきの脚本のようだ。
それもあってか、やはりストーリーは強引なものになっている。
そりゃ、この計画にアンドロイドゼロワンの必要ないし(笑)。
本来なら何かの切っ掛けで警備隊が怪しいおもちゃを売る老人の情報を得て、調査するうちに計画を暴き老人と対決する。
そうすべきであろう。

ただ、だからと言って本話の完成作品が失敗かというとそうでもない。
本話はある意味アンドロイドゼロワンあってこその話。
無意味に警備隊の前に現れるシーンも、その圧倒的なビジュアルもあり名シーンとなっている。
また人形から人間体に変身するシーンなどSF的な雰囲気も出ており、下手をすれば怪奇大作戦になりそうな本話をウルトラセブンたらしめてると言えよう。
また星人の潜む地下室の暗さ、夜のデパートで繰り広げられる戦い等、全編に亘る闇の演出が作戦の荒唐無稽さに説得力を与えている。
細かい粗を探せば切りがないが、子供とおもちゃを使って地球を侵略するというプロットも面白く、ビジュアル的な面白さなど、今見ても十分楽しめる作品に仕上がってると言えるだろう。



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