宇宙囚人303


データ

脚本は金城哲夫
監督は鈴木俊継

ストーリー

山で鳥を撃つ2人の猟師。
2人は草むらに怪しい機械を発見する。
「隕石ではないし、宇宙船にしたら小さいしな、何だろうな」。
1人が機械を見てると、様子を見に行った相方の猟師の叫び声が聞こえてきた。
猟師が声のする方へ行くと、相方の猟師が血を流して倒れていた。
「怪物が、怪物が」と相方の猟師。
さらにもう1人の猟師も怪物らしき生き物に背後から襲われる。
その頃宇宙ステーションV3では宇宙からの怪電波を受信していた。
V3には怪電波解読のオーソリティと言われる水野隊員が勤務している。
水野がキリヤマに連絡しようとすると、ちょうどキリヤマから連絡が入った。
キリヤマによると地球でも同じ電波を受信したという。
「超遠距離レーダーでキャッチした極超短波ですから、冥王星より遠い星であることは確かですね」と水野。
キリヤマは水野に電波の解読を頼む。
「何事もなければいいんだが」とキリヤマ。
その頃街のガソリンスタンドで、店番をしていた店員が怪物に襲われる事件が発生した。
給油機の先を口に当て、ガソリンを飲む怪物。
ガソリンを飲み終えた怪物は店内に姿を隠した。
そこへ車に乗った外国人女性がやってくる。
店員を呼ぼうとクラクションを鳴らす女性。
返事がなかったので、建物に近づく女性。
「コンニチハ、ガソリンヲクダサイ」と女性。
しかし中には誰もいないようだった。
鏡を見ながら髪を直す女性。
するとそこに怪物の姿が映っていた。
気を失う女性。
そこへスタンドの別の店員が戻ってくる。
死んでいる2人を見つける店員。
さらに店員も怪物に襲われるが、電話が鳴ったため怪物は逃げ出した。
ウルトラ警備隊へ電話をする店員。
店員は三ツ矢峠を越えたガソリンスタンドに怪物が現れたと伝え、息絶えた。
フルハシ、ダン、アマギが現場に向かう。
「酷いことしやがる」と惨状を見たアマギ。
ガソリンスタンドのホースに何者かが噛んだ跡があるとダン。
「どうやらガソリンが目的だったようですね」。
その時銃声が響き渡った。
音のした方へポインターで向かった3人は、銃を空に向かって撃つ猟師を見つける。
「山の中に宇宙船のような」と言い気を失う猟師。
山の中に入った3人は宇宙船を発見する。
近くに最初に被害にあった猟師の遺体も見つかった。
「怪物というのはどうやらこれに乗って来た奴です」とダン。
宇宙船の処置をどうするかとダン。
「このまま置いとけば逃げられてしまう。絶対爆破すべきだ」とアマギ。
小型の爆弾で宇宙船を破壊する3人。
それを草陰から見ている怪物。
その頃V3から本部に水野隊員がやってきた。
「わざわざ地球まで降りて来るなんて、どうやら悪い知らせらしいな」とマナベ参謀。
超遠距離レーダーでキャッチした怪電波の内容が判明したと水野。
発信地はキュラソ星で、キュラソ連邦警察からの犯罪者303号の殺害依頼であった。
「そいつはもう地球に来てるよ」。
「ガソリンをエネルギー源にしている宇宙人で、既に5人がやられている」と参謀。
「市民に発表しましょう」とソガ。
慌てることはないと参謀。
「3000人の警官も動員してあるし、宇宙船も爆破してある。袋の鼠同然だ」と参謀。
そこへ怪物がタンクローリーを襲い警官を3人殺害したという知らせが入ってきた。
それを聞いて緊急警戒情報を発令して市民の外出を禁止するよう指示する参謀。
「君のおかげで怪物の正体をやっと掴むことができた」。
水野に礼を言う参謀。
「これは一種の合同捜査だ。防衛軍の名誉にかけても宇宙のならず者は倒す」と参謀。
テレビで臨時ニュースを見る市井の家族。
戸締りを確かめる母親。
「日本にはウルトラ警備隊がいるんだ。宇宙人の1匹や2匹」と長男。
何かぶつかるような物音を聞く家族。
さらにガソリンの臭いもしてきた。
様子を見に行く長男。
ガレージの中をライトで照らすとそこには星人が。
長男を人質にして部屋へ上がり込む星人。
1人2階にいた次男は階段からその様子を見て部屋に戻り、ロープを使って家から脱出する。
近くにいた警官に状況を伝える次男。
現場に警備隊もやってくる。
アンヌを連絡係に残して家に踏み込みフルハシたち。
しかし部屋には既に星人はいなかった。
ポインターに残りキリヤマに連絡するアンヌ。
しかし後部座席には密かに星人が乗り込んでいた。
星人に操られてポインターを発進するアンヌ。
さらに荷物に偽装した星人をホークの発射場まで連れて行く。
アンヌを人質にしてβ号に乗り込んだ星人はβ号を発進させる。
整備員から報告を受けた隊員たちは、アンヌ救出の作戦を検討していた。
ダンはα号、γ号をドッキングさせることを提案する。
「敵も飛んでいるんだぞ」とソガ。
「それをやるんです」とダン。
β号を発見する隊員たち。
燃料切れで速度が落ちたβ号との合体を試みる両号。
数回チャレンジした後ドッキングに成功する。
β号に乗り移ったダンは星人を取り押さえる。
その隙にアンヌを助け出すアマギ。
しかしβ号は星人が吐いた炎で炎上し始めた。
キリヤマにβ号を切り離すよう連絡するダン。
「ダン、頼むぞ」とキリヤマ。
苦渋の決断でβ号を切り離すキリヤマ。
切り離されたβ号は地上に墜落して炎上した。
寸前にセブンに変身して脱出するダン。
また墜落地点に巨大化した星人が現れる。
キリヤマに連絡するダン。
「ダン、生きていたのか」とキリヤマ。
「攻撃は無用です。キュラソ星人の体はガソリンタンクも同然です。今に自爆します」とダン。
「広い宇宙でも、もう君の逃げ場はないのだ。キュラソ星人。だが、それは自業自得と言うべきだ。宇宙でも、この地球でも正義は一つなんだ」。
断末魔の叫びをあげて爆発する星人。
「参謀、キュラソ星の連邦警察からお礼の電報が入りました」と水野。
「読んでくれ」と参謀。
「地球防衛軍、ウルトラ警備隊の勇敢な戦いを称え、勝利を祝す。以上」。
「これを切っ掛けに、キュラソ星と地球の間に交友関係が生まれるといいんだが」と参謀。
「そのことをキュラソ星に提案してはどうかね」とキリヤマ。
V3へと戻っていく水野。

解説(建前)

キュラソ連邦警察はなぜ303号殺害を地球の防衛隊に依頼したか。
キュラソ星の科学力なら地球へ警察官を送り込むことも造作ないと思われる。
これはやはり宇宙法というべきものを守ったのであろう。
ウルトラシリーズでは勝手に地球へやってくる宇宙人ばかりで忘れられがちだが、近代法の下では勝手に国内に入るのは相手国の主権を侵害することになる。
高い文明を持つキュラソ星の警察はこの原則を守ったのだろう。

303号は何故巨大化したか。
まず巨大化の原理だが、大量に摂取したガソリンを気化させて体を風船のようにふくらませたと考えられる。
β号を破壊された303号は警備隊と交戦するためやむなく巨大化した。
しかしダンの言うように自分が爆発することは想定外だったのだろう。
逃げ場のない303号は半ばやけくそ状態だった。
とにかく可能な限り逃げ続けるつもりだったのではないか。

感想(本音)

セブンらしいと言えばらしいがかなり地味な話。
星人が人間ならただの刑事ドラマみたいだし、今じゃ子供向けにこんな話は作らないだろうな。
かく言う私の子供の頃の感想は、とにかくキュラソ星人が不気味で怖かった。
正直この話にセブンが出た記憶がなかったのだが、見返して納得。
まさかホークから脱出するためだけに変身とは。
しかも星人は無意味に巨大化するし、かなり異色な話なのは間違いない。

今回星人のせいで次々と人が死ぬのだが、正直気を失ってるのか死んでるのかの見分けがつかなかった。
あの変な発音の外人女性も単に気を失っただけかと思ったら死んでたし、電話かけた店員も死んだみたいだし、簡単に死に過ぎ。
星人はただ軽く首絞めたくらいにしか見えなかったが、あるいは電気ショックとかガスショックとか(笑)、技を使ったのだろうか。
アンヌを自在に操るなど不思議な力も持っているので、単に襲っただけではないのだろう。

しかし、キュラソ星は小型宇宙船を作ったり、超遠距離電波で地球に電報を打てるんだから相当科学が進んでるはず。
しかしその割に303号にはあまり知性は感じられなかった。
まあ一応宇宙船やホークの操縦はできるようであったが、所詮死刑囚といったところか。
ところで303号はガソリンを飲んでいたが、キュラソ星人は皆ガソリンを飲むような生物なのだろうか?
いくらなんでもそんな物騒なもの飲んでる連中が宇宙船の開発とかしてるとは思えない。
「なかなかロケットエンジンの開発が進まないな。仕方ない。ちょっとブレイクしてガソリンでも飲むか」みたいな会話がなされてると思うと怖い(笑)。
やはりキュラソ星には色んな人種(若しくはロボットの類)が住んでると考えた方がいいだろう。
ある意味303号みたいな奴にも人権があるというのは地球より先進的なのかもしれない。

今回見てて気になったのが、アマギが平然と宇宙船の爆破に賛同していたこと。
爆発物が怖いという設定はやはり後付だったのだろうか。
怪電波解読のオーソリティの水野。
セブンの宇宙ステーションといえばV3だが、結構色々な隊員が常駐している。
2話の石黒隊員とか。
しかし宇宙ステーションだけに怪電波の解読は重要なのだろうが、一体どうやって解読したのかは謎。

今回は件の外人女性と言い、一般人がかなり多く出ていた。
猟師、店員、家族。
303号はある意味通り魔殺人犯だし、刑事ものの雰囲気に近いだろう。
セブンの特徴は何と言っても敵が宇宙人であるところ。
しかも初代マンの宇宙人とは違い等身大の宇宙人が多いのも特徴だろう。
レオの初期も等身大の通り魔宇宙人が出現するが、こちらは予算節約が目的のどちらかというとライダーの怪人的なものなのでセブンとはちょっと違う。

事件を追跡する警備隊と星人との攻防。
星人もさるものでアンヌを人質にして脱出に成功する。
ホークで逃げる星人を追う隊員たち。
ただの刑事ものからホークでの攻防という見せ場に持っていく展開は、何気に上手いと思う。
「ダン、生きていたのか」はさすがにどうかと思うが、それ以外は手堅い脚本だ。
ただ、手堅ければ面白いかというとそうでもない。
一応ホークでの空中ドッキングという見せ場はあるものの、子供の頃この話にカタルシスを感じるのは無理だった。
子供はどんな展開でも最後ヒーローが敵を倒せば痛快なもの。
この話でそういう展開は白々しいから脚本としてはこれで仕方ないと思うが、特に低学年の子供は置いてけぼり感が強いと思う。

と、本話の異色なところを中心に述べてきたが、セブンらしいところも当然ある。
それは初代マンでは取り上げられなかった異星間文明交流の側面。
これは既に「ダークゾーン」でも一部描かれていたが、キュラソ星とは言葉だけでも友好関係が結ばれた。
「宇宙でも、この地球でも正義は一つなんだ」というダンのセリフ。
今までは地球人と星人の対立の側面ばかり描かれてきたが、本話では悪とされてるのはあくまで個であって全体ではない。
浮薄な金城論に立脚すれば、沖縄と本土の理想的な関係が描かれているということも可能だろう。
ただし、上記のセリフ自体は台本にはないとのこと(ウルトラセブン研究読本より)。

本話の脚本はメインライターの金城哲夫。
ここまで「ダークゾーン」と「消された時間」以外全話の脚本に参加しており、メインライターとしてフル回転している。
ただ、SFとして評判の高いセブンのメインライターにしては、上記の2話に参加してないなど意外とSF的な話は書いてないようだ。
個人的な見解だが、金城氏の脚本は日常にちょっと不思議なものが入ってくる、ある意味藤子F的な「少し不思議SF」に近いように思う。
本話も通常の刑事事件と異星間交流が同時に成立しているという、金城氏らしい脚本。
それがエンターテインメント的に成功しているかはさておき、セブンの戦闘を極力描かないというストイックさもまたセブンの魅力の一つであるのも確かだろう。




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