データ 脚本は菅野昭彦 監督は円谷一 ストーリー 南極にある地球防衛軍科学センターから1機の超音速ジェット旅客機が飛び立った。 目的地は日本。 中には地球の頭脳と言われる、ユシマ博士が乗っていた。 博士の日本視察中の護衛を命じられたフルハシはやや不満げ。 しかしダンは博士の視察の本当の目的は、博士が発明したユシマダイオードを使って基地に超遠距離レーダーをセッティングすることだとフルハシを励ます。 機内では博士が機長と喋りながら葉巻を吸っていた。 すると突然機体が謎の光に包まれ一瞬時間が止まる。 それに気が付かない2人。 ユシマ博士がエアポートに到着すると、隊員たちがそれを出迎える。 マナベ参謀に案内され基地内に入るユシマ博士。 キリヤマ隊長を紹介され2人は挨拶をする。 「この基地を一層強力なものにするため、よろしくお願いします」とキリヤマ。 「私の方こそ勉強させてもらいたいと思っているんです。日本の基地は世界のどの基地よりも優れた装備を持っているそうですね」とユシマ。 キリヤマから護衛のフルハシを紹介されたユシマ博士。 「心配はご無用に願いたかったですね。地球防衛の第一線に立つウルトラ警備隊の隊員の皆さんを私なんかのために」。 「とんでもありません。博士をお守りすることは宇宙人と戦うよりももっと大事な任務です」とフルハシ。 「ありがとう。しかしこんな警戒厳重な基地に忍び込んで、私をどうにかしようなどという宇宙人がはたしていますかね」。 談笑する一同。 地下鉄で基地内を移動する一同。 ダンはポインターで博士とフルハシを宿泊施設に送り届ける。 博士の寝室の隣室で警護するフルハシ。 警備員が構内を見回り、アリ一匹入り込めない厳重な警備体制が敷かれていた。 その時施設全体が昼間旅客機を覆った同じ光に包まれる。 時間が止まる構内。 居眠りをしてしまい椅子から落ちてしまったフルハシの体も停止する。 ユシマ博士の部屋のテレビから不気味な姿の星人が呼びかける。 「起きろ、ユシマ博士。起きるのだ」と星人。 ベッドの上で起き上がる博士。 「我々はビラ星人。全宇宙の征服者だ。我々は地球侵略の手下としてお前を選んだ。お前の乗ったロケットを時間停止光線で捕え、時間の進行を止めておいてお前の頭にビラ星人の心を植え付けた。お前は体はユシマ博士だが、心は完全にビラ星人になってしまったのだ。これからは我々の命令を忠実に守って地球征服に協力しなければならない。わかったな」。 頷く博士。 博士にユシマダイオードを出すように命令する星人。 星人はテレビの中からダイオードに光線を浴びせる。 また明日の朝レーダーの心臓部を破壊するよう命令する星人。 星人は人間に味方する宇宙人モロボシダンに気を付けるよう言い残し、姿を消した。 ベッドに倒れる博士。 時間が再び動き出すと、フルハシは床に落ち目を覚ました。 急いで博士の部屋の様子を窺うフルハシ。 翌朝博士を迎えに来たダン。 「この男本当にユシマ博士なんだろうか」。 運転しながら訝しがるダン。 「いや、間違いない。前に写真で見たことがある。しかしなぜあんなことを言ったんだろう。僕が宇宙人だということを知ってたのだろうか。まさかそんなことはありえない。いずれにしても注意しなければ」。 レーダー基地を視察する博士。 博士はダンにダイオードをセットするよう手渡す。 ダンがセットを終えると博士がスイッチを入れた。 すると突然機器が爆発する。 博士を連れて避難するダンたち。 連絡を受けたキリヤマは早急に修理するよう係員に命令する。 非常招集を掛けられた警備隊員たち。 「この防衛基地が絶えず宇宙からの侵略の魔手に狙われていることを考え合わせると、単なる偶然とはどうしても思えない節がある」とヤマオカ長官。 警備責任を問われ謝罪するフルハシ。 しかし「フルハシ隊員の責任ではありませんよ」と博士。 さらに博士は「私の考えでは残念なことにこの基地内には宇宙人のスパイが入り込んでるようですな」と続ける。 「ダンくん。私の手から受け取ったダイオードをあの時何かとすり替えたんじゃありませんか?」。 「私がスパイだというのですか?」とダン。 「何の証拠があってそのようなことを」とキリヤマ。 「証拠?レーダーが故障するという重大なアクシデントが起きているじゃありませんか」と博士。 「まあ、私は敢えてこの中にスパイがいるとは言いませんが、明らかに私の仕事を妨害しようとする何者かの計画的な犯行であることに間違いありませんな」。 警備隊に非常態勢に入るよう指示する長官。 レーダーが停止したため、ウルトラホーク3号が空の監視のため発進。 しかし宇宙から近づくビラ星人の船団をホーク3号のレーダーでは捉えられなかった。 一方ユシマ博士への疑惑を深めたダン。 ダンはユシマ博士から目を離してはいけないと心に誓う。 ダンの考え込んでる様子を見たフルハシは、誰もダンをスパイだなんて思っちゃいないよとダンを励ます。 しかしダンはユシマ博士の居場所をフルハシから聞き出すと、博士のいる機械室へ向かった。 ダンが部屋へ入ろうとすると門番に制止される。 門番は博士から誰も部屋へ入れないように言われていた。 引き返す振りをするダン。 少し離れたところでダンは部屋を透視する。 すると部屋の中で博士がモニター内のビラ星人からホークを破壊するよう命令されているのが見えた。 さらにその隙に乗じてビラ星人の船団が地球へ突入するという。 部屋へ出てきた博士に掴みかかるダン。 止めようとする門番を振りほどいて博士を追い詰めるダン。 「博士、あなたは宇宙人に利用されているんです。目を覚ますんです」とダン。 2人が組み合ってるところへキリヤマたちがやってきた。 銃を構えるダン。 ユシマを庇うキリヤマ。 「ユシマ博士は地球の大事な頭脳なのよ」とアンヌ。 「博士は宇宙人に利用されているんです」とダン。 「ダン、やめろ」。 ソガはダンの腕を捕まえ、銃を取り上げる。 「見たかね諸君。この男は僕を殺そうとまでしたんだ。これではっきりしたでしょう。この男こそ宇宙人なんだ。スパイなんだ」とユシマ。 ダンを独房に監禁するよう命令するキリヤマ。 博士に謝罪するキリヤマ。 「どうして僕の言うことを信じないんですか?博士は宇宙人に操られているんです」。 ソガとフルハシに訴えるダン。 しかしダンは独房に入れられてしまう。 「あの頭脳は確かに世界的なものかもしれないが、宇宙人はそこに目を付けたんです。信じてください」。 しかし2人はダンの言うことに耳を貸さず去って行った。 遂にビラ星人の宇宙船団が地球に姿を現した。 基地内に緊急警報が鳴り、ホークで発進しようとするキリヤマたち。 一方独房のダンは警報を聞き、セブンに変身した。 檻を力づくで壊して脱出するセブン。 その頃ホークの発着場では博士がホークを壊そうとしていた。 そこへ現れたセブン。 セブンは博士に光線を浴びせそれを阻止する。 さらに船団の方へ飛ぶセブン。 一方ホークも無事発進していた。 船団を破壊するホーク。 セブンも船団の本隊を破壊する。 墜落した宇宙船から巨大なビラ星人が現れた。 残りの宇宙船を撃墜するホーク。 ビラ星人と格闘するセブン。 お互い光線を打ち合うセブンと星人。 最後はアイスラッガー一閃。 星人は真っ二つになり、ホークに撃墜された宇宙船とともに炎上した。 その頃基地内ではアンヌに治療された博士が意識を取り戻す。 「ここはどこです。どうして僕はここに」と博士。 「地球防衛軍極東基地の中です」とキリヤマ。 「私はロケットに乗っていたのでは?」 「あなたはビラ星人の陰謀に利用されたのです。あなたを自由に操って、この防衛基地を破壊しようとしたのです」とダン。 驚く博士。 レーダーも修理され、再び平和を取り戻した地球。 パトロールに出る隊員たち。 解説(建前) ビラ星人は時間を止められるなら、なぜ直接警備隊基地の時間を止めて攻撃しなかったのか? これに関しては空間面、時間面から考察してみることにする。 まず空間面だが、実際に時間を停止させたのは、博士の乗る飛行機と博士の止まった宿泊施設だけ。 おそらく時間を止めるためには施設等を光線で包んでしまう必要があるので、基地全体の時間を停止させることは空間的に難しいのだろう。 また時間面だが、実際に時間を止めていたのはビラ星人と博士が会話した数分だけ。 こちらも長時間の停止は難しいのではないか。 結局あまり広い範囲の時間を止めることはできず、また長時間、時間を止めることはできないため、基地を直接攻撃することはできなかったと解釈しよう。 そもそも飛行機と宿泊施設の時間を止めたとき、外部の時間はどうなっていたか? ビラ星人の説明だと前述したように光線に包まれてる範囲だけ時間が止まってると解釈できるが、それならその施設内だけ外部と時差が生じるのではないか? これはやはり時間が止まってる間は施設内も外部もいずれも時間が止まってると解釈するのが素直であろう。 それならその隙に基地を攻撃すればとも思えるが、時間が止まってる以上それも不可能。 すなわち光に包まれた施設内のごく一部の場所以外では誰も動くことはできないのである。 結局時間を止めても動けるのはごく限られたスペースのみなので、大船団で攻めて来ざるを得なかった。 時間を止められると言っても使用できる範囲が決まってる以上、警備隊やダンを直接攻撃するのは難しいのである。 ビラ星人は博士をどのように操っていたのであろうか。 星人は飛行機内の時間を止めたときにビラ星人の心を植え付けたと言っていたので、そのとき直接脳波に何か仕掛けたのであろう。 時間を止められる星人のことだから、それくらいは朝飯前と思われる。 ただ、物理的に何かを仕掛けたというよりは、何かの外的ショックを与えて脳の記憶の一部を狂わせたという感じではなかろうか。 さらに星人は度々テレビのモニターを通して指示を送っていた。 時間を止める光線を地球の外から照射できる星人にとって、自分の映像を電波で送ることは容易いであろう。 またユシマダイオードについても、光線というよりはダイオードをショートさせる電磁波の類を照射して破壊したのではなかろうか。 ダンは独房の檻を破壊したことをどう言いつくろったのか。 まず自分の力で破るのは不可能なので、ウルトラセブンに助けてもらったと言うしかない。 ただ、独房なら監視カメラ等があったはずでは? まず、リアルタイムでカメラを見ていた人がいたかであるが、それは非常警報が鳴っていたので誰も見ていなかったとしておこう。 そしてカメラ自体もダンが変身する寸前にウルトラ念力で狂わせていた。 ビラ星人の乗り移ったユシマ博士がいた状況だし、計器が博士によって狂わせられていたと言えば何とかなるだろう。 当然セブンは博士が操られていることを見抜いて博士にエメリウム光線を浴びせ元に戻した。 セブンがダンを助けたのも、偶然セブンが来たからと言えば問題はない、 感想(本音) 解釈に困る話。 セブンは下手に細かいストーリーをつけてるので、逆に疑問点が多くなってしまう。 最後は敵の計画をセブンが暴れてご破算にするというカタルシスはあるものの、そこまでのご都合ストーリーは冷静に見れば突っ込みどころ満点だ。 まあ、制作側もそこまで考えてない時代だったので、子供向けドラマとしてあまり考えずに見るのが正解だと思う。 当サイト的にはしんどい番組ではあるが(笑)。 と言いつつ、今回のストーリーで気になったのはやはりダンの短絡な行動。 あれだけ博士を怪しんでるのに、自ら博士の策に引っかかるような行動はちょっと解せない。 相手に自分の正体が知られていたら、こっそり話をつけるのが筋だと思うが。 檻からの脱走もセブンに変身して鉄格子捻じ曲げるし、やはりこの頃はあまりフォーマットが固まってなかったのではないか。 もう別に、私はウルトラセブンですと名乗ればいいのではと思ってしまう。 特に正体を隠さないといけない理由も語られてないし。 そもそも宇宙人は皆ダンがセブンと知ってるし(笑)。 ビラ星人は自ら全宇宙の支配者と名乗ってるが、これも説得力なし。 というか、お前は中学生かよと(笑)。 ただし、時間を止める光線を使えるというのは何気に凄い。 まあ、凄すぎて制作側も扱いに困り、後半は完全にスルーだったが(笑)。 それだけの能力を持ちながら、結局ユシマ博士の洗脳にしかそれを使えないというのが何とも情けない。 しかし全宇宙の支配者で時間を止める能力までありながら、ホークに完敗して全滅というのは看板倒れもいいところだろう。 ビラ星人に関しては、やはりエビのような外見が個性的。 クール星人に続く操演タイプということで今度はエビなのだろうが、なぜ一体だけ巨大だったのだろう? 穿った解釈をすれば、ビラ星人は実はもっと普通の人間タイプの宇宙人で、エビのような個体はビラ星人の作ったロボットの類という解釈も可能である。 それだと巨大化して戦闘する理由も理解できるし。 ただ、公式にあの個体がビラ星人とされている以上、解釈としては採用できないであろう。 他に同じように巨大化して戦う星人も沢山いるので、ビラ星人だけ別解釈してもあまり意味はないというのもあるし。 ビラ星人との戦闘は、どこかの神社のような場所でちょっと珍しいシチュエーションだった。 こういう遊び心は本当に楽しい。 操演の星人とのバトルはやはり光線技の応酬などあっさりしたものになるのは仕方ない。 この辺りは後のレオの円盤生物シリーズでの格闘に比べると、まだまだ手さぐりなのがよくわかる。 ただ、最後アイスラッガーで切断するのは、今では放送できないがやはりカタルシスは大きい。 この辺りの爽快感はセブンの持ち味であろう。 ちょっとだけ早く星人の体が分断されるのはご愛嬌で(笑)。 星人はなぜユシマダイオードのことを知っていて、なぜユシマ博士を操って基地を破壊しようとしたかとかまだまだ突っ込めばきりがないが、その辺りはウルトラのお約束なのでこれくらいにしよう。 本話のドラマ面はどうか。 ダンが自分の言うことを信じてもらえず独房に入れられるという展開は、初代マンしか見たことがない子供にはショックな展開だったであろう。 しかし「本当なんてす。信じてください」って新マンやエースで散々見た展開な気が。 最初から特捜隊員だったハヤタと違い、それ以降の主人公は皆第一話に隊に加入している。 その結果、それに伴う軋轢が描きやすくなったというのもあろうが、それもセブン以降、主人公の個に重点を置くようになったというのも関係しているだろう。 そういう意味ではセブンから人間ウルトラの路線は始まったといえる。 ただダンが宇宙人であったことからそれがまだ前面には出ていない。 まあ、人間ウルトラというよりは、まだウルトラ人間の段階ではあるが。 しかしダンは生粋の戦士ではないとはいえ、ビラ星人の作戦にあっさり引っかかったのはいただけなかった。 ハヤタならもっと的確に対処したと思うが、こういう人間的に未熟なところもダンの魅力であろう。 ただ、当時の視聴者である子供たちから見て、こういう展開はどうなんだろう? ウルトラマンの続編を期待してた子供たちの期待ははぐらかされたのでは? 私は再放送世代だが、正直この話はあまり印象に残っていない。 というか、セブンで印象に残ってる話は初代マンに比べると圧倒的に少ないのである。 もちろん今見るとSF的な魅力など面白さは理解できるのだが、視聴率が伸び悩んだというのも頷けるところではある。 ドラマ面はそれくらいにして、映像面について。 相変わらずホークの発進シークエンスはかっこいい。 また、ビラ船団との戦いもかっこよかった。 あと、エアポートから基地へと向かう地下鉄が如何にも巨大基地という感じが出ててよい。 新マン以降は基地の構造に関しては正直やっつけっぽかったので、セブンのマニアックさが評価されるのは納得できるところだ。 星人が時間を止めたときに挿入される止め絵。 椅子から落ちたフルハシが静止するシーンなどはわかりやすくていいだろう。 結局時間を止めるという設定はこういうシーンを入れたいがためではなかろうかと思わないではない(笑)。 本話の脚本は菅野昭彦氏。 ウルトラへの参加はこの1本のみなのかな? あまり知らない脚本家ではあるが、調べると映画やテレビなどそれなりには活動していたようである。 ストーリー的には散々書いてるように粗が多い。 まあ、この時代のドラマは子供向けに限らず全体に粗が多いので仕方ないであろう。 また、最近の特撮などは今までの集積を使って話を作れるが、この頃はほぼ手さぐり。 面白いプロットでもそれを上手く消化するのは並大抵ではないであろう。 監督は円谷一氏。 セブンが檻を破壊するシーンは冷静に考えるとまずいのだが、そういう細かいことよりも絵的な面白さを優先したのであろう。 細かいところは気にせず、娯楽性を追求するというのが円谷監督の演出ポリシーだろうか。 本話も序盤はサスペンス要素を盛り上げ、後半は一気に敵の作戦を打ち砕くメリハリのある展開になっている。 そのため粗が目立ったというのもあるが、とかく地味になりそうな話でも視聴後感がいいのはそういう序破急を重視した演出に負うところも大きいであろう。 本話のプロットは敵が関係者に化けて基地に潜入し破壊工作を行うという、ある意味定番である。 初代マンのテレスドン編やケロニア編なんかも似たパターンだろうか。 そう言えばユシマ博士のライターがつかないシーンを見て、一瞬ケロニアが火を消すシーンを思い出した。 もしかして、そのシーンを意識していたか? また主人公が罠に嵌るパターンも新マン「悪魔と天使の間に」でも使われている。 そして定番の「信じてください」。 さすがに時間を止めるプロットは他では使われてないが、他の要素、特にドラマ的な面では本話のプロットは2期ウルトラのお手本ともいえるだろう。 そういう意味ではウルトラの世界を広げた好編であることに間違いはない。 |