美しい男の意地


データ

脚本は阿井文瓶。
監督は外山徹。

ストーリー

地球侵略を狙う怪獣ケンドロスが地球に向けて剣輪草を送り込んだ。
剣輪草は芽を出し、やがて花を咲かせる。
ゲンはカオルが剣輪草を摘んでいるのを目撃する。
それが地球のものではないと悟ったゲンは、カオルにそれを捨てるように言う。
嫌がるカオル。
そこへ百子が来てカオルを庇う。
カオルはその花を両親の写真の前に供えるという。
その花が毒かもしれないというゲンに対し、女の子の気持ちがわからないと百子。
女の子なら直感で毒がないのはわかると百子。
基地に帰ったゲンは、なぜ無理やりにそれを奪わなかったのかとダンに責められる。
ダンはその花がケンドロス星にある剣輪草ではないかという。
剣輪草は怪獣の武器にもなる危険な花だ。
あくまでそれを処理するよう命ずるダン。
女の子のやさしい心を踏みにじることになるとゲン。
しかしダンは、「そんなことくらいで女の子のやさしさはなくなってしまわない」と諭す。
ゲンは剣輪草を処理するため百子のマンションに向かう。
しかし一足先に剣輪草はプロペラ状になり、百子、カオル、トオルを襲っていた。
それを見てレオに変身するゲン。
剣輪草はケンドロスの下へ飛んで行き巨大化。
ブーメランとして頭に装着される。
レオはブーメラン攻撃を浴び、苦戦する。
それをモニターで見ていたダンはマッキーでレオ救援に向かう。
レオは大ピンチに陥るが、マッキーの攻撃を受けたケンドロスはその場から飛び去った。
スポーツセンターでゲンの帰りを待つ百子たち。
そこへボロボロになったゲンが帰ってくる。
基地内でケンドロスの写真に目を通すダン。
ゲンは自室で百子たちの看病を受ける。
花の件でゲンに謝る百子とカオル。
「花が悪いんじゃない、花を操ってる怪獣がいるんだ」とゲン。
ゲンは怪我を押して隊員服に着替え出動する。
基地に向かうゲンに、車に乗るように指示するダン。
怪獣は仙台で暴れており、MACの戦闘機も尽く撃墜されたという。
「怪獣が花と合体する前ならMACでも倒すことができた。しかし今は無理だ」。
ダンは空き地にゲンを連れて行くと、ブーメランを投げ始める。
ブーメランを受け倒れたゲンに、容赦なくブーメランを投げつけるダン。
「男は外へ出て戦わねばならん。何のためだ。その後ろで女の子がやさしく花を摘んでいられるようにしてやるためじゃないのか?男まで女の子と一緒になって家の中でままごとばかりしてたら、一体どうなる。立て!」とダン。
倒れこんだゲンに対しダンは「いくじなし!」と罵声を浴びせる。
ダンの投げるブーメランを体に浴び、耐えるゲン。
ゲンはダンの投げるブーメランを手で受け止めた。
そこへケンドロスが東京に向かっていると連絡が入る。
ゲンは百子、猛に頼んでブーメランを交わす特訓を続ける。
「もう止めましょう」と百子。
しかしゲンは特訓を続けるように言う。
ブーメランを蹴り落とすことに成功するゲン。
そこへケンドロスが現れた。
炎に包まれる街。
マッキーが出撃するも全て撃ち落されてしまう。
レオに変身するゲン。
頭のプロペラを壊そうとするレオ。
しかしプロペラが回転し壊せない。
さらにプロペラからブーメランが撃ち出される。
レオは特訓の成果を見せ、ブーメランを尽く弾き返した。
宙に飛び上がったレオはそのまま回転を始め、自らの体をブーメラン状にしてケンドロスのプロペラを破壊する。
ケンドロスは体を丸めて攻撃を仕掛けるも、レオに交わされビルとぶつかり大破した。
レオの勝利を見届け安堵するダン。
一方ゲンは蜂に襲われる百子とカオルを助けるため蜂と格闘していた。

解説(建前)

ケンドロスは何者か。
地球侵略を狙う怪獣ということだが、剣輪草を先に地球に送り込んだりそれなりに知恵があるようだ。
ダンも剣輪草のことを知っており、ケンドロスは他にも侵略行為をしていたらしい。
ただ、そこまで出来るなら怪獣というより宇宙人ではないかという疑問が生ずる。

それでは怪獣と宇宙人との違いはどこにあるのだろう。
難しい問題だが、私は一応侵略が自らの意志で行われているか、習性で行われているかで区別することにする。
すなわちケンドロスはあくまで習性で剣輪草を送り込み、その後にその星に上陸する。
そしてそれは侵略のためというより、自らの身を守るために剣輪草を送り込んでいるのだ。

このようにケンドロスがあくまで習性で地球を攻撃しているとすると、やはりそれを操っている黒幕というものが存在していることになろう。
ケンドロスの攻撃本能を利用して、地球を侵略する何者かが存在する。
宇宙に漂流するケンドロスは単に地球に住み着くために、地球を破壊していただけなのかもしれない。

感想(本音)

レオ初期の基本フォーマットにしっかり則った作品。
特訓も非常に理に適っており、無理やり感はそれほど感じられない。
ただ個人的にはやはり特訓から毎回同じ流れになるのは勿体無く感じる。
今回は色々テーマがあっただけに、もう少し特訓は少なくして欲しかった。
逆転のドラマに爽快感はあるものの、レオの基本フォーマットの弊害も感じられる作品だ。

ケンドロスは地球侵略を狙う怪獣ということだが、やはりその行動原理には謎が残る。
そもそもそういう細かいことは無視しているのか、裏設定としてカットしているのか。
1,2話の流れからは、マグマ星人が色々な怪獣や宇宙人を送り込んでいると解釈する方が話の辻褄が合うのだが、結局その説明はなされずに終わった。
挙句マグマ星人はストーカー星人として倒されてしまうのだから、中途半端感は否めない。
マグマ星人との決着編を一本作るだけで作品全体の印象が大きく変わっただけに、非常に勿体無く感じられる。

ゲンは宇宙人の特殊能力で美しい花の正体を見破ってしまう。
こういう超能力で孤立する展開は新マンでお馴染みだったが、違うのはダンもゲンと同じように超能力を持っている点だろう。
ダンは自分たち宇宙人を毒を持った存在だと言う。
そして自分たちは危険なものを処理するのが任務だという。
この辺り、隊長が宇宙人であることにより従来とは逆の展開になっているのが興味深い。

思い返すと新マンでは、ツインテールの卵をあくまで調査するよう主張する郷は結局謹慎処分を命じられた。
しかし本話では百子やカオルの気持ちを慮ったゲンが逆に叱責される。
この辺り一見すると、ダンが非情な現実主義者にも感じられる。
容赦ない特訓や叱責からもダンのそういう面ばかり強調されてるようにも感じられるだろう。

ただ本話ではしっかりフォローもなされている。
女の子の優しい気持ちを守りたいというゲンに対しダンは 「そんなことくらいで女の子のやさしさはなくなってしまわない」と発言するのだ。
この発言からもダンが人間の、特に女性の優しさに対して多大な信用を寄せていることがわかる。
この辺り、ダンの地球での経験が生きていると考えることができるであろう。

本話ではさらにダンは「男は外へ出て戦わねばならん。何のためだ。その後ろで女の子がやさしく花を摘んでいられるようにしてやるためじゃないのか?男まで女の子と一緒になって家の中でままごとばかりしてたら、一体どうなる」とも発言している。
非常に耳が痛くなる発言だが、ダンの女性観のわかるシーンである。
ただ、これはあくまで一般論と捉えるべきであろう。
ダンが愛した女性アンヌは、ただダンの後ろで花を摘んでいるだけの女性ではなかった。
女性の優しさを信じるとともに、その強さも知っている。
詰まるところ、それがダンの本当の女性観ではなかろうか。

今回の特訓は前回に比べて非常にビジュアル的にも納得の行くものである。
ダンも映像や自らの目でその攻撃を目撃しており、前回のような強引さはない。
特訓の激しさは相変わらずだが、前述のセリフもあって、いじめ的な要素もそれほど感じられないだろう。
少々特訓シーンが長くは感じられたが、全体的には上手くまとまっていた。
とは言えあの特訓では、やはり猛や百子に怪しまれないか心配になる。
まあ飛んでくるブーメランを交わすのはマッキーにとっても必要な技術なので、気付かれなかったと考えることにしよう。

本話は前述したように、レオ初期のフォーマットに則ったオーソドックスなストーリーである。
この辺り、初期のレオにおいてこのパターンを徹底することは、スタッフの間で了解されていたのであろう。
ただ本話はその中にもしっかりテーマとドラマは盛り込まれている。
掘り下げの甘さはあるものの、ゲン、百子、カオルの対立と和解。
男子は女子を守るべきだという、やや男尊女卑的ではあるが、当時の子ども達に対する叱咤激励。
また宇宙人であることに対する苦悩と使命感など、単なる格闘物に堕しないクオリティは維持されている。

本話の脚本を書いたのは阿井文瓶氏。
様々な制約の中、しっかり脚本をまとめており、徐々に脚本家としての安定感が増してきたのが感じられる。
セリフがやや多いのが気になるが、それも色々な要素を詰め込まなければならなかったため仕方ないであろう。
個人的には前述のダンの女性観に感心させられた。
恋愛では先輩のダンがゲンに教えを賜るようにも見え、非常に興味深い。


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