データ 脚本は田口成光。 監督は東条昭平。 ストーリー MAC宇宙ステーションの白土隊員は宇宙情報会議のため地球へ戻ってきていた。 ゲンは白土を会議場に送った後、その恋人洋子を家まで送っていく。 その途上、何かのうなり声を聞いて車を降りるゲン。 すると洋子が何者かに襲われていた。 星人と格闘するゲン。 しかし星人は突如巨大化した。 洋子に逃げるよう指示するゲン。 しかし星人は洋子の方へ向きを変えると洋子を踏み潰してしまう。 レオに変身するゲン。 しかしレオは星人の両肩の角による攻撃を受け苦戦。 空中に何度も突き上げられ敗北を喫す。 ゲンは白土に洋子を無事送り届けられなかったことを責められる。 さらに白土は星人に一方的にやられたレオのことも責めた。 「宇宙一の勇者が聞いて呆れるよ。あいつにあったら殴ってやりたい」と白土。 それを聞いて落ち込むゲン。 「お前が悲しむことなどひとつもない。悲しむべきは白戸隊員の方だ」とダン。 「何だその顔は。辛いのは私の方だ。同じ宇宙人としてレオを責めたい。不用意に変身したばかりか星人を倒すことも出来なかった」。 「しかし」とゲン。 「うるさい。言い訳なんか聞きたくない。白土隊員の悲しみを知れ。彼を見て自分のことをよく考えるんだ」とダン。 恋人を殺した星人へ復讐するため射撃の特訓をする白土。 それを陰から見つめるゲン。 白川隊員によると白戸は志願してパトロール隊に入隊したとのことだった。 悲しみにくれているとばかり思っていた白土の姿を見て、自らも特訓に励むゲン。 星人を倒すためパトロールに出る白土。 白土はそこで女性を襲ってる星人に遭遇する。 銃で攻撃するも星人に逃げられてしまう白土。 白土は星人は眉間に弱点があり、自分たちでも倒すことが出来ると隊員たちに言う。 ウルトラマンレオでも倒せなかった相手を倒すのは無理ではと隊員たち。 しかしダンは「その点なら大丈夫だ。夕べ白土隊員は星人を倒しかけたばかりか女性を助け出すことが出来た。余裕はある」と各自張り込みをするよう指示を出す。 ゲンはダンに隊員たちでは星人を倒せないと進言。 しかしダンは「地球人が星人を倒すために命を張っているんだ」と言う。 「一体お前は星人を倒すためにどんな努力をしたというのだ。ウルトラマンレオは何をしたのだ」とダン。 「僕だって地球を愛してます。人間を愛してます。地球は僕のふるさとです」。 「それならウルトラマンレオのあのザマは何だ」とダン。 先の尖った丸太を相手に猛特訓をするゲン。 大村たちは危険だからとそれを止めようとする。 しかし「MACの隊員全員は命をかけて戦っているんです」とゲン。 その頃隊員たちは街中で星人を発見していた。 しかし黒田、青島は星人の攻撃を受け負傷してしまう。 一方大村らの協力を得て特訓を続けるゲン。 白土も射撃の特訓に明け暮れる。 ダンの下へ桃井が星人に襲われ負傷したと連絡が入った。 ダンはゲンの下へ行きゲンを杖で殴りつける。 「お前はカーリー星人を倒すと言ったな。その腕ではまだ無理だ。白土隊員の射撃の腕の方が上だ。しかし白土隊員の腕だけでは星人を倒すことは出来ん。お前は一体何をしていたんだ」とダン。 「お前のやっていたことは訓練なんかではない。この丸太にお前を憎み突き刺す心があるか」。 ダンはジープに乗りゲンを執拗に追い回す。 「向かって来いゲン」。 「お願いです。やめてください。隊長」。 「隊長止めてください」とゲン。 「向かって来るんだ」とダン。 「ゲン逃げるな。逃げるんじゃない、車に向かってくるんだ。カーリー星人に勝つにはこの方法しかない。跳べゲン。跳ぶんだ、ゲン」。 ゲンはダンの車に弾き飛ばされ崖下へ転落する。 星人出現の報を受け戦いを挑む白土。 しかし白土は崩れてきた瓦礫の下敷きになってしまう。 それを見てレオに変身するゲン。 再びカーリー星人の攻撃を受け苦戦するレオ。 しかしレオは星人の攻撃をジャンプして交わし、その角をへし折った。 それを投げつけ突き刺すレオ。 星人は力尽きた。 星人を倒した白土は宇宙ステーションへ帰っていった。 「よくやったな。お前と俺はこの地球に住むたった二人の宇宙人だ。命ある限りこの地球を守ろう」とダン。 解説(建前) カーリー星人は何者か。 カーリー星人は最初明らかにゲンの車を襲っている。 ただ女性を襲うだけならわざわざ車に乗っている女性を襲う必要はない。 少なくともMACの車であるという認識はあったであろう。 ではゲンを狙ったのか否か。 カーリー星人はゲンよりもむしろ洋子を狙っていた。 巨大化した際もゲンを無視して洋子を踏み潰している。 やはりこれはゲンを挑発する意図だと思われる。 変身したレオをぶちのめしたのは当初の予定通りの行動だろう。 ではカーリー星人は何故レオを狙ったのか。 ツルク星人のように直接レオを狙ったのか、後の行動がしやすいようにまずレオを伸したのか。 これはいずれとも確定しがたいが、レオを直接狙う理由というものも考え辛いので、やはり後者の可能性が高いように思う。 ただ後者であるとしてもわざわざ地球に来るには理由があるはずなので、犯罪者を斡旋するエージェントみたいな者がいるのかもしれない(デカレンジャーで言うとアブレラか?)。 いずれにせよ、序盤からこれだけ宇宙から敵が来るのは特別な理由があると考えるのが自然であろう。 感想(本音) 本話はダンの暗黒面の頂点を極めた作品として有名である。 ジープでの容赦ない特訓は、もはや特訓の域を超えているだろう。 単なるしごき、いじめ、殺人未遂。 悪鬼のごとき所業である。 またその特訓に至る過程も酷い。 散々罵倒し、杖でゲンを滅多打ち。 最後ゲンを労って爽やかに終わってはいるが、初期の路線の行き過ぎをまさに象徴するエピソードといえる。 と、いきなり手厳しく書いたが、この話は見ててさすがに行き過ぎだと思った。 子どもの頃この話を見てたら一体どんな感想を持ったであろうか。 逆に親として子どもにこのエピソードを見せられるか否か。 やはりここまで来ると、仮に子どもがいてもあまり勧めたいとは思わない。 ダンが白土の提案を呑んで「余裕がある」と言うのもゲンやレオに対するあてつけだし、子どもを甘えさせない、子どもを鍛えるという発想自体はいいのだが、ちょっといじめと紙一重に見えた。 やはりその作りの荒っぽさは気になる。 今回ゲスト出演の白土隊員は後のレギュラー隊員。 演ずる松坂雅治氏はエース、タロウでもゲスト出演していた。 ちょっと関根勤に似てない気もしないが、まずまずのイケメンであろう。 白土隊員はゲンに散々嫌味を言った挙句、最後はレオの協力を得て目的を遂げたと爽やかに帰ってしまうが、なかなかいい性格である。 ただその射撃の腕はダンが認めるほどで、そこまで特訓でレベルアップした執念は評価されるべきであろう。 今回ダンは地球人が命がけで戦っていると白土の提案を採用して隊員たちに危険を犯させた。 ダン自身もこの作戦の危険さには気付いていた節があり、その辺り宇宙人と地球人という立場の違いに対する苦悩が窺われる。 ダンがゲンにあれだけ辛く当たったのは、あるいはそういうもどかしさがあったのかもしれない。 とは言え、あのジープの特訓はやはり常軌を逸している。 カーリー星人の攻撃をジープに見立てたのだろうが、今回はダンはレオの戦いを見てないはずなので、今までより適当なのは否めないだろう。 丸太でチンタラ練習してるのが気に入らなくて、ああいう荒療治に出たのだろうか。 とは言え、先の尖った丸太での特訓も十分危険なものである。 それは大村さんの「MACの隊員はこんなことまでしないといけないのか」というセリフにも象徴されよう。 て、まあ、こんな特訓させられるのゲンだけなのだが(笑)。 しかしゲンがダンに「止めてください」と懇願するのはヒーローとして非常に情けない。 ゲンから見ても、隊長が気がふれたとしか思えなかっただろう。 演ずる真夏氏もこの特訓を振り返って、「ジープに追いかけられるのは情けなかった」とのことである。 カーリー星人はレオを一瞬でノックアウトした強敵である。 おまけに洋子を足で踏み潰すなど残虐性も高い。 ただその行動原理はやはりよくわからない。 街で女性を襲ってたのも何がしたいかわからないし、やはりゲンをおびき出すのが目的なのか。 レオ初期は行動原理のわからない敵が多いのが残念だ。 今回のエピソードは白土隊員の復讐という要素が入っているものの、敗北、特訓、リベンジという初期の基本フォーマットに忠実な話である。 それだけに作品としての印象は今ひとつ。 とにかく、ジープに乗ったダン隊長ばかりが記憶に残る。 これは構成を単純化することで話を作りやすくする狙いもあったのだろうが、見ていてやはり手抜き感は拭えない。 田口氏はエース、タロウと来てかなりの脚本を書いている。 メインライターも2期連続であるし、正直ネタ切れというのもあったのであろう。 特訓や白土隊員のキャラといった見所はあったものの、脚本としてはやや平板に過ぎ、今ひとつというのが私の正直な感想である。 |