さようならレオ!太陽への出発


データ

脚本は田口成光。
監督は山際永三。

ストーリー

ブラックスターから最大にして最強の円盤生物ブラックエンドが地球へ向けて出発した。
ゲンの運命は、ウルトラマンレオの運命はどうなるのか?
父親の墓参りに出掛ける美山家。
留守を預かるゲンとトオル。
トオルは百子とカオルのことを思い出していた。
その時美山家を大きな地震が襲った。
「怖いよ、おゝとりさん」。
ゲンに助けを求めるトオル。
一方外では工事現場付近の地盤が沈下し、団地が地面に陥没していた。
ニュースでは局地的な地震の原因は高速道路建設による地下水脈の変化と報じていた。
「おゝとりさん、海へ連れて行ってよ」とトオル。
「何だよ、急に海だなんて」とゲン。
「あゆみちゃんたちはみんな、楽しそうに出かけて行ったじゃない。僕たちも行こうよ」。
「みんなはね。亡くなったお父さんのお墓参りに行ったの」。
「だからさあ。僕も行きたいんだよ。ねえ、海へ連れてってよ」。
「だけど、海とお墓とどういう関係があるんだ?」
「百子姉さん、よく、僕とカオルを海へ連れて行ってくれたんだよ。伊豆半島の突先さ」。
「そうだったよな」。
「本当は百子姉さん。自分の生まれた黒潮島を見に行ってたんだけどね」。
「だけど、伊豆半島から黒潮島は見えたっけ」。
「桃子姉さんにだけは見えるって言うんだよ」。
「そうか、故郷だからな」。
「だから、百子姉さんに黒潮島を見せてあげようよ」とトオル。
「よし、行こう」とゲン。
車で伊豆半島へ向かう二人。
「車が多かったら、魚や虫なんて住めっこないよね。いいなあ、故郷のある人は」とトオル。
「トオルは東京で生まれたんだろ。だったら故郷は東京さ」とゲン。
「そりゃそうだけどさ。東京には山も海もないもん」とトオル。
「そういうけどね。お前たちのお父さんが小さい頃にはこの辺の川だって水が透き通るくらい綺麗だったし、魚も採れたんだよ」とゲン。
「本当?」
「ああ」。
「でも、今は違うもんなあ」とトオル。
その時地割れが発生し、大きな地震が起こった。
爆発するコンビナート。
「ブラックエンドよ出てこい。ウルトラマンレオを誘い出し、殺せ」とブラック指令。
割れた地面からブラックエンドが現れる。
逃げる人々。
車から出るゲン。
「俺の名を呼んでいる。まさか俺を狙って」。
ブラックエンドの鳴き声は「レオ!レオ!」と聞こえた。
「トオル、お前はここから一人で逃げるんだ」。
「嫌だよ。僕はおゝとりさんと一緒じゃなきゃ嫌だよ」とトオル。
「何を言ってるんだ。ここは危険だ。お前は逃げなくちゃダメだ」とゲン。
「あの円盤生物、レオを呼んでいるんだ。きっとレオが現れてみんなを助けてくれるよ。きっと大丈夫だよ」。
ショックを受けるゲン。
「トオルはレオがいつでも助けてくれるとばかり…。今、俺がレオになったら、トオルは…」。
「ええい、くそう。ウルトラマンレオよ姿を現せ」とブラック指令。
「レオに変身せず、車を出すゲン。
「どうしても出てこないなら、見ていろ。考えがある」と指令。
ブラックエンドを引き上げるブラック指令。
「トオル、お前はお父さんがやられたとき、カオルちゃん、百子さん、猛が死んだとき、自分で敵を取るって言ったじゃないか」とゲン。
「そりゃ言ったよ。言ったけどさ、やっぱりとても敵わないよ」とトオル。
「あのとき怪獣を憎んで、悔しがって流した涙を忘れてしまったのか」とゲン。
美山家の3人も墓地で地震に遭い、ハイヒールを履いていたいずみは脚を怪我していた。
「でもさ、何でウルトラマンレオは現れなかったのかしら」といずみ。
「レオ、レオって名前を呼んでたって言うじゃない」とあゆみ。
「それ、どうして知ってるの?」
驚くゲン。
「トオルくんに聞いたのよ」とあゆみ。
「とうとうレオは現れなかったんだ。レオはずるいよ。意地悪だよ」とトオル。
「だから、トオルくんとおゝとりさんはレオと円盤生物の争いに巻き込まれたのよ。やっぱり、円盤生物はレオを狙ってこの地球にやってくるんだわ」といずみ。
「そんなことないわよ。レオはいつだって私たちを助けてくれてるのよ。そんなこと聞いたらレオはきっと怒るわよ」とあゆみ。
「そうよ、きっと怒るよりも悲しがるわね。みんな勝手なことばっかり言ってるから」と咲子。
「確かにいずみさんの言う通りなんだ。あの円盤生物はこの俺を狙ってやってきたんだ。この地球にレオがいなければ。その方がいいのかもしれない」と思うゲン。
その夜ゲンはうなされる。
「レオよ、よおく聞け。お前にとって最も大切な時がきたんだ。お前が愛する人間たちの中で生きていけるかどうかを決める時がきたんだ」。
その声の主はウルトラセブンだった。
セブンはゲンの夢枕でさらに続ける。
「見たまえ。今沈んでいく夕日は私だ。そして明日上る朝日はお前だ。ブラック指令と最後の円盤生物ブラックエンドがこの地球にやってきている。そして、愛する地球を守るため、お前は戦い、勝たなくてはならない。だが、お前自身が、宇宙人であることを人間たちに知らせてしまうことになる」。
「俺の正体が知られてしまう」とゲン。
「そうだ、お前自身が本当に試される時が来たのだ。レオ、さらば」。
飛び立つセブン。
「セブン」。
目を覚ますゲン。
「夢か」。
「百子さん、カオルちゃん。もうこれ以上、愛する人を傷つけてはいけないよな」。
トオルと一緒にランニングをするゲン。
その後ろに不気味な人影が。
疲れて倒れてしまうトオル。
「どうしたんだ。まだ半分しか走ってないぞ」とゲン。
疲れたから休ませてというトオルに一人で海へ行くように言うゲン。
「えっ、これから。だってまだ朝ごはんも食べてないんだよ」とトオル。
「お腹の空いた時の辛さや、自分の足で歩いて知らないところへ行くことがどんなに大変か、自分で確かめるんだ」とゲン。
「今の俺の気持ちはお前のお父さんと同じなんだ」とゲン。
「父さんと」とトオル。
「そうだ。俺が今言ったことは、お父さんがお前をスポーツセンターへ入れた理由と同じなんだ。俺はお前に強くなって欲しいからそう言ってるんだよ」とゲン。
「おゝとりさん。じゃあ、僕、これから海へ行ってくるよ」と笑顔で言うトオル。
「やっとチャンスが来たぞ。ブラックエンド行け」。
草むらに潜んでいたブラック指令がそう命じると、地中から再びブラックエンドが現れた。
あゆみとその友達は心配してゲンとトオルを探していた。
ゲンとトオルの方へ向かってくるブラックエンド。
逃げる二人。
倒れるトオル。
「トオル。立つんだ。自分の力で立つんだ」とゲン。
「トオル、よく頑張った」とゲン。
「おゝとりさん、僕はもうこれ以上」。
「いいんだ、トオル。偉いぞ」とゲン。
「トオル、よく聞け。俺は、本当は、ウルトラマンレオなんだ」。
「エーッ!本当に?」とトオル。
「これがレオの印だ」。
獅子の瞳を見せるゲン。
「いいか、トオル。よく見てろ」。
「レオ!」
レオに変身するゲン。
ブラックエンドの尻尾を掴むレオ。
しかし背中から角が出てきて、レオは投げ飛ばされてしまった。
炎を吐くブラックエンド。
ブラックエンドの背後へ飛び移ると、背中の角を引き抜くレオ。
さらにその角を投げつける。
「ブラックエンドめ。何をしておるのだ」。
苛立つブラック指令。
そこへトオルがやってきた。
すかさずトオルを捕まえ人質にする指令。
「レオ、見るがいい」と指令。
トオルが人質に取られたことにより劣勢になるレオ。
「レオー。おゝとりさーん。頑張れー」とトオル。
レオのカラータイマーが赤になった。
レオの脳裏に雄々しく戦った在りし日の思い出が浮かび上がる。
「レオ、今こそお前の力を発揮するときだ」。
セブンの姿が脳裏に浮かぶ。
一方トオルを助けるためにあゆみたちはブラック指令の背後に接近していた。
指令の腕に噛み付くトオル。
その隙を捕らえて指令に襲いかかるあゆみたち。
子供たちは指令を押さえつけると、あゆみとトオルは指令から水晶玉を奪い取った。
レオにその玉を投げるトオル。
「玉を返せ」。
のたうち苦しむブラック指令。
玉を掴んだレオは光線とともにブラックエンドに投げつける。
爆発するブラックエンド。
一方ブラック指令も玉ともに溶けていった。
さらに地球へ飛んできたブラックスターを光線で破壊するレオ。
レオは嬉しかった。トオルやトオルの友達がこんなに勇気があり、こんなに素晴らしい力を持っていてくれたことを。これで心置きなくレオの任務から離れることができる。
満開の桜の下、一人旅立つゲン。
「本当に行ってしまうの?」とあゆみ。
「おゝとりさん。私たちはね、もしも、もしもよ。あなたが他の星の人でもちっとも気にしてないのよ」と咲子。
「私の知っているおゝとりさんは宇宙人なんかじゃないわ。私たちと同じ血の流れている人間よ」といずみ。
「ありがとう。僕にとってその言葉は一生忘れることができません。やっと今、この地球が僕の故郷になったのです。だから、青い空と青い海のある故郷を、この目で見て、この手で確かめてみたいんです」。
獅子の瞳を指から外すゲン。
「必ず帰ってきてね」とトオル。
「気をつけてね」と咲子。
「おゝとりさーん」。
ゲンを追いかけて走り出すトオル。
海まで走ってきたトオル。
「おゝとりさーん」。
ゲンの乗るヨットに手を振るトオル。
「おゝとりさーん」とトオル。
「さようならー」とゲン。

解説(建前)

ウルトラセブンは生きていたのか。
ゲンは夢と解釈していたようだが、クレジットにもウルトラセブンと表記されていたし、番組的にはセブンが生きていたと解釈する方が自然であろう。
夢以外のシーンでも登場していたし。
おそらくダンはシルバーブルーメの強襲でダンのまま宇宙へ投げ出されてしまった。
ダンの体はドアを通り抜けたり異常な体温になっても死なないように、普通の人間の体とは作りが違うので宇宙空間でも持ちこたえたのだろう。

セブンはかつてウルトラの国からエースを励ましたことがあるように、地球の様子を遠くから見ることができる。
セブンは宇宙空間を漂いながら地球で独り戦うレオの様子を見守っていたのであろう。
そしてレオにとっての最後の試練と見たセブンは夢枕という形でレオにアドバイスをした。
レオに別れを告げたのは、ウルトラの国からの使者がセブンを迎えに来ていたからではないか。
或いは使者が迎えに来たため最後のメッセージを残したのかもしれないが、いずれにせよメッセージを残したのは本物のセブンと考えて差支えはあるまい。

ブラック指令はなぜ溶けて消えたか。。
ブラック指令は常に水晶玉を持っていた。
そしてその水晶玉を奪われると苦しみ、最後には泡となって消えてしまった。
これはやはりブラック指令と水晶玉はセットとなっていると考えるのが普通だろう。
ただ、水晶体がブラック指令の一部かというと、それも微妙。
やはり簡単に奪い取ることができたことから、あくまで水晶はブラック指令の体を守るアイテムと考えるのが素直であろう。
地球の環境はブラック指令の体に合わず、防御していないと紫外線等で体が溶けてしまう。
水晶はブラックスターとの連絡だけでなく、ブラック指令の体を守るアイテムでもあった。

では、そもそもこのブラック指令というのは何者か。
地球の環境に適応できないとすると、やはり地球人ではなく宇宙人であろう。
またブラックスターには円盤生物を送り込むよう要求するだけで、直接支配しているという感じではない。
あくまでブラック指令は前戦の司令官で、ブラックスターから送られてくる円盤生物を操ってるにすぎないと考えられる。
そしておそらくブラック指令自身もブラックスターから送り込まれた。
ブラックスターの背後には地球侵略を企む何者かが存在してるのは確かである。

では、そのブラックスターとは何か。
これも素直に考えると、やはり円盤生物という兵器製造工場であろう。
最後地球まで飛んできたように、明らかに普通の惑星ではない。
星にしては小さいし、スターウォーズのデススターのように星型の宇宙船のようなものなのだろう。
おそらくブラックスターは自ら搭載するコンピュータで一体ずつ円盤を作っていた。
それを指令が一体ずつ招聘していたのである。
最後星ごと飛んできたのも当初の予定通りで、本当の最後の刺客は星自体であった。
ブラックエンドで材料が尽きたのもあるだろうが、いざとなったら星ごと地球へ突っ込んで攻撃するプランだったのであろう。
そう考えるとブラックエンドがなぜ最後の円盤生物なのかも理解できる。
最強か否かに関しては指令のセリフしか根拠がないので、実際どうかはわからないが。

ではブラックスターを作ったのは誰か。
ここからは完全に推測だが、ブラックスターを作った人物は既にこの世にいないのであろう。
地球侵略を狙う科学者がブラックスターに円盤生物を作って地球へ送り込むようにプログラムした。
まずは円盤生物を指揮するブラック指令を作成し、その後円盤生物を作るようにした。
つまりブラック指令自身も円盤生物同様、ブラックスターが作った生物兵器だったのである。
そして最後の円盤生物が出来るころにはブラックスター自身が地球へ突入し、地球を破壊する。
科学者がなぜ地球侵略を狙っていたのかはわからない。
地球に恨みがある人物が余命幾ばくもないのを知り、自分の意志をコンピュータに残してブラックスターを操ったのかもしれない。
いずれにせよ、ブラックスターは地球侵略のプログラムを忠実に実行していただけに過ぎないのだろう。

感想(本音)

正直ストーリー的にはどうかというところもあるが、感動できるという意味では歴代でも有数の最終回。
とにかく星空のバラード聞くだけで泣けてくる。
ゲンとの約束を守って一人で海まで走るトオル。
沈む夕陽の中ヨットで旅立つゲンを見送るトオル。
帰ってきたウルトラマンのラストでは郷は次郎の成長を促して帰っていったが、レオの場合はお互いの成長を認めあって別れるというより前向きなラストになっている。
いずれ書く予定だが、妙な寂しさのあるタロウの最終回ともまた違ったテイストだ。
ゲンとトオルの成長物語というレオのストーリーに見事決着をつけた最終回といえよう。

ただ、前述したようにストーリー的にはやや強引なところも目に付く。
最後に約束を果たすとは言え、ちょっとブラックエンドから一緒に逃げただけで「トオル、よく頑張った」はさすがにどうかと。
海へ行くシーンをラストに持ってきたのは演出的には正解だと思うが、その分ここのシーンが薄くなったのは否めない。
そもそも前回のトオルはレオの敗北を見てたはずだが、急にここまでレオに依存するのも繋がりがおかしい。
まあ、前話が出来る前に最終回の脚本は出来てたと思われるので仕方ないが、その前の話との繋がりとしてもやや唐突感は否めない。
正体を明かすシーンもあっさりしすぎだし(トオルがもう少しゲンがレオだと疑うシーンが欲しかった)、もう少し全体的に丁寧に描いて欲しかったと思う。

本話の注目はやはりブラック指令の最期である。
あれほど憎々しさを誇った指令が子供に倒されるというのは衝撃。
最後のナレーションにあったように、子どもたちにはもうレオは必要ないというスタッフからのメッセージなのだろうか。
初代ウルトラマンのラストはもう人類にウルトラマンは必要ないというものだったが、レオのラストはより視聴者である子供にダイレクトに向けられている。
それだけ教育番組的な要素が強かったということであろう。
人によってはブラック指令が子供に倒されたことに不満を持つ人もいるようだが、個人的にはある意味画期的で良かったと思う。
そもそもブラック指令って自分が強いわけではなかったし。

今回は百子の故郷の黒潮島を見に行ったり、トオルの父親がトオルをスポーツセンターに入れた理由が話されたり、セブンが久々に出てきたり、過去の戦いがフラッシュバックしたり、今までの総まとめ的なシーンが多かった。
田口氏、山際氏も今回がシリーズ最後というのを意識していたのであろう。
個人的にはセブンが再登場したのは大きかったと思う。
一応夢の中ということでぼかされてはいたが、スタッフもセブンをそのままにしておいてはいけないと思ったのだろう。
最終回でこのようなアドバイスをするパターンは実は定番。
セブンではセブン上司が、新マンでは初代マンが、エースでは夕子が、タロウでは母が。
アドバイスの内容はそれぞれ違うが、主人公に試練を課すところはタロウ、正体を知られるというところはエースのパターンか。

ただ、セブンのアドバイスは正直よくわからないところもある。
基本よそ者なので命を賭けて地球を守ってこそ地球の人たちに受け入れられるという意味であろうが、その理屈だとレオはいつまでも戦う必要があると思うのだが。
一応最後の円盤生物と言ってるから、これで最後の戦いということであろうか。
また正体が知られてしまう点についても、それがどういう意味があるのかよくわからなかった。
正体を明かした場合地球にとどまれないと夕子は言った。
またダン自身も自分の正体を明かしてウルトラの国へ帰っていった。
しかしゲンは正体を明かしても帰る場所はない。
一応美山家からは去っていったが、地球には留まっている。

ゲンは子供たちが指令を倒すのを見て自分の任務は終わったと思い旅に出た。
しかしダンはゲンにそのようなアドバイスをしていたのであろうか?
ダンは愛する地球のためにMACの隊長となり、自らを犠牲にして侵略者と戦ってきた。
ゲンの行為はダンの教えに反する気がするのだが、どうだろうか。
この辺りはやはり最終回ということで無理やり決着をつけた弊害であろう。
ブラックスターは滅んでも、まだまだ地球を狙う侵略者は数多いる。
レオがウルトラ兄弟の仲間になった以上は、新任のウルトラ兄弟が派遣されてこない限りレオの任務は解かれないと考えるのが素直であろう。
まあ、地球には他にタロウもいるはずなのでレオだけに責任を負わせるのはどうかと思うが、やはりこれからも侵略者や宇宙人が現れた場合はレオが責任を負うのは仕方ないように思う。
レオは上る太陽でもあるのだから。

ゲンのその後であるが、ウルトラシリーズがレオで一旦終了し平成シリーズはM87星雲とは切り離された設定であったため客演の機会がほとんどなかった。
コメットさんのゲスト出演はあくまで外伝と捉えるべきなので、正式な続編はウルトラマンメビウスまで待つ必要がある。
メビウスに関してはメビウス単独としては物足りない面もあったが、昭和ウルトラに色々決着をつけた点、非常に有意義で重要な作品であった。
その中でゲンはまだ地球にいることが判明しているが、ずっと地球にいたのか一時地球を離れていたのかまでは不明。
ずっと地球にいたとしたら時々はレオに変身して戦っていたのであろうか。
それとも宇宙人の侵略は他のウルトラ兄弟たちの活躍で未然に食い止めることができていたのか。
それはともかくゲンの様子を見る限り、地球が第二の故郷であることを自らの体で確かめることはできたようだった。

前述したようにトオルが急にレオに依存する展開は違和感があったが、父親やカオルの仇を自らの手で打つことを放棄していたのはやはり自分が美山家の一員となったという安心感が背景にあったのであろう。
それでも美山家の墓参りには行けず、やはり自分は本当の家族ではないことも理解していた。
それでゲンに百子たちの供養も兼ねて伊豆へ行きたいと頼んだのである。
トオルが百子のことに言及したのは今回が初めて。
もちろん描かれなかっただけで忘れたことはなかっただろうが、ゲンに百子やカオルの思い出を語れるくらい、過去の出来事を整理できたというのは間違いないであろう。
ただ、そのためにトオルの中の反骨心まで消えてしまったのも事実。
トラウマを克服したトオルにゲンができるのは一人で生きていく強さをトオルに教えることであった。
そのためにはやはり自分が一緒にいてはいけないというのはあっただろう。
トオルの成長を見届けたゲンは安心して去っていく。
そして視聴者である子供たちもこれからは一人で生きていかなくてはならないのだ。
この辺りは明日のエースは君だにも通ずるメッセージであろう。

今回気になったのはゲンがトオルに昔の東京の様子を語ったところ。
これは単に勉強して得た知識なのか、ゲンの実体験なのか。
以前サタンモアのところでレオは一度地球へ修行に来ていたのではないかということを書いたが、あるいはその時に昔の東京を見たのかもしれない。
若しくは地球へ来る前に予習として習った地球がそのような時代だったとか。
レオのテーマの一つに故郷というのがあるので、今回は百子の故郷、トオルの故郷という形でこのような展開になったのであろう。

今回は後半の主要なテーマであったレオがいるから円盤が現れるというテーマにも一応の決着はつけていた。
ブラックエンドとブラック指令はより直接的にレオ抹殺へと動いていた。
ブラックエンドはレオの名前を呼んでさえいた。
やはりレオがいると周りの人間は巻き添えを食うのである。
前話では咲子が人質になったが、今度はトオルが人質になる。
ゲンが旅立ったのはトオルの成長のためというのもあろうが、美山家の人たちに迷惑をかけないというのもあっただろう。
自分がいれば周りの人間に危害が加わるとわかった以上、やはりウルトラマンは市井に安住することは許されないのである。

ただ、美山家の人たちはそんなゲンでも同じ地球人として受け入れようとする。
「きっと怒るよりも悲しがるわね。みんな勝手なことばっかり言ってるから」とゲンがレオであることに薄々気がついていた咲子。
咲子はゲンに宇宙人でも気にしないと伝える。
またレオのせいで円盤が現れると主張していたいずみも「私の知っているおゝとりさんは宇宙人なんかじゃないわ。私たちと同じ血の流れている人間よ」とゲンを地球人と認める発言をする。
宇宙人でも気にしないという咲子と宇宙人なんかじゃないといういずみ。
表現は違えど、言ってることは一つ。
地球を愛する心を持っている限り、見た目がどうであろうと体の作りが違っていようとそんなの関係ない。
同じ血の流れる人間であり、仲間なのだ。

ブラックエンドは最後にして最強の円盤生物との触れ込みであったが、正直あまり強くなかった。
子供の頃ブラックエンドは最強だと聞いてかなり期待していたのだが、本編を見てがっかりした記憶がある。
レオが強くなったのもあろうが、ブラック指令がトオルを人質にするまではいいとこなし。
もう少し看板に違わない強さにして欲しかったが、テーマ的にブラックエンドはレオを狙っていればそれで十分なので、あまり強くする意味もないのであろう。
まあ仮に最強だとしても、身体能力が高い程度のものだったのではないか。
いずれにせよ円盤生物自体があまり強くないので、結局知恵のあるブニョが最強ということになるであろう。
因みにブラックエンドのモデルだがテントウムシという説をどこかで見た記憶がある。
ただ、長い尻尾が特徴なので、どっちかというとサソリとかの方が近い気が。
海洋生物とした場合はやはりエビとかシャコになるだろう。
いずれにせよそのモデルのわからなさ、最強という看板倒れがこの怪獣を印象の薄いものにしてるのは間違いない。

本話の脚本はメインライターの田口成光。
田口氏が最終回を担当するのはタロウに続いて二回目だが、子供の成長を促して去っていくというのは2期ウルトラの定番。
ただ、自らの意志で去って行ったのはタロウとレオだけである。
すなわち、新マンは宇宙戦争のためウルトラの国に帰らなければならなくなった。
北斗は正体が知られたことにより地球に留まれなくなった。
敗北や過労のため星に帰っていった初代マンやセブン含めて、今までは外的要因で去っていくパターンばかりだったのである。
一方タロウとレオは地球に留まっている。
この辺りは田口氏の特徴である、子供を敢えて突き放すという教育的、父性的要素が出ているのであろう。
またゲンや光太郎の立場からは、自分の人生は自分で切り拓けというメッセージも込められている。

レオのテーマの一つに故郷というものがある。
ウルトラ兄弟の仲間入りをしたからといって、ゲンの故郷がウルトラの星になるわけではない。
ゲンにとって第二の故郷はやはり地球なのである。
セブンはゲンに宇宙人であることを知られた時が最後の試練だと言った。
すなわち宇宙人おゝとりゲンが受け入れられるかはお前次第だと言ったのである。
結果、ゲンは美山家の人たちに受け入れられることになった。
ゲンは最後の試練に勝ったのである。
そして、その時初めて地球がゲンの故郷になった。
ゲンは自らの力で人生を切り拓いたのである。

まとめ

最後にレオ全般についての感想を記すことにしよう。
正直レオについてはネットを見ても本格的にレビューしているものは少なく、また1期や2期前半に比べて関連書籍なども少ないからレビューにかなり苦労した。
また脚本的にも粗が多く、その割にテーマを無理やり詰め込もうとするため、それを読み解くのにどうしても時間が掛かり分量が多くなってしまった。
レビュワー泣かせの作品というのは間違いないであろう。
ただ、タロウにも言えることだが、よく作品を見ずに子供向けの低レベルな作品とレッテル張りする人も多いので、それに対しての異議申し立てはある程度出来たと思っている。
中には辛いレビューをした回もあるが優れた話も多いので、先入観なく全体として見て欲しいというのが私の願いだ。

話を内容面に戻すと、レオというのは初代マンのリメイクであるタロウに対してセブンのリメイクだというのが私の見方。
怪獣に対する宇宙人、憑依型と変身型という設定面はもちろんであるが、宇宙人と人間との愛情や友情というテーマに重きを置いたところもセブンに共通するテーマであろう。
何と言ってもセブンであるダンがレギュラーであったし。
一方、レオの新しい要素はそのダンがレギュラーであるということから、同じ宇宙人が二人いるという点。
下手をすると主人公が目立たなくなる恐れもあったが、それをダンを変身不能とすることにより回避し、師弟関係を上手く取り込んでいた。
ただ、ダンの特訓が苛烈になればなるほど視聴者である子供が引く結果になったのは皮肉だと言わざるを得ない。
いっそウルトラマンキングの人間態を隊長にした方が良かったのではないかと、今になって思う。

ウルトラマンレオをもって昭和のウルトラシリーズは一旦終了。
これに関しては視聴率の問題もあったが、やはり続けてウルトラを作ることによるネタ切れやスタッフのモチベーションの低下も大きかったであろう。
もちろんオイルショック等の経済的要因もあった。
ただ、新しいことに挑戦した意欲は評価できる。
その結果失敗しようとも、またそれを反省材料にして新しいものを作ればいいのだから。
ウルトラマンレオは視聴率的には失敗だったかもしれない。
だが決して失敗作ではない。
それが伝わったかどうかは自信はないが、このレビューを叩き台にレオの話が盛り上がれば幸いである。



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