データ 脚本は石堂淑朗。 監督は山際永三。 ストーリー 「どうした、ブラックスター。なぜ次の円盤を送って来ないのだ。レオに勝つ自信をなくしたとでもいうのか」。 ブラック指令がブラックスターに呼びかけた直後、新たな円盤ブニョが現れた。 人間態になるブニョ。 しかし地球の重力のため、フラフラしてしまう。 「お前は何者だ」とブラック指令。 「宇宙人なんだ。ブニョって言うのさ」と人間態のブニョ。 「ブニョ?お前のように力のないものが来て何になるというのだ。帰れ!帰れ!」。 「力はないが、知恵はある。レオを騙すんです。レオを地球の外に連れてって、料理しましょう」とブニョ。 「どうやって」と指令。 任せてくださいと立ち去るブニョ。 ブニョは独自のアンテナで宇宙人の反応をキャッチすることができる。 道路の脇の林に入り、ランニングするゲンを待つブニョ。 ゲンは何者かの気配を感じ林の中へ入ると、お腹を痛がるブニョがいた。 「宇宙人だな」。 すぐに正体を見破るゲン。 「バレたか」。 襲いかかるブニョに反撃するゲン。 ブニョを叩きのめすゲンだったが、そこへトオルが現れブニョに逃げられてしまう。 ランニングを続ける2人。 しかしそれを焼却炉に隠れていたブニョに見られてしまう。 夕げ時の美山家。 いずみが家族に対し日頃考えていることを打ち明ける。 「ねえみんな、レオのことどう思う」といずみ。 「そりゃ決まってるじゃない。地球を守るウルトラマン」とあゆみ。 「レオは普段どこに隠れているか」とトオル。 そんなことじゃないわといずみ。 「私思うんだけど、レオがいないほうがこの地球は平和なんじゃないかしら」。 「そんなことないよ。レオがいなかったら、この地球は今頃ブラックスターのものになってるよ」とトオル。 「そうかしら。私はブラックスターが狙ってるのはこの地球じゃなくてレオなんじゃないかなと思うの」。 「そんなことないわよ。やっぱりブラックスターはこの地球と私たち人間が欲しいんだと思うわ」とあゆみ。 「そうだ。そうに決まってるよ。ね、おゝとりさん」とトオル。 「さあ、それはどうかな」とゲン。 「そうね。ブラックスターに聞いてみなけりゃならない、難しい問題だわね」と咲子。 「レオは地球が好きなんだ。人間が好きだから。だからレオに感謝しなくちゃ」とトオル。 そこへ病院から電話が掛かってきた。 病院に泥棒が入って診察室が荒らされてるとのこと。 すぐ支度をして出掛ける咲子。 「僕も行きましょうか」とゲン。 当直の先生がいるから大丈夫と咲子。 「ブラックスターの仕業かもしれないよ」とトオル。 「どうして?ブラックスターが泥棒なんかするわけないでしょ」といずみ。 「レオなんかいらないって誰かさんが言ったからね」とトオル。 病院に着いた咲子は、当直の先生が倒れてるのを発見する。 近づく咲子。 しかし先生だと思ったのはブニョだった。 いきなり手を掴まれる咲子。 叫び声を上げる咲子。 夜10時になっても帰ってこない咲子を心配する家族。 その時突如テレビがついて、縛られてる咲子とブニョの姿が映しだされた。 さらにラジオからブラック指令の声が。 「悔しかったらお前たちで助けに来い」。 「レオがこの近くにいるのよ。だからこの家が狙われたのよ」といずみ。 「とにかく僕は病院へ行ってくる」とゲン。 トオルたちもゲンの後について行く。 ゲンは病院の前にトオルたちを待機させ一人で病院の中へ。 診察室へ入ったゲンに対し 「また会ったな、ウルトラマンレオ」とブニョ。 「卑怯だぞ」とゲン。 「レオは人類の守り神だそうだからなあ、病人の一杯いるところでは戦えない。変身もしない。な、そうだろ?」とブニョ。 「この女と交換についてくるんだ」。 宇宙ロープを取り出すブニョ。 「これでお前の体を縛らせてもらう」とブニョ。 咲子を人質に取られたゲンは仕方なく宇宙ロープに縛られる。 「さすがは人間の味方、ウルトラマンレオだけのことはあるな」とブニョ。 ゲンたちを心配して病院の中へ入るトオルたち。 そこに咲子の助けを呼ぶ声が聞こえてきた。 縛られた咲子のロープを解く3人。 「おばさん、おゝとりさんは」とトオル。 「来なかったわよ」と咲子。 「どんな泥棒なの」とあゆみ。 「何だかね、変なの。こう触った感じがブニョブニョしていて」と咲子。 窓から外の様子を見たトオルはゲンが連れて行かれるのを目撃する。 地下の冷凍室に連れて行かれるゲン。 そこにはブラック指令が待ち受けていた。 「ブニョ、そいつは本当に宇宙人なのか」と指令。 「レオですよ」とブニョ。 「どうしてわかる」と指令。 「本当ですよ」。 ブニョは頭の触覚のアンテナでゲンが宇宙人であることを証明する。 「なるほど。確かに宇宙人だ」と指令。 「さあ、ブラック指令。宇宙光線で作ったこのロープで縛ってるうちに、たたっ斬ってください」とブニョ。 「ようし」。 「ウルトラマンレオもこれでおしまいだな、なあ。地球もとうとうブラックスターのものだ」。 「ウルトラマンレオ、死ね」。 刀を振り上げるブラック指令。 その時ゲンは飛び上がってレオに変身した。 ブラック指令の刀はレオの体に当たり折れてしまうが、レオも傷を負う。 変身したものの、宇宙ロープのせいで巨大化できないレオ。 「大丈夫ですよ。このロープはどんな力でも決して切れることはないのですよ」と冷静なブニョ。 レオを身体処理室に連れて行くブニョ。 一方家に帰った咲子はブニョの感触がブニョブニョしていて人間の体ではなかったと家族に話す。 「それじゃ宇宙人なのかしら」とあゆみ。 「いずみさんがレオなんていらないて言うからこんなことになったんだ」とトオル。 「ちょっと冗談に言ってみただけよ。こんな事偶然だわ」といずみ。 「でも、もしレオが聞いてたら、地球を守るのが嫌になるかもしれないよ」。 「あのブヨブヨ人間は、おゝとりさんをおびき出すために私を囮に使ったんだわ」と咲子。 「それじゃあ、おゝとりさんが、ウルトラマンレオなのかしら」とあゆみ。 「まさか」といずみ。 「おゝとりさんは、かわいそうだ」とトオル。 身体処理室で凍えるレオ。 「零下100度で冷凍だ、コラ」。 レオを叩きのめすブニョ。 「ヤレ!ヤレ!ヤレ!叩きのめせ!」と指令。 「長い間、ご苦労だったな」。 レオを殴るブニョ。 宇宙ロープで縛られたレオのカラータイマーが赤になった。 凍りついて身動きできなくなるレオ。 レオを殴り処理台の上に寝かせるブニョ。 「レオがコチンコチンとはな」。 レオを軽く叩いてはしゃぐブニョ。 「まあ、安らかに眠りたまえ」。 一方トオルはベッドの上でゲンの身を案じていた。 凍りついたレオを見て歓喜の声を上げる指令。 レオの体にノコギリの刃を当てるとそれを引き始める。 なす術のないレオ。 ベッドの上で横になっていたトオルの耳にレオの声が聞こえてきた。 「さようなら、トオル」。 「誰だ」。 起き上がるトオル。 「地球に埋めてくれたまえ。僕がいたばかりに地球の人びとに迷惑をかけたのかもしれないけど、僕は地球が好きだ。人間が好きだ。地球で永遠に眠りたいのだ。朝早く一人で、東の丘に来てくれたまえ」。 心配して様子を見に来た咲子に抱きつくトオル。 「レオが死ぬんだ、死ぬんだ」とトオル。 「そんなことないわよ。夢見たのね」と咲子。 翌朝、東の丘に行くトオル。 そこでバラバラになったレオの死体を発見する。 レオの死体を地中に埋めるトオル。 そこへあゆみがやって来た。 「どうしたの?こんな朝早くから」とあゆみ。 「レオが死んだんだ」とトオル。 「じゃこれ、本当のレオなの?」とあゆみ。 「レオはこんな小さくされて、人間と同じになってブラックスターにやられたんだ」。 「でもレオは、一度も戦わないでやられたりするはずないわ」。 「レオはいずみさんにいらないなんて言われたから、もう戦わないことにしたんだ、きっと」。 「そんなことわかるもんですか」とあゆみ。 「地球の諸君。レオは死んだ。地球はもうブラックスターのものだ。ブニョ、戦え」とブラック指令。 巨大化するブニョ。 街を破壊するブニョ。 逃げる住民たち。 「とにかく逃げなくちゃ、お母さん」といずみ。 しかし咲子は「おゝとりさんは私の代わりに行ったんだから、ここで待たなきゃ」と家に戻ろうとする。 そこへトオルとあゆみが戻ってきた。 「おゝとりさんはいない。レオも死んだんだ。逃げたってしょうがないよ」とトオル。 「みんなで家の中で待ってましょうね」と咲子。 レオが埋められた墓穴にキングが現れた。 「レオよ。お前はまだ死ねない。地球の人間がひとりでもお前を欲している間は死ねない。辛くとも、まだ戦わなければいけないのだ」。 キングの発したキングビームによりレオの死体に奇跡が起こる。 復活するレオ。 「さあ、行け!」とキング。 巨大化するレオ。 「レオが復活したんだ」とトオル。 「やややややや。これは一体どういうことだぁ」と指令。 ブニョの吐いた墨に脚を取られ転倒するレオ。 さらにブニョの長い舌に絡めとられ引きずり回される。 光線を発して舌を振りほどくレオ。 ブニョは徐々に溶解し始める。 最後はレオキック一閃。 頭を吹っ飛ばされたブニョは溶けてなくなった。 「まだまだ望みは捨てんぞ」と指令。 美山家に戻るレオ。 「何処に連れて行かれてたんでしょうかね」と咲子。 抱き合って喜ぶゲンとトオル。 最強の円盤生物ブラックエンドを地球に飛ばすブラックスター。 レオはどうなるのだろう。 地球はどうなるのだろう。 解説(建前) レオはなぜ巨大化できなかったのか? その分析の前にレオの巨大化プロセスについて検討してみよう。 レオは地球上では3分も戦うことはできない。 これはおそらく地球はレオにとって過酷な環境でエネルギー消費が激しいためであろう。 ただプレッシャー星人に小さくされた時、変身が長い時間持続したように、そのエネルギー消費は専ら巨大化に費やされてると考えられる。 従って等身大に変身した場合は通常よりも変身は長い時間持続するのである。 ではレオの変身のためのエネルギーはどのように蓄えられてるのであろうか? レオの人間体であるゲンは光線も使えなければ格闘技も人間の達人程度で、とてもウルトラマンとは呼べない実力である。 これは人間体になることによりエネルギー消費を最小限に抑え、ゲンの体そのものを言わば充電池のようにしてエネルギーを蓄えてるからであろう。 そしてその蓄えたエネルギーを獅子の瞳と反応させることによりスパークさせ、エネルギーを一気に物質化することにより巨大なレオとなるのである。 以上より、レオの巨大化にはゲン内部のエネルギーとそのエネルギーを反応させる獅子の瞳が必須となる。 ただ、巨大化しない場合はゲン内部のエネルギーと獅子の瞳を反応させる必要はないであろう。 本話でもレオは獅子の瞳を使わずに変身した。 このことから、等身大レオへの変身には獅子の瞳(正確には獅子の瞳とエネルギーとのスパーク)は必要ないのである。 長々とレオの巨大化プロセスについて検討してきたが、ここまで書けばレオが巨大化できなかった原因もほとんど理解できるであろう。 つまり、宇宙光線で作られたウルトラロープは言わばアースのような役割でゲンの内部に蓄えたエネルギーを放散させてしまった。 そのことにより獅子の瞳に十分なエネルギーが流れず巨大化のための反応が妨げられたのである。 そして等身大のレオは力も巨大化時ほどには発揮できない。 そのため巨大化すれば易易と切ることができるであろう宇宙ロープを切ることができなかったのであろう。 結果、レオは身動きがとれず、加えて苦手な寒さのためエネルギーもなくなってしまった。 そしてバラバラにされてしまったのである。 では、なぜレオは復活したのであろうか。 そもそもレオは本当に死んでいたのか検討しよう。 この点に関しては私はレオは死んではおらず仮死状態であったと考える。 私見ではウルトラ兄弟は体がバラバラになったりカラータイマーを破壊されたりしても、その本体である魂までは死なないものと考える。 かつてウルトラの父が復活したとき、自分はまだ魂だけだと言ったことがあった。 つまりウルトラの体はある意味仮りそめの体と考えられるのである。 レオの場合もレオの体は滅んでしまったが、レオの本体の魂までは死んではいなかった。 だからこそ、キングがレオの体を復元したことによりレオ自身も復活したのである。 ただ、キングとてレオを完全に元通りには復活できなかった。 レオの体を構成する核となるカラータイマーがバラバラにされたことにより復元不能となっていたのである。 そこでキングはウルトラ一族のタイマーをレオに与えた。 そのことによりレオのタイマーの音が変わったのである。 キングがレオにウルトラのタイマーを与えたのも、キングがレオをウルトラ兄弟と認めていたからであろう。 ブニョは何者か。 ブニョは自らを宇宙人と名乗った。 また、他の円盤生物とは違って人間態に変身したり、高度な作戦を立てる知能も有している。 加えてブニョは円盤態にも変身しなかった。 円盤生物というにはかなり異色な存在といえるだろう。 ただ、円盤生物の中にもデモスやノーバなど自らの意思で作戦を考え実行する者もいた。 また、サタンモアのように円盤態に変身しない者もいた。 結局円盤生物というのはブラックスターから送り込まれる生物兵器の総称で、特に決まった定義はないのではないか。 広い意味ではブニョも円盤生物の範疇に含まれるのであろう。 ブラックスターとブラック指令の関係については、最終回で考察することにする。 感想(本音) なかなかインパクトのあるエピソード。 テーマはレオがいるから地球は襲われるのではないかという、シリーズの根幹に関わるもの。 シリーズラストに相応しいテーマである。 本話の脚本は石堂淑朗。 氏はウルトラに否定的な話をよく書くとのことだが、そういう意味ではこの話もその系譜の作品である。 ただ、このテーマを描くために、レオの解体が必要だったか否かは疑問が残る。 石堂氏は新マンをバラバラにしたり、ペシャンコにしたり、とかく猟奇的なシーンを入れたがる。 本話もレオのバラバラが先にありきだったのではないか? 個人的にはレオの解体はやり過ぎだと思っているので、その辺りをどう捉えるかによって評価が分かれる作品であろう。 本話は何と言っても蟹江敬三氏演じるブニョ人間態の強烈なインパクトが印象に残る。 蟹江氏はエースのカウラ編でも超獣に変身してしまうヒッピー青年を演じて強烈なインパクトを残したのだが、本話はさらにその上を行っている。 蟹江氏と言えば当時は刑事ドラマの犯人役専門というイメージのある役者だが、こういう軽妙な役をやらせてもやはり上手い。 いずれも狂気を含んだ役で、この辺りは蟹江氏の持ち味がフルに発揮されてると言えるだろう。 ただ、売れっ子になってからは人情味のある役が多くなったように、結局何をやらせても上手い役者なんだと思う。 個人的には「沙粧妙子最後の事件」の上司役が良かった。 と、脱線してしまったが、今回はブニョのセリフにかなり重要なものが含まれていたので、それを検証することにしよう。 まずは有名な「長い間、ご苦労だったな」。 これは明らかにシリーズの終焉を踏まえての発言であろう。 ある意味ウルトラに関わってきたスタッフに向けられたものとも解釈できる。 「ウルトラマンレオもこれでおしまいだな」。 これも同様だが、これは視聴者へ向けてのお別れの挨拶であろう。 「安らかに眠りたまえ」。 もうウルトラはおしまいということか。 ただ、これで終わっていたらウルトラはここまで続かなかったであろう。 ここでキングのセリフが重要となってくる。 「レオよ。お前はまだ死ねない。地球の人間がひとりでもお前を欲している間は死ねない。 辛くとも、まだ戦わなければいけないのだ」。 つまりファンがいる限り、ウルトラは何度でも蘇るぞという制作側の意志であろう。 そしてファンがいる限りはウルトラを作り続けないといけないという制作側の覚悟でもある。 現実にウルトラは第三次ブームを迎え見事に復活を遂げることになる。 今のスタッフもこの精神を忘れずウルトラを作り続けて欲しいものだ。 ブニョは宇宙ロープや宇宙人を感知する触覚など、円盤生物らしからぬアイテムを持っていた。 ブラックスターではこういうものも作られてるということだろうか。 しかし、知恵のある割には最初の作戦は杜撰。 病人の振りして油断させて宇宙ロープで縛ろうということだったのか。 この辺りは知恵があるといってもやはり円盤生物という気もする。 一方巨大化したブニョは言うほど弱くはなかった。 そもそも円盤生物ってあまり強いのいなかったし(笑)。 今回気になったのは、人質になっていた咲子がゲンとブニョの会話を聞いていたのではないかということ。 あのシチュエーションだと聞こえていたと解釈するのが素直だが、その後の発言や様子からは特にそういう感じは受けなかったので、拘禁反応か何かで意識を失っていたとでも解釈しようか。 ただ、あゆみが「おゝとりさんが、ウルトラマンレオなのかしら」と言った時にはさすがに思い当たったかもしれない。 トオルが「レオが死ぬんだ」と言った時もゲンの心配してたし(どっちとも取れる演出だが)。 一方、普通なら気付くだろうというトオルの鈍感ぶりには驚かされる。 自分の一番身近な人がレオというのは意外過ぎるのかもしれないが、さすがにそろそろ不思議に思えよとは思う(笑)。 今回はノリノリでノコギリを引くブラック指令がおかしい。 指令はゲンがレオであることを知らなかったが、その割には美山家に咲子を取り戻しに来いと脅迫していた。 一応ブニョの作戦には従ってみたが確証はなかったといったところか。 ところでレオをバラバラにした部屋はどこだろう? ブニョはレオを宇宙へ連れて行くと言っていたので地球上ではないとも考えられるが、あの短時間に宇宙へ移動するのは難しいのでやはり地球のどこかだろう。 ブニョは他の生物とは違い飛行態に変身しないようなので、あるいはブニョが乗ってきた円盤の中かもしれない。 ブラック指令が乗ってきた円盤という可能性もあるが、いずれにせよ最初からレオを解体するために準備してた部屋なのは間違いないだろう。 本話のテーマはレオがいるから地球が襲われるのではないかというもの。 実際のブラックスターの目的はレオを倒して地球を征服することなのは明らかなのだが、その前提としてレオ打倒を目指しているので一見そのように見えても不思議はない。 このテーマは以前にも述べたが、軍隊がいるから戦争が起きるという話にも似ている。 しかしフィクションの世界ならともかく、実際には日米安保や自衛隊がいるから相手が攻めてくるなんてのはありえないわけで、結局侵略が先にありきなのである。 ただ、大いなる力を正しく使わなくてはいけないというのは明らかであるから、そのためにウルトラマンのような正義のヒーローが必要となる。 それが例え欺瞞だとしても、子供にはまず正義というものの存在を知らしめる必要があるであろう。 話をレオに戻すと、本話のゲンはやはり自分のせいで周りの人間を巻き込んでることを気に病んでる。 そのためブニョに敗れたとまでは言わないが、いつもより弱気になっていたのは間違いないであろう。 解説でも述べたが、ウルトラ一族はバラバラにされただけでは完全には死なない。 しかし体だけ元に戻ったとしても、それだけでは本来の力を発揮することはできないのである。 レオはトオルに地球が好きだから地球に埋めて欲しいと頼んだ。 しかしそれはキングの言う通り戦士としては許されない。 ウルトラの戦士は一人でも地球の人間が欲してる限り戦わなくてはならないのだ。 ダンの厳しい修行やMAC全滅後の孤独な戦いで成長してきたレオ。 本話の試練はレオが本当の正義の戦士となるための最後の試練ともいえるであろう。 本話の大きな問題はやはりレオがバラバラにされたシーン。 話全体はコミカルに進められてたので、意外と残酷度では「ウルトラマン夕陽に死す」よりマシという気もしたが、私は子供の頃この話を見たわけではないので、その頃に見た人にはやはりトラウマになってる可能性は高い。 まあ、ツルク星人に一刀両断されるトオルの父や隊員というシーンがあったので今更ではあるが、やはり主人公が敗北する、それも完膚無きまでにバラバラにされるというのは主人公に感情移入している子供にはショックが大きいであろう。 私もエースや兄弟がブロンズ像にされるシーンを子供の頃見てかなりショックを受けた経験がある。 新マンのぺちゃんこシーンしかり。 ところで怪獣を切断するシーンが神戸や佐世保の事件で自粛が当たり前になってしまったが、正直あまり意味はないと思う。 結局怪獣を倒しているという事実に変わりないのだから、その殺し方を変えたところで悪い影響を受ける子供は受けるだろう。 子供だって怪獣は悪いことをしたから殺されるというのは理解している。 それは麻原彰晃が死刑になるというのと同じことで、それを極端に恐れて規制するというのは行き過ぎた左翼思想としか言い様がないであろう。 大事なのはメッセージである。 そしてそのメッセージが正しく伝わるか。 バトルロワイヤルがいくら正しいメッセージを持つ作品だとしても、ああいう手段では正しく伝わらない可能性が普通のヒーローものより遥かに高い。 ましてや殺されるのは寓話化された怪獣ではなく人間そのもの。 しかも身近な同級生たちでは、正しいメッセージもその悪いメッセージにかき消されてしまう危険性が高いであろう。 ああいう作品が子供の視聴を制限されるのは個人的には当然だと思う。 話は逸れたが、ウルトラの残酷シーンはメッセージがちゃんとしてる限り規制の必要はない。 ただ、このレオのバラバラはどうなのか。 こちらは少年犯罪への影響というよりは、自己否定的なトラウマを子供に与えかねないので個人的にはやめた方が良かったと思う。 負けるにしてもバラバラにする必然性はない。 この辺りはちょっと猟奇的趣味に走りすぎたかなという気もしないではない。 また少し話を逸らすと、ウルトラよりよっぽど悪影響だなと個人的に思うのは時代劇、特に必殺シリーズだ。 必殺は時間帯的には完全に大人を対象としてるので見るほうが悪いとも言えるが、高学年になると見てる子供が多かったというのも事実なのでやはりその表現には気を使わないといけない。 私自身もいじめっ子に鉛筆で首を刺されたことがあるが、こういうのも加減のわからない今の子供達だと大事件、事故につながる可能性が皆無とは言えないであろう。 まあ、あれも悪人を殺してるだけでメッセージとしては正しいのだが、如何せん相手が人間なのでヒーローものの比ではないくらい直接的な影響が大きい。 それを言い出すと金田一シリーズ、美女シリーズとか切りがなくなるが、つくづく昭和のテレビって凄かったんだなあと思う(笑)。 本話はウルトラシリーズを縁の下から支えた石堂氏の2期シリーズ最後の脚本。 猟奇趣味はやはり石堂氏の趣味であろうが、映像作品は脚本家一人で作るものではないので当時のスタッフも特に抵抗なくこのような猟奇的な話を作っていたのだろう。 この流れ自体はセブンが磔になったところからスタートしてるので、別に2期特有のものではない。 ドンドン過激になって行き着いたのが本話ということであろう。 正直本話に関しては重要なテーマが語られているのだが、そのバラバラシーンだけが大きく取り上げられてしまいテーマはややとってつけたようになっている。 そういう意味では素直に名作とは言い難いであろう。 個人的にはバラバラシーンもそれほど直接的な描写はなく、蟹江氏の怪演等楽しめるシーンもあり嫌いなエピソードではないのだが、ヒーローのあまりに無残な敗北というのはやはりやり過ぎ感は否めない。 そういう意味もあり、見る人によって評価が分かれる作品なのは仕方ないであろう。 結局、シリーズ最終回前の異色作というのがこの作品の評価としては妥当であろうか。 |