地獄から来た流れ星!


データ

脚本は田口成光。
監督は外山徹。

ストーリー

「ブラックスター5番目の円盤生物、ブラックガロン、来〜い〜」。
地球へ向かって飛び立つブラックガロン。
「待て〜」。
クラスメートのケンジを追いかけるトオル。
トオルはケンジに追いつくと殴りかかった。
その拍子にケンジの時計のガラス面が割れてしまう。
「どうするんだよ」とケンジ。
「高いんでしょ、その時計」とあゆみ。
「パパがヨーロッパから買ってきてくれたんだ」とケンジ。
ケンジを突き飛ばしてその場を逃げ出すトオル。
その夜、帰宅したゲンは家を飛び出すトオルに遭遇する。
美山家にはケンジの父親中森が抗議に来ていた。
「君がトオルくんの保護者だそうだね」と中森。
「トオルくんがうちの子の腕時計を壊してしまったんだ。誕生日の祝いに私がヨーロッパから買ってきた高級時計だ。まったくもってけしからん」。
「弁解の余地があるとでも言うのかね」。
「どうも、すいませんでした」とゲン。
「人のものをやっかみ半分で壊すなどという行為は断じて許すべきことではないが、ま、今回は目を瞑りましょう。おおとりさん。二度とこのようなことがないよう、トオルくんを厳重に戒めて下さい」と言い残して帰る中森。
「こっちの理由はまるで聞こうともしないで、言いたいことだけは言うお父さんね」と咲子。
「僕にはトオルがやっかみだけで時計を壊すなんて思えないんだけどなあ」とゲン。
「そうよ。トオルくんが怒ったのはね、中森くんが」。
その時の状況を話し出すあゆみ。

 父親に買ってもらった時計を見せびらかすケンジ。
 ケンジは二人は父親がいないから時計を買ってもらうのは無理だと馬鹿にする。
 掴みかかるトオル。

家を飛び出したトオルを探すゲン。
トオルは公園のブランコに座って父親を思い出していた。
「流れ星だ」とトオル。
しかしその流れ星の正体はブラックスターからの円盤生物だった。
円盤生物が地面に激突した衝撃で倒れてきた鋼材の下敷きになるトオル。
トオルを見つけたゲンは駆けつけてトオルを救出した。
しかしブラックガロンが2人の方へ近づいてくる。
長い舌で建物を破壊するブラックガロン。
トオルを逃がしレオに変身するゲン。
ブラックガロンの放つ火花を浴び苦戦するレオ。
「ブラックガロン、引け〜」。
ブラックガロンはブラック指令に命令されて姿を消した。
家に帰った二人は咲子に火傷の手当をしてもらう。
「今夜は火傷の傷が少し痛むかもしれないけど、痛み止めでも飲んどく?」と咲子。
「いえ、いいんです。少しくらい痛いほうがいいんです。痛みを忘れて円盤生物をやっつけるファイトまでなくしたくないんです」とゲン。
「それはいいけど、命までなくすような無茶な真似はしないでよ」と咲子。
翌朝、登校するトオルとあゆみは、ケンジが友達と何か拾っているのを目撃する。
これは隕石だと言い張るケンジ。
「こんなところに星が落ちたんなら夕べは凄い音がしたはずだぜ」と友達。
疑う友達に対して「パパに見てもらえばわかるよ」とケンジ。
「夕べの円盤生物だ」とトオル。
「大変だわ。おおとりさんに知らせなきゃ」。
家に戻るあゆみ。
隕石が円盤生物だというトオルに対してケンジは
君は何でも僕の持ってるものにケチつけるんだから」と反論する。
ゲンが来るのを見ると
「大人まで呼んだりして、パパに言いつけてやろう」とケンジ。
ケンジの父親は中森鉱物研究所の所長をしており、ケンジは隕石を父の研究室へ持ち込む。
中森の研究室を訪れるゲン。
「君には夕べ私が言ったことがわかっていないようだね」と中森。
「さっきうちの子が、今朝もトオルくんにいじめられたと知らせてきたよ。君は一体トオルくんに保護者としてどんな教育をしとるのかね」。
「中森さん。僕はそんな話をしに来たんじゃないんです」とゲン。
ゲンは研究室にある隕石を指差し
「それは夕べ地球にやってきた円盤生物なんです。すぐ処理してください」。
「君、朝から冗談は困るね」と中森。
「冗談でも夢でも何でもないんです。あれは確かに円盤生物なんです。夕べ、僕はこの目ではっきり見ました」とゲン。
「君は私が何の専門家か知ってるのかね?これは多分隕石だよ。私の息子でさえ隕石だと検討をつけてる。さすがに息子は目が肥えてると感心してるくらいだ」と中森。
僕を信じてくださいというゲンに対して中森は、生物かどうか実験してみましょうと提案する。
隕石をハンマーで叩く中森。
さらに隕石をバーナーで加熱する。
しかし何の反応も示さない隕石。
「そんな馬鹿な。これは絶対に円盤生物だ」とゲン。
「いかがですかな。生物というものはこれほどの刺激を与えたならば、痛いとか痒いとか何とか反応するものですよ。おおとりくん。君はまさか腕時計の一件を逆恨みでもしてるのではないでしょうな」と中森。
「私は忙しいんだ。帰ってくれたまえ」。
ゲンを追い返す中森。
落胆して研究室を出るゲン。
病院へ向かうゲンを見かけた咲子はゲンに声を掛ける。
「どうしたの?まるで夢遊病者みたい」と咲子。
「何を思いつめてるのか知らないけど、夕べのあなたの意気込みは何処行っちゃったの?」
「しっかりしなさいよ。私のね、死んだ主人は随分頑固な人だったの。主人は医者だったでしょ。いつだったかどの先生も絶対に治らないという患者さんをね、4日も徹夜してとうとう治しちゃったの。その代わり、本人も寝込んじゃったけどね。頑張り屋のいい人だったわ。男はそれでなくっちゃ。クヨクヨ思い悩むなんて男らしくないわよ。頑張んなさいよ」。
「はい」とゲン。
ゲンは急いで研究室へ引き返す。
「間違いない。あれは絶対円盤生物だ。俺がやらなければやる人はいないんだ」とゲン。
その頃研究室には学校から帰ったケンジが父を訪ねてやってきていた。
動き出す隕石。
ゲンは研究所の守衛に
「あなたは二度と入れるなと所長からの命令なんです」と制止される。
「何かが起きてからじゃ遅いんですよ」とゲン。
その時研究室からガラスの割る音とともにケンジの悲鳴が。
その声を聞きつけて駆けつける中森。
部屋の中では円盤生物が火花を放ちながら飛び回りケンジを襲っていた。
息子を庇う中森。
そこへゲンが駆けつけ、2人を外へ避難させる。
ブラックガロンを足止めするゲン。
脱出する研究所員たち。
所員が脱出した直後、研究所が爆発した。
「ブラックガロン立て〜」。
爆発の中から立ち上がるブラックガロン。
そしてウルトラマンレオ。
円盤形態になってレオを襲うブラックガロン。
レオが円盤に飛びつくと、ブラックガロンは怪獣形態に戻った。
光線技でブラックガロンの腕を破壊するレオ。
腕を破壊され火花が出せなくなったブラックガロンは今度は長い舌をレオの首に巻きつける。
そのままレオを釣り上げ、レオの首を締め付けるブラックガロン。
何とか脱出するレオ。
レオの戦いを見守る中森親子。
レオはブラックガロンの舌を破壊。
舌を破壊されたブラックガロンは爆破炎上した。
レオの勝利に喜ぶ中森たち。
「ケンジ、パパは大変なことをしてしまった。おおとりくんを死なせてしまった。私がおおとりくんの言葉を信じなかったためにこんなことに」。
「おおとりさんは僕を助けてくれたんだ」とケンジ。
「そうなんだ。そうなんだよ。私はあの直向きさを誤解していたんだ。これは許されないことだ」と中森。
そのときゲンが駆けつけてきた。
「おおとりくん。ありがとう。君のおかげで我々は助かった」。
「いや、礼を言うならあゆみちゃんのお母さんに言ってください。僕が何をすべきか教えてくれたのはあの人なんです」。
「しかし、とにもかくにも我々は君に助けられたんだ。君はまるでウルトラマンレオのような男だ」。
微笑むゲン。
「いてえ」。
咲子から火傷の治療を受けるゲンは大声をあげる。
「くそう、ウルトラマンレオめ。また邪魔しよって。ブラックスター地球侵略六番手、ブリザードよ来い〜」。
来襲する円盤。

解説(建前)

最初の戦闘後ブラック指令がブラックガロンを引かせたのはなぜか?
これはやはりブラックガロンの体力の問題であろう。
他の円盤生物は地球へ来てから皆小型化して潜伏していた。
おそらく宇宙を飛来してきたことによる消耗で一度体力を温存する必要があるのだろう。
無理をすれば勝てたかもしれないが、安全策を取って退避させたものと考えられる。

感想(本音)

ベタだけどちょっと泣ける話。
中森が自分の誤りを反省してゲンに感謝するシーンは、演ずる佐原氏の演技力もありいいシーンとなっている。
展開がしっかりしているので、反省に至るまで無理がなく納得できる運び。
また咲子がゲンに喝を入れるシーンも春川さんの持ち味が出ており、よかった。
ブラックガロンもいい味出してたし、よくまとまった好編である。

時計の件に関しては本編では何のフォローもなかったが、脳内補完して2人は和解したと考えてよかろう。
ケンジ自身は自分の非はわかってるはずなので、そのことを中森に伝えたものと思われる。
ただ、客観的に見てやはりトオルの行為は褒められたものではない。
この点、ケンジが謝ったことにより、トオルも素直に謝罪したと解釈するしかないであろう。

本話で気になったのはブラックガロンの出現がゲンとトオル以外にはあまり認識されていない点。
ケンジのクラスメートが「こんなところに星が落ちたんなら夕べは凄い音がしたはずだぜ」と言ってたのが違和感。
円盤が落ちる凄い音がしたような気がするのだが。
まあ、ブラックガロンは怪獣形態で暴れるので、円盤と認識されてなかったとでも解釈しておこう。
隕石とか円盤という情報がなかったため中森もゲンの話を信じられなかったのだろう。

ブラックガロンはコミカルな風貌に似合わずなかなかの強敵。
円盤形態の時はカエル(信楽焼風)みたいだと思ったのだが、怪獣形態では亀のようであった。
長い舌をレオの首に巻きつけてそのまま宙吊りするなどかなりパワフル。
て、物理的にかなり無理がある絵に見えたが、その他にも手から火花を出すなど多彩だ。
地球へ飛来するときも、ガメラよろしく火花を散らしていたし、最後のやられ方など、個人的にはかなり好きな怪獣。

今回はケンジ演じる子役の演技がなかなかうまかった。
前半の憎らしさ、後半の殊勝さ。
準レギュラー子役の西脇くんにも似てるが、嫌味な感じがよく出ていたと思う。
対するトオル、あゆみのレギュラー陣の演技もさすが。
特にトオルは屈折した子供をやらせるとやはりうまい。

本話の肝は、咲子がゲンに咲子の亡くなった夫の話をしてゲンを発奮させるところ。
成長し、子供たちを指導する立場になったとはいえ、ゲンもまだまだ未熟なところもある。
このように、ゲンにはまだまだ教え諭してくれる人が必要であろう。
咲子は普通の看護婦だが、夫が亡くなったあと女手一つで娘たちを育てるなど心の強い人物として描かれている。
力や技ではなく心の強さを問題とする辺りが初期特訓編との違いか。

ウルトラマンの超能力で隕石の正体を見抜けよというのはさておき、自分の信念に迷いが生ずるのは人間ウルトラマンを標榜した2期ならでは。
またケンジの反省と成長を描いた点は、円盤生物編ならではであろう。
ただ、個人的にはトオルの屈折にはやはり疑問が残る。
確かに自分の言い分を聞いてもらえなかったため屈折するのは理解できるのだが、自分がケンジを殴って時計を壊したのも事実である。
一応ケンジとは和解したと解釈するが、あゆみと違ってまだまだ父や妹の死を克服できてないのも事実であろう。

本話のテーマは家族。
ここまであまり亡くなった家族のことを思い出すことのなかったトオルだが、それはまだまだトオル自身が家族の死を客観的に見ることができなかったからである。
これから徐々に描かれていくトオルの心の闇。
脚本を書いた田口氏がどこまで意識していたかはわからないが、明るい中にもそういうトオルの闇を描いている点、本話は今後のシリーズへの伏線といえる話である。


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