挑戦!吸血円盤の恐怖


データ

脚本は若槻文三。
監督は前田勲。

ストーリー

「ブラックスターからの暗殺者デモス、発進せよ。お前の使命はウルトラマンレオを倒すことだ」。
夜の街。
次々と襲われる市民たち。
円盤生物デモスが不気味な光を点滅させる時、血も凍るような恐ろしいことが起こるのだ。
夕食時の美山家。
食後にフルーツを食べるゲンたち。
遅れた夕食を食べ終わった咲子はとっても嬉しいことがあったと手紙を取り出す。
手紙は絶対に助からないと言われていた男の子からのもので、男の子はすっかり全快したとのことだった。
「私も看護婦さんになろうかしら」とあゆみ。
「無理だよ」とトオル。
「あら、どうして?」とあゆみ。
その時外からパトカーのサイレンが聞こえた。
その夜、8件の奇怪な殺人事件が発生していた。
死体はいずれも血がなくなっている。
美山家を訪問する刑事たち。
刑事によると8件の殺人事件の発生現場は輪のように連なっており、その中心が美山家の付近一帯であるという。
気をつけるようにと刑事たち。
自室へ戻るゲン。
「挑戦だ。これは俺に対する挑戦だ。挑戦なら受けてやろう。だが、罪もない人を殺すな」。
事件が円盤生物の挑戦だと確信するゲン。
翌日、事件現場へ足を運ぶゲン。
刑事に話を聞いても手がかりひとつないという。
しかし草むらには円盤生物デモスが。
デモスは密かに捜査本部に侵入していた。
電話が鳴る捜査本部。
科学捜査研究所が警察とは別個にこの事件の捜査を始めたという。
やはり普通の事件ではないと刑事。
一方ゲンは街中で不気味な男に出会う。
「レオ。降伏しろレオ。降伏しなければ、デモスはお前の周囲の人たちを殺し続けるぞ」。
「誰だ、貴様は」。
「レオ、今夜はもっと沢山の人が死ぬぞ。お前が戦う意志を捨てて、ブラックスターの処刑台に立たない限り」。
「言え。デモスとは何だ」。
「デモスはお前のいる町の全員を殺すために、ブラックスターから送り込まれたんだ」。
「俺のいる町の全員を?」
「我々はお前の強さを知っている。お前が戦う意志を捨てれば、町の人たちの命は助かる。考えておくんだな」。
そう言い残して走り出す男。
追いかけるゲン。
ゲンが男に追いつくと、男は意識を失っていた。
「どうしたんですか?あれ?僕何やってるのこんなところで?」
男は何者かに操られていただけであった。
その頃デモスは分裂しておもちゃ屋、赤ん坊の寝ている部屋、子供達が遊ぶ公園にそれぞれ姿を隠していた。
帰宅したトオルは机の上にゲンからの手紙を発見する。
それはゲンからの別れの手紙であった。
街を探し回るトオル。
しかしゲンは見つからない。
部屋に戻るトオル。
トオルの様子がおかしいのに気づくあゆみ。
あゆみはトオルが握りしめていた手紙を見る。
その頃警察に潜んでいたデモスが暴れだした。
血を吸われる刑事。
何とか助けようとするも襲われた刑事は死んでしまった。
拳銃で撃ってデモスを捕まえる刑事たち。
ラジオのニュースでデモスが捕まったことを知るゲン。
さらにデモスを焼却すると聞いて急いで科学捜査研究所へ連絡する。
研究所ではデモスの焼却が始まっていた。
そこへゲンから連絡を受けた警官が止めに入る。
しかし時既に遅く、デモスは自分の分身たちを呼び寄せ合体を始めた。
巨大化するデモス。
デモスの吐く泡を浴びた隊員は溶けて消えてしまった。
逃げる刑事たち。
デモスは研究所を破壊し、ビルを溶かす。
現場へ駆けつけるゲン。
ゲンを探していたトオルとあゆみはゲンの姿を見て追いかける。
人ごみをかき分け変身するゲン。
レオは半壊したビルを安全な場所へ移動しデモスを攻撃。
溶解泡を避けるレオ。
しかしデモスの長い足に絡まれ苦戦する。
光線技で逆襲するレオ。
レオの光線を受け大破するデモス。
ゲンを探すトオルとあゆみ。
「お〜い。トオル」とゲン。
再会を喜ぶ2人。
ゲンに抱きついて泣きじゃくるトオル。
「約束。僕たち、本当の兄弟だって」。
恐ろしい事件が終わって平和が来たのか。
違う。
ウルトラマンレオ。
お前は狙われている。
恐怖の遊星ブラックスターに。
想像を絶するような恐ろしい円盤生物がレオを倒すために次から次へと地球へ送り込まれるのだ。
気をつけろ。
ウルトラマンレオ。

解説(建前)

レオに警告してきた男は何者に操られていたのか。
素直に考えるとブラック指令ということになりそうであるが、ブラック指令はゲンがレオの正体だと知らないようであるのでこの説は取りにくい。
ではデモスが直接操ったのだろうか。
普通に考えると指令が知らないものを円盤生物が知っているというのはおかしいし、そもそも円盤生物に知能があるのか否かもよくわからない。
ただ、デモスは分裂して姿を隠したり、警察に侵入するなどある程度の知識はあるように思われる。
また、デモスはゲンの家の周囲で事件を起こすなど、男の言っていた警告と行動が合致している。
したがって素直にデモスが男を操っていたと解釈してもよかろう。

おそらくデモスには指令にはない宇宙人を探知するレーダーのようなものがあるのだろう。
ただ、そのレーダーもそこまで正確ではないのでゲンの居場所まではわからず、ゲンのいる街までしか特定できなかった。
そこで事件を起こしてゲンをおびき出すことにしたのである。
案の定ゲンは事件現場に姿を現した。
そこでデモスはゲンが宇宙人であると知り、偶々近くにいた男を操ってゲンに警告をしたのであろう。
デモスの目的はレオを抹殺すること。
円盤生物には目的を解し、その手段を考えるくらいの知能はあると見ていいだろう。

感想(本音)

若槻氏の脚本ということでホラー風味が強い。
また本話からブラック指令の目的がレオ抹殺へと変化している点も注目に値しよう。
もちろん指令の最終目標は地球征服なのだが、その最大の障害がレオなのは確かである。
まあ、事前にそれくらい調査しとけよとも思うが、そのことに気付いた指令がレオ抹殺を掲げるのは至極妥当であろう。

相変わらず人が死ぬレオ。
冒頭からいきなり2人も一般人が殺害されるとか、子供向けとは思えない。
まあ、平成ライダーとかだとありなのだろうが。
しかし女性が襲われるシーンはほとんど2サスみたいだった。
親子で見てたらちょっと気まずいかも。

8件もの殺人が美山家近辺で起こったと聞き、円盤生物の挑戦だと悟るゲン。
ちょっと鋭すぎるが、ブラックドームが交通事故を連続させたのを思い出したのであろう。
8件もの連続殺人はちょっと人間業とは思えないので、ゲンの推理も妥当である。
しかし謎の男(偶々人相が悪い・笑)にいきなり正体を見破られたゲンの驚きはさぞかしであったろう。
ゲンがトオルや美山家に危険が及ばないように家を出るというのも理解できる。
ただ、ゲンと美山家の関係が相手に知られていたらこれもあまり意味はない。
まあ、デモスもゲンの住んでる場所までは特定していなかったと思われるので、あの段階で家を出たのは正解であろう。

しかしトオルにしてみれば、いきなりゲンが家を出るのは理解不能。
まあゲンが元MAC隊員であること、また円盤はゲンたちの敵であることからゲンの意図するところはある程度は理解できたであろうが、現時点のトオルにはゲンはまだまだ必要な存在である。
この辺りは最終回の伏線ともいえようか。
ただ、ゲンはデモスを倒しただけで美山家に戻ってもいいのだろうか?
円盤生物とはいえ正体がバレた以上、いつ次なる敵が美山家を襲うとも限らない。
この辺りは少し疑問が残る。

今回は警察と科学捜査研究所(SRIみたい)がデモス対策に当たった。
まあ当初は謎の連続殺人だったので防衛隊の出番ではなかったのであるが、MACがいなくてもそれなりに科学捜査の組織はあるようだ。
またゲンがそれなりに顔が利いたのはやはり元MACの肩書きであろう。
MACは全滅したはずなのにゲンが生き残った点については、たまたま非番で地球にいたとでも嘘をついていたのであろう。
警察が中心になって捜査をするという展開は、MACが全滅したレオならではといえる。

今回はブラック指令はデモスを呼び出しただけであまり作戦面には関わっていなかった。
子どもの頃はブラック指令が円盤生物を作り出していたと思い込んでいたが、今見ると指令とブラックスターとはある種の契約関係にあるように見える。
その辺りは追々検討していくことにしよう。
いずれにせよ円盤生物シリーズは円盤を呼び出すシーンの様式美が何とも言えない。
また瑳川氏の「想像を絶するような恐ろしい円盤生物がレオを倒すために次から次へと地球へ送り込まれるのだ」という大仰なナレーションも最高である(笑)。

デモスのデザインは蜘蛛であろうか、雲丹であろうか、ヒトデであろうか。
海洋生物が基本モチーフとなっている円盤生物シリーズであるが、デモスはやはり蜘蛛っぽい。
後に鳥とかてんとう虫とかも出てくるので何でもありではあるが、円盤のデザインを考えるのも大変そうである。
しかしデモスが分裂してたのは何故なんだろう。
あまり意味はないように見えたが、いろいろな場所に分身を送り込みゲンを探していたとでも解釈しておこうか。

本話のラストはゲンとトオルの再会シーン。
時間的には1日もなかった別れであろうが、書き置きまでして出て行ったのだからトオルが二度と会えないと思ったのも仕方ない。
トオルにとっては唯一残された家族とも言えるゲン。
まだまだカオルや百子さんを失くしたショックからは立ち直れていないトオルにとってはゲンはかけがえのない存在である。
そしてゲンとトオルの再会のシーンは感動的。
この辺りは演ずる新井氏の演技力の賜物であろう。

本話は前話までの教訓的要素はほとんどない。
ゲストキャラも警官だけであるし、ゲンとトオルに焦点が当たっている点シリーズ的には重要な話であろう。
ゲンとトオルの別れ、トオルの自立、レオが敵を呼び寄せてるのではないのか等シリーズ終盤の重要なテーマが盛り込まれており、メインライターではない若槻氏の脚本というのが不思議なくらい。
かように円盤生物編は各ライターがそれぞれ重要なテーマを描いており、ある程度の一貫性はあるものの各ライターの色というものもあり、なかなかバラエティに富んだ内容になっている。
この辺りも円盤生物編の楽しみ方の一つではなかろうか。


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