データ 脚本は田口成光。 監督は深沢清澄。 ストーリー 地球を離れること一千万キロの彼方ブラックスターから、今しも地球目指して一機の円盤が発進した。 その名はシルバーブルーメ。 その頃MACステーションでは、松木隊員の誕生パーティが開かれていた。 乾杯する隊員たち。 その時緊急警報が鳴り響く。 ステーションに何かが接近していたのだ。 「ぶつかります」。 大きく揺れるステーション。 倒れる隊員たち。 さらに割れた窓から巨大な触手が侵入してくる。 逃げ惑う隊員たち。 ダン隊長は総員マッキーで逃げるように指示を出す。 残ろうとするゲンに対してダンは「これはブラックスターの円盤生物の攻撃だ。お前も逃げろ」と命令。 さらにダンは「俺に構うな。お前は生き続けねばならん。ブラックスターの侵略から地球を守るんだ」とゲンに言う。 マッキーに乗り込んだ隊員たち。 しかしマッキーを発進させるも時既に遅く、マッキーごとシルバーブルーメに飲み込まれる。 「MACの最期は俺が見届ける。早く逃げるんだ」。 「隊長、隊長も早く」とゲン。 「馬鹿!言うことを聞け」。 ゲンを殴るダン。 「お前はレオだ。不滅の命を持った、ウルトラマンレオだ。お前の命は、お前一人のものでないことを忘れるな。行け!」 「隊長!」。 レオに変身して脱出するゲン。 さらにシルバーブルーメを捕まえようとするが、回転に振りほどかれてしまう。 その頃地球では怪しい黒づくめの怪人が円盤の到着を待っていた。 ビル街に現れる円盤。 丁度デパートに買い物に来ていた、百子、カオル、タケシも被害に巻き込まれる。 逃げ惑う市民たちとは逆の方向へ歩いていく怪人。 怪人の名はブラック指令。 ブラック指令が指示を出すと、円盤は小さくなり姿を消す。 円盤を追って地球へ来たゲンは、被害にあったビルの中に来ていた。 そこへトオルがカオルたちの名前を叫びながらやってくる。 「トオル。どうしたんだ」とゲン。 「カオルと百子姉さんと猛さんが買い物に出たまま、帰らないんだよ」とトオル。 一緒にカオルたちを探すゲンとトオル。 怪我人の手当に来ていた看護婦の美山咲子は二人に気づいて後を追う。 怪我人を確認する2人だが、その中にカオルや百子はいなかった。 「ここにいないとすると、もしかしたら助かったのかもしれないよ」とトオル。 しかし死亡者の発表があると新聞記者から聞いた2人は確認のため掲示板の方へ行く。 死亡者名の張り出された紙を見る2人。 カオルたちの名前を探す2人。 すると張り紙に「野村タケシ」の文字が。 さらに百子の名前を見つけるゲン。 そして冷酷にもそこには「ウメダカオル」の名前もあった。 取り乱すトオル。 号泣するトオルに何も声を掛けることのできないゲン。 2人の姿を見守る咲子。 美山家に居候することになったゲンとトオル。 朝食に呼ばれた2人は走って階段を降りるが、それを咲子に注意される。 顔を洗って歯磨きするように言われる2人。 美山家は母親の咲子、長女のいずみ、次女のあゆみの3人家族で、次女のあゆみとトオルは学校のクラスメートであった。 いずみは現役の女子大生。 咲子に女らしくしなさいと言われ、ゲンに自分が女らしいかどうかを聞くいずみ。 また、あゆみはトオルが学校のテストで30点だったことを恥ずかしいと文句を言う。 勉強を教えると言う咲子に一生懸命やるとトオル。 一方シルバーブルーメは事件以来姿を消していた。 登校中の小学生たちは道路脇の林に円盤らしき物体が落ちているのを発見する。 物体が動いたと発見した小学生。 3人はとりあえず、それを学校に持っていくことにした。 物体を靴箱に入れて教室へ向かう3人。 理科の授業で動物は酸素がないと生きていけないと習った3人は、物体が息をできないのではないかと心配する。 3人を代表して亀田少年が物体を助けるためこっそり教室を抜け出そうとするが、教室の中に物体が入ってきてるのを発見。 驚いて声を出す3人。 そこを教師に見つかり怒られてしまう。 休み時間に円盤の周りに集まる子供達。 トオルはその物体がビル街を襲った円盤だと主張する。 しかし、円盤がこんな小さいはずがないと否定する3人。 一人は機械の部品だと言い、一人は貝だと言う。 トオルは円盤を見たことがあるからトオルの言うことに間違いないと擁護するあゆみ。 結局その物体は教師が持って帰ることになった。 「おおとりさんなら必ずわかってくれるんだ」。 ゲンに知らせに行くトオル。 その夜物体を調べに理科室へ入る先生。 先生は物体を叩いたり炙ったりして実験を始めるが、火を通した瞬間円盤がシルバーブルーメに変身。 襲われた教師は円盤に食われてしまう。 教師の様子を見に来た用務員は部屋が荒らされ教師の姿がないことに驚く。 ゲンも現場に駆けつけるが、怪しい閃光とともにシルバーブルーメは姿を消した。 翌日、巨大化したシルバーブルーメが学校を襲う。 雨の中街を破壊する円盤。 さらに学校にいる生徒たちを襲うシルバーブルーメ。 逃げ惑う生徒たち。 そこへ駆けつけたゲンは、用務員から教師はあの円盤に食べられたのではないかと聞かされる。 学校の中に入り生徒たちを誘導するゲン。 しかしシルバーブルーメの触手が校舎内に侵入する。 炎上する校舎。 ゲンはレオに変身してシルバーブルーメに立ち向かう。 レオが円盤を抑えてるうちに子供たちを助ける教師たち。 シルバーブルーメの中からマッキーを取り出すレオ。 最後は光線技でシルバーブルーメに止めを刺した。 「今度こそ負けるものか。ブラックスター2号機ブラックドーム。来〜い〜」。 ブラック指令に呼ばれて地球へ向かうブラックドーム。 解説(建前) MACはなぜ円盤の接近に気づかなかったのか。 これはやはりブラックスターと地球の距離が近すぎるのが原因であろう。 地球とブラックスターの距離はおよそ一千万キロ。 これは地球と金星の最近距離の4000万キロよりさらに近い。 この距離を猛スピードで急襲されては、人間の力ではどうしようもない。 また、おそらくシルバーブルーメ自身もレーダーで補足しにくい物質でできているのであろう。 そして、そんなに近くにありながら誰も存在に気づかなかったブラックスター自身もステルス性の物質でできているのではないか。 思うにブラックスターは自然にできた星ではなく、人工的に作られた星である可能性が高い。 なぜ隊員たちはブルーメの触手が基地内に侵入してきた時に窒息若しくは基地外へ放り出されなかったのか。 常識的に考えると、宇宙空間で基地が破壊されるというのはそれだけで致命的である。 これはおそらくブルーメが基地全体を覆う形で吸い付いたため、内気の流出を防げたのであろう。 また、元々基地内には何らかの形で重力があるため、空気が滞留していたのも大きいと思われる。 シルバーブルーメに飲み込まれたマッキーはなぜブルーメが小型化したのにそのまま残っていたのか。 ブルーメ自身、マックステーションを飲み込んだり、小型化したりとその大きさを自由自在に変えられる。 おそらく常識では考えられない物理法則が使われているのであろう。 これについてはウルトラシリーズ共通の法則なので深くは考えないが、当サイト的にはエネルギーを自在に実体化することができるからと解釈することにしている。 さて、本題に戻ると、おそらくブルーメの内部はドラえもんの四次元ポケットのように異次元空間になっているのであろう。 異次元空間に関してはヤプールでもお馴染みであるが、そのような空間が存在することについてはウルトラの世界では疑義を差し挟む余地はない。 ブルーメの内部がどういう状態なのかはわからないが、溶解液らしきものが分泌されていたことからやはりマッキー内部の隊員たちは消化されていたと考えるのが素直であろう。 仮に消化されていないとしても、あの状態では長くは生きられまい。 感想(本音) 年末にこの話を見るのは何とも欝だが(笑)、やはり今見てもとんでもない話。 というか、今こんな話を作るのはおそらく不可能であろう。 それくらい乱暴なやっつけな話である。 こんなの子どもに見せて何がしたかったのだろうか? もちろんレギュラー陣を入れ替えるためという目的はわかるが、ここまでやるのは悪ノリしすぎ。 とにかく、その容赦のない苛烈な演出には大人の目からも言葉を失う。 思うに、レオはトラウマ描写の連続であった。 3話のツルク星人による胴体真っ二つ描写なども有名であるが、アトラー星人やアクマニヤ星人などとにかくホラー描写が続く。 極めつけはこの円盤生物シリーズ。 おそらくスタッフもウルトラシリーズ最後だからと自分たちのやりたいように作ったものと思われるが、当時は終末ブーム等もありホラーやオカルトが流行っていた。 その辺りの時代の風というか雰囲気みたいなものがこのシリーズにも表れたのであろう。 そして、それはそもそものレオのコンセプトでもあったが、テコ入れで民話シリーズや兄弟たちの客演が増えていたレオを元の路線に戻したこと自体は個人的には正解だったと思う。 話を本話の内容に戻そう。 まずナレーションで簡単にブラックスターについて説明がなされている。 話の導入としては普通のスタート。 そして場面はステーション内での松木隊員の誕生パーティに。 よく突っ込まれるダン隊長の髭面。 和やかな雰囲気からはこの後の惨劇は想像できない。 そして緊急警報の後衝撃に見舞われるステーション。 食われる隊員たち。 ここで問題になるのが、ダン隊長の行動。 なぜ隊長は隊員たちと一緒に逃げなかったのか。 普通に考えたら隊長が速やかに避難していればゲンも一緒に行動したはず。 この辺りは解釈が難しいが、一つにマッキーの定員というのがあったのであろう。 マッキーに全員が乗り込むのは難しい。 そこで敢えてダンは後発隊として基地に残ったのである。 もちろんステーションと命をともにする覚悟があったのであろうが、自分が最後に避難するというのはダン隊長としてのポリシー。 それが指揮官として正しいか否かは置いといて、一人孤独に双子怪獣に戦いを挑んだダンならではのポリシーではある。 ここまでの阿鼻叫喚の流れに呆然とするのも束の間、さらに悲劇がゲンを、視聴者を襲う。 地上に姿を現す怪しげな黒づくめの男。 その男の名は地球征服を狙うブラック指令。 ウルトラシリーズではヤプール以来二人目の敵レギュラーだ。 このブラック指令初登場の演出はやたらとかっこいい。 演じる大林丈史さんは中村敦夫氏演じる木枯らし紋次郎の吹き替え役者としても有名であるが、黒マントを翻して歩く姿はまさに紋次郎のそれであろう。 憎き敵役ではあるが、妙にカッコいいのもヤプールと共通である。 ただ、この後のシーンがさらにトラウマ。 こういう日に限って3人で買い物に来る、カオル、百子、猛。 まあ3人を殺すためにブルーメが来襲してるのだから運が悪いもへったくれもないのだが(笑)、結果トオルを残して3人は亡くなることになる。 この辺りはMACと違って直接的な描写がない分ソフトとも言えそうだが、それを補ってあまりあるのが例の人形のシーン。 「あたし眠くなっちゃった。お兄ちゃん、子守唄歌って。ヘヘヘ」。 もはや完全にホラーである。 ここまででテレビの前のお子様たちの心は完全に折れてしまったと思われるが、さらに追い討ちをかけるかのように現場にやってくるゲンとトオル。 怪我人の中に三人がいないからと一縷の望みを見出す2人と視聴者。 しかし、そこに容赦のない新聞記者のセリフが浴びせかけられる。 「おっ、死亡者の発表だ」。 恐れていた通り死亡者の一覧に3人の名前を見つける2人。 猛、百子と来て「ウメダカオル」の文字が。 また、これがいい感じでカタカナ表記なのがリアル。 子供の頃見た日航ジャンボ機や阪神大震災の被害者一覧を思い出した。 ここで犬と戯れる百子とカオル、ゲンの3人のカットを挟んで後半へ。 よく言われる詰め込みすぎの前半がこれで終了。 この短時間で今までのレギュラーが一掃される。 この点に関しては、1話くらいかけてじっくり描いたほうがいいとよく言われるが、個人的にはこれはこれで仕方ないと思う。 おそらくスタッフの意図としては、とにかく前半の雰囲気を後半に引き継ぎたくないというのがあったであろう。 アイキャッチを挟んだ後のあまりにホームドラマなシーンには違和感を覚えるが、子ども向けとしては1話丸々暗くして来週に尾を引くほうがまずい。 とにかく全滅劇を引きずらない、今週の内にブルーメは倒す。 そういう意志があったのではなかろうか。 まあ、単なるやっつけとも解釈できるが。 とにかくここから唐突に美山家に居候する展開は強引そのもの。 本来ならこの辺の経緯を描くべきではあるが、この辺りは脳内補完するしかあるまい。 トオルは父親を失い、保護者の百子も失った。 ゲンに関してはスポーツクラブや自分の下宿があるはずだが、トオルの保護者として一緒に居候することになったのであろう。 その辺りはおそらく咲子が提案したものと思われる。 美山家は父親を早くに亡くし男手がいない。 そういう意味でも居候にゲンがいた方が都合がいいのであろう。 今回から新レギュラーに加わったのが、あゆみ役の杉田かおる。 正直、レオは子どもの頃はあまり再放送がなく見たのは1回くらいだったので、杉田かおるが出ていたなんて大人になってから知った。 一般にウルトラシリーズに短期とは言え杉田氏がレギュラー出演していたなんて知ってる人は少ないであろう。 因みに杉田氏はこの話以前にも1回レオにゲスト出演している。 当時売れっ子の杉田氏がウルトラに出演したのは本人の希望もあろうが、やはりそれだけウルトラはメジャーな番組だったというのもあるだろう。 今なら戦隊ものに芦田愛菜がレギュラーで出るみたいな話であるから隔世の感がある。 咲子役はこちらもホームドラマのお母さん役でお馴染み春川ますみ氏。 ただ、私自身は春川さんと言えば暴れん坊将軍か赤かぶ検事なので、こちらもあまり記憶になかった。 さすがにこの頃はお若い。 また、いずみ役の奈良さんは思いっきりテレビとか、2サスとかで見た記憶があるが、レオに出てたというのは知らなかった。 百子さんがかわいい系なのに対し、こちらは美人系という感じ。 ただ、女子大生にしては化粧が濃すぎるのが気になる(笑)。 話は本筋に戻って、今度は学校に出現するシルバーブルーメ。 教師がブルーメに食われる展開はやっぱりホラーでトラウマ路線は続く。 ただ、この辺りは前半の比ではないが。 因みに教師を演じるのはジャッキーチェンの声優でお馴染み石丸博也氏。 当サイト的にはタロウの声と言ったほうが通りがいいか(それはない笑)。 石丸氏の顔は初めて見たが、やはり声だけ聞くとジャッキーか兜甲児である。 この一連のシーンは正直時間の繋がりが不明。 ブルーメが再出現するまでにどれだけの時間が空いたのか? また、教師が食われてから次の日に移るシーンは正直端折り過ぎであろう。 この辺りも1話に詰め込んだ弊害か。 子どもたちに正体バレバレのゲンの変身はお約束として流して、円盤生物との初格闘はなかなか見もの。 演じる二家元氏も円盤生物との格闘が一番苦労したと言っているように、今までにない演出が光る。 そして戦闘シーンでも最後のトラウマシーンが。 ブルーメの内部から取り出されるマッキー。 正直このシーンは果たして必要なのかという疑問もあるが、仲間の死をゲンや視聴者に確認させるという意味もあったのであろう。 最後は光線技でブルーメを葬るが、これも相手が円盤ということからの演出であろう。 そしてラストはお馴染みの次の円盤を呼び寄せるシーン。 ここは緊迫感のある音楽とともに印象に残るシーンである。 本話はやはり防衛隊であるMACが全滅するというのが何といっても重要。 今までレギュラーが死ぬというのは帰ってきたウルトラマンの坂田兄妹の例があったが、ここまで派手にレギュラーが死ぬのは初めて。 しかもそれが防衛隊なのだから、レオらしいというか。 また防衛隊と一緒にウルトラセブンであるダンまでも殉職(?)という扱いなのも衝撃的だ。 ダンに関しては結果的には生きていたという解釈にならざるを得ないが、レオという番組上では生死はともかく事実上の殉職と言えるであろう。 この辺りは問題も多いが、結果として孤独なゲンの戦いが描けたことはレオという作品にとってはプラスであった。 レオの最終クールは防衛隊に所属せず市井の一般人の立場でゲンは敵と戦うことになる。 そのため無理な展開が多くはなるが、その辺りをレオが敵を呼ぶとすり替えてテーマにしてしまう辺りはなかなか上手い。 レオの元々のテーマは他人の力に頼らず自分自身の力で戦うということにあった。 そういう意味では、この最終クールはレオ本来のテーマの結実期とも言えるであろう。 また、ゲンがトオルを指導することにより成長するという構図は帰ってきたウルトラマンの最終クールにも通ずる。 タロウ最終回も同様のテーマであったし、この辺りは2期ウルトラの重要なテーマの一つであろう。 また2期ウルトラのテーマの一つに家族というのがある。 カオルを失ったトオルは天涯孤独の身になってしまった。 実はアストラが生きていたレオよりその孤独は深いかもしれない。 ウルトラ史上でも有数の過酷な境遇のトオル。 この辺りは帰ってきたウルトラマンの次郎君にも通ずるところがあるが、次郎君では描ききれなかったトオルの精神面もしっかり描けているのもこの円盤生物シリーズの特徴であろう。 その辺りは追々述べることにして、この強烈な40話の感想を締めくくることにする。 |