データ 脚本は田口成光。 監督は東条昭平。 ストーリー ウルトラ兄弟の光線を浴び倒れるレオ。 「レオ、しっかりしろ」とゾフィ。 その時アストラがウルトラキーの先を兄弟たちに向けた。 ウルトラキーから出る光線は小さな星を吹き飛ばすくらいの威力があるという。 絶体絶命の兄弟たち。 「アストラ、馬鹿な真似はするな」。 必死に叫ぶダン。 しかしアストラは兄弟たちに銃口を向けたまま不敵に笑う。 「やめろ。やめるんだ。アストラ」。 ダンが叫んだその時、空の上から一筋の光が差してアストラの持つキーを吹き飛ばした。 真っ二つに割れるキー。 そこへ現れたウルトラマンキング。 「何故ウルトラキーを」とゾフィ。 「キーなど問題ではない。お前達は愚かしくも、ウルトラ兄弟の七番目の弟になるやも知れぬレオを殺すところだったではないか。お前達の目には、その男がアストラに見えるのか」。 そう言ったキングはアストラに光線を浴びせる。 光線を浴びたアストラはババルウ星人の姿に戻った。 アストラはババルウ星人が化けていた偽者だったのだ。 ババルウ星人を追う兄弟たち。 しかしキングはそれを制止した。 「ババルウ星人などいつでも倒せる。それよりも、今は一刻を争う大切な時だ。見よ。我らが故郷ウルトラの星が地球に迫っている。このままでは二つの星はぶつかり、宇宙の藻屑となってしまう」。 「このウルトラキーさえ使えれば」とダン。 「お前達兄弟が力を合わせて、ウルトラの星と地球を救わねばならん。早く行け」とキング。 ウルトラの星へ向かう兄弟たち。 「セブン。お前も私と一緒にウルトラの星へ行かぬか」とキング。 「地球は僕の第二の故郷です。もしこの地球がウルトラの星とぶつかる時は、僕は地球と一緒に死にます」とダン。 「わかった。恐らくウルトラマンレオもお前と同じ気持ちだろう。セブン、いや、ダン。おゝとりくんを見てやるんだ」。 ウルトラの星へ向かって飛び立つキング。 しかしその間にもウルトラの星は地球へ向かって速度を上げて接近していた。 天変地異が地球を襲う。 その頃MACは北極星からの怪電波を受信していた。 「宇宙には色んな電波が飛び交ってるんだ。その電波が我々の大ピンチを助けてくれるわけはないんだ」。 怪電波を無視する隊員達。 その頃兄弟たちの光線を浴びたゲンは、意識を失ったまま部屋で百子の看病を受けていた。 見舞いに来たダン。 「もうすぐ地球が星とぶつかるかもしれない。みんな大騒ぎしているのに、あなたはこんなに冷静だ」。 「地球が壊れてしまうのなら、何をしていても同じことです。だったら、私はおゝとりさんのところに居てあげたいんです」と百子。 逃げ惑う市民の間であざ笑うババルウ星人。 その頃、高倉長官がMAC基地を訪れていた。 長官はダンに連絡を取り、「UN105X爆弾」の使用が決まったと伝える。 「そんなことをしたら、ウルトラの星といえど粉々だ」。 基地へ戻るダン。 ウルトラサインはまだウルトラの星の軌道を変更できないと告げていた。 「UN105X爆弾の発射は明日の正午とする」と長官。 「長官。あの星がウルトラの星だという噂が街に飛んでいますが」と隊員。 「会議の席上、そんな報告も入ってきた。だが、悲しいかな、我々人類にはそれを確かめることはできないんだ。また例えそうであったとしても、我々の力ではこの方法しかないんだ。仕方なかろう」と長官。 「待ってください。発射を中止することはできませんか?」とダン。 「もし、あの星が本当にウルトラの星だったらどうするんですか?ウルトラ兄弟は今まで、我々の故郷である地球のピンチを何度となく命を賭けて救ってくれたんです。そんな命の恩人に私は弓を引くような真似はできません」。 「君はあの星が何故ウルトラの星だと思えるのだね?」 「それは…。しかし長官には、そうでないという確信がおありですか?」 「君の気持ちはわかる。君個人の意見ではどうにもならんのだよ。私だって、あの星がウルトラの星でないことを祈っているんだ」と長官。 地球最後の朝が来た。 巨大な地震が都内を襲い、ゲンの部屋も滅茶苦茶になる。 揺れに耐えながらもゲンを庇う百子。 その時ゲンが意識を取り戻した。 「おゝとりさん」。 「ここは何処だ」とゲン。 「あなたのお部屋よ。隊長さんがあなたをここへ連れてきてくださったのよ」と百子。 百子からMACがUN爆弾を使うことを聞いたゲンは、それを止めるため基地へ戻ろうとする。 ゲンを心配してそれを止めようとする百子。 「おゝとりさん無理しちゃ駄目」。 「そんな馬鹿なことが許されてたまるか」。 百子を振り切って基地に戻るゲン。 その頃ダンは受信機から聞こえる怪電波に注意していた。 その電波がアストラが発してるものだと気付くダン。 本物のアストラはババルウ星人に氷付けにされて宇宙に彷徨っていた。 しかし氷の塊が太陽に近づいたためアストラは元気を取り戻し、電波を発信していたのだ。 「隊長、あなたは自分の手でウルトラの国を壊そうというのですか?あなたはウルトラ兄弟を裏切ろうというんですか?」とゲン。 「私は地球を守るMACの隊長なんだ」とダン。 「しかし、あなたはウルトラセブンだ」とゲン。 「わかってくれ。俺はもはやセブンではない」とダン。 「アストラがあんな馬鹿なことさえしなければ」。 「あれはアストラではない。ババルウ星人だ」。 驚くゲン。 「本物のアストラはここだ」。 受信機を渡すダン。 その電波を聞いたゲンはそれがアストラのものだと確信する。 外に飛び出したゲンはレオに変身し、アストラの下へ向かう。 アストラを救出するレオ。 その頃MACはUN105X爆弾の発射の秒読みを始めていた。 そこへレオとアストラが地球へ向かっているとの連絡が入る。 地上であざ笑うババルウ星人。 「間もなくウルトラの星がこの世から消えてなくなる」と星人。 そこへレオとアストラが戻ってきた。 二人はウルトラダブルスパークでウルトラキーを復元する。 「しまった。奴らにはあんな能力があったのか」。 星人は巨大化してキーを奪い返そうとする。 MACは星人を攻撃し星人を足止めする。 その間にキーを拾うアストラ。 星人と格闘するレオ。 レオはアストラにキーをウルトラの星へ持っていくように指示する。 飛び立つアストラ。 しかしババルウ星人はアストラに鎖を投げつけそれを阻止した。 何とかアストラを助けようとするレオ。 アストラが落としたキーを奪い合うレオと星人。 レオが星人と戦ってる隙にキーを拾うアストラ。 遂にキーを奪い返したアストラは宇宙へと飛び立っていった。 悔しがる星人。 レオは星人の鎌を利用して鎖を切ると、反抗に出た。 星人を叩きのめすレオ。 吹っ飛ぶ星人。 そこへウルトラサインでキーが間に合ったと報告が届く。 「よかった。間に合ったぞ」。 とどめのレオキックで星人を倒すレオ。 平和を取り戻した地球。 「お前達兄弟の活躍で、この地球とウルトラの星が助かったんだ。素晴らしい君たち兄弟を俺達の兄弟に加えたいとウルトラマンキングが言ってきた」とダン。 「光栄です」。 「アストラは」。 「また宇宙の旅に出かけました」。 「早く伝えてやれ」とダン。 「おーい。アストラ。俺達はウルトラ兄弟になったんだぞ〜」。 解説(建前) 本話の最大の問題点は、キングはキーを破壊してどうするつもりだったかという点。 キーなど問題ではないと言った割には後のことを考えてる様子はなかったので問題となる。 まず考えられるのは、レオ兄弟がキーを復元できることを知っていてわざとキーを破壊したという説。 しかし、アストラが何処にいるかがわからない以上、あまりにも偶然頼みのこの作戦は無謀極まりないだろう。 次に考えられるのが、本当はキングはキーを壊すつもりはなかったが、とりあえず兄弟のピンチだからキーを破壊したという説。 確かにあのままキーを武器として使用していれば兄弟たちの命は危なかっただろう。 そういう意味では緊急避難的な措置ともいえる。 そしてキーなど問題ではないと言ったのは、内心は焦っていたが兄弟たちを動揺させないためで、後からどうするかを考えるつもりだった。 ただ、これではあまりにもキングが間抜けで無責任なので、この説も却下するしかないだろう。 となると考えられるのが、キングはキーなしでもウルトラの星をコントロールする方法を知っていた、若しくは、キーを復元する能力をキング自身が持っていたという説。 キングは小さくされていたレオを大きくしたり、万能武器レオマントを持っていたりとかなりの超能力を身につけている。 そのキングをもってすればキーの復元も不可能ではないであろう。 ウルトラの星に兄弟を行かせたのも、あるいは星をコントロールする方法を兄弟たちに伝えるためだったのかもしれない。 その前に兄弟たちに色々やらせて、いざとなったら自分が何とかするつもりだった。 さすがに何も方策がない状態でキーなど問題ではないと言い放つ胆力は、さすがのキングでも有してないであろう。 或いはウルトラの星の破壊まで視野に入れていたのかもしれないが、いずれにせよ衝突を回避するだけの策は持っていたと考えるのが素直であろう。 感想(本音) 解説を見てもらえばわかるとおり、キングの行動原理がよくわからない話。 まあ、伝説の超人だから、いざとなったら何とかできたと解釈するのが穏当であろう。 ババルウ星人の正体も瞬殺で暴いたし。 一方、ウルトラ兄弟は正直いいところなし。 まあ、レオという番組においてはあくまで脇役なので仕方ないが、ただやられるだけでなくレオに光線を浴びせるとかとうとう悪役にまで落ちたかとガックリさせられた(笑)。 レギュラーのダンだけ美味しいところを持っていった感じ。 前編でも述べたとおり、本話の展開はエースの妖星ゴラン編を思い出させる。 ただ、その相手の星がウルトラの星である点、事態はもっと深刻だ。 このウルトラ兄弟を犠牲にしてでも地球を守るというシチュエーションはエースのゴルゴダ編と似ている。 あの時も北斗はウルトラ兄弟たちが地球の恩人であることを強調していた。 ダンが長官に直訴するシーンはこのときの北斗を思い出させる。 しかし、相変わらず地球の科学というのは物凄いものがある。 星を破壊する爆弾が簡単に用意できるというのはある意味、ウルトラ兄弟以上の力といえる。 ウルトラ兄弟でも単独で星を破壊できるものはいないだろう。 ただ例えばウルトラブレスレットやウルトラキーなどのアイテムを使えば星を破壊することも可能なので、やっぱりウルトラ族の方が強い。 レオが最終話に破壊したブラックスターについてはまた最終話で考察することにしよう。 前編でも書いたが、後編でも百子はヒロインとして大活躍。 百子を振り切って基地に戻るゲンはある意味セブンの最終回でアンヌを振り切って変身するダンと同じ構図ともいえるであろう。 それにしても百子のゲンへの愛は本物である。 降板が予定されていたからであろうが、一応二人の愛が成就するまで描ききった点は評価したい。 レオはゲンが百子に嫉妬したり(15話)ゲンが浮気をするっぽい描写もあり(24話)、結構リアルに二人の恋愛を描いている。 この辺りは中途半端に終わったタロウの恋愛路線に再チャレンジということなのであろうか。 ババルウ星人はあのアストラを氷付けにしただけあって、なかなか強い。 レオ兄弟相手に一人であれだけ戦ったのはおそらくババルウだけであろう。 見た目は大した事ない感じなのだが、目玉イベント編の敵役としては十分すぎるほどの存在感であった。 人間界に現れて流言蜚語を飛ばすなど、知略にも長けている星人である。 しかし、何故ババルウはあれほどウルトラ族を憎悪するのか。 何か因縁があったのかもしれないが、そこは描かれていないので謎のままだ。 「心にウルトラマンレオ」にも触れられていたが、MACの高倉長官は2期の長官の中では唯一といえる人情派であり、本話でもその姿は描かれていた。 また、人情だけでなく、長官として地球を守るという使命の下冷徹な決断をするという司令官としての資質の高さも描かれており、他の2期の長官たちとはキャラクターとしての深みが違う。 この辺りは今までの反省もあろうが、MACという組織があまりに役立たずなので、せめて司令官くらいまともにしないと話にならないというのもあったであろう。 本話でもアストラの電波に気付かないなど相変わらず存在感は軽く、次回で全滅もやむなしかとやっぱり思わされる(笑)。 本話のテーマはずばり、レオ兄弟のウルトラ兄弟入り。 レオはウルトラファミリー路線の反省から天涯孤独という設定でスタートしたが、視聴率の低迷などもあり、結局は元の路線へ戻すことになった。 そういう意味ではいつかは描かなければいけないエピソードであるのは間違いないであろう。 番組の事情的にもこの時期での打ち切りが浮上していただけに、年末年始にこのイベントを持ってくるのは極めて妥当。 ただ、その後の話をどうするかというのは難しいところであるが。 最終クールに関しては後で述べるが、この話をもってレオの成長物語は一応完結を見る。 ダンの特訓に象徴されるようにウルトラ兄弟と比べると未熟というのがレオの設定だったので、ある意味ウルトラ兄弟を越えてしまったこの回でその設定が成就したといえよう。 また、ウルトラシリーズの集大成という意味でも、ウルトラの星最大のピンチを描いた点、相応しい。 何も知らない人が見たら、これで当然シリーズは終わるものと思うだろう。 しかし現実にはレオはもう1クール続くことになった。 しかもあまりにも乱暴なやり方で。 この点に関しては賛否両論あるであろう。 しかし、レオのもう一つのテーマである故郷探し。 弟のアストラの登場、保護者としてのキングの存在、師であるダン、そしてウルトラ兄弟という仲間。 レオはもう孤独ではない。 本来ならここで終わっても何も問題はなかった。 しかし、レオは人間ドラマでもある。 おゝとりゲンという人間。 最後の1クールはレオというよりゲンの物語として見ることができる。 そういう意味では百子さんがいなくなるのは残念だけど、それも含めての人間ドラマであろう。 タロウの最終回でもそうであったが、最後まで人間ドラマに拘る2期のスタンス。 人間とヒーローの二面性が他の特撮ヒーローよりも色濃いウルトラでこそ、このような重層的なドラマが可能なのである。 つまり、レオはますます面白くなるねえ(笑)。 |