データ 脚本は田口成光。 監督は岡村精。 ストーリー 地球を狙う宇宙人の監視の目を広げるため、MACは強力なMACウランをエネルギーに使用することを決定した。 MACウランを運ぶ役に任命されるゲン。 そのとき、未確認飛行物体が地球に接近していることが判明。 出動するMAC。 未確認飛行物体は地球の宇宙船であった。 通信するMAC。 返信がないことから追尾するMAC。 しかし宇宙船は不時着してしまった。 炎の中から一人の飛行士が脱出する。 飛行士は3年前、アトランタ星探検に行ったまま行方不明になっていた内田隊員だった。 しかしゲンは、内田が凶悪宇宙人のいるアトランタ星から無事戻ってこれたことを不審に思う。 松木隊員の報告によると、内田はかすり傷ひとつ負っていないとのこと。 精密検査でも全く異常が検知されないという。 信じられないと隊員達。 そこへ長官とその娘のあや子がやってきた。 検査が終わった内田と会う2人。 その顔を見て驚くあや子。 「内田君じゃないか。やっぱり君は生きていたのか。よかった、よかった」と長官。 長官に泣きつくあや子。 「あや子はな、必ず君が生きていると信じて、毎日君の帰りを待っていたんだ」。 泣き崩れるあや子。 医者に内田の容態を聞く長官。 「まさに奇跡としか言いようがありません。まったく正常です」と医者。 内田はあや子のフィアンセだった。 内田を隊員達に紹介する長官。 しかし、ゲンは内田の正体を見破った。 「貴様は、アトランタ星人」。 「ようこそ、レオ」。 テレパシーで会話する2人。 握手をする2人に「君たちは気が合いそうだな」と長官。 「何という卑怯な」とゲン。 「せいぜいほざくがいい。俺の正体を明かせば、お前の正体を明かす。いや、MACの隊長の正体もな」。 テレパシーで答えるアトランタ星人。 急いでダンに報告するゲン。 「奴はアトランタ星人なんです」とゲン。 「内田君が。そんなバカな」とダン。 「間違いありません。奴は隊長と俺の正体を知っています」とゲン。 「まずいな。たった今長官の推薦で、明日からMACに入隊することを決めたところだ」とダン。 MACウランの輸送の準備をするMAC隊員達。 「貴様、何を考えているんだ」とゲン。 「君と喧嘩をしにきたわけじゃない」と内田。 「何を企んでいるんだ」。 「君と同じように、宇宙の平和を守りに来たんだ。仲良く頼むよ」と内田。 激昂し内田に掴みかかるゲン。 「ゲン!何をしているんだ」。 それを見てゲンを止めるダン。 内田にゲンを護衛するように命じるダン。 輸送作戦を開始するMAC。 ゲンと内田はマッキーでウランを運ぶため離陸する。 しかしゲンのマッキーから分離した内田は、念力を使ってマッキーの操縦桿を動かないようにした。 墜落の危機に瀕するゲン。 それを見てほくそえむ内田。 しかし内田はすぐに自らのマッキーをゲンのマッキーにドッキングさせ、ゲンを救出した。 「信じてください。本当に操縦桿が動かなくなったんです。本当なんです」。 長官に訴えるゲン。 しかし機体調査の結果、異常がなかったことから一ヶ月の謹慎を命じる長官。 「もし、街の中にでも墜落していたら取り返しのつかないことになったんだ」と長官。 「内田君に礼を言いたまえ」とダン。 「ありがとう」。 礼を言うゲン。 「当然のことをしたまでですよ」と内田。 「しかしモロボシくんがMAC一番の腕と折り紙をつけた君が、事もあろうに操縦ミスとは。一体私は何を信じたらいいのかね」と長官。 悔しさを噛み殺すゲン。 「長官、僕を信じてください」。 名乗り出る内田。 「宇宙の真ん中で何度も今日のようなピンチに出会いましたが、その度に僕が操縦してたために助かったんです。宇宙船に比べれば飛行機なんて」。 それを聞いた長官は「明日の作戦には内田君に操縦してもらう」とダンに言う。 驚くダンとゲン。 実は最高司令部の計画では、敵を欺くために明日ウランを輸送することになっていた。 「今日と全く同じ手順で決行する」と長官。 明日の作戦の準備に掛かる隊員達。 「どうやら、奴の目的はMACウランを使ってステーションを爆破することだ」とダン。 「時間もあまりない。最後の手段だ。奴を殺すんだ」とダン。 長官の家では内田があや子に婚約指輪をプレゼントしていた。 「内田君。あや子のことをお願いしますよ」と長官。 乾杯する3人。 長官の家へ偵察に来たゲン。 しかし幸せそうな3人の声を聞いて、内田を殺すことに躊躇いを感じる。 「あや子さんは、アトランタ星人を愛してしまっているんだ。もし俺が奴をやっつけてしまったら、あや子さんは」とゲン。 公園のブランコに座って物思いに沈むゲン。 それを見かけた百子が声を掛ける。 「どうしたの、こんなところで考え込んだりして。おおとりさんらしくないわ」と百子。 「百子さん。もし、仮にさ、僕が宇宙人だとしたら、君、どうする?」とゲン。 「私平気よ」と百子。 「でも、それが人間を滅ぼすような凶悪な宇宙人だとしたら」とゲン。 「私のことを愛してくれてるのなら、例え悪い宇宙人でも平気だわ」と百子。 「元気出して、おおとりさん」と百子。 「今度スキーに連れてってくれる?きっとよ」。 スキーに行く約束をする2人。 早朝、ダンを呼び出して話をするゲン。 「あや子さんは星人を愛してしまっているんです」とゲン。 「今は、そんなことを考えている暇はない。MACが生きるか死ぬかの瀬戸際だ」とダン。 「しかし、そのことがどんなにあや子さんを傷つけることか。考えてみてください」とゲン。 「俺に考えがある。いいか、お前は最後まで星人から目を離すな」と命令するダン。 ダンは単身長官邸へ行き、ウルトラ念力であや子を危篤状態に陥れる。 作戦準備中のMACへあや子の危篤の報が入る。 あや子は内田の名前を呼び続けているという。 ダンは内田にすぐ長官と一緒にあや子の下へ行くように言う。 しかしそれを拒否する内田。 「僕には今、大切な仕事があります。それがMACの隊員の務めでしょう」。 「MACは人の心を無視するような組織ではない」とダン。 MACウランは誰が運ぶのかという内田に対し、私が運ぶとダン。 長官を促すダン。 長官と内田は車で病院へ向かう。 それを尾行するゲン。 ゲンを巻こうとスピードを出す内田。 心配する長官。 内田は車を降りたゲンに対して車で体当たりをする。 何とか交わすゲン。 正体を現した内田。 「すべて計画通り運んでたのに」。 長官を殴って気絶させる内田。 追いかけて格闘するゲンと内田。 追い詰められた内田はとうとうアトランタ星人の姿を現した。 巨大化した星人はダンのマッキーを追撃する。 レオはそれを止めようとするが、ダンのマッキーは星人に捕まってしまった。 マッキーごとウランをステーションへぶつけようとする星人。 「レオ、離れるんだ。もう時間がない。俺は星人とともに自爆し」とダン。 しかしその時レオの弟アストラが現れた。 アストラはマッキーについた火を消し、アトランタ星人の手からマッキーを救出する。 無事ステーションにマッキーを到着させるアストラ。 レオはレオマントを星人に投げつけ、視界を塞がれた星人は地上に墜落する。 アストラと共闘して星人を叩きのめすレオ。 最後は兄弟合体光線でとどめを刺した。 握手をするレオとアストラ。 宇宙の何処かへ去っていくアストラ。 「隊長、あや子さんを危篤にしたのは隊長の仕業でしょう」とゲン。 「さあ、俺は何も知らんぞ」。 「知ってましたよ」とゲン。 長官とあや子を見つけたゲンは車を降りる。 しかし2人をそっとしてあげてやれとダンは制止する。 「おおとりくん」。 2人に気付いた長官が声を掛けた。 「おおとりくん。ありがとう。ありがとう」。 ゲンに礼を言う長官。 あや子も2人に会釈する。 「お宅までお送りしましょうか」とダン。 「いや、私達はもう暫くここにいたいんだ」と長官。 2人を見送る長官とあや子。 解説(建前) アトランタ星人は何故内田の姿を借りてMACに潜入したのか。 まず、アトランタ星人の変身についてだが、これは内田に憑依したと考えるのが素直である。 けだし内田は病院で精密検査を受けているので、アトランタ星人の変身だとすると正体がばれる可能性が高いからである。 また、あや子や長官相手に内田を装うことができたのも、内田に憑依して脳の中の記憶を借りたからだと思われる。 では、なぜそこまでして内田の姿を借りたのか。 これはやはり、MACウランの存在を知っていたからと解釈するしかない。 偶然にしてはあまりにもタイミング良過ぎるからである。 ただ、それではその情報を何処で手に入れたのか。 普通に考えると内田の脳からということになるかもしれないが、もう少し広く、内田の宇宙船やその無線を使ってMACの無線を傍受したという可能性も考えられるであろう。 MACウランの存在についてどこまで一般隊員が知りうるかはわからないが、この話を見る限りではウランの存在がトップシークレットだと決め付ける証拠はない。 初めから内田に変身してMACに探りを入れる意志はあったのかもしれないが、ウランの存在を知ってそれを妨害するために潜入したと解釈するのが妥当であろう。 では、星人がダンやゲンの正体を知っていたのはなぜか。 これは内田も知らないはずなので、別の路線から仕入れた情報であろう。 人間に変身したウルトラマンが地球にいるということは、人間に変身した宇宙人が地球にいてもおかしくない。 侵略目的ではなく情報屋のようなスパイ宇宙人が2人の正体を見破って、極悪星人たちにその情報を売っている。 そういう可能性も否定できないであろう。 同様にアストラが地球に潜入してる可能性もある。 なぜなら、あれほどタイミングよくレオのピンチの時に登場するには、そのように解釈するのが素直だからである。 感想(本音) 文句なしの傑作エピソード。 レオ、いやウルトラシリーズの集大成ともいえる話である。 どこが集大成かは後に記すが、この話をレオの最終回にしてもいいくらい。 というか、そもそも田口氏はこの話を最終回のつもりで書いたのではないか。 話によると、レオは3クールで打ち切りという線が濃厚だったという。 この話を最終回用に用意していた田口氏が、レオの延長が決まったことにより手直しして作ったのがこの話なのではないか。 それくらい、渾身の脚本と言っていいであろう。 今回の話の骨子はアトランタ星人が内田の姿を借りて防衛隊に潜入するところ。 このパターンはセブンのビラ星人や子どもの姿を借りてはいるが、新マンの「悪魔と天使の間に」と同じパターン。 特に目新しいものではない。 田口氏の作品を見ても、偽郷秀樹やファイヤー星人編も同じような設定。 ある意味王道ともいえる設定である。 危険な兵器を運ぶというのもこれまた王道。 「700キロを突っ走れ」やナックル星人編でのサターンZの輸送。 田口脚本ではファイヤー星人編のシルバーシャークもこの路線であろう。 この設定に関しても目新しさは特にない。 また、長官が作戦を指示するシーンは、エースのゴルゴダ編を思い出す。 かように、本話のプロットは今までのウルトラの王道をまとめた集大成的なものとなっている。 また本話のテーマに目を転じてみよう。 本話のテーマの一つに宇宙人と人間の恋愛というものがある。 ただ、このテーマが当てはまるのは内田が宇宙人であることを知らないあや子ではなく、間接的ながらもゲンが宇宙人でも愛することができると言う百子の方であろう。 このテーマに関しては有名なのがセブンの最終話。 また、新マンでの「星空に愛をこめて」なども挙げられようか。 これまた今までの集大成的なテーマと言える。 以上のように、本話はプロットといいテーマといい、今までのウルトラで既に取上げられたものを再利用する形になっている。 しかし、それだけでは単なる過去の名作の焼き直しで、とても傑作とは呼べないであろう。 本話がそれで終わらないのはそれらを上手く消化して、さらにレオという作品の中でそれらを見事に昇華している点である。 以下、それを見ていくことにしよう。 レオという作品の大きな特徴はダンとゲンという、2人の宇宙人が防衛隊に所属しているところである。 本話ではこの設定が上手く生かされてる。 2人は対立しつつも、最後は協力して星人の野望を打ち砕いた。 特に変身できないダンの唯一の能力、ウルトラ念力を使ってあや子を危篤にする展開などは強引ではあるが上手い。 また、星人を殺すことに躊躇するゲンと地球防衛のために情を捨て星人を殺すしかないというダン。 星人を殺すしかないという展開は「悪魔と天使の間に」を思い出させるが、大人である内田とはいえなかなかショッキング。 この辺りは2人の立場の違いを上手く描いているといえよう。 また、レオの大きな設定の一つにアストラの存在がある。 絶体絶命のピンチに現れるアストラ。 最後は2人で共闘してアトランタ星人を倒す。 これもレオの醍醐味であろう。 また、宇宙人と人間の恋愛というテーマでも、本話では掘り下げがなされている。 セブン最終回でアンヌは「人間であろうと宇宙人であろうとダンはダンじゃないの」と暗にダンを愛してるかのようなセリフを語っていた。 しかし、正直このセリフだけでそこまで読み取るのは難しいだろう。 それまでのドラマがあってこそ2人の愛を読み取ることは可能だが、個人的にはこの段階で2人の間に恋愛が成立していたかは微妙だと思う。 一方「私のことを愛してくれてるのなら、例え悪い宇宙人でも平気だわ」という百子のセリフ。 こちらの方がよりストレートに恋愛感情を語っている。 その後スキーに行く約束をする2人。 この2人の間に恋愛が成立しているのは間違いないであろう。 そして、若しかしたら百子はゲンが宇宙人であると薄々気付いてるのかもしれない。 それでもゲンを愛するという百子。 ここにウルトラのテーマの一つである、人間と宇宙人の恋愛が成就したというのは言い過ぎであろうか。 仲良くブランコを漕ぐ2人。 ウルトラシリーズでも屈指の名場面であろう。 また、本話で注目できるのは、MACの高倉長官。 長官は内田の作戦に引っかかり、一度はゲンやダンに失望し2人に厳しいセリフを吐いている。 内田が娘の婚約者というのもあろうが、この辺りの理解のなさは歴代の長官と同タイプだと視聴者は思うであろう。 ただ、この長官はそれだけでは終わらなかった。 最後長官は自分を助けてくれたゲンにお礼を言っている。 また、婚約者を失った娘と一緒に強く生きていくことを誓っている。 単なるストレスを与えるだけの長官ではなく時には厳格に、時には人間臭い長官というのは今までにいなかったタイプである。 この辺りも今までのステレオタイプな長官に対するアンチテーゼではなかろうか。 アトランタ星人内田はやや棒演技ながら、嫌味な感じはよく出ていた。 ゲンのみならず、ダンの正体までばらすと脅すのはなかなか悪辣である。 ただ、内田の目的はそこにはない。 内田にとってはウランを使ってMACステーションを破壊するのが第一の目的だったのである。 ただ、MACステーションてそんなに頑丈なのであろうか? まあ、後にシルバーブルーメの高速アタックでも耐えていたので、アトランタ星人の腕力で破壊するのは難しいということかもしれない。 しかし、アトランタ星人はダンほど星人に通じていないゲンでも知ってるくらいだから相当悪名が高いのであろう。 星人の狙いとしては、MACの警備網を破壊して仲間の星人が密入国(入星?)しやすくするといったところであろうか。 本話は最後何とか星人を倒すことができたが、敵に勝つために2人の正体を明かした場合、それはそのまま最終回のプロットになろう。 同じことはゲンと百子の関係にも言える。 ゲンが自分で宇宙人だと打ち明ける。 そしてそれを受け入れ一緒に地球で暮らすことを決意する百子。 ゲンの場合ダンとは違い過労で星に戻る必要はない。 それに、そもそもその故郷を失って地球を第二の故郷としたのがレオなのだ。 この2人が結ばれる結末も見たかった。 本話の監督は岡村精氏。 エースのバクタリ編などでも見られた隊員の顔アップや手持ちカメラで被写体の周囲を回りながら撮影する手法は健在。 レオの参加は2本だけだが、映像への拘りの強い監督である。 それは前述したゲンと百子のブランコのシーンなどにも表れているだろう。 また、内容てんこ盛りの中、テンポよく話をまとめていた。 本話の脚本はメインライターの田口氏。 今までのウルトラを振り返りつつレオという作品も総括する、シリーズの実質的な最終回ともいえる内容。 もちろん氏がどのような意図でこの話を書いたのかはわからないが、3クールで打ち切りという前提で考えると、イベント編であるババルウ編よりもこちらの方が最終回のプロットを流用したという可能性は高いであろう。 こういうと何だが、本話は田口氏の脚本にしては珍しく粗がほとんどなく、色々な要素が破綻なくまとめられている。 タイショーの脚本もよくできていたが、ここに来て人が変わったかのような堅実ぶりである。 初期と比べたら時間に余裕ができたのかよく練られた話となっており、氏自身脚本家として充実期に入ったことがわかる。 特訓編のような制約が少ないのも大きいであろう。 本話のテーマの一つに人間と宇宙人の恋愛というものがあるが、これも前話同様それほど拘るものではない。 ずる賢い宇宙人を迎え撃つ、ダンとゲン、レオとアストラ。 それだけで十分楽しめるのである。 その上でしっかり描かれる宇宙人と人間との恋愛、長官とあや子の親子愛。 娯楽作品としては文句ない仕上がりであろう。 子どもから見ても大人から見ても楽しめる作品。 レオの中でも一番完成度の高い作品といっても過言ではないだろう。 |