データ 脚本は阿井文瓶。 監督は前田勲。 ストーリー セブンに怪獣ボールを届けるために地球に向かう新マン。 怪獣ボールは変身できなくなったセブンへのウルトラの国からの贈り物だ。 しかし怪獣アシュランがその行方を妨害する。 怪獣ボールを必死に守る新マン。 新マンはウルトラサインをダンに送る。 新マンは辛くも怪獣ボールをアシュランから守るが、口に仮面をつけられてしまった。 パトロール中のゲンは海辺に倒れる郷を発見する。 怪獣反応が出たことから警戒するゲン。 郷に話かけるが、郷は仮面をつけられており答えられない。 怪獣ボールを探そうと飛び起きる郷。 しかし、そのまま気を失ってしまった。 郷をマッキーに乗せたゲンは、郷を看病するためにスポーツセンターの自室へ送っていった。 百子たちに看病される郷。 郷は何かを伝えようとするが、仮面をつけられており話すことができない。 うなされる郷。 郷が何かを探してることに気がつく百子。 「何か探してるのね。何かしら。きっと大切なものね。傷が治ったら一緒に探しに行ってあげるわ。口が聞けなくても私にはわかるわ。あなたはきっといい人よ。だから心配せずに傷を治すことに専念するのよ」と百子。 その頃MACは地球に来襲するアシュランを探知する。 「やっぱり来たか。凶悪怪獣アシュランめ。兄弟に何事もなければいいのだが」。 ウルトラサインでアシュラン来襲を知っていたダンは新マンの心配をする。 地球に到着し暴れまわるアシュラン。 MACが攻撃するも、物ともしない。 非難するスポーツセンターの子どもたち。 一緒に非難する郷は道端に転がるラグビーボールを見て、怪獣ボールのことを思い出す。 その時近づいてくるダンを見つける郷。 ダンに会わせる顔のない郷はその場にあったバイクに乗って怪獣ボールを失った海辺へ向かう。 現場に戻った郷は必死にボールを探すが見つけることができない。 その時、怪獣ボールで遊ぶ子ども達がやってくる。 宙に上がったボールをキャッチする郷。 しかし子ども達に気味悪がられ石をぶつけられてしまう。 一方アシュランと戦うMACは後退を余儀なくされていた。 そこへバイクに乗った郷が駆けつける。 郷はダンに怪獣ボールを渡すとダンはそのボールをアシュランに投げつけた。 ボールからは新兵器、セブンガーが出現。 アシュランの攻撃をものともせず、アシュランを圧倒する。 しかしあと一歩というところで時間が切れてしまった。 セブンガーは1分しか戦うことができなかったのである。 アシュランはダン、ゲン、郷の3人を見てその正体に気付く。 ウルトラ3兄弟の姿にその場を逃げ出すアシュラン。 「今日あいつは逃げた。しかし俺が変身できず、郷が怪我をしていて変身できないと知ったら」とダン。 「大丈夫、僕がいます」とゲン。 「そんな簡単な相手じゃない。あいつが再び襲ってくる前に何とか郷の怪我が治ってくれればいいのだが」とダン。 郷の仮面を何とかしないとと言うダンに、念力で取ってやるように頼むゲン。 念力を使うとアシュランが来たときに使えなくなることからそれを断る郷。 しかしダンは念力で郷の仮面をとってやった。 しかしダンの恐れは的中した。 いくら暴れてもウルトラ兄弟が現れないことをいいことに段々図々しくなるアシュラン。 アシュランはMAC東京基地へ接近する。 迎撃するMAC。 しかしアシュランの前には歯が立たない。 「僕も行きます」とゲン。 「無理だ。レオとウルトラマンが協力しなければ奴を倒すことはできん。郷の回復を待とう」とダン。 怪獣ボールと一緒ならというゲンだが、怪獣ボールは一度使うと50時間使うことができない。 「兄さん、やってみるよ」と郷。 まだ無理というダン。 ゲンは一人レオに変身してアシュランに立ち向かう。 その日は皆既月食のため空は真っ暗になる。 「そうだ。月食を利用すれば」と郷。 「その体で戦えば死ぬかもしれないぞ」とダン。 制止を振り切って変身する郷。 暗闇の中アシュランと戦うレオと新マン。 アシュランを両面から挟み撃ちにするレオと新マン。 二人は暗闇を利用してアシュランを葬った。 腕を交差させてウルトラアイと怪獣ボールを交換するダンと郷。 「ウルトラの国に帰ったら地球のことは心配するなと皆に伝えてくれ」とダン。 「じゃあ、頼んだよ」とゲンに言い残す郷。 郷はセブンのウルトラアイを修理するため、ウルトラの国へ持って帰る。 解説(建前) アシュランは何者か。 怪獣ボールを届ける新マンを狙ったように見えることから問題になる。 まず考えられるのは何者かの指図で新マンがセブンに怪獣ボールを届けるのを妨害しようとした可能性。 ただ、怪獣ボールのことはウルトラの国内部の話なので、それが外部に漏れている可能性は低い。 また、地球に来たアシュランも別に怪獣ボールを探してる様子はなかった。 したがって、単に地球で暴れるついでに新マンと遭遇したというところだろう。 ではアシュランがレオがいる地球を敢えて狙ったという可能性はないのだろうか。 アシュランは相当の腕自慢のようだから、強い敵に喧嘩を売るために地球へ来たという可能性は否定できないだろう。 ただ、それにしては、セブン、新マン、レオが揃ったら逃げ出していた。 そして3人が変身しないとわかると安心して街を破壊していた。 このことからアシュランはウルトラ兄弟と戦うために地球へ来たという可能性は低そうである。 結論としては、他の宇宙怪獣や通り魔宇宙人同様、単に地球で破壊を楽しむために来たのであろう。 ただ、アシュランはダン、ゲン、郷の正体は知っていた。 とすると、ウルトラ兄弟の情報を全く持ってないわけではなさそうである。 理由はわからないが、地球は宇宙人や宇宙怪獣の標的になることは多い。 おそらくアシュランもレオがいることくらいは知っていたであろう。 ただ、レオ一人など恐れるに足りないとの自負はあった。 現にアシュランはレオや新マン単独では倒すことは難しい強敵である。 アシュランにとっての誤算は、偶然新マンが地球へ訪れていたことであろう。 郷から怪獣反応が検知されたのはなぜか。 郷自体に怪獣反応があるとすると、ダンやゲンからも同じ反応が出てしまう可能性がある。 これはやはり郷が持っていた怪獣ボールの反応と考えるのが妥当であろう。 ただ、一緒にいた隊員はあまり怪獣反応のことを気にしていなかった。 途中で反応がなくなるなど、結局怪獣センサー自身、信頼性が乏しいのであろう。 感想(本音) 3人のウルトラマン人間体が揃うという豪華な話。 3人以上ウルトラマン人間体が登場する話は、新マンの「ウルトラの星光るとき」とタロウのテンペラー編が思い浮かぶが、いずれもここまでドラマはなかった。 常にダンとゲンの2人がいるレオだが、こういう話は二期、特にタロウとレオでしか作れない話であろう。 この辺りは人間ウルトラマンの路線が突き詰められ、もはや防衛隊の存在意義がなくなってしまったレオならではでもある。 いきなりアシュランに襲われ仮面をつけられてしまう新マン。 タロウのドロボン編でもペシャンコになるという醜態を晒したが、今回もかなり情けない役どころだ。 ただ、郷さん自身はかなりシェイプアップされており、見た目的にはかっこよかった。 どう見ても怪しい男なのに百子さんが無条件にいい人扱いなのは、やはり見た目がかっこいいからであろう(笑)。 ただし子どもは正直なので、どう見ても怪しい郷に対して石をぶつける。 子どもに石をぶつけられるヒーローというのも前代未聞だが、ボールをキャッチする郷さんは新マンのパラゴン編を思い出させて感慨深い。 アシュランは両面に顔がついているユニークなデザイン。 モデルはもちろん阿修羅であるが、色使いは何となく阿修羅男爵を彷彿させる。 ただし人格はひとつであるので、顔が両面にある設定はあまり生かされてはいない。 アシュランはかなり強豪な怪獣でダンもその強さを知っているようであった。 逆にアシュランもウルトラ兄弟を知っていた。 さしづめウルトラマンが警察としたらアシュランは指名手配中の犯人といったところか。 解説にも書いたが、アシュランがウルトラボールを狙ってるかのようなナレーションはあまり意味がないと思われる。 そんな情報をアシュランが知ってるとしたら、ウルトラの国にスパイがいることになりかねないので。 セブンガーはアシュランを圧倒するほどの強豪ロボット怪獣。 ウルトラに出てくるロボットは結構強いのが多いが、その中でも上位の実力であろう。 ただ、セブンガーはこれ以後一切出演しない。 これはデザイン的に人気が出なかったのもあろうが、やはり強すぎるのは困りものということであろう。 ところでセブンガーなどのカプセル怪獣は基本的にセブンしか使えないようである。 この辺りはセブンだけが念力を使えるのと関係あるのかも。 セブンが憑依タイプではなく変身タイプというのもあるのかもしれないが。 セブンのウルトラアイを修理するためにウルトラの星へ持ち帰る新マン。 ウルトラアイについては第一話でも考察したが、変身エネルギーを集めるためのアイテムだと思われる。 ただ、戦闘エネルギーそのものは人間体の時に体に蓄えられると解釈するのが素直であるので、どちらかというと種火みたいなものであろうか。 また、ウルトラ兄弟が変身するのは基本的に地球上に限られていることから、宇宙では違う変身方法があるのかも含めてまだ考察の余地はあると思う。 最後のレオと新マンがアシュランを倒した技は正直よくわからなかった。 アシュランがまさに阿修羅の形相で逝ったのもよくわからなかったが。 ところで今回新マンはスペシウム光線を使わずじまい。 怪我をしていた後半の戦いはともかく、最初の宇宙での戦いの時には使うべきであったと思うが。 この辺り、もしかして光線の使用は原則として控えられている可能性もある。 いくら凶悪犯といってもいきなり殺してしまうのは野蛮に過ぎる嫌いはある。 最初にウルトラマンが格闘するのはもしかすると相手が自主的に抵抗を止めるのを待つという意味あいもあるのかもしれない。 本話はレオにおけるウルトラ兄弟初客演回である。 視聴率的なものもあろうが、漸く解禁といったところ。 まあ、既にキングやアストラ、そもそもセブンが出ているので特に禁じていたわけでもなかろうが、この辺りは結局タロウ路線に戻ったとも言えなくもないであろう。 レオは本来は3クールで打ち切りが決まっていたともいう。 もし3クールでレオが終わっていたら普通にウルトラ兄弟に仲間入りして終わりということになっただろうが、それはそれで悪くはなかったであろう。 ただ、それではレオの個性やコンセプトがぼやけてしまうので、最終的に円盤生物編を作れたということはレオの評価に大きく関わると思う。 本話は前述したようにウルトラ兄弟3人の人間体の共演という豪華な話であるが、肝心のドラマ自体はそれほど濃くはない。 タロウのドロボン編では二谷副隊長のドラマなど防衛隊側のドラマも絡んでいたので、兄弟3人だけで進行した本話がやや淡白なのは仕方ないであろう。 本話の脚本は阿井文瓶氏。 阿井氏は田口氏同様あまり思想的なものは出さない作家なので、プロデューサーの要求通りに本を仕上げてる印象はある。 まあ、駆け出しの脚本家が石堂氏や佐々木氏や市川氏みたいな真似はできないだろうが、その辺り大人の視点からは物足りない部分もあろう。 個人的には可もなく不可もない出来であるが、かっこいい郷さんが見られるという意味では郷さんの客演回では一番の出来かもしれない。 |