データ 脚本は奥津啓二郎。 監督は筧正典。 ストーリー 自転車を押す白髪の老人。 その老人をとり囲むように集まる子どもたち。 老人は子どもたちの目の前で花を咲かせるという。 そこへ小さい赤ん坊を抱えた若い母親が通りがかる。 老人は母親が赤ん坊が泣き止まずに困ってる様子を見ると、何処からか取り出した赤い花を赤ん坊に与えた。 すると泣きやむ赤ん坊。 空き地についた老人と子どもたち。 訝しがる子ども達を横目に老人は「花よ咲け。綺麗な綺麗な花よ咲け」と言いながら銀の鉱物のようなものを辺りに撒き始める。 満開の花で一杯になる空き地。 喜ぶ子どもたち。 「もっと咲け、もっと咲け」。 老人はさらに銀色の物質を撒き続け、町中に花を咲かせた。 「いい匂いだよ。嗅いでごらん」と老人。 喜んで花の匂いを嗅ぐ子どもたち。 しかし花の匂いを嗅いだ子ども達はその場に寝てしまう。 「何もかも忘れてゆっくりお休み」と老人。 子どもたちが集団で眠りにつく事件のことはMACにも報告される。 「眠り病?」とゲン。 「中には十日以上も眠っている子どももいる。宇宙人の仕業と言うことも考えられる」。 調査を命じるダン。 ある日、カオルとトオルは道端に咲いている花を見つけた。 枯れそうな花を見てかわいそうに思ったカオルは、ハーモニカを買うために溜めていた貯金を使って花のために植木鉢を買ってやる。 それを見て勿体無いとトオル。 百子と3人ですき焼きを食べるトオル、カオル。 すると急にベルが鳴り出し驚いたトオルは肉を喉に詰まらせてしまう。 「お水の時間だ」とカオル。 百子はカオルが汲んだ水をトオルに与えるよう言うが、 「駄目。これはお花のだもん。欲張って一人でお肉ばっかり食べるからよ」とカオル。 植木鉢に水を与えるカオル。 トオルは百子から貰った水を飲むと、カオルから植木鉢を取り上げそれを床に叩きつけて割ってしまった。 怒って部屋を飛び出すカオル。 ゲンが家に戻るとドアの付近に割れた植木鉢を抱えたカオルが立っていた。 百子に連絡するゲン。 それを聞いてほっとするトオル。 カオルはその晩はゲンの家に泊まることになった。 その夜、白い花の精の夢を見るカオル。 「私は白い花の精よ。あなたが助けてくれた花の精よ。私汚れた空気のために病気になりそうだったの。でもあなたのおかげでもう大丈夫」と花の精。 一緒に踊るカオルと花の精。 そこへ黒マントをまとったトオルが襲い掛かる。 目を覚ますカオル。 「花がない。お兄ちゃんの馬鹿。お兄ちゃんなんか病気になればいいのに」とカオル。 ある日、トオルは街中で子ども達を集めて花を咲かせる老人に出会う。 「すげえ」。 感心するトオル。 「お爺さん。僕にこのキラキラ光る奴少しくれない」。 「駄目なんだよ」と老人。 「少しでいいんだ。妹にあげたいんだ」とトオル。 「残念だけど駄目なんだ。その代わりこれをあげよう」 子供たちに花を与える老人。 トオルは老人の目を盗んで銀の物質を持って帰る。 しかし、老人はそれに気付いていた。 ニヤリと笑う老人。 再度眠り病の連絡を受けたMAC。 しかも今回はトオルまで眠り病に罹っていた。 見舞いに行ったゲン。 ゲンはダンからトオルが握っていたという物質を見せられる。 「地球のものじゃありませんね」とゲン。 しかしダンにもこの物質からは敵の正体はわからなかった。 敵は恐ろしく頭のいい奴だとダン。 MACは子供たちがこれ以上被害に合わないように外に出るのを禁止した。 その上で宇宙人を見つけ出し倒そうとするMAC。 子供たちを探しに空き地に現れる老人。 しかし子供たちはいない。 一方トオルは未だに意識不明だった。 「お兄ちゃんごめんね。もう病気になれなんて言わないから。早く治ってね」とカオル。 カオルはトオルのために家にある花を取りに行く。 花を持って帰る途中、例の老人に出会うカオル。 優しく話しかける老人。 「どうしてそんなに急いでいるんだい」と老人。 「お兄ちゃんが病気なの」とカオル。 老人はお見舞いにとカオルに2輪の花を与える。 ありがとうとカオル。 しかしそのとき、何処からともなく声が聞こえてきた。 「駄目。その花を貰っては駄目。その花は悪い花。その匂いで子供たちを眠らせてしまう毒の花よ。貰っては駄目」。 それはカオルに助けられた花の精だった。 「いらない」。 老人の手から花を払いのけるカオル。 しかしその時老人の態度が一変した。 カオルの手から植木鉢を取り上げると地面に投げつけそれを壊した老人。 さらに老人は花を踏みつけ、カオルに襲い掛かろうと詰め寄ってくる。 追い詰められるカオル。 その時、MACがかけつけた。 「やめろ」とゲン。 「お前だな。トオル君たちを眠らせたのは」とゲン。 「その通りだ。だがわしの何処が悪い。この汚れた東京を花で美しくし、勉強で疲れた子供たちに、安らかな眠りを与えただけだ」。 「嘘だ。お前の目的は地球侵略だ」とゲン。 「いいや、わしは花と子どもを愛しているんだ」と老人。 しかしカオルは「嘘よ。花を愛してるなら、何で私の花を踏み潰したの」と糾弾する。 進退窮まり、巨大化する星人。 街を破壊する星人。 マッキーが空から攻撃するも星人には歯が立たない。 星人が咲かせた花で視界がなくなるマッキー。 さらに星人の光線を浴びマッキーは墜落する。 それを見てレオに変身するゲン。 星人の触覚から出る光線に苦戦するレオ。 さらに花で作られた輪で動きを封じられてしまう。 何とか星人の攻撃を掻い潜り、レオマントで星人の光線を封じるレオ。 最後はタイマーショットで星人にとどめを刺す。 レオマントを翻すとそこには花の精の姿が。 花の精が街に水を撒くと街が花に包まれる。 レオが咲かせた優しい花は子供たちを眠りから覚ませた。 トオルも目を覚ます。 退院するトオルにカオルは花をプレゼントする。 しかしトオルは花を怖がって逃げてしまった。 追いかけるカオル。 微笑むゲンと百子。 解説(建前) バーミン星人は何者か。 ゲンは地球侵略を狙ってると糾弾したが、果たして本当にそうなのだろうか。 バーミン星人の行動から検証していくことにする。 まず子供たちの前で花を咲かせたのはなぜか。 これはおそらく子供たちの気を引くためであろう。 ではなぜ子供たちの気を引く必要があったのか。 これも話の流れからは花の匂いを嗅がせ、子どもたちを眠り病にするためとなろう。 では何故子ども達を眠り病にさせる必要があったのか。 これも侵略が目的とするなら、地球の将来を担う子ども達を眠らせることにより侵略しやすくするためということになるだろう。 ただ、やはりこのような解釈は無理がある。 すなわち、一握りの子どもたちを眠らせたところで地球侵略にとって大したプラスではないからだ。 では何故子ども達を眠らせたのか。 老人は「勉強に疲れた子どもたちに安らかな眠りを与えた」と言った。 案外これは本音に近いのかもしれない。 つまり、老人は子どもに危害を加える気はなかった。 もしかすると星人は巨大化して暴れる自分の姿を子どもたちに見られたくなかったのかもしれない。 あるいは侵略が完了してから子ども達を元に戻す気だったのかもしれない。 いずれにせよ子どもを眠らせたことと地球侵略とは直接結びつかないのである。 ただ、星人はカオルに対しては危害を加えようとした。 これはやはり自分の言うことを聞かない子どもは容赦しないということであろう。 この辺りに星人の独善性というものを見ることが出来る。 星人がカオルの花を踏みにじったのもそのような独善性からであろう。 以上より、星人は地球を侵略し、その後自分の気に入った一部の子どもたちを元に戻そうとしたとでもなろうか。 しかし、やはりこれも少々無理がある。 したがって、私は侵略説そのものを否定することにする。 では、星人の本当の目的は何か。 ここからは完全に私の想像だが、もしかしたら星人はただ寂しかっただけではないかと思う。 子ども達を眠らせたのも深い意味はなく、いつまでも子どものままでいさせるため。 ただの寂しい孤独な老人。 もしかしてバーミン星人は老いによって滅んだ星の住人の最後の生き残りだったのかもしれない。 感想(本音) 解釈が難しい話。 これが石堂先生だったらもっと明確で鬼畜な侵略目的を披瀝してくれるのだが(笑)バーミン星人を演じる仲谷昇氏の演技もあって、どうしても深く考えてしまう(笑)。 おそらく制作側はそこまでは考えていないであろう。 とにかく花咲かじいさんの筋で最後は敵をやっつけるというプロットだけ。 ウルトラQ以来の単体で乗り込んで地球を侵略しようという定型フォーマットに乗せただけと解釈するのが素直だと思われる。 脚本は奥津啓二郎。 レオではこの話と「美しいおとめ座の少女」の二本の脚本を手がけている。 二本の脚本に共通するのは、いずれも宇宙人の老人が出ている点。 しかも演ずるのは天本氏、仲谷氏といずれも有名どころの役者というのも共通だ。 ただ、「美しいおとめ座の少女」が本国でのロボットの反乱とかなりSF要素が強かったのに対し、本話はそこまでの背景は描かれていない。 民話シリーズ故であろうが、もう少しバーミン星人の背景を描いて欲しかった。 何と言っても演じる役者がいいのだから。 本話の元ネタはご存知「花咲かじいさん」。 まあストーリー的には花を咲かせるくだりだけだったが、花さかじいさんといえば枯れ木に花を咲かせましょうなので、それだけで十分であろう。 ただ曲者なのはこのじいさんが悪者だという点。 世知辛い世の中ではあるが、やはり知らないおじさんについていってはいけませんということだろうか。 しかし、仲谷氏演じる爺さんの不気味なこと。 特にカオルに襲い掛かるシーンは怖すぎる。 見ようによっては変質者だが、まあ似たようなものだから。 今回注目はやはり花の精を演じた杉田かおるであろう。 カオルつながりというわけではないが、新旧子役レギュラーの共演というのも珍しい。 杉田氏によると、当時既に売れっ子だった杉田氏はよくウルトラの撮影を見に行ってたらしく、機会があれば出演したいと思っていたとのこと。 子ども向けドラマのオファーはほとんどなかったので、レオは自分が出たいと思って出演した最初のドラマだったらしい。 まあリップサービスもあるだろうが、売れっ子になってしまったがために普通の子どもとしての生活が奪われた杉田氏にとって、レオは思い出深い作品なのは間違いないであろう。 本話のトオルはなぜかカオルが道端の花を買うために貯金をはたいてまで植木鉢を買ったことが不満のようだった。 その不満が水やりのアラーム音で喉を詰まらせた時に爆発してしまう。 相変わらずの屈折振りだが、その後は反省してカオルのために花を咲かせる物質を盗み出す。 しかし、その結果トオルは眠り病に。 今度はトオルのために自分の花を取りに行ったカオルが星人に襲われてしまう。 かように本話のテーマの一つにトオルとカオルの兄妹愛というのがある。 喧嘩するほど仲がいいとはいうが、天涯孤独の二人にとってはお互い唯一の肉親。 カオル降板後のレギュラーである杉田かおるに助けられるというのは何とも皮肉な話だが、そういう二人の関係は何とも微笑ましい。 本話はやはり仲谷氏演じる星人のインパクトが大きい。 子ども相手に嬉しそうな好々爺の表情。 トオルが物質を盗んだのを見てほくそえむ表情の不気味さ。 子どもがいなくて街を彷徨う時の何とも言えぬ哀愁。 そしてカオル相手に本性を見せたときの恐ろしさ。 正直人間態だけでドラマを展開したらセブンぽい作品になったのではないかとすら思う。 ただ、その辺りはやはりレオなので、お約束の巨大化と怪獣退治になるのは仕方ないか。 また、星人の目的が最後まではっきりしなかったのもパラダイ星人同様やや残念である。 とはいえ、トオルとカオルの兄妹愛中心になかなか出来た作品。 ご都合主義的とはいえ杉田かおるの花の精のファンタジー的なところも子ども向けとして秀逸だし、民話とレオの世界が上手く融合した作品といえるだろう。 脚本を書いた奥津氏はレオ以外に目立った活動はしていないようであるが、レオに提供した二本はいずれもレオの世界を広げるのに貢献していた。 いずれもセブンのレオ的解釈ともいえる要素もあり、単なる子ども向けに堕していない点、評価に値しよう。 |