怪獣の恩返し


データ

脚本は田口成光。
監督は筧正典。

ストーリー

宇宙一美しいと言われる怪獣ローランを嫁にするため、ローランを追って地球へ来たマグマ星人。
しかし言うことを聞かないローランにマグマ星人は腹を立て投げ針で攻撃する。
それを発見したゲンはマッキーで攻撃。
マグマ星人は退散した。
その場を逃れたローランだったが、足に刺さった針が抜けなくて苦しむ。
そこへサイクリング中の自転車屋の大熊親子が遭遇した。
必死で怪獣から逃げる親子。
しかし、とうとう怪獣に追いつかれてしまった。
死んだ振りをする親子。
しかし間近に迫る怪獣を見て父親の方は気を失ってしまった。
一方、ローランの様子から針を抜いて欲しいことを見抜く息子。
息子は父親を起こして一緒に針を抜いてあげようと言う。
そこへローランを追ってきたゲンが到着した。
息子のケンジは城南スポーツクラブの生徒でゲンと知り合いだった。
3人で針を抜くのに成功するも、反動で父親がむち打ち症になってしまう。
やむなく自転車屋を休業する父親。
代わりの店員を募集するが、人手不足でなかなか応募が来ない。
そこへ星村という若い美しい女性が雇って欲しいと訪ねてきた。
ケンジと一緒に大熊自転車屋にやってきたゲンは、その女性がローランであることを見抜く。
ローランは助けてもらった恩を返すため、ここで働きたいと言う。
ローランは夜中になるとこっそり自分の体の羽を使って風車を作っていた。
その風車を使うと自転車が速くこげるようになるという。
ケンジからそれをもらったカオルはトオルたち年上の男子を差し置いて一番速く自転車をこぐことができた。 風車が評判になり繁盛する自転車屋。
しかし、それがローランのものと気付いたマグマ星人が子どもたちを襲い、風車を片っ端から壊していく。
星人を追うMACであったが、格闘の末取り逃がしてしまう。
そこへ現れるダン。
ダンは風車がローランの羽で出来ており、マグマ星人がローランの反応のあるものを次々と襲ったと言う。
「風車は俺が全部回収した。ローランの居場所は知っているはずだな。お前の責任でローランを宇宙へ送り返すんだ」とダン。
ゲンの話を聞いたローランは宇宙へ帰ることを決意する。
ゲンはローランにマグマ星人をおびき出すため、風車を作ってくれるよう頼む。
「奴は僕の父と母の敵でもあるんだ」とゲン。
明日ギプスが取れることになり、喜ぶ大熊親子。
しかし家に帰ってくると、休業中の看板が出ていた。
不審に思った二人はこっそり裏から家に入る。
すると怪獣と星村の声らしきものが聞こえてきた。
さらに障子の影越しに風車を作る怪獣の姿が。
恐る恐る障子を開ける親子。
そこには星村がいた。
「この風車をおおとりさんに渡してあげてください」と星村。
「さようなら。お元気で」。
大熊に風車を渡すと去っていく星村。
宇宙へ帰ろうとするローランを見つけたマグマ星人はローランに襲い掛かる。
言うことを聞かないローランを殺そうとするマグマ星人。
マグマ星人に斬りつけられ傷を追うローラン。
そこへレオが現れた。
レオはマグマ星人のサーベル攻撃を交わし、サーベルを叩き折る。
最後はローランの作った風車を星人に投げつけるレオ。
星人は風車が刺さるとそのまま消滅してしまった。
「しかしあの怪獣は本当に心の優しい怪獣だったな」と大熊。
「怪獣なんかじゃないよ。星村さんだったんだよ」とケンジ。
「お前の言うとおりだよ。この頃は人間だってああいう優しい気持ち忘れちまってるんだもんな。全く頭が下がるぜ」と大熊。
ローランを見送る大熊親子。
ローランの残してくれた風車で遊ぶ子どもたち。

解説(建前)

マグマ星人は何故ローランの風車で消滅したのか。
そもそもあれで倒されたのかも疑問が残るが、マグマ星人が退場するときは雲の中に消えていくのが常套なので一応死んだと仮定しておこう。
ただ、あれで倒せるならローランでも倒せるはずという疑問が残る。
これはやはりウルトラブレスレット等と同様、レオが何らかのエネルギーを風車に込めたと解釈するのが妥当であろう。

ただ、宿敵のマグマ星人の割にはあまりにもあっさり負けすぎである。
これはどういうことか。
まず考えられるのが、そもそもマグマ星人自体はそれほど強くないということ。
1話でもギラス兄弟が負けたらあっさり逃げ帰った。
これは単体ではレオに勝てないということを物語る。

また、レオそのものも実戦を経てパワーアップしている。
徐々に光線技を身につけていってるのもおそらくダンから指導されてるのであろうし、ドラゴンボール風に言うとエネルギーを気でコントロールできるようになったというところであろうか。
親の敵のマグマ星人相手にも冷静に対処しており、初期の血気に早って自分を見失う欠点は克服している。
今のレオなら単体のマグマ星人など敵ではないであろう。

ローランは何故自分で針を抜くことができなかったか。
これはやはり体の構造ということになろうか。
ローランはその体型からも前屈は苦手そうである。
また見た目に反して力も弱いのであろう。
もちろん、あまりの痛みに力が入らないのもあろうが、元々戦闘能力はあまりなくこういう事態には対処できないのであろう。
結局、色々な要素が重なった結果、助けが必要になったのであろう。

感想(本音)

ストーリーとしては鶴の恩返しそのもので特に捻りはない。
そういう点ではある意味安直といえなくもないであろう。
今回の脚本はメインライターの田口氏。
田口氏はこのシリーズは「ウルトラマンキング対魔法使い」に続いて2本目だが、共通点は両者が一応イベント編なところであろうか。
物議を醸してはいるが、本話はマグマ星人との決着編でもある。

本話のマグマ星人については、第一話の星人とは別人であるという見解もある。
それは例えばマスクが違うとか、あの強かったマグマ星人が単なるストーカーになってあっさりやられるのはおかしいとか、見た目や作品におけるマグマ星人の位置づけを根拠としている。
ただ、見た目に関してはこういう特撮ものでは少々異なるのはお約束であるし、決定的な根拠とはならないであろう。
一方作品上の位置づけはそれほど設定が練られてなかった当時にしてもある程度の考慮は必要である。

ただ、これに関しても結局根拠としては弱い。
なぜなら、マグマ星人はレオの敵ではあるが、第二話以来全く話に絡んでいないからである。
解釈的にはマグマ星人の関与を疑わせるものはあったが、それは表には出てきてない以上、マグマ星人はあれ以来地球やレオと接点がなかったと考えるのが妥当である。
そして、結局マグマ星人はこれを最後に登場しない。
やはりゲンが言うように、このマグマ星人はレオの敵のマグマ星人だったのである。

しかし、何故宿敵として設定されたマグマ星人がこんなにあっさり倒されてしまったのであろうか。
これは恐らく路線変更の賜物であろう。
レオは初期の特訓編で視聴率的に苦戦し、早々に特訓編を放棄。
さらに怪奇シリーズ、民話シリーズと路線を子ども向けにかなりシフトしている。
この過程で初期のような通り魔的宇宙人という路線は完全に忘れ去られてしまった。
また、徐々に普通のウルトラに近づいていたため、マグマ星人の設定は使い辛いものになっていたのである。
そこで田口氏がメインライターとしての使命で一応決着をつけたのが本話。
意図したものかはわからないが、現代的な猟奇犯罪が初期のテーマだったレオでマグマ星人がストーカーとして葬りさられたのは、ある意味皮肉でもあろう。

本話はマグマ星人が倒されるというイベント編ではあるが、実際にはマグマ星人はほとんど存在感がない。
これはやはり本話の中心がハヤタこと黒部進、フジ隊員こと桜井浩子のゲスト出演にあるからであろう。
このかつてのメインキャラがゲストに出るという流れは前話の「運命の再会!ダンとアンヌ」からのものである。
一応視聴率的なてこ入れであろうが、正直、この頃にはレオでシリーズが終わると言うのは規定路線だったように思われる。
ある意味集大成的な意味も込められたゲスト出演ではなかろうか。

今見るとハヤタとフジ隊員にしか見えないが、ビデオなどが普及してない当時の子どもたちはどのように感じたのであろうか。
私はこの話は大人になってから見たので、子どものころの記憶はない。
したがって当時の子どもたちがどのように思ったのかは不明である。
ただ、子どもにとってもっと気になるのはローランが宇宙一の美人という点であろう。
正直見た目は普通の怪獣。
これはケンタウルス星人もそうだったが、人間と怪獣、宇宙人との美的感覚の違いであろう。

しかし、マグマ星人が怪獣を嫁さんにするというのはさすがに強引。
本話のマグマ星人が第一話と同個体であると前述したが、この話がそもそもマグマ星人ありきだったのかは疑問が残る。
マグマ星人の再登場はファンの要望を受けてのことらしいが、本来なら別の星人が設定されていたところ、強引にマグマ星人にして決着をつけたのではないか。
それだけこの役に必然性はなかったのである。
ファンとしてももっと違う形での決着を希望してたはずだが、このようにちょっとやっつけになったのは残念なところである。

マグマ星人はローランの反応があるという理由で風車を片っ端から破壊した。
しかし意外と紳士なことに、子どもたちには一切危害を加えていない。
まあ、風車のせいで子どもたちが大量に殺されたら洒落にならないから当然ではあるが、あの残虐なマグマ星人からすると確かに違和感がある。
この辺りは恋に狂うストーカーの異常心理として片付けるしかあるまいか。
マグマ星人にとっては子どもたちなど眼中になかったということである。
ちょっと無理のある解釈だが、この辺りからも最初からマグマ星人がストーカーに設定されていなかったことが見てとれるであろう。

本話の見所は前述したが、黒部氏と桜井氏の再登場だろう。
特に黒部氏のコミカルな演技には感心した。
また、桜井氏も宇宙一の美女という大役を見事に演じていた。
当たり前のことだが、ウルトラマンのときとは全く違う役柄をを演じており、この辺りはさすがに役者である。
惜しむらくはこの2人とダンとの共演がなかったことであろうか。
最近のウルトラだと森次氏がメガネをウルトラアイのように装着するなどのシーンがお約束であるが、まだこの頃はそこまでの遊びはなかったようだ。

本話はイベント編ではあるが、正直とってつけた感がありマグマ星人の存在感が埋没してしまった。
そういう点では少し残念なところはある。
ただ、正直マグマ星人はそれほど強いという印象もなかった。
おそらく一話の時点でも単体ではレオに勝てなかったであろう。
もちろん本来ならまた違う手下を連れてやってくるのが筋であろうが、恋に狂って無防備に地球へ来るというのもある意味リアル。
どういう形であれ、一応マグマ星人との決着をつけた点は評価できる。
この辺り、田口氏がメインライターの役目をしっかり果たしたともいえるであろう。


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