データ 脚本は阿井文瓶。 監督は大木淳。 ストーリー 果物一杯の星、惑星アップル。 惑星アップルの住人は果物が大好きな怪獣オニオンが果物畑を荒らすことに困っていた。 オニオンの嫌いな鶏を畑に仕掛ける住人。 鶏から逃げ惑うオニオン。 一方地球。 果物屋の息子、桃太郎は近所の少年たちにからかわれる生活を送っていた。 「お前、桃から生まれたんだろ。だからパパやママもいないんだろ」。 「ちがわい、死んだ父ちゃんが桃太郎という名前をつけてくれたんだい」と桃太郎。 「嘘つけ。お前は桃から生まれたんだよ。だから父さんも母さんもいないんだよ」と少年。 「桃から生まれた泣き虫桃太郎」。 囃し立てる少年たち。 そこへダンとゲンが通りかかった。 ダンの後ろに隠れる桃太郎。 「仲良く遊ばなきゃ駄目じゃないか」とダン。 「だって、桃ちゃん弱虫過ぎて面白くないんだもん」。 「じゃあ、君たちは弱いものいじめをしてるのか」とゲン。 「弱虫桃太郎、泣き泣き逃げろ。ままごとしてろ」。 去っていく少年たち。 「僕に父さんも母さんもいないから、皆いい気になって苛めるんだ」と桃太郎。 「そんなことくらいで泣きべそかいちゃだめだ」とゲン。 「僕、喧嘩は嫌いなんだ。でも皆を苦しめる本当の鬼みたいなやつが出てきたら、きっとやっつけてやるんだ」と桃太郎。 一緒に遊ぼうとトオルたち。 しかしお爺ちゃんとお婆ちゃんが待ってると桃太郎は家に帰っていった。 そのとき本部から怪獣出現の報が。 惑星アップルから鶏に追われて逃げてきたオニオンは、果物豊富な秋の地球を狙ってやってきたのだった。 祖父たちと避難する桃太郎。 オニオンは桃太郎の店を襲い、果物を食べ尽くす。 店を潰され途方に暮れる祖母。 「青鬼みたいな奴だなあ」とダン。 「桃太郎に会ったと思ったら、今度は鬼ですか」とゲン。 「しかしこの鬼は我々が退治しなくちゃならん」とダン。 攻撃するMAC。 しかし隊員たちはオニオンの出すタマネギの匂いのする物質を浴び、涙が止まらない。 「新兵器を使いましょう。このままだと被害が広がる一方です」とゲン。 新兵器の麻酔弾を使用するMAC。 しかし注射嫌いのオニオンはこれに激怒。 麻酔が効いたふりをして油断させてマッキーを墜落させる。 さらに襲い来るオニオン。 しかし、漸く効いた麻酔のために倒れてしまう。 攻撃するMAC。 しかしオニオンはタマネギの匂いのするガスを吐いて近づけないようにする。 麻酔弾の効果は半分しか効かなかったためMACは近づけない。 麻酔弾の効果は24時間しか持たない。 おじいさん、おばあさんの涙を見た桃太郎はオニオンを倒す決意をする。 いじめっ子たちも桃太郎の勇気に感動し、協力する。 しかしオニオンの吐くガスを浴びて皆泣き出してしまった。 子どもたちを助けるMAC。 それでも挫けない桃太郎は犬や猿を仲間にしようとする。 しかし、犬と猿は協力してくれない。 結局雉の代わりの鶏だけをお供に鬼退治に向かう桃太郎。 それを見たゲンは鬼退治の協力を申し出る。 翌朝、桃太郎はヘリコプターに吊るされた大きな桃の中に入って、オニオンに近づく。 桃をオニオンの上に落とすMAC。 それを喜んで受け取るオニオン。 しかし桃の中からオニオンの嫌いな鶏の声が聞こえると、オニオンは慌てて桃を放り投げた。 桃の中から現れた桃太郎は弓矢をつがえてオニオンにそれを射る。 命中し爆発する矢。 しかしオニオンの麻酔が切れてオニオンが暴れだす。 最後の一本の矢をひょうとばかりに射る桃太郎。 矢は見事にオニオンのパンツに命中し、オニオンはずり落ちたパンツを慌てて持ち上げる。 怒ったオニオンは桃太郎に襲い掛かる。 レオに変身するゲン。 レオブレスレットで鬼の角を切断するレオ。 さらにレオはオニオンを果物の木に変えてしまう。 神経痛に効くという鬼の角を持ち帰る桃太郎。 迎える子どもたち。 解説(建前) 何故MACはガスマスクをしてでもオニオンを攻撃しなかったのか。 これはおそらく、オニオンを倒してしまうとオニオンの体内にあるガスが周りにあふれ出し、危険が生じるためであろう。 オニオンのガスはタマネギの匂いのする催涙性ガスであるというのはわかっているが、それ以外にも可燃性が高いなどの危険があったのかもしれない。 最後レオもオニオンを果物の木に変えているように、普通に倒すと危険があるというのをレオもわかっていたのであろう。 ゲンが危険を承知で桃太郎に鬼退治させたのは何故か。 これはもちろん危険になったら自分がレオに変身するつもりだったのは当然だが、それにしては取った作戦がかなり危険である。 あの桃が衝撃を吸収するなど相当の耐久性があるのは間違いないが、それにしてもオニオンに投下する必要はあったのだろうか。 オニオンはあの桃を食べようとしていた。 オニオンが鶏が苦手というのはMACは知らなかったはずだし、これはやはり最初からあの桃を食べさせることに狙いがあったと見ることができる。 とすると、あの桃を食べようとしたときに何かが起こった可能性が高い。 完全に推測だが、中の桃太郎がタイミングを見計らって中和ガスを噴出す装置を押すなど、何らかの作戦が授けられていたと考えるのが妥当であろう。 感想(本音) 民話シリーズの第二段。 テーマはお馴染み桃太郎。 レオが小さくなって打ち出の小槌で元に戻るというプロットだけ借りた前話とは違い、本話はストーリーそのものも完全に桃太郎である。 その辺り、ある意味直球ど真ん中ともいえる話であろう。 ただ、その捻りのなさは色々問題もある。 その辺りも踏まえて、以下見ていくことにする。 まず惑星アップルだが、正直よくわからない星。 オニオンを積極的に退治しようとしてないことから、そこまでオニオンに怒りを持ってないのか、それともオニオンを退治できるだけの力はないのか。 宇宙は広いので、どの星でもウルトラマンが助けに行くなんてできないが、ちょっと気の毒な感じはした。 一方オニオン。 果物が食べたいからってわざわざ地球まで来る根性には恐れ入る。 しかし、やってることはただの強盗。 言うこと聞かないと退治されるのは、気の短いウルトラ兄弟相手では致し方ないであろう。 まあ、あの様子では他の星で殺人でもやってかねないので、果物の木にされても同情は難しい。 桃太郎は育ててくれた祖父母への恩を忘れない、強く優しい少年。 後のあばれはっちゃくだけにかなり無茶だったが(笑)、最後はいじめっ子たちも一目置く存在になっており、人間的にかなりの成長が見られた。 しかし桃太郎は本当に元から勇敢な少年だったのだろうか。 確かにやるときはやると前から言っていたが、客観的に見るとそれは負け惜しみにしか聞こえない。 正直ゲンに意地を張って自分がオニオンを倒すと主張するのはやけになってるように見えなくもなかった。 案外じゃみっ子がザゴラスに立ち向かったように、本当は逃げ場がなくて無茶しただけではなかったのか。 確かに祖父母を避難させるシーンなどしっかりものであるという描写はあったが、本当は父母に甘えたい年齢なのでかなり無理をしていたのかもしれない。 喧嘩は嫌いだという妙に大人びた考え方といい、村の人に受け入れられるために鬼の角を持って帰ったり、やはり自分の生まれに対するコンプレックスとその差別は相当なものがあったのだろう。 今回はMACのやる気のなさが目立った。 普通に考えれば、ガスマスクでもすればオニオンのガスなど大した問題ではないであろう。 せいぜい催涙弾程度なのだから。 可燃性があって大爆発するとしても住民を非難させればいい。 それを事もあろうか、子どもに危険なことまでさせている。 これはやはり、オニオンを甘く見て、最後はレオに変身すればいいやというダンやゲンの安易な考えが原因であろう。 ただ、この話は最初から鬼退治ありきだから、こういう展開になるのも致し方ない。 無理に桃太郎に鬼退治させようとすると、こうならざるを得ないのだ。 けだし、MACが勝てないものをただの子どもが倒すというのが現実的にはありえない。 もちろんかめはめ波が撃てるとか特殊な能力でも持ってたら別だが、そもそも人間の子どもが鬼退治するのは無理がありすぎるのである。 この辺りは題材選びからの失敗とも言える。 阿井氏のウルトラデビュー作は「僕にも怪獣は退治できる」。 阿井氏らしい作品といえばそうだが、やはりややウルトラに対する理解が不足してる面も否めないであろう。 今回はオニオンのパンツがずれ落ちるシーンなど全体的にナレーションもコミカル。 特に麻酔弾を撃つ下りで「効くのかねえ」には笑わせてもらった。 オニオンの吐くガスが玉ねぎの匂いというのもそのままで安直。 まあ、完全にギャグ回なので仕方ないが、オニオンが暴れるシーンやレオとの戦闘シーンのBGMまでコミカルなのには脱力した。 その一方で桃太郎が大きな桃で吊るされてオニオンに挑むシーンは勇ましいBGMが。 あと、子供たちの演技は児童劇団そのもので、ちょっと舞台でも見てるかのような雰囲気はあった。 ああいう演出は監督の大木淳氏の好みなのだろうか。 今回は、完全に桃太郎なので話的には民話としか言いようがない。 一応少年の成長というテーマもありえたが、あっさりいじめっ子が協力するなど心の変化の描写もないので、その辺りも薄いと言わざるを得ないだろう。 まあ、正直ドラマ的には今ひとつ。 ただ、子ども、特に小さい子どもにわかりやすい話にするという民話シリーズのコンセプトからはある程度成功したとも言えるであろう。 確かにあまりの捻りのなさには疑問もあるが、逆にこの潔さは返って気持ちよくもある。 番外編として見てみれば、それほど不満もないのではなかろうか。 |