データ 脚本は田口成光。 監督は大木淳。 ストーリー マット運動をするスポーツクラブの子どもたち。 ゲンはクラブを辞めさせるというテツオの母親を説得していた。 辞めたくないとテツオ。 しかし母親は次は習字を習わせると聞き入れてくれない。 その頃、MACは街中に現れた星人を追跡していた。 合流するゲン。 その頃テツオはお習字教室に遅刻したことを母親に咎められていた。 いやいや習字の練習をするテツオ。 しかし、そこへ突然プレッシャー星人が入ってくる。 テツオの部屋へ逃げ込む母親。 怪しげな魔法を使い、家の中を破壊する星人。 MACが駆けつると星人はテツオ親子を捕まえ、魔法で2人を宙吊りにした。 苦しむ2人。 それを見たゲンは星人に組み付く。 ゲンたちは星人と格闘するが、星人に逃げられてしまう。 「お母さん、おゝとりさんたちが助けてくれたんだよ。お礼を言ってよ」とテツオ。 しかし母親は「そんな必要ありませんよ。MACが私たちを助けるのは仕事なんざんすからね」と お礼を言おうとしない。 基地に戻ったゲン。 不満そうなゲンに対し、 「我々の仕事がどんなに大変で命がけなものか、よく理解してくれる人もいればその反対に全く理解しない、いや、理解しようとさえしない人々もいる。宇宙人であるお前がそんな問題に心を惑わされるのも不思議な話だ。お前も段々人間らしくなってきたのかな」とダン。 それを聞いて微笑むゲン。 「だが油断大敵だ。今日お前が出会ったプレッシャー星人は力が強いばかりではない。宇宙の魔法使いと呼ばれている。神出鬼没、おまけに不思議な術を使うといわれている」。 「どんな術を」。 「残念だがそれは私にもわからん」とダン。 その頃、地球上では再び星人が姿を現していた。 巨大化した星人は杖を振りかざすと不思議な魔法で周りの建物を持ち上げる。 さらに火の玉を発生させて町を破壊していた。 出動するMAC。 星人は煙幕を張り攻撃を防ぐ。 星人の魔法により動きを止められるマッキー。 マッキーは墜落し、隊員は脱出する。 杖の上に横になりクルクルと回り始める星人。 レオに変身するゲン。 しかし格闘中に星人は姿を消してしまった。 星人の罠に嵌るレオ。 レオは星人の光線を浴び、小型化されてしまった。 「しまった」とダン。 さらに星人は風船を作り出すと、レオをその中に閉じ込めてしまう。 風船に閉じ込められたレオは空の彼方へ飛ばされてしまった。 基地に戻ったダンはゲンが心配で落ち着かない。 その頃レオの閉じ込められた風船は川岸の木の枝に引っかかっていた。 行方不明になったゲンを探すトオルたち。 しかしテツオは母親に見つかり勉強するために家に連れ帰られる。 木の枝に引っかかった風船を見つける、カオルとトオル。 風船を取ろうとするトオル。 しかし風船は割れてしまった。 川の中に落ちてしまうレオ。 レオは泳いでお碗を船にして川を渡る。 空を飛ぶレオ。 レオはMAC基地に戻り、ダンに報告する。 「お前は2分30秒しか変身できないはずなのに」とダン。 「小さくされた分だけ、長くいられるらしいんです」とレオ。 「それで、お前、大きくはなれないのか」とダン。 「何度もやってみたんですけど、星人の魔法が解けないんです」とレオ。 その頃テツオはプレッシャー星人の不気味な声を聞いていた。 しかし、母親にそれを言っても相手にしてもらえない。 逆に勉強しなさいと説教されるテツオ。 しかし、再び星人が街中に現れた。 攻撃するMAC。 「MACの力ではあの星人は倒せん」とダン。 必死に避難するテツオ親子。 しかしそれを見た星人は2人に迫る。 自ら囮になり、母親を助けようとするテツオ。 しかしテツオは絶体絶命のピンチになる。 「お母さん助けて」とテツオ。 それを見たレオは星人に向かっていった。 星人に捕まったレオ。 しかしレオは蜂のように星人の手を刺し星人を苦しめる。 杖に仕込んだ銃で援護するダン。 しかし、ダンは星人に追い詰められてしまう。 その時、閃光が光って何者かが現れた。 それは伝説の戦士ウルトラマンキング。 ウルトラマンキングとは、レオの星でも光の国でも必ずどこかにいるといわれながら、まだ誰も出会ったことのない、不思議な力を持った伝説の人なのだった。 キングが小槌を振りかざすと、レオは元の大きさに戻る。 杖から炎を出す星人。 しかしレオはキングから与えられたウルトラマントでそれを防ぐ。 ウルトラマンとで星人の動きを封じたレオ。 レオとキングは星人を挟み撃ちにして、光線を浴びせた。 爆発する星人。 素直に助けられたお礼を言うテツオの母親。 「良かったな」。 テツオと肩を組むゲン。 解説(建前) プレッシャー星人の目的は何か。 星人はレオを罠に陥れるなどある程度の知性は持っているようだが、結局最後まで言葉を発していなかった。 このことから、実際はそれほど知性は高くないと推測される。 星人は街を破壊したり、テツオ親子をいたぶったり子どもじみた行動が多い。 結局特に目的を持ったわけではなく、自分の生来持つ特殊能力を使っていたずらを繰り返していただけに過ぎないであろう。 星人が人間を殺すのも、私たちが蟻を殺すのと同じ感覚ではないか。 正直あまり悪意を感じないだけに倒されてしまって気の毒な気もするが、持ってる能力が能力だけに仕方あるまい。 神出鬼没に色々な星で虐待行為を行ってきたのだから、罪は償わねばならないであろう。 レオが長い時間変身できていたのは小型化されたのが原因なのは間違いあるまい。 しかし、それはどういうメカニズムか。 私の仮説ではウルトラマンは普段人間の姿でエネルギーを蓄えている。 そしてそのエネルギーは普段は高度に濃縮されているが、変身すると開放されて体を巨大化するのに使われる。 しかしエネルギーを開放してしまうとそれは急激に消費され、長い時間能力を維持できない。 したがって、普段の戦いでは2分30秒しか持たないのである。 すなわち、今回の場合は体が小さいままのためエネルギーの消費は極小に抑えられた。 もちろん、そのため力は落ちてしまったが、その分長く変身を維持できたのであろう。 レオが風船から川に落ちたとき、すぐ飛ばずに泳いだのはなぜか。 これはレオ自身、面食らってすぐ飛ぶ余裕がなかったのであろう。 加えて、そもそも小さくされて飛ぶ能力が維持できてるかも自信がなかった。 それでとりあえず泳いでお碗に乗り、体勢を立て直したものと考えられる。 落ち着いたレオは自分がまだ空を飛べるのか、試してみた。 その結果空を飛ぶことが出来てダンの下へとたどり着くことが出来たのであろう。 あと、レオが自力で風船を出れなかったのは、あの風船の中では力が封じられていたからと考えられる。 最後にウルトラマンキングは何者かだが、ナレーションで説明されている通り伝説の人としか言いようがないだろう。 現時点では情報が少なすぎるので、素直にレオや光の国とは違う星に住んでいたと解釈するのが妥当である。 ただ、誰も出会ったことがないというのはどういうことか。 今まで引きこもりのような生活を送ってきたとでも言うのか。 やはり常識的に考えて誰とも出会ったことがない人物がいきなり地球に現れてレオを助けるわけないので、これはウルトラマンキングになってからは出会ってないと解釈するのが妥当であろう。 すなわち、仏教で言うところの出家したウルトラマンがウルトラマンキングということになろうか。 王というよりは聖人に近いのが実態であろう。 感想(本音) 遂に来た民話シリーズ。 初期の路線からはあんまりに懸け離れたこの路線は物議を醸すが、もう終わってしまったものは仕方ない(笑)。 ここは童心に戻って忌憚なく作品を見るべきであろう。 てことでまず本話の脚本を見ると、メインライターの田口氏がしっかりその先陣を切っている。 この路線変更に関する田口氏の胸中というものを一度伺ってみたいが、本来子供向けをやりたかった田口氏のことだからそれほど違和感はなかったと推測されよう。 一寸法師的な要素はレオが小さくなって小槌で大きくなる程度のものだから、民話シリーズといっても初期のレオらしさは十分残っている。 本話はやはりプレッシャー星人のインパクト及びウルトラマンキングの登場に尽きるであろう。 プレッシャー星人がいきなり街中を走ってるシュールさはさておき、MACが怪しい等身大の星人を追跡するのはレオでの基本(笑)。 お前らどれだけ防衛網突破許してるんだよというのはともかく、星人の位置を掴んだら的確に追跡する機動力だけは評価に値するであろう。 しかし、いきなりあんな星人が家に押し入ってきたら怖いに決まってる。 レオはこういうホラー要素は他のシリーズより強い。 プレッシャー星人は巨大化して街を破壊するなどやってることは極悪宇宙人なのだが、どこか憎めないキャラ。 魔法で家を宙に浮かせたり被害は相当だろうが、杖に横になってクルクル回ったりとその行動はかなりユーモラスだ。 しかし、レオを風船に閉じ込めて空に飛ばすシーンのバイバイするプレッシャーはかなりツボ。 笑い声は低音で不気味なのだが、その99の岡村隆史に見えないこともない風貌はやはり笑いを誘う。 まあ、初期のツルク星人などが猟奇犯としたら、プレッシャーは完全に愉快犯だろう。 その小型化したレオ。 トオルが風船を取るのに失敗して割ってしまったらとっととゲンを探しにどっか行ってしまったりと、子どもらしい淡白さもなかなかよかった。 風船が割れて漸く脱出するレオ。 川にボチョンと落ちるヒーローというのも情けないが、そこから人形丸出しで泳ぐシーンもなかなかシュール。 なぜかお椀にのって川を進んだりと、無理やり一寸法師の展開も面白かった。 しかしあっさり空を飛ぶレオ。 あの大きさでMACステーションまで行くのは相当な冒険だと思うが、その辺りは超人たる所以だろう。 レオが長時間変身していられた理由も作品中で説明されており、なかなか芸が細かい。 ただ、巨大化した星人と戦うレオの縮尺が明らかにおかしかったのはさすがに気になった。 今回初登場のウルトラマンキング。 レオでは放棄したはずのウルトラファミリー路線の完全な復活である。 ただ、レオが主役だけに光の国から仲間が来てはまずい。 そこでこのような光の国に属していない伝説の戦士を仲間に登場させたのは、急ごしらえにしては上手かったであろう。 加えてキングは最後まで敗戦をせず、万能ぶりを見せ付けた。 個人的にはキングのデザインはなかなかだし、子どもの頃キングのソフビを持っていたこともありお気に入りのキャラである。 今回レオはキングからウルトラマントを貰う。 正直あまり印象に残ってないアイテムだが、これでレオがますます面白くなるのは間違いないであろう(笑)。 と言いたいところだが、やはりブレスレットの二番煎じ感は否めない。 こちらも急造設定であろうが、さすがにいいアイディアは浮かばなかったのだろう。 そもそも特訓で強くなるのがレオのコンセプトなのに、これでますます面白くなるというのは聞き捨てならない。 やはり無理な路線変更は矛盾が出てくるものである。 今回から新しい女性隊員として松木隊員登場。 ゲンを励ますシーンは新たな展開を期待させるが、特に何もなかった。 結局地味な存在のまま、最後の晴れ舞台誕生パーティで出番を終えることになる。 因みに松木隊員を演じた藍とも子さんはレオがデビュー作らしい。 正確には本話ではなく、ウルフ星人の回のちょい役が初出演になるが。 今回テツオの母親はMACは人を助けるのが仕事だと厳しいことを言っている。 ある意味正論ではあろうが、やはりこういう態度はいただけないだろう。 最後はお礼を言っていたが、何故心変わりしたのかは不明。 ストーリー的には逞しく育った息子を見てスポーツクラブでの成長を見たのかもしれないが、実は最後テツオがスポーツクラブに戻ったか否かははっきりしてないので、その辺りは微妙である。 この辺りは田口氏にありがちなのだが、練りこみ不足と言わざるを得ないだろう。 ただこの話のメインはキングであるから、一寸法師をテーマにキングをしっかり出せば合格とも言えなくもない。 話としてはプレッシャーのキャラも立っていたし、特に問題はないだろう。 この民話シリーズはプロデューサーの熊谷氏の趣味がモロに出ているシリーズである。 この辺りは好き嫌いが分かれようが、話がしっかりしてさえいればそれほど気にすることもあるまい。 ただ、本話でもそうだがテーマを民話に固定してしまうと制約が多く、返って脚本家は話を作りにくくなるのではないか。 怪奇シリーズとかならまだ自由度はあるが、民話、しかも皆が知ってる民話だとあまり逸脱することもできず、脚本家は苦労したと思う。 こういうおなじみの話は上手くアレンジできた場合には楽しさは倍増するが、そうでない場合はチグハグな話になりがち。 本話は比較的一寸法師要素は抑えているためそれほど気にならないが、やはり筋立ての強引さは目に付いた。 まあ、それは今に始まったことではないが、例えば執拗に狙われるテツオ親子など不自然さは否めない。 お馴染みの教育ママ批判だとしてもプレッシャーの行動との関連は見られず、彼らが襲われる必然性みたいなものは正直あまり感じられなかった。 ただ、レオが川を渡るシーンでの一寸法師の曲や、キングハンマーで巨大化するときのちょっと不気味な映像など演出的には面白いシーンが多かった。 小型化したレオとダンの会話も面白い。 また、怪獣人プレッシャーのコミカルな演出。 ウルトラマンキングの登場など、イベント要素もてんこ盛りでシリーズの掴みとしては成功したであろう。 民話をテーマにしつつ、イベント要素も盛り込む。 そういう点では本話は成功と言えるのではなかろうか。 シリーズの先陣の役目はしっかり果たしたのは間違いない。 |