ベッドから落ちたいたずら星人


データ

脚本は若槻文三。
監督は深沢清澄。

ストーリー

広大な宇宙の中の一つの星、コロ星。
コロ星の星人達は音楽が大好きで容器でいたずら好きであった。
宇宙空間に漂いながらベッドの上で音楽を聴いて遊ぶコロ星人。
しかし勢い余って星人はベッドから転落してしまった。
その頃地球ではトオルらリトルマック隊がゴミ捨て場のベッドを調査していた。
「まるでおもちゃのベッドみてえ」。
「これはおそらく空から降ってきたんでしょうね」。
そこへカオルがミミズのお化けが出たと言ってやってくる。
現場に行った子どもたちはミミズを掘り出すことにした。
土を掘ると他の星から来たと思しき子どもが現れる。
「カンシャ、カンシャ、カンシャ」と星人。
お腹が空いて倒れた宇宙人の子どもに何が食べたいのか聞くカオルら。
「110番が食べたい」。
宇宙人は食べ物を番号で言うが子供たちはわからない。
適当に食べ物を持ってくる子どもたち。
そのうちの一つのドーナツを110番だと喜んで食べる星人。
星人は持ってきたドーナツを片っ端から食べる。
「もっと、もっと、もっと」。 パン屋の子どもであるリトルマック隊の隊長が持ってきたドーナツを食べ尽くした星人は、さらに東京中のドーナツを食べ尽くした。
その噂を聞いたゲンは本部に連絡する。
ダンに調査するよう命じられるゲン。
満腹になったコロ星人はコロ星は地球より2000年は文明が進んでいると言い、発信尻尾でレンボラーという怪獣を操れると言う。
子どもたちに頼まれレンボラーを呼ぶコロ星人。
しかし怪獣はなかなか現れない。
一方MACは未確認飛行物体がマッハ3のスピードで地球に接近していることを探知する。
子どもが43人孫が60人だと言うコロ星人を嘘つきだと言う子どもたち。
そのとき怪獣が近づいてきた。
「ダイジョウよ」と星人。
そこへゲンがやってきた。
「お前だな、東京中のドーナツを全部食べちまった変な星人というのは」とゲン。
「あんた誰?」。
「MACの隊員だ」とゲン。 逃げようとする子どもたちに「ダイジョウよ」と星人。
「レンボラー」。
「地球面宙返り2回捻り」と声を掛ける星人。
レンボラーは星人の言うとおり地球面宙返り二回捻りを見せる。
喜ぶ子どもたち。
レンボラーにバイバイするように言う星人。
怪獣を自由に操る星人を見たパン屋の息子は羨ましく思い、星人の尻尾を奪おうとそれを引っ張る。
すると尻尾がもげてしまった。
コントロールが効かなくなり暴れだすレンボラー。
しかしそのとき雨が降ってきて雨が嫌いなレンボラーは逃げてしまった。
懸命に尻尾を繋げようとする星人。
しかし尻尾が繋がるには20時間掛かるという。
逆立ちすれば早く尻尾が回復すると星人。
そのときゴミ捨て場にベッドを見つける星人。
これで逃げればいいと星人。
星人は地球人を全て連れて行きたいと言うが、ベッドは150キロまでしか耐えられない。
諦める子どもたち。
そのとき雨が上がり虹が出てきた。
再び出現し虹を食べるレンボラー。
レンボラーは虹を食べると力が100倍になるという。
攻撃するMAC。
レオに変身するゲン。
地球面宙返り二回捻りでレオを攻撃する怪獣。
思わずレンボラーを応援する星人。
「おいお前どっちの味方だ」と突っ込まれる星人
レオはトオルのリクエストによりレンボラーとボクシングを始める。
お互い殴りあうレオとレンボラー。
最後はレオがレンボラーをノックアウトした。
気を失うレンボラー。
星人に対し、尻尾が生えるまで待つというレオ。
気を失ったレンボラーの傍らで一生懸命逆立ちする星人。
翌朝尻尾が30センチまで回復する星人。
「ようし、あと一息だ」とトオル。
しかしレンボラーはとうとう起き出してしまった。
攻撃するMAC。
再びレオに変身するゲン。
星人を励ますトオルたち。
星人の横で一生懸命逆立ちする子どもたち。
するとようやく尻尾が伸びてレンボラーを操れるようになった。
「レンボラー止めろ、謝れ、謝れ」と星人。
レンボラーは星人の言うとおり皆に謝って地球を去った。
皆に別れを告げてベッドに乗り込む星人。
星人は餞別のドーナツを持って飛び立っていった。
「さようなら」。
手を振る子どもたち。
「これでやれやれだ」とゲン。
「あいつおとなしくしてるかなあ」。
「きっと110番食べてる頃よ」。
「いい奴だったよなあ。またおっこって来ねえかなあ」。
音楽が聞こえだすと踊りだす星人
その音楽は何処から聞こえてくるのだろうか。
それはトオルたちが星人に向けて送ったフィンガー5の曲であった。
やれやれ。

解説(建前)

星人はなぜベッドから落ちただけで地球まで来たのか。
普通に考えるとコロ星から地球までは光速でも数十年、数百年以上は掛かるだろう。
これはウルトラ兄弟にも言えるが、ウルトラ世界の宇宙では我々の考えてる物理法則をそのまま適用するのは難しい。
ウルトラの世界ではそもそも物理法則そのものが違うのか、若しくは宇宙の大きさが違って案外狭いのか考え方は色々であるが、いずれにせよ本話ではそれで説明することすらも難しいだろう。

ここはやはり、宇宙空間の中にワームホールのような穴があって、そこを抜けるとワープできると考えておくのがわかりやすいであろう。
以前エースのときにマイナス宇宙というのが出てきたように、あるいはマイナス宇宙を通ることにより距離が大幅に短縮されるのではないか。
最近でもブラックホールは別の内側にある宇宙への通り道という説が話題になったりと宇宙に関してはまだまだわからないことが多い。
コロ星人も外側宇宙の住人でブラックホールから地球に来たと考えることも可能であろう。

ベッドまで地球にあったのはなぜか。
これはやはりコロ星人を追跡したものと思われる。
ベッドには自動追跡装置みたいなものがついているのだろう。
レンボラーは何処から来たか。
これも星人と同じく宇宙の抜け道から来たのであろう。
星人は何故日本語が話せるのか。
これはやはりコロ星の科学が進んでいるためであろう。
頭にあるアンテナのようなもので電波情報を集め、それを解析し、星人の言葉を日本語に変換してるものと思われる。

コロ星人はどうやって東京中のドーナツを食べたのか。
子どもたちにそんな金があるわけはなく、星人が金を持ってるとは考えづらい。
これはやはり星人の特殊能力を使ってドーナツを奪っていったとしか思えない。
MACに苦情が入るほどだから、やはり犯罪行為を行ったのだろう。
因みに子どもたちは刑事責任能力がないことから、基本的に窃盗罪は成立しない。
もちろん虞犯少年として施設に入れられる可能性はあるが、今回の件は星人が勝手にやったことなので少年たちに問題はないであろう。
星人に関しても宇宙人に日本の刑法が適用されることはおそらくないだろうので(ウルトラ世界での法がどうなってるかにもよるが)、立件されることはないであろう。

レンボラーはどうやって虹を食べたのか。
物理は疎いので細かいことはわからないが、虹は光の屈折であり物質的にはせいぜい水やちりくらいしかなさそうである。
これはやはり気分の問題であろう。
レンボラーは虹を食べると力が100倍になるというが、物理的な変化がない以上これは精神的なものと考えざるを得ない。
レンボラーの位置から虹が見えたのかという疑問はあるが、やはり虹そのものを食べるというのは無理なので、虹が出来た周りの空気を食べたとしか解釈は出来ないであろう。

感想(本音)

解釈が難しいシュールな話。
本話の脚本はアトラー星人の回に続いて若槻文三氏が担当している。
若槻氏といえば、「ダークゾーン」や「超兵器R1号」などセブンでの硬派な作品が印象に残ってるが、今回の話はまた違う氏の作風を見ることが出来興味深い。
見ていて楽しい作品に仕上がっているのだが、現在の視点から見ると、ややカオスではあるだろう。
では気になる点を。

今回はリトルMAC隊の面々がいい味を出している。
隊長役のパン屋の息子がダンのように杖を突いていたりとなかなか芸が細かい。
テイストは完全にずっこけ三人組だが、子供向けとしては楽しい仕上がりであろう。
またコロ星人にはプロの声優を当てることにより実は大人だという雰囲気を上手く出していた。
コロ星人の声を当てた高橋和枝氏はサザエさんのカツオの声で有名。
何気に新旧カツオの共演が見られる貴重な回でもある。

レンボラーは何とも愛嬌のある憎めない怪獣。
しかし月面ならぬ地球面宙返り2回捻りはかなり高度な技だ。
それを怪獣が涼しい顔で決めるのだから、かなりシュールな図である(笑)。
しかし星人はレンボラーが暴れると地球がガックガクになると言っていたが、正直そこまで強いか?
虹を食べて能力が100倍になってもレオに負けてたし、ちょっと誇大広告な気がする。
星人は嘘つかないらしいが、ちょっと胡散臭い気も。

レオとレンボラーのボクシング対決はラウンド制になってたが、実際に3分ずつで戦ったということはないであろう。
しかしトオルのリクエストでボクシングする辺り、レオにはかなり余裕が感じられる。
やはりレンボラーはコロ星人が言うほど強い怪獣とは考えづらい。
また素直にボクシングをする辺り、コントロールを失ってもそれほど無茶はしないのだろう。
最後壊した塔を直そうとしたり、なかなかギャグも効いていた。
皆に謝ったり、やっぱりレンボラーは憎めない奴である。
今回MACはダンとゲン以外はほとんど空気。
まあ、ダンですら浮いていたので初期のテイストとはかなりかけ離れていたのも間違いないであろう。

本話のテイストは所謂巷で言うタロウテイスト。
フィンガー5の曲が使われる辺りは、タロウ後期の怪獣ひなまつりを思い出す。
タロウ後期は怪獣とバレーボールをしたり、本話のようなノリが多かった。
もちろん子ども視聴者をターゲットにする以上、このような話自体は悪くないであろう。
ただ、初期の路線からはあまりにもかけ離れてしまうというのは作品の一体性にはマイナスである。
私自身もレオに対してはやはり全体的に掴み所のないイメージを持っていたのも確かである。

レオ中期はSF色の強い話もあり、タロウ路線もあり、民話にホラーにバラエティに富んでいる。
ただ本話もそうであるが、個々の話は面白いが基本的には今まで見たことのある路線が多い。
その点、やはりシリーズ的な閉塞感は否めないだろう。
レオは最終的にはMAC全滅というイベントを経て孤独に戦うヒーローへと帰着する。
色々やり尽くしたウルトラではもはや防衛隊そのものをなくすくらいしかやることはなかったのである。
セブンで名作を数多手がけた若槻氏の手による本話。
その若槻氏によるタロウテイストの本話は、シリーズの変遷を象徴していて興味深い。



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