レオ兄弟対怪獣兄弟


データ

脚本は田口成光。
監督は深沢清澄。

ストーリー

ゲンやトオルたちは百子のために誕生パーティを開いていた。
するとパーティの途中怪獣出現の報が入る。
出動するゲンに不満げな百子。
街は怪獣ガロンにより破壊されマッキーも次々撃墜されていた。
ゲンに怪獣と戦うよう指示を出すダン。
ゲンは避難する市民の中に、自転車でトレーニング中の大村を見つける。
悲鳴らしきものを聞いたとゲンに伝える大村。
すると燃え盛る家の中から助けを求める兄弟の悲鳴が聞こえてきた。
「レオ兄ちゃん助けて」。
その悲鳴はレオの弟アストラの悲鳴とオーバーラップする。
兄のレオとともに弟のアスカを助けるゲン。
中々レオに変身しないゲンに苛立つダン。
本部の報告によるとMACは既に死者3名負傷者16名の被害を出していた。
隊員の総動員を指示するダン。
一方ゲンは負傷した子供を病院まで連れて行く。
弟のアスカは手術室へ。
落ち込む兄のレオを励ますゲン。
ゲンにも炎の中生き別れた弟がいた。
そんな中怪獣の破壊は続く。
病院へ来たダンに叱責されるゲン。
子供たちはMACに任せて変身すべきだったとダン。
「お前以外に奴を倒すことのできるものはいない」とダン。
「もちろん子供の命も大切だ。しかしそのためにより大きな犠牲が生まれている。どんな理由があろうとも戦うべきときは戦わねばならん。私はMACの隊長としてはレオなどには頼りたくない。だが同じ宇宙人としては、お前だけを信頼しているんだ」とダン。
「ゲン、頼むぞ。お前なら必ず倒せる。あの子のことは俺に任せろ。死なせはせん」。
レオに変身するゲン。
怪獣は弱く、レオの敵ではなかった。
怪獣を圧倒するレオ。
隊員たちにレオを援護するよう指示を出すダン。
しかし突如大きな地震が起こり、ガロンとそっくりの怪獣が現れる。
それは大村の予想通りガロンの弟リットルであった。
病院を襲うリットル。
病院を守るレオ。
「止めろレオ、先にガロンを倒すんだ」とダン。
レオは兄弟怪獣のタッグ攻撃になす術なし。
腕を負傷するレオ。
ウルトラ念力で怪獣の動きを封じるダン。
怪獣は退散しレオは助かるがダンはかなりのダメージを受ける。
炎に包まれるアストラを思い出すゲン。
そこにダンが現れる。
「今病院へ行ってきた。アスカくんはあの小さな体で必死に戦っていたよ。お前はあの兄弟の中に自分を見たんだろ。しかしそのために本来のお前を見失ってしまった。お前と弟のアストラの間にどんなことがあったか俺は知らない。だが、いつまでも昔の思い出に捕らわれていてはいけない」。
「僕は弟を助けることができなかったんです」。
「ゲン、お前たち兄弟を引き裂いた宇宙人や怪獣を憎いと思うか。ゲン。見てみろ。この平和な地球が奴らが現れるたびに荒らされていくんだ。そして今度こそ、我々の第二の故郷も終わりを迎えることになるかも知れん。私の力はもう彼らには通用しない。MACは今や全滅寸前だ。しかしMACは全滅を覚悟で愛する地球を守るため戦おうとしている」。
「隊長。僕も地球を愛している気持ちは変わりません」とゲン。
そこへ怪獣出現の報が。
現場へ向かう二人。
兄弟で街を破壊する怪獣。
レオに変身するゲン。
しかし腕を負傷したレオは兄弟怪獣のタッグ攻撃に手も足も出ない。
絶体絶命のレオ。
そのとき空から赤い玉が飛来した。
その中から現れたのはレオの弟アストラだった。
「兄弟対兄弟、これでもうレオは大丈夫ですよ」と大村。
2対2になったレオとアストラは優勢に。
最後は兄弟力を合わせた光線技でガロン、リットルに止めを刺した。
喜ぶ大村、笑顔のダン。
手を取り合って再開を喜ぶレオとアストラ。
アストラは宇宙に帰って行く。
レオの弟アストラはどうして生きていたのか。どこから来たのか。そしてまたどこへ行くのか。
それは誰も知らない。
誕生パーティの続きをするゲンやカオルたち。
そこへ大村も現れる。
バラの花束を手渡す大村。
その花束はダンからのものだった。
レオ君とアスカ君が元気になったとダンからの言伝を伝える大村。
レオ、アスカ兄弟の下にケーキと誕生日カードを送るゲン。

解説(建前)

アストラはどうして生きていたのか。
レオの記憶では炎の中のアストラを助けられなかったのがアストラの最後の姿である。
まず何故レオはそのときアストラを助けられなかったのか。
レオは変身した姿だったので瓦礫の山くらい問題ないようにも思える。

これはおそらくエネルギーの問題であろう。
地球上でレオが2分40秒しか戦えないのはエネルギーの都合である。
L77星においてもレオが常に戦えるほどのエネルギーは得られなかった。
星の壊滅状況からもレオはマグマ星人と一度戦って敗れた可能性が高い。
残されたエネルギーではアストラを助けることすらできず、最後は星人の攻撃を受け星を脱出せざるを得なかったのであろう。

では、何故アストラは自らの力で炎から脱出できなかったのか。
これもおそらく一度星人たちと戦ったからであろう。
アストラはレオに比べても瀕死のダメージを負ってしまった。
その状態で瓦礫の下敷きになったため、もはや自ら脱出する力は残ってなかったのであろう。
その後星人に囚われてレオと離れ離れになってしまった。

ではその後アストラはどうやって助かったのか。
これはやはりウルトラマンキングに助けられたと解釈するのが素直であろう(素直なのか?)。
キングに助けられたアストラはしばらく治療に専念し、さらにキングの特訓を受けてパワーアップした。
元の弱い状態では返ってレオの足手まといになってしまう。
そうやって万全になったアストラは地球の近くでレオの様子を見守っていたのであろう。
アストラはレオのピンチのときは疾風のようにやってくる。
おそらく地球の近くの星でレオの様子を見守っているのだと思われる。

感想(本音)

遂に登場レオの弟アストラ。
私自身アストラの存在は知っていたが映像で見た記憶はあまりなく、大人になってレオを見返してから意外に強いのに驚かされた。
イメージ的には脚に鎖を巻かれてたりババルウ星人に捕まったりどちらかというと不甲斐ないイメージであったが、実際のアストラはレオのピンチをしっかり助ける頼もしい仕事人。
レオに強力な助っ人ができたのは心強い限りである。
ただ、それはそれで問題でもある。
それは後述することにして、まず全体を概観しよう。

本話は百子の誕生日パーティから幕が開く。
何か誕生日パーティというと嫌な記憶が蘇るがそれはまだ先なので気にしないことにして(泣)、このパーティの発案者がゲンというのが興味深い。
基本奥手のゲンにしてはなかなか積極的な計らい。
百子もまんざらでもなく傍から見れば既に立派なカップルである。
ただパーティはお約束通り怪獣出現の報で中断。
拗ねる百子がかわいいのだが、怪獣が出たんだからそんな悠長なこと言ってる場合でないと思うが(笑)。

今回は大村さんの最後の出演ということだが、相変わらずとぼけたいい味を出していた。
しかし大村さんが怪獣の名前を聞いたらゲンが即答で「ガロンです」は参る(笑)。
おそらく怪獣が出現するとMACで命名するのだろうが、一々そんなこと気にする大村は視聴者の子供たちにとって親切な存在なのは間違いないであろう。
あと怪獣が兄弟だとか、アストラがレオの弟だとか説明的なセリフが目立った。
序盤は物語に結構絡んだものだが中盤では完全にコメディリリーフになっており、降板も已む無しであろう。
正直路線変更する中盤こそ必要なキャラな気もするが、売れっ子の藤木さんをそこまで拘束するのはギャラ的にも厳しいであろう。

今回MACは死者3名負傷者16名と今までで最悪の被害を出している。
アトラー星人のときの方が悲惨だった気もするが、そうではないということはアトラーの時は意外と死者が少なかったのか。
負傷者や戦闘機の被害含めて最悪だったのかもしれないが、アトラー星人の項で全滅と書いたのは誤りだったかもしれない。
ここで全滅については撤回することにしておく。

しかしダンは隊員たちの総動員を指示したりMAC玉砕を示唆したり、地球警備隊としては当たり前かもしれないがウルトラではこういうやや右翼的な傾向も目立つ。
当時は宇宙戦艦ヤマトという特攻そのものなアニメもあったが、初期ウルトラを支えた佐々木守や後期ウルトラを支えた山際永三が左翼的な人だっただけにこういう右翼的なシーンは興味深い。
ウルトラの中で実は右と左が相克しあっていたのではないか。
お互い意識してたとは思えないが、各人それぞれ思想はあるのでその辺りに思いを馳せるのもまた一興であろう。

それはともかく今回のダンは初期の鬼教官というよりは厳しい中にも優しさのある懐の深い人物として描かれている。
初期のダンならゲンのアストラへの思いを甘いと罵って特訓を課したであろう。
子供を助けてレオに変身しなかった点も単に叱責するだけでなくMACに任せるべきであったと妥当な提案をしているし、ゲンの行動が明らかに被害を拡大していたことからもあるべき上司として理想の姿といえる。
これもおそらく路線変更の賜物であろう。

本話はアストラ登場というイベント編なのだが、百子、ダン、大村といった主要キャラやレオ、アスカ兄弟といったゲストキャラも活きており、なかなかバランスのいい話として纏まっている。
レオ兄弟と子供の兄弟を重ね合わせるというベタな点は気にならないことはないが、子供向けとしては特に問題ないであろう。
最後も綺麗に終わっており、安心して見てられる話である。
ただレオ全体のストーリーからすると、ここからの路線変更はやや極端に過ぎた嫌いがある。
レオが急にアストラやキングといった助っ人を得るのはレオで否定したはずのファミリー路線の復活であるし、初期の孤独な戦いというコンセプトからすると問題が多いのは明らかであろう。
もちろん個々の話はバラエティにも富み面白いものも多いのだが、殊全体の構成となると難がある。

路線を変えるにしてももう少し緩やかにできなかったのか。
まあ、そもそも初期の路線が苛烈すぎたのが問題なのだが、アストラの活躍に複雑な思いがしたのもまた事実である。
やはりもう少し設定を緩くして、最初からアストラの登場も可能な設定にしておくべきであった。
話としては文句なしなのだがこれをもう少し早い段階でやっていれば、あるいはウルトラの打ち切りはなかったかもしれない。


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