北の果てに女神を見た!


データ

脚本は田口成光。
監督は外山徹。

ストーリー

聖火台の下に佇むニケの女神。
その頃第4宇宙ステーションから正体不明の宇宙船が近づいていると連絡を受けたMACは緊急配備に付いていた。
北山隊員とともにマッキー2号で北海道に飛ぶゲン。
北山はオーロラ国際スキー大会で優勝するほどのスキーの腕前だった。
宇宙船到着の報を受け警戒する2人。
一方ニケの女神も地上で宇宙船到着を待っていた。
そこに現れるノースサタン星人。
星人は宇宙船を破壊し、ニケの女神を追いかける。
人が襲われてるのを発見した2人は地上に下りて女神救出に急ぐ。
襲われてるのがニケの女神と気付いた北山。
北山は女神を救出するも、星人の含み針攻撃を受け脚を負傷してしまう。
邪魔が入り姿を消す星人。
ニケの女神と北山は知り合いであった。
女神の正体が宇宙人であると見抜くゲン。
しかし負傷の北山がいたため女神に逃げられてしまう。
そのことをダンに咎められるゲン。
ノースサタンが女神を狙っていることから更なる被害が出るかもしれないとダン。
ゲンは次の被害が出る前に女神を探すよう指示される。
その術が見つからなくて困るゲン。
北山の見舞いに行ったゲンは北山から、状態によっては手術で右足を切断しなくてはならないと聞く
五体満足のうちに頼みを聞いてくれと北山。
北山はニケの女神に会いたいとゲンに頼む。
北山はスキー大会への船上、星人に襲われる女神を助けていた。
スキーのターンのテクニックを生かし星人の攻撃を交わした北山は星人を追い返すことに成功する。
お礼に首飾りを受け取る北山。
その首飾りには勝利の女神像が彫られており、それを持っている者は必ず勝利の栄光に浴するという。
北山の名前を知っていたその女性は自らをニケの女神と名乗って姿を消す。
女神の予言通りスキー大会に優勝した北山。
北山は「彼女がここに来てくれれば、この手術が成功するに違いないと信じているんだ」とゲンに言う。
聖火台の麓に女神を探しに行くゲン。
それを見て逃げる女神。
「私のことを宇宙人だと知ってるあなたはサタンの仲間ね」と女神。
「違う、僕はウルトラマンレオだ」とゲン。
ゲンは北山の伝言を女神に伝える。
北山さんは二度とスキーを履けなくなるかもしれないとゲン。
手術の前に北山隊員に会ってくれるよう頼むゲン。
「私だって2度も命を救ってくれた北山さんにお礼がしたい。でも私にはそれが出来ない。私は人間じゃないのよ。地球ではアルファ星に住む私たちのことをニケの女神と呼んでいるわ。私たちの星では4年ごとに誰かが地球を訪れ人類の幸福を祝福することになっていたの。それを悪いノースサタン星人に邪魔されて」と女神。
星人に宇宙船を壊されて星に帰ることが出来なくなったと女神。
「だったら北山さんに会ってやってくれ。北山さんは君に会えたら手術が成功すると信じてるんだ」とゲン。
「私にはとてもそんな力はないわ」と女神。
「君は勝利の女神だ。今の北山さんに必要なのは君なんだ。今一番大切なことは君と北山さんが会うことなんだ」とゲン。
ゲンの説得により北山隊員に会う女神。
「ありがとう」。
女神に礼を言う北山。
しかしそこへ星人が現れた。
「待ってくれ、行かないでくれ」と北山。
「私はアルファ星から来た宇宙人なんです。ノースサタンは私を狙ってるんです」と女神。
「そんなことは問題じゃない。僕には君が必要なんだ」と北山。
北山の手を振り解き、自らを盾にして病院を守る女神。
女神を北山に会わせたことをダンに叱責されるゲン。
「僕には会いたがってた北山さんと彼女の気持ちを無視することは出来ません」とゲン。
止めるダンを振りほどいてレオに変身するゲン
しかしレオは星人の含み針攻撃に屈してしまう。
姿を消す星人。
ダンに命じられ、星人の含み針攻撃を交わすためのターンを練習をするゲン。
自らの命と引き換えに地球を守ろうと決意する女神。
「私さえいなければサタンは帰るんです」。
「命を無駄にするもんじゃない。我々に任せるんだ」とダン。
「どうせ私は故郷の星に帰ることができないんです。同じことです」と女神。
しかしダンはそれを止める。
特訓を終えレオに変身するゲン。
星人の含み針攻撃を交わすレオ。
最後はパンチで星人の腹部を貫通。
星人は爆破して果てた。
レオは女神を星に連れ帰るため宇宙へ飛び立った。
無事手術を終えた北山は火の消えた聖火台を眩しげに見上げる。
一緒に聖火台を見上げるゲン。

解説(建前)

ニケの女神は何者か。
本人の口から説明されてはいるが、正直何のためにわざわざ地球に来ているかわからない。
穿った見方をすれば、将来の地球侵略に備えて偵察に来てるとも考えられるが、さすがにそれは考えすぎであろう。
ここは素直に女神の言うことに従うことにする。

ただ、何故人類の幸福を祝福するのかはちょっとわからない。
ここからは推測だが、アルファ星と地球人とは元々祖先が一緒なのではないか。
ウルトラの世界では人間の姿をした宇宙人というのは珍しいものではない。
そしてその場合宇宙人は大抵人間の味方である。
ウルトラ一族も地球人の姿に対して特に違和感を持っていないようであるし、ウルトラの世界では宇宙レベルの進化論とも言えるものが存在してるのではないか。
だとすると、地球人の起源が他所の星にあるとしても不思議はないであろう。

ノースサタンは何故ニケの女神を狙うのか。
ノースサタンは明確に女神を狙っており、レオに関しては最初からあまり眼中にない。
したがってレオを狙ってやって来たツルク星人辺りとは目的を異にしているであろう。
またノースサタンは1匹ではなく組織的に女神を狙っている。

ここからは推測になるが、この背景にはアルファ星の問題があるように思う。
すなわちアルファ星を狙う勢力がありその勢力がノースサタンを雇った。
あるいはノースサタン自身がその勢力かもしれないが、いずれにせよアルファ星には何らかの資源若しくは利権があるのであろう。
その勢力がまず手始めに地球に来てる女神及びその迎えの宇宙船を狙ったのではないか。
この後アルファ星が攻撃を受けるかもしれないが、それはウルトラ一族により防がれたと脳内補完しておくことにしよう。

北山が大会に優勝できたのは女神の力なのか。
ただ、女神が地球のスキー大会の結果に介入するとは考え難い。
したがって首飾りには特別な力はないと考えるのが妥当であろう。
結局あの首飾りには、精神的作用により北山が本来の力を出しやすくなるといった程度の力しかないものと思われる。

感想(本音)

北海道シリーズの第3弾。
ストーリー的には特筆すべきところはないが、何と言ってもニケの女神の美しさは印象に深い。
ニケの女神を演じたのは麻里とも恵ことジャズシンガーの阿川泰子。
阿川氏はよくわからないがメカゴジラの逆襲など特撮モノの出演が多く、特撮ファンにはお馴染の存在。
その美貌はまさにニケの女神の名に相応しく、ウルトラのゲスト女優でも上位の存在であろう。
何か大絶賛になってしまったが(笑)、ウルトラシリーズは中田喜子や坂口良子など美人女優が結構ゲスト出演してたりするので、そういう楽しみ方もあると思う(笑)。

まあ阿川氏についてはそれくらいにして内容を見ると、本話は北山隊員以外の隊員は出ておらず、相変わらずダンとゲンだけで戦っている。
これはロケの関係だろうが、やや不自然という批判は免れないであろう。
また前話に引き続き、ゲン、ダン、女神と宇宙人同士の交流が描かれてる。
まあ本話は女神と北山隊員の交流が中心ではあるが、この辺りは今までのシリーズにない特徴であろう。
これはレギュラー宇宙人が2人いるというレオならではの展開だと思う。
初期の宇宙人は無差別殺人者ばかりであったが中期は友好的な宇宙人も多く、この辺りも路線変更の一環であろう。

路線変更といえば、本話は特訓のラスト回でもある。
特訓に関してはレオの骨子ともいえる設定だっただけにその転換は重要であろう。
ただこの時期既に特訓については重要性が低下しておりその廃止は既定路線であった。
この辺りどのような議論が行われたかは定かではないが、特に不協和音を聞かないことから比較的スムーズに移行できたのであろう。
本話においても特訓はおまけ程度の扱いであり、物語の照準は確実にドラマの方へ合わされている。

今回もあっさりMACは宇宙船の侵入を許している。
この辺り宇宙へ基地を作ったメリットはほとんどないであろう。
MACの基地を宇宙にした理由はよくわからないが、今まで陸・海が多かったことから今度は空=宇宙にしたのではないか。
まさか全滅させるのに都合がいいからという理由ではなかろうが、もし仮にそうだとしたらスタッフの用意周到さには頭が下がる(笑)。
いずれにせよ、敵が来襲するたびに大気圏を突破しなければならない隊員たちの苦労には同情せざるを得ない。

ニケの女神と北山との関係は軽い恋愛関係になっている。
レオはあらすじを書いていてもセリフが多く、タロウに比べてドラマに重きを置いているのがよくわかる。
ただ何でもセリフで説明しなければならないので、テンポという面ではマイナスであろう。
その辺りは矢継ぎ早な場面転換で補ってはいるが、後半の敗北、特訓、勝利の流れがやや慌しいのは物語のバランスからは問題がある。
またセリフには限界があるため星人の行動原理がよくわからなくなるのもレオの弱点であろう。
まあ、この辺りは物語を宇宙レベルに設定してる面から仕方ないとはいえるのだが。

今回もダンはゲンの行動を叱責していたが、人命を最優先するというダンの姿勢は一貫しており物語の整合性からは問題はない。
ただ、相変わらずのダンの非情さはセブンファンには違和感があろう。
セブンの頃のダンはペガッサ船団の爆破に反対したり、命がけでアマギを助けたりどちらかと言うと情にもろいタイプであった。
立場が人を変えるとは言うが、特に子どもからはダンの変貌は怖くすらあったと思う。
もちろん大人の立場から見れば隊長としては妥当な判断が多いのだが、一見するとそうは見えないのはやはりダンの威圧的な態度に原因があろう。
ジープの特訓に象徴されるようにダンをあまりにもスパルタなキャラにしてしまったのは演出とはいえ問題が多かったように思う。

今回は前述したようにニケの女神と北山のロマンスらしきものが軸になっている。
この辺りはやや大人向けな路線といえるであろう。
ただそのテーマは正直未消化のまま話は決着してしまっている。
これはレオがヒーロー物である以上仕方ないのではあるが、ドラマ的にはやや物足りなさが残るであろう。
ラストシーンの演出で匂わせてはいるが、解釈によっては北山が自分にとって都合のいい存在として女神を必要としてる風にも見え、もう一歩踏み込みが欲しかった。
ウルトラで恋愛を描くのは難しいのだが、本話については特訓をもう少し削ってでもドラマを完結させて欲しかったというのはある。



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