データ 脚本は阿井文瓶。 監督は山本正孝。 ストーリー 上空をパトロールするゲンと白土。 「今日も暑い日になりそうだ」と白土。 しかしその日、太陽は異常を起こし気温も上がらなかった。 東京地方を襲った異常気象を調査するMAC。 調査の結果、空にはフィルター状のものがありそれが太陽を遮断しているという。 マッキーで出撃するMAC。 上空に吸血こうもりの大群を発見したMACは、マッキーで吸血こうもりの大群を撃ち落した。 光を取り戻す太陽。 その頃、百子、トオル、カオルは草むらから怪しい呻き声を聞き、そこに倒れている女性を発見する。 悪い人に追われてるというその女性を家に連れて帰る百子。 女性の看病をする百子にトオルは、女性は吸血こうもりの生き残りではないかと言う。 しかし取り合わない百子。 百子は徹夜でその女性を看病する。 翌朝、女性に食事の用意をして出かける百子。 百子が出かけると女性は起きだし、百子の作った食事を犬に与えてしまう。 さらにトオルの飼ってるカナリアに息を吹きかけ殺す女性。 スポーツセンターではトオルがゲンに女性のことを打ち明けようとするが、それを百子に止められてしまう。 MACが調べに来ると、女性が怯えてしまうと百子。 その夜、家で食事をする百子たち。 しかし女性は昼間ご飯を食べすぎたといい晩御飯を食べようとしない。 ペットのカナリアが死んでしまい落ち込むトオル。 その夜ベッドでうなされるトオルの下へ女性がやってきて、トオルの気を失わせた。 この夜から町に吸血鬼が現れる。 吸血鬼に襲われたものは吸血鬼になるという噂が町に広がり、吸血鬼と噂される人が襲撃される事件が頻発する。 夜、家に帰ってくる百子。 しかしそこには吸血鬼に血を吸われたトオルとカオル、そして正体を現した女性が待ち受けていた。 吸血鬼に操られた2人に捕まれ血を吸われる百子。 吸血鬼の噂を聞き付近をパトロールしていたゲンは、百子のアパートに様子を窺いに行く。 ちゃんと鍵を掛けて寝る様にと言うゲン。 しかし3人はいきなりゲンに襲い掛かった。 3人を投げ飛ばすゲン。 さらに吸血鬼の女性を追うが、女性は巨大な怪獣に変身する。 羽を羽ばたかせ強風を起こすバットン。 ゲンはそれを見てレオに変身する。 空中からレオを攻撃するバットン。 さらに強風を起こしてレオを苦しめる。 エネルギー光球を投げつけるレオ。 しかしバットンの出す光線にレオは苦戦。 さらに鋭利な牙がレオを襲う。 牙をへし折りそれを投げつけるレオ。 しかしレオはそのまま怪獣を倒すわけに行かなかった。 吸血鬼にされた人たちのために血を取らねばならなかったのだ。 巨大な注射器を出して怪獣の血を抜くレオ。 最後はレオキックで止めを刺す。 レオが抜いた血から血清が作られ、吸血鬼にされた人々は元に戻ることが出来た。 4人で家路につくゲンたち。 しかしまた草むらから怪しい物音がし、百子は見つけた子犬を家に連れ帰ると言う。 「こんなかわいい子犬が悪いことする怪獣になるわけないわよね」と百子。 懲りない百子に呆れるトオル。 笑顔で見守るゲン。 解説(建前) バットンは何者か。 残った1匹の行動から推測すると、やはり血を求めて集団で地球に飛来した可能性が高い。 ただそれでは女性に化けた個体が日本語を話せたことの説明が難しい。 これはやはり女性はバットンの先遣隊の一人で、地球に良質の血液が豊富であることから仲間を呼び寄せたと解釈するのが妥当であろう。 それでは何故バットンはすぐに巨大化してMACと戦わなかったのか。 集団で巨大化すればMACはおろか、レオにすら勝てたと思われるだけに疑問が残る。 これはやはりバットンが巨大化するにはかなりの血液が必要なのではないか。 宇宙から飛来した時点でエネルギーをかなり消耗しており、巨大化の余裕がなかったものと考えられる。 結局追い詰められて巨大化したが、巨大化はあくまで最後の手段的なものなのであろう。 感想(本音) 前回に続いて吸血鬼の登場。 今回も百子さんが襲われるなど、かなり怪しい雰囲気の作品に仕上がっている。 純粋に子ども向けに作ったのであろうが、今大人になって見返すと妙に艶かしい。 もちろん狙ったわけではないであろうが、何となく得した気分になるのも偽らざる本音だ(なんだそりゃ)。 今回はテーマらしきものは存在しない。 純粋に娯楽を追及した作品と解して差し支えないであろう。 無理にこじつければ、人は無闇に疑うものではなく信じることが大事だということになりそうだが、結果がこれでは教訓にならない。 やはり怪奇シリーズは怪奇物として見るのが正解であろう。 今回は珍しくMACが活躍してる。 まああの程度で活躍と言えるなんて、どんだけハードルが低いねんというのはさておき、原因をしっかり調査して対処する姿はちょっとMACらしくないところがあった。 ダンもほとんど話に絡まないし、この怪奇シリーズを機に明確に路線変更しようという意志が感じられる。 それは白土隊員とのコンビにも表れてる。 初期のMAC隊員はどちらかというとゲンのストレスになる存在であった。 しかし今回の白土隊員との会話は非常にリラックスしたものになっている。 これは従来のシリーズそのものであり、隊員の交代とともに初期の殺伐さはかなり払拭されている。 相変わらずやられ役ではあるが、MACの位置づけは確実に変わりつつあるといえるであろう。 今回は何と言っても百子さん中心のエピソードである。 前回が猛の恋人で今回が百子さんではややネタが被ってしまうが、百子さんはバットンそのものではなく、一応前回との差別化は出来ているだろう。 ウルフ星人の場合は血を吸われたら基本的に死んでいたので、その辺りもバットンとは違う。 しかし百子はあの状況でよく女性を信じたな。 トオルみたいに怪しく思うのが普通の感性だと思うが。 この辺りは話の都合上、かなり百子のキャラが極端になっていたと思う。 最後子犬を見つけるのは、一応子ども向けだけに教育的な配慮であろう(あのまま終わったら信じる者は馬鹿を見るになってしまうし)。 バットンを演じた女性のセリフが片言なのはやはり演出か? この女優さんはあまり知らないけど、今回の役が後世までずっと残ってDVDになるなんて想像しなかっただろうな。 まあそれは子役なんかにも言えるが、子ども向け番組とはいえしっかり怪獣を熱演している女優魂には頭が下がる思いである(?)。 アップなんかはなかなか不気味で、子どもが見たらやっぱり怖いであろう。 今回は最後に皆が血清で救われ目出度し目出度しとなっている。 この辺り、アトラー星人の回の苛烈さとは比較にならない。 また百子、トオル、カオルがゲンに襲い掛かるシーンなどはホラーというよりむしろコメディのノリである。 この辺り、今回の話があまり怪奇を志向していないのが感じられるだろう。 最後の注射器といい爽やかなラストといい、怪奇シリーズというにはあまり怪奇ではない。 ただその中でも恐怖を感じさせるシーンはあった。 それは町の住民が悪魔狩りよろしく、吸血鬼の疑いのある人を襲撃するシーンである。 デビルマンにも通ずるその人間不信は、全体的にライトなこの話の中でも 異彩を放っていた。 単にエピソードを繋ぐだけのシーンかもしれないが、意図的にこのシーンを入れてきたとするなら、それはやはり人間の善意と悪意を対比したかったからであろう。 人を信じる百子と信じない町の人々。 テーマとしては表に出ていないが特にフォローもなかったことから考えると、案外この話は「人は信じちゃいけないよ」というのが裏テーマなのかもしれない。 |