真夜中に消えた女


データ

脚本は若槻文三。
監督は外山徹。

ストーリー

幽霊が出るという噂のあるビニルハウスに忍び込むトオルと正夫。
2人はそこで怪しい声を聞く。
女の人がすすり泣くような不気味な声。
その声を録音する2人。
その頃カオルも噂を聞いて近くに来ていた。
落ちた植木鉢に驚く2人。
トオルはビニルハウスを飛び出すが、そこにいたカオルと鉢合わせ腰を抜かす。
その話を聞いて大笑いするMAC隊員たち。
パトロールに出かけたゲンは下校中のトオルに声を掛ける。
しかしトオルは「大人は嫌いだ。自分たちで言いふらしたくせに僕の話を聞いて笑うんだ」と怒りをぶつける。
その夜隣の青年に付いてきてもらい、再びビニルハウスに向かう2人。
しかし怖くなった2人は隣の青年を残して帰ってしまう。
そのまま1人でビニルハウスに入る青年。
しかし青年は何者かに襲われ、蝋人形にされてしまう。
連絡を受けて駆けつけトオルから事情を聞くゲン。
さらにその夜、別の女性が襲われ蝋人形と化す事件が発生した。
「とうとう地球に入り込んだな。ゲン、気をつけろ。恐ろしい奴が地球に来たんだ。アトラー星人だ」。
「アトラー星人のために全滅した惑星を俺は見た。その惑星の生物は全て蝋細工のようになって死んでいた。それだけじゃない。奴らは前に一度地球に近づいたことがある。地球防衛隊の隊員たちが奴らを追跡したんだが、全員蝋人形のような死体になって地球に帰ってきた」。
「今までの技ではアトラー星人を倒すことはできん。それどころかレオが蝋人形のようになって死ぬようなことがあるかもしれん」とダン。
ダンの言葉を聞いて思い悩むゲン。
「頼むぞ。決してお前一人では死なせない」とダン。
トオルが録音した音声を聞き、アトラー星人に間違いないと断定するダン。
例の声はアトラー星人の呼吸をする音だという。
レーダーに怪しい反応を確認し、現場へ向かうダン。
そこは百子が友達の留守を預かっていたマンションだった。
不気味な声に目を覚ます百子。
百子はすぐにゲンに連絡する。
その時外から叫び声が聞こえてきた。
「このマンションで何か大変なことが起こっているわ」と百子。
ゲンは鍵をかけて決して声を出さないようにと指示を出す。
次々襲われる住民たち。
たまらず部屋を出ようとする百子に出くわすゲン。
ゲンはマンションの状況をダンに連絡する。
空からパトロールするダン。 それを見たアトラー星人は巨大化して街を襲う。
マッキーで攻撃するダン。
MACは戦闘機の編隊で攻撃するが、星人に次々に撃ち落されてしまう。
さらにダンの乗ったマッキーも墜落。
パラシュートで脱出したダンの下へやってきたゲンはダンの制止も聞かずレオに変身した。
ダンはウルトラ念力でアトラー星人の光を封じる。
しかしダンは限界を超え倒れてしまった。
立直ったアトラー星人は相手を蝋に変える光を放射。
辛くも交わすレオだが星人の攻撃を受けてしまう。
足に光を浴び、足を蝋にされてしまうレオ。
そのまま体当たりを受けたレオは倒れてしまう。
ダンの声で目を覚ますゲン。
「街の人は皆殺されたんですか」とゲン。
答えられないダン。
ダンは本部に連絡し状況を聞く。
星人は東京BX218地区で姿を消したと白川。
そこへトオルと正夫が通りかかる。
正夫は家族を全員殺されていた。
基地に戻った2人。
「畜生。俺は敗れたんだ」とゲン。
「戦いはまだ終わってない」とダン。
「僕にはアトラー星人を倒す力も技もない」とゲン。
「俺たちがやらなきゃ誰がやるんだ」と叱責するダン。
ダンとゲンは再びマッキーで出撃する。
ロケット弾を星人に浴びせる二人。
「奴の弱点は胸だ、胸の花を狙え」とダン。
マッキーを分離させて戦う2人。
ゲンはマッキーを回転させ星人に突撃。
そのまま変身したレオは、弱点の胸を攻撃されダメージを受けた星人に即座に光球を浴びせ星人を撃破した。
無事を喜び合うダンとゲン。

解説(建前)

アトラー星人は何をしに地球に来たのか。
アトラー星人はかつて地球に近づいたことがあったとのことであるが、そのときは防衛隊員だけを蝋人形に変えて地球に直接危害を加えなかった。
このときはおそらく、防衛隊員に追われた影響で地球から進路が逸れたのであろう。
またアトラー星人は人間体の時も人と意思疎通を図る素振りも見せず、巨大化後も本能のまま破壊と殺戮を繰り返してるだけに見えた。
おそらくアトラー星人は知能自体はあまり高くないか、若しくはほとんど持ってないのであろう。
以上を総合して考えると、やはり星人は単に地球に漂着しただけと解釈するのが妥当である。
トオルに対しては危害を加えず青年に対して危害を加えたのも、青年に対して防御本能が働き、星人の中の破壊本能が発動したからとも考えられよう。

感想(本音)

今回から特訓編は一応終了して怪奇シリーズに突入する。
当時はエクソシストに始まるホラーブームのただなかであり、子どもにもこういうのは受けていたのだろう。
私自身は子供の頃にこの話を視聴したことはないが、今大人になって見ても少々怖い。
当時のリアル世代の子どもたちはどのように感じたのだろうか。
レオは初期の猟奇殺人といい、暗く陰惨な話が多い。
これは当時の世相を反映したためであろうか。
それとも円谷の…。

今回の脚本家はレオ初登場の若槻文三氏。
セブンまでは中心的な作家であり「ダークゾーン」などセブンを代表する作品を書いている、SF感覚豊かな脚本家である。
その2期ウルトラ第1作がホラーというのも興味深いが、「超兵器R1号」から「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団」まで幅広い話を手がける氏にとっては造作もないことであろう。
若槻氏はタロウの石堂氏的ポジションで田口・阿井の両氏を補佐しており、レオにおいてかなり重要な作家であるのは間違いあるまい。

今回はやはりアトラー星人の恐ろしさが中心であった。
相手を蝋にしてしまうというのは、目の合った者を石にしてしまうメドゥーサを意識したものか。
その蝋化光線はレオの足まで蝋にしてしまうなど、かなり強力である。
ただしレオは変身を解いたら足はもう治っていた。
ウルトラ一族は変身時のダメージが人間体に戻ったとき、残っていたり残っていなかったり一貫しないところがある。
今回ダメージが残っていなかったのは蝋化が表面的なものだったから、ということであろうか。

今回気になるのは他のMAC隊員の生死。
明確に死の描写がなかったことから好意的に生存と解釈することも可能であるが、隊長の無事を知った白川隊員の表情からはやはり全滅の可能性が高いであろう。
MACの再出撃も2人だけであったし、次回から白川隊員以外全く登場しないことからも、制作側の意図としては他の隊員は全滅ということではなかろうか。
まあ断定は出来ないが、状況証拠からは全滅と解釈するのが妥当である。
隊員たちの見せ場がトオルを馬鹿にして大笑いする所だけというのも、何かを暗示しているのかもしれない。

相変わらずアトラー星人のことに異常に詳しいダン。
アトラー星人の呼吸音なんてどうやって知ったんだよ。
それに胸の花が弱点って知ってるなら最初から言ってやれよ。
ただ今回は今までと違ってゲンの特訓はなかった。
特訓なしで特攻作戦を決行できたからいいのかもしれないが、この展開は今までの話を見慣れてるとやや違和感がある。
ただ今までの特訓自体、何でそういうことになるんだ的な要素も多分にあったので、これはこれでありであろう。
まあ一番大きいのは脚本家が変わったということなのであるが。

百子のマンションが襲われるシーンは完全にホラー。
暗闇の中マンションの住民の悲鳴が響き渡るシーンは百子ならずとも恐怖であろう。
しかしこういう時に友達の留守番というのもタイミングが悪い。
まあ、こういう役所はヒロインの特権でもあるので、演ずる人的には美味しいのであるが。
ゲンを頼って電話をしたり、ゲンと会ってホッとしたり、見ている者のツボもしっかり押えたシーンであった。

今回は街の人が次々と蝋化させられたり、街の住民がほぼ全滅したり、かなり過激な内容だった。
描写的にはツルク星人編などには及ばないが、被害という面では第1,2話に次ぐくらいのものだったであろう。
隣のお兄さんが死んだり、正夫の家族が皆殺しされたり、レオらしい容赦なさはここでも健在であった。

本話は新加入の脚本家による路線転換のエピソードであり、レオにおいてかなり重要なエピソードである。
すなわち従来なら特訓・リベンジでハッピーエンドというカタルシスが志向されていたが、今回のリベンジはかなり呆気なかった。
この辺り今までの路線との決別が明確にされている。
ただ特訓自体はこれ以降のエピソードにも出てくる。
また本話においても特訓を匂わせるような展開も見られた。
以上を鑑みると、物理的な特訓こそ必要でなくなったが、ダンとゲンの師弟関係が存在する限り、精神的な特訓は終わらないともいえるであろう。

してみると、精神的な特訓もほとんどなくなっていった中盤の展開からはダンの退場は必然だったともいえる。
そもそもダンは、帰りマンの坂田と加藤の役割を併せ持ったキャラであった。
坂田がその役割を終えて存在感が低下したように、ダンもゲンの成長につれ徐々に役割を失っていく。
この辺り、主人公の成長を描くシリーズとしては避けては通れない展開であろう。
そして師匠が去った後に残された、自らが師となり弟分を鍛える役割。
レオは帰りマンで挫折したスポコン要素を全面に押し出した作品である。
師匠の死、恋人の死などその辿る道筋が意外に似ているのも、あるいはその設定の賜物かもしれない。



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