データ 脚本は田口成光。 監督は外山徹。 ストーリー ある夜、東京の街にフリップ星人が現れた。 星人はくらやみ殺法を使い、ビルを破壊する。 しかしMACの出動を知るや、星人は姿を消した。 稽古着を洗う百子に話しかけるゲン。 「いいよ、そんな。自分の稽古着くらい自分で洗うしさ」。 「あ、おゝとりさんのも洗いましょうか」と百子。 そこへ来たトオルとカオル。 カオルは百子をアイスを食べに行こうと誘うが、百子は洗濯が残ってるからと言ってその場に残る。 喫茶店でアイスを食べる3人。 カオルは知らない男の人がずっとこっちを見てるとゲンに言う。 つまずいて倒れそうになるウェイトレスを抱きとめる青年。 その青年が気になるゲン。 するとそこに百子が入ってきた。 百子はその青年と一緒に店を出て行く。 公園で連絡を受けたゲンは星人に襲われる青年と百子を発見。 助けようとするが分身する星人に目をくらまされ、逆に伸されてしまう。 さらに青年に襲い掛かる星人。 星人は分身して青年の目をくらまそうとするが、青年は本体を見抜き星人を撃退した。 それを見ていたダン。 基地に帰ったゲンは、ダンから自分が津山という青年に助けられたと聞かされる。 「彼なんかに星人を倒せるはずはありません」。 「いや、彼の空手なら等身の星人と五分に渡り合うことが出来る。しかし絶対に勝つとは保証できかねる。死ぬかもしれん」とダン。 ダンはゲンに、津山のところに行き、どうやったら星人に勝つことが出来るか聞いて来るように指示を出す。 津山のいる道場に向かうゲン。 しかしゲンは偶然津山の道場に向かう百子を目撃し、津山の下へ行くのを止める。 城南スポーツセンターに戻って一人で特訓をするゲン。 そこへ星人出現の報が入る。 ゲンは星人に敗れ、隊員一人が殉職する。 ダンはゲンが津山の所へ行かなかったことを見抜き、ゲンを叱責する。 「あの星人を逃がしたために、どこかでまた被害者が出る。人の命を救うためにお前が津山くんから技を教わることが恥ずかしいことか。それより身勝手な理由で教わろうともせず逃げ出そうとすることのほうが、遥かに恥ずべきことじゃないのか」とダン。 「ゲン、お前はウルトラマンレオなんだぞ」とダン。 ゲンは津山の道場に行き、教えを請う。 「隊長さんから頼まれましたが、僕はMACのこと好きじゃありません。僕は自分で自分を守るために空手を習った。それをMACが習いに来るなんて。本当言うと、百子さんの口添えがなかったら、こんなことやる気にもならなかった」。 「お願いします」とゲン。 「僕は何を教えたらいいんですか」と津山。 ゲンは何人もいる星人を見破る方法を聞くが、津山は星人は一人しかいなかったと言う。 「星人の体が5体に分かれたじゃないですか」とゲン。 それを聞いて笑い出す津山。 「なるほどあなた方は不便だ。おゝとりくん、その辺のボールを私に向かって投げてみたまえ」と津山。 投げつけるボールを尽く交わす津山。 「今度は僕が君に投げてみよう。すまないがボールを少し」。 ゲンは津山の目が見えないことに気付く。 「津山さん、あなたは」とゲン。 「見えないんだ」と肯く津山。 目を閉じて津山のボールを交わすように言われるゲン。 しかしゲンは津山のボールを交わすことが出来ない。 「そうか、わかったぞ。本物の星人は一人なんだ」。 猛とボールを交わす特訓をするゲン。 ゲンは猛の投げる球をキャッチし、それを投げ返した。 そこへダンの杖が飛んでくる。 それを受け止めるゲン。 「ゲン、見事だ。免許皆伝だ」とダン。 そこへ星人出現の報が入る。 レオに変身するゲン。 星人と組み合うレオ。 ダンもマッキーで援護する。 しかし星人が分身するとレオは苦戦し始める。 レオを攻撃するダン。 ダンはレオの目をくらませるため、泡を顔に吹きかけた。 暗闇の中に落ちるレオ。 しかし特訓を思い出したレオは、フリップ星人の本体を見抜くことに成功する。 最後は光球をぶつけるレオ。 フリップ星人は大破して果てた。 目をやられたゲンだったが、目の包帯を外すとそこには百子の顔が。 その後ろから語りかける津山。 「おゝとりくん、僕は君の事誤解していた。許してください」と津山。 「僕の方こそあなたにお礼を言わなければいけないんです」とゲン。 百子によると、津山は黒潮島のたった一人の生き残りで、その時目を悪くしたという。 「あの時、どうしてMACがもっと活躍してくれなかったのかと、僕は何度も恨んだ。MACは何も出来ないとさえ思っていたんだ。しかし君のように勇気のある人もいるということがわかった。見直したよ」と津山。 二人は固く握手する。 隊長がいないことに気付いたゲン。 ダンは殉職した隊員のために花を手向けていた。 「勇敢なMACの隊員を失った。失った命は帰らない。ゲン、わかるか。この先どんな宇宙人が現れるかもしれん。一人の犠牲者も出さずに戦うことは難しいことだ。だが俺たちはそれをやらねばならん。ゲン、頼むぞ」とダン。 解説(建前) 津山はどうして星人の本体を見切ることが出来たのか。 津山は動いてるボールは避けられるが、止まってるボールの位置はわからなかった。 おそらく津山は動いてるものの作り出す空気の動きを読んでいたのだろう。 それでは星人はどうやって分身していたのか。 津山によると星人の本体は一つであるので、高速で移動することにより分身を作っていたものと思われる。 津山は星人の作り出す空気の動きを捉えて本体を見抜いたのであろう。 感想(本音) 話の都合に合わせて暴れる星人、敗北・特訓のフォーマットとお馴染み田口脚本ではあるが、技を伝授してもらう相手が百子との恋愛絡みという点、今までの話とは差別化がなされている。 また殉職した隊員もしっかりフォローする等、不振続きだった田口氏の脚本もここに来て漸く立直って来たようだ。 セリフにも力が入っており、ゲンの複雑な心情もよく描かれ、特訓編でも佳作といえる仕上がりであろう。 今回の中心は何と言ってもライオン丸こと潮哲也氏演じる津山。 フリップ星人との格闘シーンなど、さすがヒーローをやっていただけあって様になっている。 ウルトラでは次の作品の主役候補がゲスト出演するのがエース以来恒例となっているが(篠田三郎氏や大和田獏氏)、レオの次の作品があれば、あるいは潮氏主演ということもありえたかもしれない。 しかし津山と百子の思わせぶりな描き方も如何にもという感じ。 一生懸命津山の稽古着を洗ったり、それを届けに行ったり、一緒に喫茶店で待ち合わせたり。 あれじゃゲンじゃなくても誤解すると思うぞ。 その結果、ゲンが特訓を躊躇して殉職隊員が出るんだから百子も罪な女だ(笑)。 まあしかし、隊員が星人にやられて殉職したのまでゲンの責任にするのはかわいそうなので、その点については責めないことにしよう。 とはいえ、百子は一体どういうつもりだったのか。 実はここまでゲンと百子との関係はあまりはっきりしていない。 お互い好意を持っているのはわかるのだが、まだ2人ともそのことをあまり意識してないように思われる。 まあゲンの方は百子を大事に思ってる節はあったのだが、ここまではダンとの関係の方が中心になっていたので、百子との関係は後回しになっていたのであろう。 最初からさおりのことを「綺麗だ」と言っていた光太郎とはその辺りがかなり異なる。 これも青春ドラマとスポコンのノリの違いであろうか。 しかしゲンの嫉妬はかなりストレートに描かれていた。 最後は百子と津山の関係がわかり和解してるが、特訓を一度は拒むほど嫉妬している。 主人公がここまで露骨に嫉妬するのはウルトラシリーズでも初であるが、逆にこの辺り、他の主役にはない親近感というものが感じられて良い。 ゲンは今までの主役たちに比べたらあまりヒーローらしくないヒーローである。 光太郎は間が抜けてるようでも、如何にもなヒーローであった。 郷とも違うゲンのこのような未完成さは、その成長を描くには効果的であったと思う。 津山は星人と戦おうとするゲンに対し、「君では無理だ、MACでは無理だ」と言っている。 この辺りはMACの不甲斐なさに対する不信感みたいなものが感じられて面白い。 しかし津山はよくあの黒潮島の惨事から生還したな。 しかもなぜか視力まで失ってるし。 しかし津山はほんの数ヶ月前に視力を失った割には心眼を体得しており、かなりの達人だと思われる。 空手もMACが不甲斐ないから身に付けたようだし、さすがにあの惨事から生き残っただけはある。 今回ダンは自らは特訓する立場ではなかった。 しかし一度津山と星人の格闘を見ただけで技を教わって来いというのも凄い。 もう、何でもありである。 しかしレオに泡を浴びせて目を潰すのは理解できるが、その前にミサイルまで撃ちこんでなかったっけ? ダンの攻撃に対するレオの怯え方も尋常ではなかったし、おそらくレオの脳内ではあのジープでの惨劇がフラッシュバックしていたものと思われる(笑)。 それでも今回のダンは、殉職した隊員に花を手向けるなど人情家の一面がかなり見られた。 ゲンに対するメッセージも熱いものであるし、「お前はウルトラマンレオなんだぞ」というセリフにもゲンに対する信用が窺われる。 相変わらず杖を投げつけるなど荒っぽいが、これもダンなりの愛情表現なのだろう。 「失った命は帰ってこない」。 レオの重さを象徴するようなセリフである。 トオルによると、レオが獅子座出身であるということは公式に発表されているようだ。 しかしMACはレオが獅子座出身であるということをどうやって知ったのであろう。 まあ本人がいるというのは置いといて、これはかなり難しい問題である。 レオという名前もいつの間にか付いてるし、結局便宜的に名前と出身星が決められただけと解するのが素直であろう。 フリップ星人の分身の原理は結局よくわからなかった。 高速分身ならバイブ星人と変わらないし、結局細かいところは考えてなかったのであろう。 ゲンの特訓は技の体得がメインではあるが、結局気合で解決してる面もかなり大きい。 とにかく実体が一つだということがわかれば良しということか。 それはともかく、笑い声が完全にバルタンだったのが気になった。 ウルトラでは珍しく三角関係が描かれた本話。 結局はゲンの誤解ということだが、その辺りの屈折した心情は何となく理解できるだけになかなか面白かった。 津山の方がヒーローらしいキャラでもあるし。 しかし今までのヒーローでここまで人間としての弱さを見せたキャラがあっただろうか。 アニメのヒーロー像からの影響かもしれないが、完全無欠のヒーローからアムロのように悩めるヒーローへの過渡期的存在として、レオを評価することも可能であろう。 宇宙人でありながら人間以上に人間臭いレオ。 人間の弱さ、情けなさを全面に出すレオは、未だにウルトラのヒーローとしては異色だと思う。 |