必殺拳! 嵐を呼ぶ少年


データ

脚本は阿井文瓶。
監督は前田勲。

ストーリー

怪獣アンタレスと戦うレオ。
レオはアンタレスの巨大な尾に苦戦する。
援護するマッキー。
アンタレスはレオの攻撃を手のハサミで掴み取り、さらに尾で攻撃を仕掛ける。
それを見たダンはマッキーを脱出し、杖に爆弾を仕掛け投げつけた。
爆弾は命中するも、レオはアンタレスの尾の毒針を刺されてしまう。
うずくまるレオ。 アンタレスはマッキーの猛攻を受けると、赤い煙に包まれ姿を消す。
アンタレスが姿を消した直後、スポーツセンターに道場破りの少年が現れた。
少年は空手技で会員たちを投げ倒し、さらに尾の毒で会員を昏倒させる。
そこへ「待て!」とダンが現れる。
「他流試合は禁止されているはずではないか」とダン。
ダンは少年の目を見て、少年が人間ではないと見切る。
そこに負傷したゲンがやってきた。
立ち去る少年。
ダンはゲンに道場破りの少年は怪獣だと告げる。
アンタレスはレオが毒尾攻撃の対抗策を編み出す前に、先制攻撃を仕掛けてきたのだ。
隊員たちを着替えさせて、ゲンの特訓を始めるダン。
ゲンは隊員たちの毒尾攻撃を見立てた連係技に苦戦する。
そこへ怪獣出現の報が入った。
しかしダンは青島たち2人をゲンの特訓のためにセンターに残す。
マッキーで出動した隊員たちはアンタレスの攻撃で墜落。
一方、センターでは2対1でのゲンの特訓が続いていた。
そこへ帰還した隊員たちがやってくる。
「犠牲者8名、怪獣はほとんど無傷です」。
「練習を続けるんだ」とダン。
「この練習は一体何のためですか」と青島。
出撃を懇願するが、聞き入れられない。
「少年が怪獣だ。そう言ってしまえば隊員たちは意地でも攻撃するだろう。少年が正体を現したとき、今のMACで歯が立つか。レオも奴の尻尾の攻撃を食い止める技を身に付けていない。レオがいる限り、怪獣はおちおち暴れられん。必ず少年の姿で戻ってくる」とダン。
練習に戻るゲン。
ゲンは隊員たちに頭を下げるが、隊員たちは練習に付き合おうとしない。
「いつも特別扱いされてるからって、いい気になるな」と青島。
そのまま去ってしまう隊員たち。
「隊長さんがいけないのよ。これではおゝとりさんの立場がますます悪くなるだけだわ」と百子。
猛もなぜMACが道場破りと戦うのかと疑問を呈する。
「違うんだ」とゲン。
ゲンは竹刀を持った猛をパートナーに特訓を始める。
「打て、打つんだ」とゲン。
しかし過酷な特訓に猛は拒否反応を示す。
「もう嫌です。もうこれではスポーツとはいえません」と猛。
ゲンに叱咤されて立ち向かう猛。
その時土管の上から応援していたトオルが足を滑らせ転落した。
とっさに飛びつき、足技でトオルを受け止めるゲン。
「出来た」とゲン。
ゲンが道場に戻ると例の少年がゲンを待っていた。
対峙する二人。
互角に組み合う二人。
少年は宙を飛びまわって攻撃する。
何とか応戦するゲン。
ゲンは少年のとび蹴りを交わし、組手を戦わせる。
空中殺法で攻める少年。
それを交わしたダンは少年の襟をとる。
すると少年の背中から尾が。
それを足技で交わすゲン。
さらに腹に拳を入れる。
「少年は怪獣だったのか」と隊員たち。
少年は道場を逃げ出し、外で巨大化した。
「おゝとり、すまん」。
ゲンに謝る隊員たち。
ゲンはレオに変身。
アンタレスに再び手をとられるレオ。
アンタレスの目が光り、毒尾がレオを襲う。
しかしそれを足で受け止め、尾を断ち切るレオ。
さらに切断した尾のハサミをアンタレスに投げつけアンタレスの首を切断した。
首を持ったまま迫り来るアンタレス。
しかし最後は爆破して果てた。
空手の組み手を練習するクラブの会員たち。
青島もトオルと組み合って練習をつける。
練習を止めるというトオル。
「勉強しなくちゃ」とトオル。
「男が何かやるときには、説明や言い訳はしないものだろ」とトオル。
「お兄ちゃん昨日宿題やるの忘れて、今日2倍やらなくちゃならないのよ」とカオル。
「なんだ、それでか。かっこつけちゃって」と青島。
そのときトオルの突きが青島の腹に命中。
うずくまる青島。
それを見て笑い合うゲンたち。

解説(建前)

アンタレスは何者か。
ゲンと戦うために人間に変身して城南スポーツセンターを狙う辺りかなりの知能を感じさせるが、その姿形はやはり宇宙人というより怪獣であろう。
少年の姿に変身して一言も言葉を発しなかったことからも、それは推測できる。
ただ問題は、アンタレスがどうやってゲンの勤務先を知ったかということ。
少年はゲンやダンより先に道場破りに来ており、事前に知ってるとしか思えない。
これはやはりアンタレスを操る黒幕がいるということであろう。

黒幕が何者かについては情報が少なすぎて推測不能だが(マグマ星人が一応有力か)、アンタレスの行動を見てると同じようなタイプの怪獣を以前見た記憶がある。
それは、超獣人間コオクス及び超獣バキシム。
2体とも少年に変身していたという共通点があるし、言葉こそ話したものの、それはヤプールが乗り移っていたからと思われ、高度な知能というものは感じさせなかった。
アンタレスも単純な怪獣というより超獣に近い存在なのであろう。
アンタレスの行動もごく単純なもので、黒幕が作戦の大筋は決めていたものと思われる。

感想(本音)

怪獣が少年に変身して道場破りをするという、かなりぶっ飛んだ話。
大人になって初めて見たが、正直なんでこれが怪獣なのだろうという疑問は持った。
ただコオクスやバキシムも微妙な存在であったし、ウルトラの世界観ではこれくらいは許容範囲なのであろう。
道場破りという理不尽な行動をするアンタレスは、やはり宇宙人にしては頭悪すぎると思う(まあ、あまり頭いい宇宙人は出てこないのだが)。

今回はいきなりレオの戦闘シーンから始まる。
序盤の敗戦、特訓、リベンジの流れはフォーマット通りだが、初戦を短くまとめたのは後をじっくり描くためであろう。
メリハリは出ていた。
ダンは杖に爆薬を仕掛けてアンタレスに投げつける。
この頃から徐々に杖が万能武器化していく。
しかし杖から銃弾が出てくるまでになったら、もはや本来の役割をかけ離れてるぞ。
そもそもあの杖が何で出来てるか、興味深いところだ。

アンタレスはどう考えても何を考えてるか意味不明。
やはり宇宙人若しくは異次元人が送り込んだ怪獣兵器の可能性が高い。
しかしアンタレスはレオと戦いに来たはずなのに、ゲンが来る前に道場を去ってしまった。
これはやはりダンに正体を見破られたと考えたからであろう。
その後アンタレスは再び怪獣化して、MACに多大な損害を与える。
それでも再び道場に来たのは、レオが現れなかったことが気になったからであろう。
正直無理な展開だが、そもそもアンタレスにあまり主体的な考えがなかったので仕方あるまい。

今回、MACは8人の犠牲者を出したという。
これはかなりの問題。
ダンは隊長としての役目を放棄して、道場破りを倒すための特訓を監督していた。
結果的に道場破りがアンタレスだったためにその作戦は間違いではなかったのだが、しかしダンが特訓に付き添う意味はあまりなかったように思われる。
そもそもこういうゲンを特別扱いすること自体、隊員の士気を下げる方向に働き、隊長として適切な行動とは言えない。
少年の正体を明かせない事情があるにせよ、隊長自身、冷静な判断が出来てなかったのは事実である。

今回の最大の見せ場は後半のゲンと少年の空手対決であろう。
よく見ると、少年は時々別人に変わっているのだが(よく見なくてもか)、ゲンはほとんどスタントを入れずに戦っている。
特に連続でバク転するシーンなんかは真夏さんの並外れた運動神経が見れて面白い。
組手も少林寺拳法をやっていただけあって、なかなか様になっている。
この話は結局、この組手がやりたかったのだろうなという説得力のあるシーンではあった。

アンタレスは行動原理はよくわからないが、なかなかの強敵であった。
さそりをモデルに尾の毒で攻撃というのもわかりやすくてよい。
ただ最期、首チョンパなのは少し驚いた。
今ではこういうのは自主規制なのでしょうかね。
宇宙ギャオス惨殺シーンなんか、二度と地上波で見れそうもありません。
それはともかく、首を持ったまま歩いてくるのは少しホラー。
やはり生物兵器なのでしょうか。

ゲンと猛の特訓シーンはちょっと狂気が入っていた。
何で猛がこんな特訓につき合わされなくてはならないのか。
正直気の毒であったが、結局トオルが不用意に落下してそれをキャッチして技完成なのだから、御都合主義もいいところ。
まあ、お約束なのではあるが、MACのチームの和を乱してまで特訓を続けて成果がなかったのであるから皮肉なものである。
ただ、ダンの理不尽な振る舞いや、特訓が徒労に帰するところなんかは逆にリアルでもある。
世の中皆合理的に振舞えれば、そして合理的に結果が出れば、誰も落ちこぼれないし、犯罪の加害者も被害者も生まれないと思う。

今回から主題歌が後期バージョンに変更。
戦闘シーンで、「レオ〜、ウルトラマン」はちょっと気が抜けたように感じられるが、それは慣れなので仕方あるまい。
実は、私は世間では数少ない後期バージョン支持派。
もちろん前期もいいのだが、私はヒデ夕樹さんの歌唱が好きなのでこの後期はかなり気に入っている。
アレンジや転調もなかなかかっこよく、前期に隠れてはいるが負けず劣らない名曲だと思う。
出来ればもう少し温かく扱って欲しいというのが私の願いでもあるが、DVDで後期を前期に変えて聞ける機能があることからも、世間ではやはり後期の受けはあまり良くないようだ。

今回はダンがゲンを特別扱いすることに対する隊員たちの不満が描かれている。
阿井氏がそこまで考えて脚本を書いたのか定かではないが、そのことについては今まで不問に付されてきたので、取り上げたのは悪くない。
ここまでの軋轢はタロウにはなかったので、新マンやエースに近いノリであろう。
ただそのわだかまりは、少年がアンタレスだとわかるとすぐに氷解した。
この辺りはやはりテーマとして描くには軽きに過ぎるであろう。

本話の中心は前述したが、やはりゲンと少年の格闘にある。
これはスポコンを狙った本作では王道の展開であろう。
ただ怪獣相手のスポコンとなると、展開は強引にならざるを得ない。
本話は基本フォーマットをしっかり入れて何とか話を成立させているが、技の発見の件などを見ていてもかなり苦しいものを感じる。
フォーマットは話を書きやすい方向にも書きにくい方向にも作用する。
全体的にレオは、フォーマットの後者の側面が強く出ているように思われる。


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