大爆発! 捨て身の宇宙人ふたり


データ

脚本は田口成光。
監督は前田勲。

ストーリー

街に現れたバイブ星人を追うゲン。
星人は自らの体を回転させ姿を消す。
姿を消した星人はゲンのナイフを奪い、現場に居合わせた警官の一人にそれを突き刺した。
殺人の容疑で現行犯逮捕されるゲン。
ゲンはダンの要請を請けたMACの高倉長官により釈放されるが、ダンはその責任を問われる。
「今回のような不祥事については責任を取ってもらわねばならん」と長官。
「全ての責任は私にあります」とダン。
「君を隊長の任務から外すという意見もある」と長官。
さらに長官はダンの推薦でゲンが入隊したことにも触れ、「迂闊に人を信頼して推薦したりするもんじゃない」とダンに言う。
ダンは過去の輝かしい実績により解任は免れるが、長官に厳しく釘を刺された。
「隊員の処置については君に任せる」と長官。
「あれはバイブ星人の」とゲン。
「そんなことはわかっている。私はお前の迂闊さを責めているのだ」とダン。
「私とお前はこの地球を守る、たった2人だけの宇宙人なんだぞ。わかるか。私とお前がMACにいなければならない理由が。この地球をこよなく愛し、ふるさとだと思っている俺たちがこの地球を守らねばならん。それが使命なのだ」とダン。
さらにダンは「お前はこの事件から手を引くんだ」とゲンに言う。
「しかし星人を誰が倒すんです」とゲン
「俺が倒す」とダン
ゲンは1週間の停職を命ぜられる。
百子たちと釣りをするゲン。
しかしゲンは元気がない。
頭はバイブ星人のことで一杯だったのだ。
ダンに迷惑を掛けたことを悔やむゲン。
するとそこに星人が現れた。
星人と格闘するゲン。
星人を追って来た隊員たちも星人を攻撃する。
建設現場に逃げ込む星人。
それを追うゲン。
「そいつを捕まえてくれ」とゲン。
それを聞いた作業員は星人に挑みかかる。
しかし星人は空中で回転を始めると再び姿を消した。
今度はゲンに鉄の棒を握らせ作業員を殺させる星人。
「お前はなんてことを」と隊員たち。
ゲンを取り押さえる隊員たち。
「あいつがやったんだ」。
隊員たちを振り払い、星人を追いかけるゲン。
星人を追いかけてトンネルを抜けると、いきなりダンがゲンの足下を杖で払った。
もんどりうつゲン。
「やめろ!やめろと言ったはずだ。お前が深追いしたために、また1人の人間が命を失ったんだ」とダン。
「僕は自分の手で奴の罠を暴きたいんです」とゲン。
「駄目だ」とダン。
「MACを辞めさせて下さい。これ以上隊長やMACに迷惑は掛けられません」とゲン。
「許さん!」。
杖を投げつけるダン。
長官に責任を問われるダン。
ダンは「隊員たちのどんな行為も、みなMACの使命を果たすためのものと信じています」と長官に言う。
「私はゲンを信じています。私はゲンの無罪を証明し、星人を倒すことで責任を果たします」とダン。
一人特訓するゲン。
「隊長は死ぬ覚悟なんだ。俺が早く星人の罠を暴かないと」とゲン。
基地で一人星人の技について考えるダン。
「セブンにさえ変身できれば」。
ウルトラアイを見つめるダン。
「バイブ星人め。くそう」。
定規を投げ捨てるダン。
ダンはその定規が弾性でゆれるのを見て、星人の技の秘密に気付く。
一方ゲンは、いくら空手の技が優れていても、相手の姿が見えないと意味がないことに気付く。
その頃東京にバイブ星人が出現。
出動する隊員たち。
「MACの名誉にかけて星人を倒せ。ゲンを救う道はそれしかない」とダン。
星人を取り囲む隊員たち。
すると星人は体を空中で回転させ始めた。
特殊なカメラで星人の動きを捕えるダン。
星人は隊員の一人からナイフを奪うが、そこをすかさずダンに狙撃される。
負傷した星人はそのまま逃げ去った。
基地に帰った隊員たちは、ダンの撮ったカメラの映像を見ていた。
「人間の目には見えない振動をしている。ちょうど自転車の車輪やプロペラのようにな。だがレンズの目は誤魔化せない」とダン。
「おゝとりは星人の罠にまんまと…」と隊員たち。
隊員たちはゲンにMACシーバーで連絡を取る。
「君の無罪は証明された。すぐに本部に戻ってください」。
「そんなに優しい言葉で俺を呼ばないでくれ。俺は星人を倒すまで帰っちゃいけないんだ。帰れないんだよ!」とゲン。
地面に刺した板を殴るゲン。
すると板は高速度で振動し、それを見たゲンはバイブ星人の技の正体に気がつく。
再び星人出現の報が本部に入る。
今度は巨大化した星人が街を破壊していた。
マックロディとマッキーで出撃する隊員たち。
その頃ゲンは、揺れる板を見つめてバイブ星人の技の攻略法を探っていた。
空と地上から攻撃するMAC。
一方、巨大化した星人は自らの体を回転させ姿を消す。
次々とビルを破壊する星人。
「ゲン、俺がいなくても後は頼む」とダン。
ダンは決死の覚悟で星人に突撃。
星人に体当たりするダン。
一方ゲンは漸く板の動きを見切り、レオに変身する。
救援に飛ぶレオ。
星人はダンの乗ったマッキーとともに大破する。
その衝撃で投げ出されるダン。
レオは宙に舞うダンを見事キャッチする。
「僕の不注意でこんなことになってしまって」とゲン。
「約束通り私が星人を倒したぞ」とダン。
「私はお前に命を助けられた。礼は私が言わなければならない。しかしよく飛んでる私を見つけることができたな」とダン。
「松ぼっくりが教えてくれたんです」とゲン。

解説(建前)

バイブ星人の目的は何か。
これは素直に考えると、単に地球で暴れまわりたいだけであろう。
ではゲンを罠に嵌めた点はどう考えるか。
この点についてはレオを倒すための刺客とも考えられるが、単にゲンが星人を追い詰めた結果とも考えられるので、ただの偶然と解するのが妥当と思われる。
結局バイブ星人はただのゴロツキ宇宙人ということになろう。

感想(本音)

脚本については今回も不満。
11話よりはマシだが、あまり練られてない感は同様である。
今回の脚本も田口氏。
正直、氏はあまりこういうスポコンものには向いてないのではないか。
体を振動させて姿を消すという技も強引であり、ネタに苦しんでる感は否めない。

本話はいきなりゲンの逮捕という展開で始まる。
今まで主人公が問題を起こして謹慎する例は間々あったが、殺人で現行犯逮捕されたのはゲンが初めてであろう。
警官殺害にゲンのナイフが使われたこと及び、ゲンがナイフを放り投げたようなポーズをしていたことからこの逮捕は正当である。
普通なら当然逮捕拘留されるところだろうが、身柄を解放される辺り、MACの長官はなかなかの権力者なのがわかる。

今回ダンは過去の輝かしい実績により解任を免れる。
しかし過去の輝かしい実績というのは何であろうか。
まず考えられるのはウルトラ警備隊時代の活躍であるが、確かにウルトラ警備隊は優秀だったのでダンもその一員として活躍したが、それだけでは指導者として隊長を任される根拠には乏しいといえよう。
これはやはり隊長としてのこれまでの活躍が評価されたものと思われる。
レオが来るまではセブンが地球を守っており、その時の活躍及びレオが地球に来てからの活躍が評価されたのであろう。

今回こそ厳しいことを言っていたが、これは組織の長として当然であり、MACの長官は2期特有の嫌な長官ではない。
ダンに対しても多大な信頼を寄せており、2人の間に信頼関係があるのがわかる。
しかしMACのような最弱な警備隊にしてはまともな長官である。
結果的にはこの甘さが組織の壊滅を招いたのかもしれないが、見ていてストレスの少ない長官というものは作品的にはプラスに評価できよう。

今回はセリフが多いので、あらすじを書くのに少し苦労した。
しかしダンがゲンに自分たちの使命を諭す場面はなかなか熱い。
また長官に対してダンが部下への信頼を語る場面など、ダンの心情がよく表れており重要な場面である。
さらに重要なのが、「セブンにさえ変身できれば」というセリフ。
このセリフだけでダンのゲンに対する理不尽な振る舞いが許せそうになるのは不思議なところだ。

今回また一般人が2人巻き添えで死んでいる。
警官は一般人とは言えないかもしれないが、工事現場の作業員に「捕まえてくれ」というのは前にも書いた通り無茶苦茶。
直接ゲンが殺したわけではないにしろ、本来作業員を逃がすべき立場であったのだから過失は問われるであろう。
まあ正直大問題なのだが、2度目ともなると慣れてしまってあまり気にならなくなってしまった。
本来ならスタッフが気付いて修正すべきところなのだが、そういう余裕もなかったのであろうか。
疑問が残る一連のシーンである。

今回の話で最大の不満点は、ダンがトンネルの外でゲンを待ち構えて足払いするシーン。
あれじゃ、ダンが走ってくる星人をスルーしてゲンだけ狙って突き飛ばしてるように見える。
て、まあ多分そういう意図なのでしょうが、それではあまりにも任務を粗末にし過ぎであろう。
辞めていくゲンに杖を投げつけるのも泉谷しげるばりの切れ方だし(失礼)、正直ゲンをいたぶるためだけに挿入されたシーンとしか思えない。
まあいくらダンが切れてるからといってもあれじゃあんまりなので、実はあのダンは追い詰められた星人が素早く変身したもので、ゲンから逃げるためにダンの振りをしたと脳内解釈しておく(嘘です)。

今回ゲンは仲間である隊員たちからも殺人犯扱いされていた。
これもゲンに試練を与えるための演出であろうが、この扱いはあんまりであろう。
ただ、MAC内ではゲンの扱いに不満な輩が結構いるようなので、ある意味仕方ないともいえる。
ダンは件のセリフに表れてるように、ゲンに自分たちが宇宙人であることを強調し連帯意識を求めているので、逆にMAC内のゲンの孤立には鈍感なのかもしれない。
一応今回の件については和解しているが、ゲンと隊員たちの信頼関係はまだまだ構築されたとは言い難い。

今回も星人の行動原理が今ひとつ謎。
ただドラマの都合に合わせて出没するのはもはや設定なので、それに文句を言っても仕方ないであろう。
そもそも等身大で現れるのと、巨大化して暴れるのと基準がよくわからない。
これは撮影の都合なので、物語的には星人の気分次第と解釈するしかあるまい。

今回の特訓は揺れる板を見切るという単純なもの。
しかしその特訓は怪獣を倒すためではなく、結果的にダンを救出するためのものであった。
ちょっと偶然過ぎる気もするが、一応役立ったので良しとしておこう。

とまあ、ここまで不満点を中心に述べてきたが、この話全体の印象は実はそれほど悪くない。
その一番の要因はやはりダンが星人を倒したという点にあるだろう。
マッキーで星人に特攻するダンはやはりカッコイイ。
ゲンを思いやって自分が怪獣を倒すと約束し、それを実行するダン。
素直に助けられたことの礼を言うダン。
ダンの悪い面も多々見られたが、全体的にはダンのいい面が強調されており、ダンの活躍を見たかった子どもたちも満足ではなかろうか。

正直本話の出来はあまりいいものではない。
ダンの活躍やゲンとの信頼を描いた点は評価したいが、例のトンネルのシーンなどやはり不自然かつ理不尽としか言いようがないであろう。
またダンが自殺行為までして星人を倒すのも、ゲンに対する愛情からにしても無思慮すぎる。
あそこは本来はもっと上手いタイミングで脱出するのが普通であろう。
話のコンセプトはいいのだが、どうも粗が目立ってしまう本話。
展開もマンネリ気味だし、正直これでは視聴率が低迷するのも仕方ないであろう。
この後の路線変更は必然であった。



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